モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ハクソーリッジ」感想ネタバレあり解説 その信念は周りをも動かしていく。

ハクソー・リッジ 

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2017年のアカデミー賞では、ハリウッド俳優が監督した作品が多くノミネートされた、いつもとは変わったラインナップでした。

 

そのひとつがメル・ギブソン監督の「ハクソー・リッジ」。

 

監督の紹介でも言及しますが、周りの尽力もあってだとは思うけど、色々あっても実力があれば、こうやって表舞台で活躍できる。

その懐の深さがアメリカのいいところだよなぁと。

 戦場での生々しさがかなりすごいという評判もあり、グロい描写が苦手な私としては少々ビビりがちではありますが、早速鑑賞してきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

 

銃も手榴弾もナイフさえも、何ひとつ武器を持たずに第2次世界大戦の激戦地〈ハクソー・リッジ〉を駆けまわり、たった1人で75人もの命を救った男の物語を、俳優、監督としても数々の賞を受賞しているスター俳優が、およそ10年ぶりに監督した意欲作。

その甲斐もあって今作は、アカデミー賞作品賞、監督賞服務5部門にノミネートを果たした。

命ある戦場で、命を救おうとした1人の男の信念と葛藤を描いた、実話から生まれた物語です。

 

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あらすじ

 

ヴァージニア州の豊かな緑に囲まれた町で生まれ育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、兵士として戦場で心に傷を負い酒びたりの父親トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)と、、母バーサ(レイチェル・グリフィス)とのケンカが続く日々を見て育った。


 月日は流れ、成長したデズモンドは、看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)と恋におち、心躍る時を過ごしていた。

だが、第2次世界大戦が激化し、デズモンドの周囲の人間は次々と出征する。そんな中、子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。

しかし、神の教えを重んじるデズモンドの前に次々と難題が降りかかり、彼は苦悩と葛藤を繰り返していく。(HPより引用)

 

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監督

監督はメル・ギブソン。

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俳優としても監督としても成功している指折りのお方。

 

俳優業では「マッドマックス」シリーズや、「リーサルウェポン」シリーズ、「身代金」、「パトリオット」、「ハート・オブ・ウーマン」など数々の主演作で魅了してきました。

 

ただ個人としては、俳優としての彼はよく知ってるんだけど、監督作品は「ブレイブハート」のみ。戦闘描写がかなり生々しくなかなか応えました・・・。これを上回る描写なのかどうか。

 

そんな名実ともに成功を収めている彼。

こんな優しい顔してますが、私生活ではかなりやらかしてしまい、ほんの数年前まで業界から干されていました。

 

 何をしでかしたかというと、妻とは別に、自分の子を身ごもった女性がいて、その相手に暴行・暴言をしていたという、いわゆるDVをしていたということ。

 

他にも、飲酒運転や人種差別発言など、色々と世間を騒がせたことが業界を干された原因のようです。

 

しかしながら、盟友ロバート・ダウニー.Jrが「アイアンマン4」をメルギブソンが監督するなら演るよ!と彼を支援する発言をしたり、ジョディ・フォスターも自身の監督作に出演させたり、「そろそろ彼を許してやって欲しい」とスピーチするなど、業界で苦しい状況にあったギブソンに救いの手を差し伸べるなどして、彼は少しずつ業界から信頼を取り戻していきました。

 

決して仲間を見捨てないシルベスタ・スタローンも、自身の作品「エクスペンダブルズ3/ワールドミッション」で彼を抜擢しているのも同様ですね。

 

 

そんな彼の監督作を簡単にご紹介。

過去の事故により人目を避けて生活する元教師と、将来や人生に不安を持つ少年との心の交流を描いたヒューマンドラマ「顔のない天使」で監督デビュー。

 

スコットランドの独立のため戦ったウィリアム・ウォレスの生涯を、本人が主演監督したスペクタクルドラマ「ブレイブハート」で、アカデミー賞作品賞、監督賞など5部門を受賞し話題となります。

 

その後も、イエス・キリストの最後の12時間と復活を描き、その描写が宗教論争にまで発展した問題作「パッション」や、マヤ文明後期のジャングルで狩猟民族の青年が過酷な運命から逃れるため奔走する姿を描いた「アポカリプト」があります。

 

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出演

主演のデズモンド・ドスを演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。

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沈黙ーサイレンスー」での演技に胸を打たれ、俳優として一皮向けたなぁという印象を受けました。

 

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今回この映画を見たいと思った一番の理由は監督ではなく彼なので注目したいですね。

なんてったって、この作品で今年度アカデミー賞主演男優賞にノミネートしたのですから!

