王様のためのホログラム
トム・ハンクス主演というだけで、一定の評価を下してしまうほど彼の作品は大好き。
だから、本作のような少々微妙なにおいのする作品も、ついつい見に行ってしまうのであります。
感想は作品情報の後、ということでもったいぶっておきますw
にしてもトムハンクスさんよ、どんだけ精力的なんだよあんた。
この映画は本人の熱望で出演したそうですが、さすがにちょっと休んだらどうですかね。
作品情報
本作は、ピューリッツァー賞、全米図書賞ノミネート経験を持つベストセラー作家デイヴ・エガーズの同名小説を読み、発売2日後にはトム・ティグヴァ監督が映画化をデイヴ本人に申し込み、トムハンクスは大絶賛ツイートをし、それから4年の歳月を経て完成した作品です。
あらすじ
立派な車もステキな家も美しい妻も、煙のように消えてしまった。すべてを失くした男の名はアラン(トム・ハンクス)。大手自転車メーカーの取締役だったが、業績悪化の責任を問われ解任されたのだ。愛する娘の養育費を払うためにIT業界に転職し、一発逆転をかけて地球の裏側、はるばるサウジアラビアの国王に最先端の映像装置〈3Dホログラム〉を売りに行く。
ところが砂漠に到着すると、オフィスはただのボロテントでエアコンも壊れ、Wi-Fiもつながらなければランチを食べる店さえない。抗議したくても担当者はいつも不在(居留守かも?)、プレゼン相手の国王がいつ現れるのかもわからない。
上司からはプレッシャーをかけられ、ついには体も悲鳴をあげる。追いつめられたアランを助けてくれたのは、予想もしない人物だった──。(HPより抜粋)
監督
監督はトム・ディクヴァ。
ドイツ出身の映画監督です。この人のどの作品を見たのか、名前を聞いてもピンときませんでしたが、「クラウド アトラス」の人と知って、ん?これってウォシャウスキー姉弟じゃね?と。
調べてみたら共作だたんですね~、知らなかった。
さてどんな作品を手掛けてきたかというと、93年に家族のことで押しつぶされそうになった妻の内面世界を描いた「マリアの受難」で監督デビュー。
恋人を助けるためにひた走る女性を、あらゆる撮影方法で描いたハイスピードムービー「ラン・ローラ・ラン」で注目されます。
その後も、香りにとりつかれた青年が、やがて凶行していく様を描いたサスペンスドラマ「パフューム ある人殺しの物語」や、違法行為を繰り返す巨大銀行を追跡するインターポール捜査官が真相究明していくポリティカルサスペンス「ザ・バンク 堕ちた巨像」があります。
そして、 監督とトムハンクスがタッグを組んだ作品。
世代や場所が全く異なる6つのエピソードがうまく絡み、輪廻転生のように役者も別の役柄で各エピソードに登場する一大スペクタクル映画です。
SF、ラブストーリー、ミステリー、アクション、などなどてんこもりで1度見ただけではすべて整理しきれないボリュームです。
久々にもう一回見ようかな。
キャスト
主演のアランを演じるのはトム・ハンクス。
近年は「ブリッジオブスパイ」、「ハドソン川の奇跡」、「インフェルノ」と大作映画3連発で映画界をにぎわせてくれたトム。
ジャパンプレミアにて生でお目にかかれただけあって、これからも応援したいハリウッドスターの一人。
ハドソン川の奇跡は、試写会レポートも書いてます。ぜひ。
最近の作品はこちらもどうぞ。
他のキャストに、アランを現地まで送迎するユセフ役に、スタンダップコメディアンとして活躍するエジプト出身の俳優、アレクサンダー・ブラック、
女医のザーラ・ハキム役に、サリタ・チョウドリー、
アランと同じくサウジアラビアで仕事をしている女性ハンナ役に、「インフェルノ」でもトムハンクスと競演した、シセ・バベット・クヌッセン、
アランが働く会社でホログラム開発しているデイヴ役を、「007」シリーズでQを演じているベン・ウィショーらが出演しています。
異国の地で孤軍奮闘する中年男が見つけた大切なものとは何なのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
異文化って大変!だけど逆らわずに流れたらいいことある!
