光をくれた人
この作品の撮影後、ホントに恋人同士になった2人の愛の感動作の登場です。
配給会社の作品「ムーンライト」が今年度アカデミー賞作品賞を受賞したことで、公開日が今作と入れ替わる形となってしまった本作。
まぁ、アカデミー賞作品が5月末公開ってのもありえないですから、正しい判断でしたよ、ファントムフィルムさん。
てか、「ブルーバレンタイン」でボロクソ泣かせてもらったデレク・シアンフランス監督の最新作なので、今作も泣くでしょう、きっと。
早速鑑賞してまいりました。
作品情報
結婚の末路と出会いの時系列をバラバラにし、裏(500)日のサマーとまで称され、まさに結婚の理想と現実を美しい映像で描いた「ブルーバレンタイン」の監督が、オーストラリアの作家、M・L・ステッドマンの小説「海を照らす光」を映像化。
子を授かることに苦労していた燈台守の夫婦、そんな彼らの元に授けられた希望の光。過ちと知りながらも受け入れた二人にどんな試練が待ち受けるのか。
様々な父性を描いた監督が、演技派スターとブレイク女優で再び愛の物語を描きます。
あらすじ
オーストラリア西部の孤島ヤヌス・ロックで暮らす、灯台守のトム(マイケル・ファスベンダー)とその妻イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)。ふたりは強い絆で結ばれていたが、イザベルは2度の流産に傷ついていた。
そんな中、女の子の赤ん坊が乗った謎のボートが流れ着き、自分たちの娘として育てたいというイザベルの懇願にトムは折れてしまう。
それから4年、愛らしく育った娘と幸せの絶頂にいた夫婦は、娘の生みの親のハナ(レイチェル・ワイズ)と偶然出会うことになる。
絶望の中を彷徨うハナを見たトムは、正しいことをするべきだと悔い改め始めるが、イザベルには娘のいない人生など耐えられなかった。
娘の本当の幸せは、夫婦の愛の行方は? 苦悩の果てに二人が選んだ道とは──?(Filmarksより抜粋)
監督
監督はデレク・シアンフランス。
冒頭でも書いた通り、彼を知ったのは「ブルーバレンタイン」。
家族を守ることが夢であり自分の使命だと語る夫と、出会った頃の才能あふれる彼をいつまでも見ていたい妻との、夫婦としてのすれ違いと出会った当時の馴れ初めから見る恋愛模様を、時系列をシャッフルすることで、現在と過去の2人の温度差を見せながら、結婚の理想と現実、喜びと儚さを交互に魅せた良作。
冒頭からハゲ上がったライアンゴズリングに衝撃を食らい、ミシェルウィリアムズの気怠さが妙にエロいのが印象的。
そしてどうしてこうも想いというものはすれ違ってしまうのか、出会ったばかりのころは些細なことも気にならないのに、現在ではこんなにも口論の火種になってしまうのか。
映像もフィルム感があって、どこか温かみがあり、ホテルのシーンのコントラストもきれいです。
ラストカットとエンドロールで上がる独立記念日の花火に涙が止まらない作品です。
あ、カップルで見てはいけませんw
あまりにもこの映画が気に入り、次回作となった「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」も見てるんですが、こちらはお互いの犯罪者と刑事の父と子の2世代が交錯していく話で。
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子を授かったことでまともな職に就こうと決心するも、結局見つからず強盗で食いつなぐライアンゴズリング、それを捕まえようと躍起になる野心あふれる新米警官のブラッドリークーパーという犯罪者と刑事の物語から、この事件を機に昇進していくクーパーの苦悩と葛藤そして成功、それから15年後、互いの子供たちがつながっていくという3部構成で描かれた数奇なお話。
ブルバほどではないですがこちらもすごく好きで、もう最初のゴズリングの長回しでのバイクスタントやら風貌がすでにカッコいい。
そんなのに見とれてたら、話は数少ないまじめな役のクーパーの話になり、罪悪感を感じながらも成功していくことで何とか正気を保つ繊細な面をうまく見せていき、極めつけはディンデハーンが「クロニクル」の時同様に感情をあらわにする演技に胸を打たれます。
こちらはブルバと違って順を追った時系列。
これもシャッフルしてよかったんじゃない?なんて思いもしましたが、それでも見ごたえのある作品です。
今作も過去作同様、こだわりのある映像と描写に期待したいですね。
キャスト
主人公の灯台守トムを演じるのはマイケル・ファスベンダー。
「アサシン・グリード」での迫力あるアクションが話題となりましたが、作品の中身としてはやや不満の残る内容だったので、これでいつものファスベンダーを見せつけてほしいです。
妻イザベルを演じるのはアリシア・ヴィキャンデル。
いつも見るたびに吉川ひなのにしか見えないのは私だけでしょうか。
この作品の制作を機に、プライベートでも熱い仲となった二人。
まぁマイケルなら仕方ねえよなぁ・・・。
そんなおいらの気持なんか置いといて、気が付けばトップ女優となったアリシアちゃん。
今作は育ての母としてどんな表情をみせてくれるのでしょうか。
彼女に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストとして、生みの親であるハナ役に、「ナイロビの蜂」や「ロブスター」のレイチェル・ワイズが出演します。
光をくれた人とは誰のことなのか。灯台がもたらす意味は何なのか。幸福と痛みが伴う愛の物語。いろいろ考察できそうですね。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
人は人を憎むためにあるのではない!赦すために存在するのだ!