てか、沈黙と合わせて、今作での彼の役柄も宗教を信仰しているのは偶然なのか。

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

デズモンドは配属される部隊の隊長、グローヴァー大尉役に、「アバター」、「ターミネーター4」のサム・ワーシントン

デズモンドの恋人ドロシー・シュッテ役に、「ウォーム・ボディーズ」「X-ミッション」のテリーサ・パーマー。

上官のハウエル軍曹役に、「スウィンガーズ」「ドッジボール」のヴィンス・ヴォーン

デズモンドとハクソーリッジへ赴く兵士スミティ・ライカー役に「X-ミッション」のルーク・ブレイシー

そして、デズモンドの父トム・ドス役に「マトリックス」シリーズ「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」のヒューゴ・ウィーヴィングが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2次世界大戦の激戦地で75人もの命を救った兵士の物語。

なぜ彼は武器を持たず戦地で命を救うことを選んだのか。「プライベート・ライアン」をも越えるすさまじい映像はどんなものなのか。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想

決して武器を持たないことに信念を貫いた男の、苦難と偉業の物語。そして戦争の愚かさを生しく見せたメルギブ流戦争映画!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争映画は苦手です。

キリスト教に信心深いデズモンドが、戦場で武器を持たない衛生兵として、75人もの命を救ったお話。

そこに至るまでの過程を前半で丁寧に紡ぎ、後半では兵士の雄たけびが口火を切るように、壮絶で残虐で生々しいほどの描写で戦争の何たるかを訴えている作品でありました。

 

もうですね、恐怖にかられたり、目を瞑りたくなったりといった後半の地獄絵図や、その中でデズモンドの勇敢な行動に涙したり、でもって前半でのデズモンドのちょっとサイコな行動に笑ったりと、デズモンドという男の人間性に心動かされた作品でした。

 

第二次世界大戦を題材にした映画、それ以前に事実を基にした話では、本当はあそこはこうだったとか、史実と違ってるとか色々意見を言う人もいるかとは思いますが、個人としては映画としてどうだったかが大事だと思ってるので、その辺はあえて省いて感想を述べたいと思います。

 

 

前半は苦悩と葛藤の日々

作品の構成としては、少年期、青年期、訓練期、そして戦場といった4部からなる構成だったように思えます。

 

兄弟との仲睦まじい日々を、ヴァージニアの美しい森や崖の上からの絶景を映しながら、殴り合いのけんかの末のデズモンドの行き過ぎた行動、そして夜な夜な繰り返す両親の口論に悩まされるといった日常が描かれています。

 

そこで彼は「汝殺すことなかれ」というキリスト教の教えを目にしていくことで彼の信条の礎が垣間見れることが分かります。

 

 

青年期では恋人ドロシーとの出会いを中心に描かれており、兄弟が兵士に志願したことで見せる父の反応といったシリアスな場面もあれば、お前どう考えたってそれじゃプチ変態だろwと思ってしまうようなデズモンドのドロシーに対する突飛な行動など、この後訪れる惨劇など微塵も感じない、ほのぼのとした場面が続きます。

 

車の修理をしていた人が車につぶされ、足を負傷し、デズモンドは応急措置を施し、病院まで付き添うのですが、そこで献血をしていた看護師のドロシーに一目ぼれをするんですね。

何でしょう、人は一目ぼれする、とあんなにずっと満面の笑みを浮かべるものなんでしょうか。

 

デズモンドはドロシーとのきっかけを作るためにへったクソな会話をはじめ、結果献血をするんですが、止血するためにベルトで応急措置をしていたためズボンが落ちやすい状態で。

この状況をドロシーに満面の笑みで「ベルトが落ちるんです」なんていうんですね。

 

これ俺がドロシーだったら、あぁこいつちょっとヤバい奴かも・・・なんて警戒するような状況だったんですが、いやドロシーもあれは気が引けてたな。

早くこいつ追い払おうって思ってたと思う。

 

 

デズモンドはドロシーにかなりお熱で、俺結婚するー!とか、これからデートだぁい!などと言って家を飛び出し、翌日も献血に行くアホっぷりを見せたり、どうにかデートにこぎつけて、映画が始まる直前までニタニタしながら彼女を見つめます。

挙句の果てには、帰り道に何の前触れもなく彼女にキスしてしまう、女心が全く読めない恋愛偏差値の低い男として描かれています。

 

デズモンド君、とりあえずデートの本買って読もうね、と、彼の肩を叩きアドバイスしてあげたかった瞬間でした。

 

 

そして彼女の看護師としての姿に何かを見出したデズモンドは、傷ついた兵士を助けるため戦場へ行きたいと願うようになっていきます。

だがここから彼にとって試練と苦難の連続が始まるのです。

 

 

訓練期では、「フルメタルジャケット」のような軍曹の罵りと、訓練生の「サージ!ノー!サージ!」の掛け合い、もやい結びの訓練、泥まみれになりながらの匍匐前進、高い壁をロープ1本で昇り、そこから雲梯、そしてラストダッシュ、といったサーキット方式での訓練が続き、デズモンドはいい成績でクリアしていることが分かります。

 

 

しかしながらライフル訓練では唯一銃を持ちません。

宗教上の理由からデズモンドは武器を持ちたくないことを告げます。

これに頭を抱えた軍曹は上官に報告、デズモンドは早速呼ばれ、自分の要望を話すものの、ここでは俺の命令が絶対だ、と上官からくぎを刺されます。

 

 

