ボストン・ストロング/ダメな僕だから英雄になれた
ボストンマラソンでおきたテロ事件。
なぜ容疑者を特定し早期解決できたのかをテーマに警察官達の視点で描いた「パトリオット・デイ」。
マーク・ウォルバーグとピーター・バーグ監督の実録映画3作目ということもあって、とてもシリアスで緊張感溢れる作品でした。
そんなボストンマラソンで起きた悲劇の犠牲者が主人公の映画です。
主役はアイツです。
カメレオン俳優のアイツ。
モテ男のアイツ。
テイラー・スウィフトに名曲を作らせたアイツ(調べりゃわかるよw)。
みんなで呼ぼう!!
じぇじぇじぇ、ジェイク!!!
いやぁ僕は君の映画を待っていたんだよ。
正直この邦題を見てちょっとがっかりだったんだけど、先日観賞した「君の名前で僕を呼んで」の本編前の予告でこれが流れて、うかつにも泣いてしまったんです。
あれ!?これめっちゃ良い映画なんじゃね?
またジェイク名作生んだんじゃね?と。
ちょっと楽しみになってきました。
というわけで早速観賞してまいりましたよ!!
作品情報
2013年4月15日に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。
多くの死傷者を出した事件の被害者で、犯人の目撃者となり、テロリストに屈しない「ボストン ストロング」精神を象徴する存在として賞賛された一人の男、ジェフ・ボーマンにスポットをあてた物語。
両足を切断することになってしまった彼の、ダメダメな人生からの脱却、ヒーローとして讃えられながらも、実際の自分はそんな男ではないという人間としての未熟さ、ギャップに苦悩しながらも、仲間や恋人に支えられることで真のストロングな男へと立ち上がっていく、ダメ男の愛と再生のドラマです。
あらすじ
ボストンで暮らし、勤務先のコストコで今日も失敗ばかりしている27歳のジェフ・ボーマン(ジェイク・ギレンホール)は、ボストンマラソンチャリティランナーとして出場する元彼女エリン(タチアナ・マスラニー)の愛情を取り戻すため、出場するマラソン会場に手作りポスターを作って応援に駆け付けるよ、と告げる。
その熱意とは裏腹に、約束しても遅れる彼のいい加減さを十分経験しているエリンは半分聞き流していた。
マラソン当日。
ギリギリゴール地点に到着したジェフだったが、爆破テロが発生し、巻き込まれてしまったジェフは両足を失ったことを告げられる。
衝撃的な事実を受け入れられないジェフは、こんなときに限って約束を守ったことに自責の念を抱くエリンと再び寄り添うように。
ジェフは意識を取り戻すと、爆弾テロリストを特定するために警察に協力する。
それが元で犯人が特定され、ジェフはテロリストに屈指ない“ボストン ストロング”というスローガンを象徴する、希望と決意のヒーローとして世間の脚光を浴びていく。
しかし、息子を誇りに想うがあまり積極的にメディアに出させる母パティ(ミランダ・リチャードソン)によって、彼の中で様々なギャップが生まれていく。
世間ではヒーローとして見られているが、トイレもままならない、シャワーも浴びれない。
エリンが彼をサポートするため家に越してくるも言ってはいけない言葉で彼女を傷つけてしまう。
彼自身の再生への戦いはまだ続いていた。
監督
今作を手がけたのは、デヴィッド・ゴードン・グリーン。
彼の作品では唯一見てるのは「スモーキング・ハイ」くらい。
コメディ映画なんで、今回の映画はコメディ色多めなのかな?と思ったら、ヒューマンドラマを描くのも定評があるそうで、きっとバランスよく笑いと人間描写を描いてくれるんだと思います。
そんな監督の作品を簡単にご紹介。
監督作品は残念ながらほとんどが劇場未公開。
「George Washington(原題)」で長編映画デビューをし、同作でニューヨーク批評家協会賞新人監督賞。
2003年の「All the Real Girls(原題)」でサンダンス映画祭審査員特別賞を受賞し、グランプリにノミネートされ、少しずつ名を上げるようになっていきます。
