モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

【ネタバレ】映画「ボーダーライン」感想と評価 ヴィルヌーヴ作品の中ではあまり好きじゃない。

ボーダーライン

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ボーダーラインという邦題が既にミスリード。

 

とはいえ、ヴィルヌーヴ監督の新作であります。確実に重い話だから覚悟して見に行って参りました。

 

 

 

あらすじ

エリートFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、肥大化するメキシコ麻薬カルテルを潰すためにアメリカ国防総省特別部隊に選抜される。特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)に召集された彼女は、アメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織ソノラカルテル撲滅のための極秘任務に、あるコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共にあたることに。

しかしその任務は、仲間の動きさえも掴めない通常では考えられないような任務であった。

人の命が簡単に奪われるような状況下に置かれ、麻薬カルテル撲滅という大義のもとどこまで踏み込んでいいのか、法が機能しないような世界で合法的な手段だけで悪を制せるのかと、善悪の境が揺さぶられるケイト。

そして巨悪を追えば追うほどその闇は深まっていく……。(映画サイトより抜粋)

 


『ボーダーライン』予告

 

 

 

 

 

 

監督・キャスト

監督はこの10年で確実にサスペンス映画というジャンルでにその名を知らしめたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。

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カナダ出身の監督で、98年に製作した作品「August 32nd on Earth」や、2作目にあたる「」が世界中の映画祭で上映されたことで評判となり、続いて製作された作品で、亡くなった母の遺言を頼りに父と兄を探す旅に出た双子の姉弟が、やがて母の壮絶な運命に立ち向かう姿を知ることになっていくヒューマンミステリー「灼熱の魂」がアカデミー賞外国語映画賞にノミネート

その高い評価の中作られた次作で、アメリカの田舎町で起きた少女誘拐事件の捜索の中、冷静に事件を追う刑事と、一刻も早くわが娘を探し出そうと暴走していく父親の姿を対照的且つスリリングに描いたサスペンス映画「プリズナーズ」、

監督の作品に続けて出演することになったジェイク・ギレンホールが瓜二つの男を熱演し、やがてその男の存在を危険視していく難解なサスペンスミステリー「複製された男」などがあります。

待機作としてエイミーアダムスジェレミーレナー主演の作品、そして、ハリソンフォードライアンゴズリング主演であのSF映画の金字塔ブレードランナー」の続編の企画に取り組んでいるとのこと。

 

 

 

 

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 これは絶対ネタバレしてはいけない!この衝撃は思わず「えっ!?」と声を上げてしまいます。

 

中東系のカナダ人女性が遺体で発見された。遺された双子の姉弟は彼女からの遺言を聞かされる。それは、父と兄を探し出し手紙を渡してほしいということ。とっくに死んでいた父がいたことはおろか、知らなかった兄の存在に困惑する2人だが遺言に従い父と兄を探しに母の祖国へと旅立つ。衝撃の事実が待っているとも知らずに・・・。

 

双子の姉弟と家族探しと母の壮絶な人生という過去と現在を織り交ぜて進んでいく展開で、中東での宗教対立に巻き込まれた母に訪れる悲惨な過去、そして姉弟がたどり着いた旅の果てに知った答えに魂が震えます。おそらくほとんどの人が弟と同じリアクションします。監督の作品の中では一番好きな作品です。

 

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

 

主演のFBI捜査官・ケイトを演じるのはエミリー・ブラント。

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たまぁに死んだ目をしてるなぁと思うときもありますが、やっぱり美人さんです。

 

キャリアスタートは「ロミオとジュリエット」の舞台。そこから映画へと進出し、

ひょんなことからファッション雑誌で編集長の秘書として働くことになった女性が鬼上司に振り回されながらも恋に仕事に奮闘する姿と、そのセレブリティなファッションを取り入れたことによって世界中の女性があこがれた映画「プラダを着た悪魔」でヒロインの同僚役に抜擢。

その後も、イギリスのヴィクトリア女王が政争やスキャンダルに巻き込まれながらも夫との絆を深め苦難を乗り越えていった若き日を描いた歴史ドラマ「ヴィクトリア女王 世紀の愛」ではゴールデングローブ賞にノミネート、

殺し屋の標的が30年後の自分という斬新な設定と内容に絶賛されたSFアクション「LOOPER /ルーパー」でも同賞にノミネート、 

エイリアンの襲撃を受ける中、死んでは戻りのタイムループに巻き込まれた兵士がその能力によって戦いへの活路を見出していくSFバトル「オール・ユー・ニード・イズ・キル」ではトム・クルーズと共演、

そして去年はシンデレラやラプンツェル、赤ずきんやジャックとまめの木などのおとぎ話のその後を描いたディズニーのミュージカル映画「イントゥ・ザ・ウッズ」ではその歌声を披露し話題となりました。

 

その流れではないと思いますが、次作には白雪姫をエンタメアクションに仕上げた続編「スノーホワイト 氷の女王」で女王の妹役を演じます。

 

 

 

 

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 ルーパーといい、オールユーニードイズキルといい、この映画といい、エミリーはなぜか時をまたぐ作品が多いです。

 

将来有望な若手政治家デヴィッドはある日、美しい女性に惹かれ深い仲に。しかし、デヴィッドは運命調整局・アジャストメントビューローという決められた運命に逆らわないように調整を行う謎の組織に拉致され、その女性と会えないよう強引に画策されるのだが・・・。

