グッバイ、サマー
少年時代の夏休み。どう過ごすかによって成長の仕方が変わってくる大事な時期なんじゃないかと。
今回の映画はそんな「スタンド・バイ・ミー」的な作品なんだろうと思い、「君の名は。」とは違った青春物語を堪能してまいりました。
あらすじ
14歳。子供でもない、大人でもない狭間の時期。画家を目指すダニエル(アンジュ・ダルジャン)は沢山の悩みを抱えていた。
中学生になっても女の子のような容姿で、クラスメイトからミクロ(チビ)と呼ばれて馬鹿にされており、恋するローラ(ディアーヌ・ベニエ)にはまったく相手にされていない。おまけに母親(オドレイ・トトゥ)は過干渉で、兄貴は暴力的なパンク野郎だ。誰も本当の自分を理解してくれる人はいない……。
そんなある日、ダニエルのクラスに変わり者の転校生がやってくる。名前はテオ(テオフィル・バケ)。目立ちたがり屋で、自分で改造した奇妙な自転車を乗り回し、家の稼業のせいで身体からガソリンの匂いを漂わせている。周囲から浮いた存在のダニエルとテオは意気投合し、やがて親友同士になっていく。学校や家族、そして仲間達、みんなが二人を枠にはめて管理しようとしてくる。息苦しくて、うんざりするような毎日から脱出するため、彼らは“ある計画”を考え付く。それは、スクラップを集めて〝夢の車”を作り、夏休みに旅に出ることだった―。
監督・キャスト
監督はミシェル・ゴンドリー。
MVやCMなどを手がけてきたフランス人だけあって、作品性は斬新でアートでポップ、それだけでなく遊び心を忘れないという精神で作品を作っている気がします。今作は監督の自伝的青春ストーリーと銘打ってるだけあって彼が少年時代どんなすごし方をしたのかが垣間見れると思います。
そんな監督がどんな作品を手がけてきたかというと、宇宙一毛深い女とサルだと思っている男、テーブルマナーに異常な関心を示す博士が織り成す奇天烈風刺コメディ「ヒューマンネイチュア」で監督デビュー。
その後も監督の代表作となった2作目で、恋愛の思い出を捨てた女と捨て切れなかった男が当時の記憶をたどっていく切ないラブストーリー「エターナル・サンシャイン」でアカデミー賞脚本賞を受賞、他にもハリウッド映画をホームビデオで勝手にリメイクする男たちを監督お得意の遊び心で埋め尽くしたハートウォーミングコメディ「僕らのミライへ逆回転」、原作の小説同様に監督の想像力が溢れた、資産家と病に冒された妻の切なくも美しいラブストーリー「ムード・インディゴ~うたかたの日々~」などがあります。
全作見ているわけではないのですが、中でもムードインディゴは今は無きシネマライズで一人しんみりしながら見た記憶があります。せつねぇんだこれが。
おそらく誰も推さないと思うので・・・。
新聞社の創業者の息子ブリットは、父が死んでしまったことで社長の座に就く。父の運転手カトーは天才発明家として父と秘密裏に数々のハイテクマシンを発明していた。それを知ったブリットは正義に目覚め、“グリーン・ホーネット”(緑の蜂)として父の意思を告ぎ街に蔓延る悪を一掃することを決意するのだが・・・。
ブルース・リーが出演していたアメリカのTVドラマの映画化ということでアメリカでは注目度は高かったようですが、日本ではあまり話題にならなかったなぁ。
アメコミ好きな私としてはこれをゴンドリーでやる事にどんな化学反応を起こすかワクワクしていました。どちらかというと、セスローゲンがダメダメなバカ社長っぷりをコメディセンス全開で笑わせる能天気アクションですが、要所要所で監督がMVで蓄えてきたアイディアを駆使したアクションや演出が見て取れます。エンドロールも遊び心がきいてますし。
ちなみにブリットはアメコミ三大金持ちの一人だそうですw後は誰かって?トニーとブルースに決まってんだろが!
主役のダニエル演じるアンジュ・ダルジャンとテオ役のテオフィル・バケは今回が演技初挑戦とのこと。
監督曰く、イメージしていたキャラにぴったりだし魅力的だと語っています。
テオ役のテオフィル・バケは監督の好きな作品「素晴らしい風船旅行」に出演していた俳優モーリス・バケのお孫さんだそうです。どっちも聞いたこと無い・・・。
今後も俳優行を続けていくのかはわかりませんが、この二人がどんな冒険をしてくれるのか楽しみです。
というわけで、少年から大人へと変わり始める多感な年の夏休み、2人はどんな成長を遂げるのか。そして「グッバイ、サマー」の意味とは?
ここから鑑賞後の感想です!!!
監督の原点が覗ける、思春期真っ盛りな2人のオフロードムービー !