協調性を重んじる部隊での訓練において、一人が足を引っ張れば、それは連帯責任であり、デズモンドの部隊は彼のせいで休日を返上され過酷な訓練を強いられます。

 

もちろんほかの訓練生は黙っていません。

デズモンドを夜な夜な殴る蹴るのリンチをしたり、スミティに大事にしていた聖書を奪われたりと、散々な目に遭います。

上官も彼に雑務を与え、除隊させるよう促していきます。

 

それでもデズモンドは動じません。

誰に殴られたかも言わず、後で部屋に来いといわれても、今日は警備と任務と食事当番なのでいけませんと拒み、頑なにその姿勢を崩しません。

彼の何がそうさせるのか。

自分同様に周りの訓練生や軍曹も思ったはず。

 

 

やがて訓練も一通り終え休暇をもらう訓練生たちですが、デズモンドはライフル訓練を終わらせていないため、休暇をもらえません。

尚且つ、上官への命令に背いたことで犯罪者扱いされ、裁判にかけられる羽目になります。

 

ただ銃をもって訓練すればいい、そうすればこの後の結婚式も行えるし、嫌みなことをされずに済む。

それでも、彼は拒み続けます。

 

信念を曲げてしまったら、僕は生きていけない。

 

そう、彼にとって武器を持たないという誓いが生きる証だったのです。

何のために部隊に志願したのか、何のために武器を持たないのか、これまで貫いてきたことを諦めてしまったら、今まで拒んできた意味がなくなる、それは自分自身を否定してしまうことになる。

 

自分は神の使いでもなければ、神の言葉が聞ける者でもない。

ただただ神を信じてるひとりの信仰者でしかない。

 

 

そのぶれない姿勢が、父やドロシー、軍曹や上官、そして兵士たちといった周囲の人間たちの心を少しずつ動かしていくのでした。

 

この強い信念は、もちろんこの後の戦場でもきちんと描かれており、彼の誓いが本物で、彼の行動に上官や仲間たちが感化されていく部分に、いたく感動しました。

 

 

後半はどぎつい戦場シーンの連続。

先日メルギブソン監督作品を一度も見たことのなかった自分としては監督の作風を知るために「ブレイブハート」を鑑賞したのですが、今作同様戦場でのシーンは、腕が切れたり、血が飛び散ったりと、直視できないような場面が多々あり、監督はこういう戦いの場において、目を背けてはいけないようなところをきちんと描いている人なんだ、と同時に、果たしてこの手の作品が苦手な自分にとって、今作はちゃんと鑑賞できるだろうか不安でありました。

 

 

結果としては「ブレイブハート」以上の目を背けたくなる場面がどんどん押し寄せ、辛い描写がひたすら続くものでした。

 

転がる死体の上にウジ虫がわき、そこに群がるネズミ。

飛び散っている腸をはじめとした内臓。

 

爆撃で両足を無くし、うめき声をあげている兵士、でもってカメラはちぎれた足をしっかり映す。

 

頭部に1発の銃弾を被弾し即死する兵士。

大きな爆風で土埃まみれ、そこへ放たれる火炎放射器。

火だるまになり叫ぶ兵士たち。

 

デズモンドもそんな地獄絵図をまじまじと見ていたからか、夜の仮眠でも悪夢を見てしまうほどの恐怖。

明くる日もワンサカわいてくる日本兵の数と狂気に、怖さを隠せません。

 

他にもものすごく目を背けたくなるようなシーンの数々に、自分がその場にいるかのような臨場感。

 

カメラワークに関しても、スローモーションやあらゆる視点からの撮影などが光り、一つ一つの音といった細部に至るまでリアルに感じる映像でした。

 

 

そんな中で武器を持たず、傷ついた兵士たちに、点滴を打ち、モルヒネを打ち、血を止めるためにロープで足を縛り、包帯とガーゼで応急措置を施すデズモンドの勇姿に胸を打たれました。

 

僕は決して目を背けてはいけない、そう思いながらたくさんの見たくもない悲惨な映像に耐え、目に焼き付けました。

 

 

 

最後に

メルギブソンが戦争映画を撮るとこういう話になる、そんな映画でした。

 

戦争は人を殺しにく所だ、でもそんな場所で人を助けたいと願う男の視点から、戦争というものがどれだけの命を奪い、それがどれだけ無意味なもので、どれだけあってはならないものかを伝えるために、あえて生々しい描写にしたんじゃないだろうか。そんな風に思えます。

 

そして武器を持たないことで、相手を傷つけずに命を救うことだけに全うした男を、優しい笑みと眩しいほどの真剣な眼差し、そこから感じる強い信念を見事に演じたアンドリューガーフィールドが素晴らしかったです。

 

個人的にはもっとスミティとの絆を深めるシーンや、仲間意識が目場ていくような場面が沢山あったら良かったのになぁとは思ったのですが、これはそういう映画じゃないよね。

 

クライマックスまでの流れは伏せての感想、いや説明かこれ、伏せて書きましたが、見て損はない作品でありましたので、是非ご鑑賞あれ。

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10