その後モンキーも観賞済みの作品で、マリファナ中毒のダメ男2人組が、ひたすらハイな状態で殺人事件の犯人にされ逃避行を繰り広げる「スモーキング・ハイ」、
ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した作品で、対照的な2人の男が、人里離れた森の中で道路の舗装をしていく中で、ぶつかりながらも心を通わせていくハートウォーミングな異色コメディ「セルフィッシュ・サマー」、
選挙で負けたことから疫病神という不名誉なあだ名をつけられた女性選挙コンサルタントが、対立候補の相手とぶつかりながら少しずつ選挙で当選へと近づいていく「選挙の勝ち方教えます」などなど、がっつりからほろっとさせるあらゆるコメディ系作品を手がけています。
キャスト
この物語のダメな男、ジェフ・ボーマンを演じるのは、演技派俳優ジェイク・ギレンホール。
このブログでも彼の作品を何度取り扱っており、今更何を紹介するかって話ですw
ガリガリになってアメリカ版文春砲撃ったり、ムキムキになってどん底味わって復活したり、小説の主人公になって復讐したり、宇宙に行って変な生き物とバトったり、子供と家ぶっ壊したあと再生したりと、ここ最近はあらゆるインディペンデント映画で存在感を発揮しています。
自分のやりたい作品をもっと明確にしたかったのか、制作会社を立ち上げたようで、その第1作目が今回の作品だそうです。
他にもポール・ダノが初監督し、キャリー・マリガンと共演する「ワイルド・ライフ」などがあります。
彼の過去作に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ジェフの元カノ、エリン・ハーリー役に、TVドラマ「オーファン・ブラック/暴走遺伝子」、「君への誓い」、「黄金のアデーレ/名画の帰還」に出演した、カナダの女優タチアナ・マスラニー。
ジェフの母親、パティ役に、「愛しすぎて/詩人の妻」、「マレフィセント」のミランダ・リチャードソン。
ジェフの父ビッグ・ジェフ役に、「ショーシャンクの空に」のハドリー主任刑務官を演じたクランシー・ブラウンなどが演じます。
約束も守れないような男の、大きな事件によって変えられた人生。
周りの目とは裏腹についていけない弱い心が、何をきっかけにどう強くなっていくのか。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
自分と周囲のギャップに苦しみながらも殻を破れない男の奮闘記でした!
てか彼女以外全員クズだな!!
以下、核心に触れずネタバレします。
ジェフの苦しみエリンの悲しみ。
ボストンマラソンでのテロ事件によって、両足を失ったかわりに街の象徴となった主人公が、自分のダメさとは裏腹に周囲の視線や期待に戸惑い、嘆き、果ては自暴自棄に陥るも、献身的に支える彼女と一人の男の出会い、大きな転機によって、自分がどう在るべきかに気付き真の英雄として成長をしていくまでの過程を、ジェイクギレンホールの迫真の演技や事故、その後の情景をリアルに再現し、本当のボストンストロングの意味を突き付ける物語でした。
たまたま約束を守った結果、テロに遭い足を失い意識を失うも、犯人逮捕に尽力したことで、テロによって沈み切った街やそこで生きる市民たちにとっての光となり、奇跡の生還をした男として称賛されていく。
しかしいわゆるPTSDに冒され、加えて自身のポンコツ具合を自覚していることもあり、自分が置かれた状況とのギャップに苦しんでいく。
俺そんなにすごい奴じゃないから、仕事もミスばっかで彼女にも愛想つかされて、いつもつるんでる仲間とレッドソックスの試合観ながら酒を浴びてダラダラ過ごしてた方がラクだし、つーかリハビリとかマジめんどくさいし。
なんでこんな奴がみんなの前にでてフラッグ振ったり取材とか受けなきゃいけないわけ?
あの事件のせいでなんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!
もうほっといてくれよ!!
