エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
またもや青春家画の良作の予感がする映画の登場です。
カリコレ2016のオープニング作品として話題を呼んだリチャード・リンクレイター監督の最新作。
新宿武蔵野館のリニューアルオープン1発目という記念すべき映画!
早速見に行ってまいりました!
あらすじ
野球推薦で入学することになった新入生のジェイク(ブレイク・ジェナー)は期待と不安を抱き、大人への一歩を不器用に踏み出そうとしていた。そう、今日は野球部の入寮の日だ。
お気に入りのレコードを抱え、ジェイクが野球部の寮に着くと、4年生のマクレイノルズ(タイラー・ホークリン)とルームメイトのローパー(ライアン・グスマン)から、好意的とはいえない歓迎を受ける。
高校時代、イケイケのスター選手だったジェイクに対する先輩方の洗礼だった。しかも寮生活をしている先輩方は野球エリートとは思えない風変わりな奴ばかり。マリファナ愛好者で謎めいていて、「コスモス」の熱狂的ファンのウィロビー(ワイアット・ラッセル)、ノーラン・ライアンの再来を自認する妄想癖の塊、ナイルズ(ジャストン・ストリート)、どうしようもないギャンブル狂のネズビット(オースティン・アメリオ)、噛みタバコ好きで気さくな男だが、寮生から嫌みの“ビューター・パーキンス”という田舎者っぽいあだ名を付けられたビリー(ウィル・ブリテン)。カリスマ性はあるがどこか陰りのある早口のフィネガン(グレン・パウエル)など一筋縄ではいかない兵揃いだ。
面倒見の良いフィネガンがこの門限のない素晴らしき世界のツアーガイド役を買って出る。大学を巡るツアーは、当然のように女子寮に行くことから始まる。女の子たちの品定めだ。車で通りかかった2人組の女の子に早速フィネガンがアタック。あえなくフィネガンの強引なナンパは拒否られるが、ジェイクは同じ新入生で演劇専攻のビバリー(ゾーイ・ドゥイッチ)に一目惚れ。彼女もジェイクには好意的だ。先輩の手前、控えめにしていたのが功を奏したのだ。一通りツアーを終えて、寮に戻ったジェイク。しかし、長い入寮初日はまだ終わらない。今度は最高の夜に繰り出すことに。チームのメンバーはタイトなジーンズにポリエステルのシャツを着こんで地元のディスコで夜通しのナイトフィーバー!続いて街で一番のカントリー・バー(ホンキートンク・バー)でカウボーイハット(ステットソン帽)をかぶり、ラインダンスで「コットンアイジョー」を踊りまくった。そして週末にはパンクのライブで初めてのモッシュを体験。自主練の後も、もちろんチームメイトたちとバカ騒ぎ。ジェイクは今までに感じたことのない自由と希望を抱きながら大人の扉を開け、青春を謳歌していた。それは決して長くは続かないけど、人生最高の時の幕開けだった。(HPより抜粋)
監督・キャスト
監督はインディペンデント映画の申し子、リチャード・リンクレイター。
私がレンタルビデオ屋時代の頃は、彼の作品といったら「スクール・オブ・ロック」が主流だったように思えますが、彼の過去作と比べると、これだけ浮いてたんだなぁっていうのが後になって知ったというか。ビフォア3部作も知らなければ、「スキャナー・ダークリー」のようなアニメーションも手掛けてるなんて全く知らなかった。
だから「6才のボクが、大人になるまで。」を見たときに、なんてありふれた日々を撮るのがうまいんだろう、と。だから今回もまた前作で描いたように誰もがうなずける青春の日々を描いてくれるんだろうと期待しています。
そんな彼は、長編監督2作目の「Slacker」がサンダンス映画祭で絶賛され注目を浴びます。今作にも通じる青春映画で、新生活を迎えた高校生が自由奔放に青春を謳歌するめまぐるしい一夜の物語を描いた「バッド・チューニング」、長距離列車の中で出会った学生の男女二人が意気投合し、ウィーンの街を明け方まで歩きまわるラブストーリー「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」をなど立て続けに手掛け、アメリカインディペンデント界を代表する存在になります。
その後もコメディ俳優のジャック・ブラックとタッグを組んだコメディ映画で、ひょんなことから学校の教師になったロックミュージシャンが、徹底的に管理された教育方針の生徒たちにロックの精神を注入させていく「スクール・オブ・ロック」や、「ビフォア・サンライズ」の2人の9年後を描いた続編で、偶然再び出会った2人が今度はパリの街を歩きながら思い出を語り合う「ビフォア・サンセット」、SF作家フィリップ・K・ディックの作品を、デジタル・ペインティング手法を用いて描いた実験的SFサスペンス「スキャナー・ダークリー」、ビフォア3部作の完結編としてパリの出会いから9年後を描いた続編で、最初の出会いから18年の月日を重ねながら、ギリシャの風景をバックに赤裸々に描かれた「ビフォア・ミッドナイト」があります。
そして一昨年のモンキー的2014年映画ベストテンにもランクインしたほどよかった作品「6才のボクが、大人になるまで。」。
