サンドラの週末

久々に有楽町での映画。でも、これ見てさっさと家に帰りますけども。
カンヌ映画祭の常連ダルデンヌ兄弟の新作にマリオン・コティヤール!
見てきました。
ソーラーパネル工場で働くサンドラ(マリオン・コティアール)は飲食店で働く夫マニュと、二人の小さな子どもとともに暮らしている。
体調を崩し休職していたが、ようやく体調も戻り復職した矢先、金曜日に会社から突然解雇を命じられる。
会社としても余裕がなくサンドラが休職している間残りの16人で仕事が回せた以上17人雇うことはできず、尚且つ社員たちにボーナスを支給するには1人解雇する必要があると迫られる。
しかし、同僚の提案で週明けの月曜日に16人による投票を行い、ボーナスを諦めサンドラを残す票が過半数を獲得できれば、解雇を免れることができることに。
それぞれの同僚が色んな事情を抱える中、サンドラを取るか、ボーナスを取るかというシビアな選択を同僚たちはつきつけられ、
また、サンドラも仕事先が少ない中、せっかくありついた仕事から離れるわけもいかず、ましてや、マイホームを手に入れ夫と共に働いていこうと決意した矢先の出来事。
サンドラは家族に支えられながら、同僚を説得して回り始める。
彼女の長い週末が幕を開ける。

監督はカンヌ映画祭で2度のパルムドールを受賞した巨匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟。

ある子供やロルナの祈りなど有名な作品がありますが、実は未見で(^◇^;)
ただ、少年と自転車は見てて少年の葛藤に苛立ちと共感が織り混ざった感情が芽生えたのを覚えてます。
主演は、フランスが生んだ美女!マリオン・コティヤール!

今作で今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートしましたね。
彼女のフランス映画はあまり見たことがないんですが、インセプションやダークナイトライジング、ミッドナイトインパリなどのごく最近のハリウッド映画でお目にかかります。
君と歩く世界では、足を失ったイルカの調教師を熱演してたのが記憶に新しいです。てか、40歳か!キレイすぎだろ!
てなわけで、そんな大物監督と絶世の美女のコンビで描いたこの映画の感想は、
シンプル!且つ深い!なかなかの良作!
社会的、経済的に弱い人物に焦点を当てた今作。しかも、主人公は鬱を抱えて復職できるといえ、未だ薬に頼っていたり、一挙手一投足に弱い部分が表面化するところを見ると、決して完治してるようには見えない。
それでも、突きつけられた現実に味方になってくれる同僚か、家族が、夫が、背中を押し、彼女を送り出し同僚たちに私に投票して、と願い出る。

この手の題材って、案外商業的にエンターテインメントととして作ったらすごくお客さん入りそうだし自分も期待して見にいこうとする。
見ながら思ったのは、ライアーゲームだなーこれ、と。
サンドラが戸田恵梨香扮する神崎ナオで、敵が主任みたいな構図。
誠実さと誠意でみんなが助かる方法を見出そうと奮闘するナオなんだけど、敵が周りのプレイヤーを脅し、安易な道へと誘導する。
そんなのを思い出しました。
でも、そんなエンターテインメントにしなくても、無駄なものを削ぎ落とし、音楽も演出もなくサンドラにほとんどカメラを向けることで、彼女の弱さや喜び、辛さなどの葛藤がにじみ出ることで素晴らしい作品に仕上がってます。
あとは、映像の美しさだよねー。
木漏れ日がさす公園、カーテンで暗がりな寝室、夜のトンネルを走る車、どこを切り取ってもアートでした。もちろん、風景や街並みは違えど、光の加減が日本の映画とは比べものにならないほど違う。

サンドラの立場になって見てみると、クビになったら生活は火の車、仮に復職できたとしても、その後の職場の空気に敏感になり、精神面もきつい。しかも、同僚たちはボーナスカットされるんだからたまったもんじゃない。
と、分かりきった展開が待っているのだから一人一人に交渉したところで意味がない!
と、投げやりになるのもわかります。
でも、誠意をもって話してみると実は主任から脅されていて入れ知恵を吹き込まれてて、中には最初の投票でボーナスなね投票していたのが恥ずかしいと後悔していた人もいて、話に来てくれた彼女にむしろ救われた同僚もいました。
そう、同僚も決して欲にまみれた胸くそ悪いような人物はいない。(あ、1人くらいいたか)
みんなそれぞれ事情があり、影で副職してる人や、学費に当てたり、リフォーム代にしたり、ギリギリでやりくりしている。彼らにも彼らなりの正義がある。
だから、選択が出てきたことに問題があってどちらを選んでも仕方がないのだ。
非常に自分がこの状況に置かれたら考えるよなー。
私も弱者といえば弱者だしww

でも、何がいいって結果よりもそこに行くまでの過程、行動が大事で、それに気づいたサンドラはこの先の希望に向かって鬱なんか気にせず前へ向かって歩く気持ちを手に入れたことが素晴らしい。
ラストのサンドラの足音が軽快に、それでいて力強く聞こえた気がしました。
もう私の敬愛するMr.Childrenの曲を書いてサンドラに送りたいと思いますw
夢みてた未来は それほど離れちゃいない
また一歩 次の一歩 足音を踏みならせ
例えば雨雲が目の前をおおったって
また日差しを探して歩き出そう
時には灯りのない孤独な夜が来たって
この足音を聞いてる
誰かがきっといる
満足度 ☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10