以下、核心に触れずネタバレします。
監督の色を極力抑えた彼らしいフランス映画
まずは率直な感想を。
ミシェルゴンドリーといえばおもちゃ箱の中のおもちゃをひっくり返したかのようなポップさから生まれる奇抜な発想に多少の戸惑いを感じることがあったけれど、今作は過去作から比べると比較的見やすいストーリーだったかのように思えます。
学校のクラスメイトや家族から中々理解してもらえないはみだし者の2人が、息苦しい毎日から脱出するかのような旅は子供じみた計画性のなさと勢いに任せた、まさしくスタンドバイミーを彷彿とさせる青春映画だったように思えます。
映像の色合いも序盤の青を基調とした屋内や衣服と青みがかった色彩からダニエルがどれだけ空虚な毎日を送っていたのかが伺えるし、その後のフランスの風景と木々が生い茂った田舎町が増えることで緑が多く画面を埋めていく様が、ダニエルの心境の変化を表しているように感じました。
印象的だったのは、2人で作り上げた車の車両申請が通らず、計画を諦めた時の会話。
「僕らは30年後に再会してこの時を話すんだ。あの時諦めたよなって。」
この後打開策を考え見出すわけですが、青春は後悔と恥から生まれるものだけど彼らは既にそれをわかっていたからこそ諦めなかったし、その真っ只中にいたから先のことなど見据えず計画を進め、あの時諦めなくて良かったよなって言える日を想像していたのかな、と思うともう十分大人だなぁと。
そんなまだあどけなさと可愛さが残る少年から大人への階段を少しずつ登っていく彼らを応援したくなる作品だったのではないでしょうか。
個性ってなんだ?
ダニエルはとにかく悩んでいました。みんなと違う特別な存在でいたいと願うも、みんなと同じ考えを持っていたい、でもそうなった時にイライラするという超思春期な少年。自分もそんな時期があったと思います。
そんな時に誰の目も気にせず毎日を過ごすテオと会うことで自らの存在意義を確立しようとしていきます。
個性って人と違うのが個性なのか?外見が違うのが個性なのか?裏テーマとしての問題提起だったように思えます。
ダニエルにとってテオは理想の1つとして描かれていますが、そのテオ自身がオレみたいになる必要はないぜと言ってる気がしました。
だから個性って自身のアイデンティティの確立であって他人と同じ意見だろうが違う意見だろうが流されずブレないことなんたなぁとテオは言っているのかなと。
そんな所もチラついた作品だったと思います。
クスりと笑えるユーモア。
ダニエルくん、だいぶこじらせてます。まさか女性の裸体を自ら描いて自慰行為をするとは思いませんでしたwしかも何枚も描いてベッドの下に隠しておく➡︎それを母親に見つかる➡︎それを理解される➡︎ムカつく。いやいやかわいそうすぎるわww
こんな思春期あるあるをちょこちょこ交えながら描くユーモアも今作の魅力のひとつだったと思います。
他にも体を揺らさないと眠りにつけないといった子供じみた行為だったり、意中の女の子と踊ろうと誘うも断られる描写は哀しいながらもホッコリするシーンでした。
細かい部分でたくさんユーモアを取り入れているので見逃さないでいただきたい所だと思います。
監督の過去作も垣間見れる。
今回の作品は自伝的青春ストーリーということもあって監督がこれまで作ってきた作品の断片が影を潜めていたように思えます。
一番わかりやすいのは「僕らのミライへ逆回転」ではないでしょうか。
今作でガラクタを集めて自作の車を作り上げるわけですが、この部分は正に僕らのミライへ逆回転で取り入れられてる、あらゆる映画のリメイクを作っていく過程でダンボールやガラクタを集めている部分を意識していると思われます。
他にも、金の腕の女という話をテオがするシーンがありますが、娘を病から助けるために金をつぎ込む男が無一文になってしまうという部分が正にムードインディゴと同じ内容でした。
他にも、現実なのか夢なのかよくわからない描写は、「恋愛睡眠のすすめ」だったり、好きな女の子のことを諦めきれない部分は「エターナルサンシャイン」だったりと今までの監督作品がチラホラ見られる作品だったのではないでしょうか。
えーと無理やり入れるのであれば、男2人で車に乗って何かするっていうのは「グリーンホーネット」だな、とww
強引すぎるかww
えー、只今酔っ払いながらの感想を書いているため、いつも以上に駄文となっていることをお許し下さいw
だったらあとで書けって?まあまあ多めにみてくださいな。今日は映画のプロデュースをされてる方と今後の日本映画についてあれこれ語ってきたのです。すげ〜楽しかったのです。身になったのです。縁て大事だなあ。
どうでもいい話ですいません、とにかく監督作品をひとつでも好きな方は彼の原点が覗けるものになっているし、エキセントリックさは物足りないものの非常に見やすい作品であることは間違いないと思います。
是非2人の行く末を見守って欲しいです。