 

いろいろとツッコミどころ満載な話ではありますが、決められた運命から逃れるべく奔走するマットはボーンシリーズまでとは言いませんが、がむしゃらに走ってます。SFではありますがロマンスの強い作品です。SFと聞いて避けてしまう女性でも全然楽しめると思います。

 

 

 

 

そのヒロインを固めるオジ様2人、コロンビア人の元検察官・アレハンドロ役に「21グラム」や「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳 別れの手紙」などで素晴らしい演技を見せたベニチオ・デル・トロ

作戦の指揮を執る特別捜査官・クレイヴァー役に、「ノーカントリー」や「トゥルーグリット」といったコーエン兄弟監督作品に縁があり、去年の「インヒアレント・ヴァイス」での片言の日本語が印象的だったジョシュ・ブローリンがヒロインを支えます。

 

 

 

 

そんなサスペンス映画界の新鋭が女性を主人公に描いた、麻薬組織と警察との無法地帯で待ち受ける衝撃の事実とは!?

では感想です!!

 

 

 

 

 

 

 

相変わらず胸クソ悪い!そして邦題は無視しろ!

以下、核心に触れずネタバレします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

わかってたけど重いし暗い。

さすがヴィルヌーヴ監督。色んな後味悪い重苦し〜い作品で観衆にため息つかせますが、今回も重かった。
話が重いのでなく描写が重かった。
そうさせるような音楽が重かった。
心拍数を上げるような低い打ち込み音とハンスジマーのニセモノみたいな低い弦楽器のBGM。
全編通して内容も描写も音楽も演出も全てが地を這うような低空飛行で進んでいきます。
 
 
上映開始1、2分で既に不快です。
おえ〜〜って。
敵のアジトに踏み込んで制圧。でも、銃撃で空いた壁の穴から…わーお、勘弁してよ!!
 もーホラーだよ!!
 
こんな冒頭からはじまり最初から最後まで緊迫した内容に見終わってから、エンドロール中の肩の力が抜けた感じはすごかった。
最近こういう疲れる映画見てなかったかもしれません。
 
イヤな感じで書いてるようですが、そんなことありません。監督の作品の中では見やすい方だったと思います。
重さで言えば、灼熱の魂の方が衝撃度もあって遥かに重く感じたし、プリズナーズの方がジメジメしてたのとポールダノのボコられ描写の方が遥かにグロかったし。
これに比べれば何てことはないです。演出や音楽がこっちの方がうまかっただけのこと。
 
逆に言えば、拷問シーンを筆頭としたもっと映せないグロいシーンを映さねーでどうすんだ?という疑問もありました。
これだけ重苦しい描写なのにそこの一線は越えなかったのにはレーティングの問題でもあったのでしょうか。
それでも、シャットアウトして何も見せないのではなく音だけはそのままに、映像は違う部分で、という具合に想像を掻き立たたせてる演出は良かったと思います。
 
 
 
 

真の主役はデル・トロ!

すっかり女戦士が板についてきたエミリーでしたが、はっきり言ってエミリー必要でしたか?
この話彼女いなくても成立しちゃうし、百歩譲ってワキにおいた方がオジサン2人が際立つんじゃないか?
というのが率直な感想です。
 
曲がったことがだいきらい〜エミリーブラントですっ♩
と歌ってもいいほど純粋無垢で清廉潔白な正義感あふれる主人公なわけですが、存在感が弱すぎる。
彼女はほぼ何もしてない。
じゃあ何故作戦に参加させられたかってのは終盤明らかになるので仕方ないとして、もっと何かできなかったのか。
もっとオジサン2人のやることなすことに抵抗しなければ、正義と悪の比率がアンバランスになってしまう。
これに関してはそういう話じゃねーんだよ!とも思ってしまいますが。
 
ただ苦悩して葛藤して声に出しだとしても行動を実行できない。
実行したとしてもなす術がない。
まっすぐな正義は一線を超えた必要悪に太刀打ちすらできないのか。
そんな役回りをさせられた気がします。
非常に歯痒い役柄でしたね。
 
それもこれも邦題が悪いんですけどね!
 
そんなエミリーに不満タラタラな分、オジサン2人が最高に良かった!
特にデルトロは登場するや否やザッツハードボイルドな雰囲気で、確実にこいつ悪そうだなぁというオーラを軽くイッてる目つきと手入れをしてないヒゲとメタボな体から放ち、
蓋を開けてみれば美味しいとこ全部持っていく。
 
容疑者を捕らえ尋問する際の超近距離で威圧する立ち姿もおっかなかったし、
特に後半は彼の情け容赦ない非道っぷりが冴え渡り、悪を滅ぼすには悪で立ち向かうしかないというこの映画の本質を見事にやってのけている姿にただただ魅了されます。
 
ジョシュもまた真実をエミリーに語らずうやむやにするいい加減さと胡散臭い笑顔がお上手で。
急にマジな顔になるギャップもまた男らしいなと。
 
 
 
 
 
 

 

演出や演技、撮影、音楽など非常に良かったと思いましたが、内容に関してはイマイチのれなかった作品でした。

どうしても主人公の色が弱すぎたのが先行してしまい色んな解釈を逃してしまった気がします。

これはレンタルでもう一度見るのが得策なのかな。

続編どうやってつくるんだこれ?

 

満足度 ☆☆☆☆★★★★★★4/10