とは言ってないけど、そんな苦しみを心に抱えながら、家族や友人の期待に何とか応えていく。
ただ、重ねることによってどんどん自分を追い込んでしまう主人公。
しかし彼には救いがあった。
それが3回も破局したにもかわらず未練タラタラなエリンだった。
いつも約束すっぽかし、家から出ようとしないジェフに愛想をつかしてようやく別れたはずなのに、マラソンに応援に行くよ!ポスター掲げて!絶対行くから!という一方的な彼のアプローチに適当に返事したのが災いだったのか、そんなときに限って彼は約束を果たしゴール付近で待ち構え、事件に巻き込まれ、結果両足を失う事態にまでなってしまった。
私がきちんと断っていれば彼はあそこにいなかった。
前日に募金集めにバーに行かなければ、彼に出会っていなければ。
そんな自責の念に駆られていくうちに次第に彼への思いが再び蘇っていく。
そして彼が私を必要としている、また二人が仲良く過ごしていた時に戻れる最後のチャンスかもしれない。
ジェフの「越してくる?」という言葉につられ仕事も辞め、家を飛び出して彼を献身的に支えるエリン。
しかしそれが彼を甘やかすことになるとはこの時思いもしていなかった・・・。
エリン以外クズだらけ。
よく神様は乗り越える奴にだけ試練を与える、なんて言葉を耳にしますが、この物語は正にダメな奴だから英雄になれた、試練を乗り越え成長することができた映画だったと言えましょう。
しかしまぁよくこんな家族の中で成長できたなぁと。
てかこんな家族だからこいつ元々ダメな奴なんだよとも言いたくなるどうしようもない連中たちでしたね。
主人公ジェフはコストコで働いていますがミスばっかり。
ゴミを捨てに行ってる間、オーブンで調理していたお肉を焦がしてしまう。
もちろん後始末はお前がやるんだよなぁ?と思ったら、ダメダメ残業なんか!
ソックスの試合観れないじゃん!
今2連敗なんだよ!
俺がそれ見れなかったらおいしいビール飲めないじゃん!
はぁ?
しかもそれを了承して別のおばちゃんを残して後始末よろしくとお願いする上司。
はぁ?
さすがにおばちゃんはキレるよね?
しょうがないね!貸しだよ!
はぁ?
なんだこの甘えた環境は!!
お前はバイトか!
いったい彼はコストコでどんな立場なのか。
彼がいることで職場がいつも和やかになるような存在なのか。
それとも、バーでみんなが話してるように上司はゲイなのか?
こんなところにいては、いつまでたってもガキんちょですよ。
しかも彼が両足を失ったことで会社からしっかり保険はつくし、家族にまでケアを保証する手厚い扱い。
しかも!彼をクビになんかしませんよ、これからも働いてもらいますって。
・・・コストコで働こうかな。
そして家族。
自分の息子が両足失ったんですよ。
6週間も入院してるんですよ。
それだけ時間があったら家の環境をバリアフリーにするくらいの余裕あったでしょう!
なんだこの劣悪な環境は!!
エレベーターついてない。
部屋のそこら中に段差がある。
バスルームは改築してない。
トイレットペーパー届かない位置のまま。
部屋で唸ってるのに、鍵締めてるからってシコってるのよきっと、ってまず一番に不安になるだろ普通。
それでも家族か!
まだまだありますよ。
自分の息子を自慢したいのはわかる。
手塩にかけて育てたんでしょうきっと。
旦那も出てったので息子が出ていけば私一人になっちゃうところを、息子は私のそばで暮らしてくれている、なんて出来のいい息子なんでしょう。
こんなかわいい私の息子がこんな体になってしまってかわいそう。
でも街の人たちを見て!
みんなが私の息子を称えてくれてる!
その息子を育てたのは私!
ほらもっと褒めて!
息子を称えて!
そう!みんなが称えている息子は私が育てたのよ!!
と、息子の病状や精神的ダメージなど全く考えず、とにかくメディア露出をしまくることで、まるで自分がスターになったような気分。
夜は一人酔っ払いロクな看病もせず、夜な夜なジェフの部屋の前で、遠くはるばる寄せられた手紙を読んでは、すてきやぁ~ん、コロラドすてきやぁ~ん、今度訪問してお礼に行きましょうジェフ、ってお前旅行に行きたいだけじゃん!!
親せきや友人もそうです。
こんな状態にもかかわらずバーでひたすら酒を飲み、彼を事件以前と同様に接する友人。
確かに変に気遣うことで彼との関係が変わってしまうことを恐れたのかもしれない。
だからいつものように、家に訪れソックス戦を見たり、ホッケーの試合で興奮したりしながら酒を浴び宴を楽しむことで、彼は安らぐのではないか、と。
否!!!
彼が今どれだけ精神的にやられているかをお前らは考えているのか、友人の事を思ってこそ友人だろうが!
馬鹿か!
ただ車いす押すだけが介護じゃねえんだよ!
送り迎えしてやるのが介護じゃねえんだよ!
結果なんだ!
変な奴に吹っかけられてケンカして、挙句の果てには悪ノリしてジェフに車運転させて警察の厄介になって。
お前免停手前なんじゃねえのか。
何考えてるんだ!