主要キャストがそのまま12年間成長しながら役を演じるというめちゃくちゃ根気のいる作品だったことにまず驚きを感じ、どんな些細な日常も切り取ることのできない日々を惜しみなく映すことで、過去の自分が大人になっていくまでの日々を思い出させてくれる青春映画だと思います。
中身はもちろんのこと、その長期にわたる撮影ということも手伝って数々の賞で受賞し、彼の新しい代表作として今後も語り継がれることでしょう。
その青春の日々を数々の音楽が、時代を感じさせてくれることもこの映画の楽しみの一つで、個人的にはこの映画の代表的な1曲で、family of the yearの「HERO]は当時ヘビロテしていたくらい大好きな1曲として今も残っています。
今作のキャストはホント誰も知らなくて・・・。とりあえず主要キャストだけご紹介を。
主役である野球推薦で入学することになった新入生のジェイクを演じるのはブレイク・ジェナー。
TVドラマ「gree」に出演できるリアリティ番組で優勝し、シーズン5からレギュラー出演、そしてなんとその共演者と結婚するという、つい最近までグリー漬けだったというお方。今後期待の若手俳優さんのようです。
こちらにも出演してます。
ジェイクが一目ぼれする同じ新入生で演劇専攻のビバリーを演じるのはゾーイ・ドゥイッチ。
この方は父が映画監督、母親が女優という映画一家で育ったようで、ディズニーチャンネルの番組で注目を浴びた後、数々のTVドラマでレギュラー出演しながらキャリアを積んでいるようです。
ジェイクの先輩で、カリスマ性はあるがどこか陰りのある早口のフィネガンを演じるのはグレン・パウエル。
映画作品としては「ダークナイト・ライジング」や「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」に出演していたようですが、おそらく端役での出演でしょう。だって覚えてねぇもんこんなやつ。とりあえずお見知りおきをってところですかね。
こちらもジェイクと同じ寮に住むマリファナ愛好者で謎めいているウィロビーを演じるワイアット・ラッセル。
ようやくわかりそうなのが来た!なんと名優カート・ラッセルの息子さんだそうです。どことなく面影がありますね。どこが面影感じるかって?わかんねぇよ。
元々はアイスホッケーの選手として活躍していたそうですが、俳優行に転職。「22ジャンプストリート」に出演していたようです。これまたどこにいたのかわからん!!
他にもまだまだ出演者が出ますが、有名な方というかキャリアがある方がほぼ見当たらないため省略っ!!!
総勢13人キャストによる大学生活でのハメを外した青春の日々、監督の青春3部作の名にふさわしい1ページとなるのか?そしてここから「バッド・チューニング」の時のようにハリウッドスターが誕生するのか?そういう意味でも今の内チェックできる、若手中心の映画!
それでは鑑賞後の感想です!!!
おバカな青春爆発!やりたいことは全部やれ!
以下、核心に触れずネタバレします。
なんかもう憧れに近い感じ。
まずは率直な感想を。
大学生活でハメを外しまくっていた人たちにとっては非常に共感できる作品だったんじゃないでしょうか。監督自身、野球推薦で大学行った過去もあるってことで、自身の過去をそのまま映像にしたんだろなぁってのがすごく伝わりました。
その反面自分に置き換えてみると、高校卒業後翌日から新聞配達しながら奨学金を払って学校行って身分としては、そんなハメを外しまくった日々を謳歌してなかった故に共感はできなかったですね。
どちらかというと物語なようなバカ騒ぎ?キャンパスライフ?そんなの送らずに専門学校中退しちゃったもんだから、観ていて羨ましいなぁという憧れに近い感じで観ていた気がします。
青春映画ってどれだけ過去の自分を投影できるかってのが評価の基準って思ってる節があるから、「シングストリート」とか「幕が上がる」とか「桐島、部活やめるってよ」みたいな方が個人的にはグッときて。
そういう見方で観てしまった本作は、共感できたか、投影できたかで言えば満足には至らなかった、というのが本音です。
とはいえ映画として楽しめたことに変わりなく、たくさん笑うところもあったし、各々の登場人物に見せ場もあり、ユニークで個性的な面々がキャラ立ちしていて、その中でいいフレーズもサラッと入れちゃう脚本力も素晴らしかったです。
当時通ってた高校がたまたま大学進学率が上がった関係で、しつこいくらい大学に行け行けうるさくて。
担任の先生が「大学はなぁ、人生で一番遊べるんだ。だから、行かない理由がないだろ?お前ら遊びたくてしょうがないんだろ。だったら今頑張れ」って腐る程生徒に話していたのを思い出しました。
確かにこの映画観たら先生の言う通りだって思うわ。
でも彼らはあくまで野球選手としてその先の将来も考えていて、周りには誘惑だらけなんだけど、そんなのにうつつを抜かしたら何者にもなれねえぞ!
とにかく高校レベルの野球じゃここでは通用しない、大学野球なめんな!必死に俺らに追いつけっていう先輩の助言が超正論で。
終わらない祭りはないんだから、祭りの間は躊躇しねえでやり残したことないようにやれよ!って言われたような気がした作品でした。
こいつらホントに野球選手?