以下、核心に触れずネタバレします。
人生何とかなる。
まずは率直な感想を。
人間誰でもすぐにその日その時その場所にチューニングを合わせるというのは容易ではない。
まして年齢を重ねると視野が狭まり考えは固執してくる。
正直中年の危機なんてだいぶまだ先の話だけど、いつかは自分の身に起きるかもしれない、他人事ではない。
オレの体ならまだ大丈夫、昔のようにイケるだろ、でも徐々に心と体は頭で考えているようにはいかず、リンクしなくなっていく。
もしそんな事態に陥ったらどうすればいいのか、この映画は答えを、いや少なくともヒントを与えてくれる映画だと思う。
何もかも違う異国の地で訪れるハプニングやトラブル、アクシデントの数々。
心は疲弊し、ついには墜ちることろまで墜ちる。
そんな時出会った人物に救われていく。
女医は傷を癒し、運転手はこれからの道を示してくれる。
流れに身を任せ受け入れることがこんなにもアランを救ってくれるのかと。
たどり着いた答え=クライマックスで、一面広がる青い海がそれまで画面を覆っていた乾いた砂漠を一掃するかの如く映し出されるように、流れに逆らおうとせず、なんくるないさの精神で身を任せることで、きっと心は青々としてくるのだと。
上映時間90分弱とコンパクト。
疲れない長さなので見やすいことは見やすいし、ユーモアも交えているので楽しいことは楽しい。
相変わらずトムの安定したコメディセンスと切羽詰まった表情に見応えはあったし、朝のルーティーンをパッパッと見せる一連の流れ、しかもそれを日が重なる毎に変化をつけていくことでアランがだんだん滅入っていくといったテンポのいい編集、運転手として仲良くなったユセフとのやりとりは軽妙だし、狼狩りの最中の会話から結果狼を銃で撃たなかったという流れも、画で心情を描くなど細かな部分に監督の手腕が光っていた印象を受けました。
しかし話は自分が予想していた、中年が異国の地で踏ん張るサクセスストーリーかと思いきや、流れに逆らわないことで心を解き放つという中年の危機を迎えた男のお話だったということに少し落胆してしまったのも事実。
話の流れも、もう少し家族との関係や人物像を掘り出してもよかったのかなぁという物足りなさも。
なんせタイトルであるホログラムがそこまで重要でないということ。
また日本が変なタイトルつけて!と思ったら、原題をそのまま訳したシンプルなタイトル。あれ。
世界を飛び回ってる王様を何とか捕まえてホログラムを見てもらい契約にこぎつけるのはあくまできっかけでしかなく。
深読みしたらすごく重要なことなのかなぁとか考えてみましたが、答えは見つからず。
アホな私にはそのあたりの理解に苦しみ、こんな感想になってしましました。
サクセスといえばサクセスなんだろうけどお仕事でサクセスして欲しかったなぁと。
サクセスサクセスうるせぇな!育毛剤まだ必要ねえわw
巻き起こるハプニング
勤めていた会社の取締役を業績悪化の為解任、家も車も妻もなくした男が娘の学費のために、第二の人生のために再起をかけて中東へ乗り込んだ!
オッケー!
要は国王に3Dホログラム売りつけばいいんだろ?
お安い御用さ!
いつものようにさぁ踏ん張るぞ!・・・
と意気込んだけど、頭でやろうとしてることに心と体がついていけない。
理由は様々だ。
普段過ごしてきたアメリカではなく、サウジアラビアという全く異国の地。
人種も宗教も環境も何もかも違う、心を許せる人もいない。
外は灼熱、靴の中は砂まみれ。運転手は女関係がワケありで尚且つ音楽の趣味が微妙、酒を飲んで一日の疲れを癒そうにもアルコール禁止という法律からアメリカ人御用達のダイエットコークでガマン。
仕事に関しても国王へのアポすらままならない、用意されたテントにゃエアコンは止まり、食事もない、Wi-Fiすらとんでない。
少しずつ溜まっていくストレスに拍車をかけたのが上司からの圧力。
アポは取れたか、進展はあったか、しっかりしろ。
ぐっすり寝ようにも、いつからかできた背中のしこりが気になって眠れない。
ついにアランの心は崩れていく。
たくさんの文化の違いに見てるこちら側も驚いたわけですが、アルコール禁止ってのが一番の驚き。
劇中ではみんな隠れて飲んでたりするわけですが、大っぴらには飲めないんですねぇ。
他にも一人砂漠でパシャパシャ写真を撮って楽しむアランを警戒した現地の人間に、いつものようにアメリカンジョークを飛ばすも、真に受けてしまい冗談と捉えてくれない件だったり、王様に会うためのアポイントやこちらの注文がが正攻法では全く通じないというのも驚き。
これをトムの困った顔が見事に冴えわたり、ユーモアをもたらしてくれることでしょう。
まとめ
個人的にそんなに満足はいかなかったものの、広大な砂漠のなかでの孤軍奮闘ぶりにくすっと笑ったり、文化の違いに考えさせられたりと気づく部分も多いかと。
そしてクライマックスでの海ですよ!
このコントラストきれいです。
トムハンクス主演なのに公開数が少ないのが残念なのですが、見て損はない作品だと思うので是非ご覧あれ。
満足度☆☆☆☆☆★★★★★ 5/10