劇中まともなのはエリンだけです。
もちろん自責の念が強いのもありますが、それ以前に愛した男。
周りには一番ケアしなきゃいけない人がいながら自分の事ばかり考えているろくでもない家族ばかり。
このままでは本当に彼がダメになってしまう。
だから家族の反対を押し切って実家を出て、仕事も辞め、彼のリハビリについていったり、ホッケーの試合でリンクの上でフラッグを振るのだってそばについてあげたり、下の世話や汚物処理も全て彼のためにやってあげた。
彼女だけが彼のためにそばにいるのです。
それなのに自分と周囲の温度差にやられ自暴自棄になっていくジェフ。
彼女の存在もウザくなっていく。
てか、エリンよ。この男のどこがいいのだ?
約束守らないんだろ?
仕事もロクにできないんだろ?
悪友と酒ばっか飲んで野球しか頭にないんだろ?
あ、あれかジェフは浮気しないのか。そこ?
いやここはジェフがエリンを愛しているからなんだよな。
愛されてるから彼のために頑張ったんだよな。
寝不足になってもストレスマックスになっても。
でも酒でやらかして、リハビリも適当で薬も飲まねえで、こんな仕打ちされたら我慢ならないよな。
離れたほうがいいよ。
でも離れられない理由が出来ちゃうんだなぁ。
ここでジェフは男にならなきゃいけないのに、
無理だよ!
僕には無理だ!
そんなのなれっこないよ!
考えられないよ!
いざという時、男は決断が必要なのです。
それが出来なければ相手は離れていくのです。
果たしてジェフは男になれるのか。
苦しみを乗り越え本当の意味でのボストンストロングになれるのか。
ぜひご自身で確かめてみてはいかがでしょうか。
演技面とダメな所。
ジェイクはいつも通り迫真の演技。
手術後のボロボロな姿、包帯を交換するときのとてつもない絶叫、徐々に精神を病んでいくやせこけっぷり、足がないという状態をリアルな動作で演じる姿。
そしてエリンに捨てられて号泣するシーンや、エレベーターの中でPTSDが発動し狂う様。どれもさすがです。
地味にエリン役のタチアナマスラニーもいい。
決してあか抜けたお顔立ちの女優さんには見えません。
ロサンゼルス生まれニューヨーク育ちのシティチックな感じゃない。
どこか地方の出身的な素朴な感じが今回ボストンという場所もあってハマっていたように思えます。
派手さもないけど、ジェフを見つめる一つ一つの表情に悲哀と憂いが混じっていて、終盤では疲労の色を隠して接する姿はうまかったなぁと。
一応ですね、ジェフとエリンに焦点をあてているために、それ以外の家族が何も変わってないというのがこの映画のダメな部分でしょうか。
一番改心しなきゃいけないのはこいつらだろうと思えて仕方ありません。
特に母ちゃんですよ。お前は子離れしろ。
酒ばっか飲んで現実逃避してんじゃねえ。
息子が立ち直ったんだから見習え。
そこまで描いてくれないとスッキリしません。
後はコストコの上司ももったいない使い方。
彼すごくいい役なのにその後活躍しない。
てか序盤でいいセリフ言ってしまったが故に、他のシーンでも出てるけど目立ってない。
本当ならなぜそこまでしてジェフをかばうのか。
こいつ、こんだけダメなんですけど、実はスゲーいい奴なんですってのを終盤持ってくることでジェフの内面の美しい部分優しい部分を見せることができてより良いラストになると思ったんですけどね。
最後に
始球式の練習時、ジェフは初めて自分の気持ちを吐露します。
初めてちゃんと向き合ってイベントに出席するジェフの姿勢。
僕がこれに出ることで誰かを勇気づけられることができたら。
でも、僕はこんな体。
だからジェフはこう言います、みんなどうか力を貸してくれと。
ある出来事によって自分という存在が、いろんな人たちを勇気づけていたか気づかされるのです。
それまで自分の事しか見えていなかった。
どうして僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ、なんでみんなそんな目で僕を見るんだ、と。
気づいた彼は必至で立ち上がろうと努力してきます。
精神的にも肉体的にも。
始球式後、傷ついた人たちと悲しみを共有し、僕も頑張るから君も頑張れと声をかける姿は、この物語で一番感動的です。
誰かのために考えることができたのです。
それこそボストンストロングの意味なのではないでしょうか。
とキレイにまとめられたかなw
正直そこまで満足はしてません。
だって予告編で泣いちまったけど本編観たらあまりのクズっぷりに同情できなかったんだもんw
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10