主人公のジェイクが入寮してから新学期が始まるまでの3日間という短い時間の中で、個性的すぎる大学野球部員がとことん飲んで暴れてナンパして振られて飲んで暴れてナンパしてヤッて、の乱痴気騒ぎをひたすら見せられるという、ドラマ性もなければ抑揚もない、日常を切り取るのがうまい監督の「らしさ」が出ていた作品だったように思えます。
地元から飛び出し、親の監視下から離れた時の「全部俺次第!」なフリーダムなあの感じを、時代背景も流行った音楽も細かく再現している映像を見て、ドンピシャの世代の人は、懐かしさとあの頃に戻りたいなんて胸を焦がしたんじゃないでしょうか。
そんなたった3日間という夢のような時間に新学期までの残り時間=現実へ戻る時間をちょこちょこ表記していたのも面白い演出でした。
こんだけやらかしてまだあと2日あんじゃん!
あと1日あんじゃん!
うわぁもう当日の朝ぢゃ〜ん!
なんて1人カウントしながら観てしまいました。
かなり濃厚な3日間だったなぁ。
そして個性的な登場人物も良かった。
パッと見、伊藤英明にしか見えないジェイクは先輩たちともうまくつるむ中で存在感を放ちちゃっかりガールフレンドまで作っちゃうし、
とにかく知的っぽく語りながらもチャラい、メジャーリーガーにはならないなんて現実的で奨学金で遊び倒す気マンマンのフィネガン、
ハッパばかり吸いながらも、哲学的な言葉で信頼を寄せる編入生のウィロビーがまさかの〇〇だったとか、
キャプテンでピッチャーが嫌いな負けず嫌いのマクレイノルズ、
自称時速153キロを投げる男ネイルズの怒り具合も笑わずにはいられなかったし、
ちょっとキングコング梶原っぽいギャンブル好きのネズビット、
新入生集団のプラマー、ピューター、ブラムリーも先輩たちからの洗礼を喰らいながらも大学生活を謳歌してたし、
とにかく全然こいつら大学生に見えねえしホントに野球選手なのか!?と。
でも、いざ練習となると本格的に投げては打つからさすが強豪校だなと。
やるときゃやるのねあなたたちw
当時を彩った音楽もステキ。
冒頭からいきなりデデデデ デッデッ♩デッデッデデデデ♩ってマイシャローナキターーーーっ!ですよ。
今じゃ散々アメトーークで聞いてますけど、当時はやっぱり流行ったんだろうなぁ。
と、いきなりでしたが、この映画は「6才のボク〜」の時と同様にその時代を彩った、または監督が当時聞いていた音楽がひっきりなしに流れていました。
ピーンボールやインベーダーゲームで遊んでいる彼らの後ろで流れていたのはブロンディの名曲「ハートオブグラス」。
ディスコ調のリズムに電子音が加わってノリのいい歌です。
車かなんかのCMで最近流れてたような。
入寮したてのジェイクを連れ去り車で夜のパーティーを催すため女の子たちをナンパするシーンで、彼らが車中で歌うのは、シュガーヒルギャングの「ラッパーズディライト」。
当時はディスコソングからヒップホップへと移り変わる時期だったこともあり、この曲も当時を象徴する曲だったのではないでしょうか。
ビバリーに招かれた演劇科のパーティーで流れたのはMの「ポップミュージック」。
独特な電子ロックでメロディやフレーズは一度聞いたら離れません。
トーキングアバウト!ポップミュージック!ってな具合で。因みにこのフレーズは確実にトライセラトップスが「Rock music」でパクってますw
洗面所でディスコへ繰り出す準備をしながらコロンを回して塗るシーンで流れるのはフォリナーというイギリス人とアメリカ人で構成されたバンドの「アージェント」という曲。
ロックでありながらどこか都会の匂いを感じさせる曲です。
クイーンの「地獄へ道づれ」も流れていました。
ベースラインのリフが特徴的なクイーンぽくないファンクの匂いを感じる一曲です。「アイアンマン2」でトニーとローディがガチ喧嘩するときもこの曲が流れていましたね。
他にも初めてのディスコで流れたのはSOSバンドの「テイクユアタイム」、映画のタイトルはヴァンヘイレンの「エブリバディウォンツサム」から取っているし、どこで流れていたかは忘れてしまいましたが、パティスミスやチープトリック、ディーヴォ、ピンクフロイド(これはセリフだけだったかも)と、当時のポップ、ロック、ファンク、ディスコ、ヒップホップなどのアメリカ音楽がぎっしり詰まっていました。
あの頃を振り返っても、もうそこには戻れない。
だから青春であってステイゴールドであって。それがあったからこその現在ということを再認識させてくれる映画だったのではないでしょうか。
かといってそんなかたっ苦しく考えずに、この野球バカたちの酒に女にハッパに踊りに、あれも欲しい!これも欲しい!もっとしたい!もっともっとしたい〜!を夜通しやり通す彼らに大いに笑って見ることができる映画です。
というわけで以上!あざっした!