過ちを犯した夫婦を、上質な映像で描いた赦しの物語!!
以下、核心に触れずネタバレします。
孤独はアカン。
大戦時に数々の夥しい光景を目の当たりにし、心に闇を抱えた男。
そりゃあもう僕の事放っておいてください。
むしろ誰もいない孤島の灯台の中で、ひたすら光を灯すだけの仕事だけさせてください、ってなりますわな。
そんな中、島で出会ったイザベルからの猛アタックに打ちのめされ添い遂げることを決めたトム。
一目ぼれってあると思う?あると思うよ、けどさ、どこに惹かれて結婚したいとか言っちゃうの?イザベルさん。
なんかもうゲスい感情が先行して、あなたホントはお兄ちゃん死んじゃったから、一人になりたくて灯台行こうとしたんじゃいの?なんて。
そんな孤独同士の二人が結婚し孤島で愛を育んでいくわけですが、神様って悪戯好きが過ぎます。
流産2回もさせて、悲しみMAX状態の中、ボートでどんぶらこっこって赤ちゃん運んできますかね?神様。
ここでの葛藤というか誘惑というか、感情ブレブレになるイザベルの気持ち凄くわかります。
2回流産して、3度目の正直にトライするほど元気ないし、2度あることは3度あるっていうじゃない?
だから、せっかく現れた赤ちゃんの登場は、神様が私たちに授けてくれたものって、いいように解釈する。
そうだよね~もうまわり見えないよね~。
なんか信号送ってちゃんと報告する旦那、何してんだよ!ってなりますよね~。
でもでもマイハートイズ良心の旦那、トムはそういうわけにはいかない。
これちゃんと報告して母親のところへ戻さないと。
わかったわかった、じゃあ養子にしてもらうようにお願いしよう!
でも、ここ孤島よ?
周り誰もいないし学校も施設もない!
そんな場所に住む私たちに養子の許可が下りると思うトム?
いくら何でもその案は無理だわ~。
結果、妻の猛プッシュに押しに押されて、嗚呼オレの良心ごめんね、とばかりに泣く泣く実の子として育てる決意をするトム。
まぁここまでは良かったんですよ。
結果、これが孤独ゆえの大きな過ちだと気づくんですが、孤独ってそんなに人の心を蝕んでいくなんて気にも触れませんでしたね。
冒頭でも、トムは臨時の職員として採用されるんですけど、なんで臨時かって前任者が孤独ゆえに情緒不安定になっちゃったからってんだから、この物語の末路を暗示していたってわけで。
光をくれた人たち
でまぁ、この物語には孤独な人たち、孤独だった人たちってのが登場してくるわけです。
暗~い闇の中で灯台が照らすように一筋の光となって現れるってのが垣間見えるんですね。
トムにとっての光は、なんといってもイザベル。
本当は一人で灯台守として過ごそうと思っていたにもかかわらず、彼女とピクニックにいって猛アプローチ受けてから、手紙にびっしり彼女への愛を認め、一生彼女にいやな思いはさせまいと決意。
そりゃあ2度も流産させて、他人の子供を育てたいって懇願されたらそれが罪だとしても受け入れますわな。
そんなイザベルにとっての光は、問題の子供ルーシー。
灯台でトムと暮らし、家族を作りたいと頑張って子作りに励みますが、2度の流産。
そもそも、孤島でどうやって子供を産もうと思ったのか、その辺のことがよくわかりません。
陣痛来たらほんとに自分で産むつもりだったのか?
そんなことは置いといて、彼女との暮らしはさぞ幸せの日々だったことでしょう。
発見時から肌身離さず抱えてたあたりを見ると、一目見てから育てようと決心してたんでしょうな。
そしてルーシーの実の親、アナにとっての光は、娘もそうですがトムだったんでしょう。
まぁ正確には、ポストに娘の安否を知らせてくれた名無しさんというのが正しいんでしょうけど。
好きになった人が大戦時の敵国であるドイツの人ってだけで周囲から虐げられる毎日。
でも彼はいい人だった。
だから全てを捨ててでも一緒になりたいと願った。
反対する父から離れ、子も生まれ幸せな生活を送っていたのに、いまだに敵扱いする市民から逃れるために、彼は手漕ぎボートで海へ飛び出し行方不明に。
それから彼女はずっと孤独でした。
捜索願も出したけど、手がかりはなかったんでしょうね。
そして一通の手紙によって彼女に光がもたらされるわけです。
あなたの旦那は神の御許に行ったけど、娘さんは無事ですよ。
まさにオ~マイガッド!!だったんでしょうね。
それからというもの、どこかで無事に育っている彼女を思いながら生きていたんでしょう。
メタファーもいっぱい
物語の舞台となるヤヌス島。
1月(ジャニュアリー)の語源にもなってるこの名前は、二つのものを見つめ、二つの物事の間で引き裂かれるヤヌスの神からとられた名前だそうで。
しかもこの島、インド洋と南極海という二つの大きな海の狭間で、島から光を照らしていたわけです。
そうなってくると、2つのものを引き裂く、2つのものを照らすという意味から、この物語と非常にリンクしていきます。
答えはイザベルとルーシーであり、イザベルとトムであり、ハナと実の娘グレース(ルーシー)であり、あらゆるものを引き裂くメタファーになってます。
さらに実はこの引き裂いた二人をちゃんと照らしていたということも示してるし、もっと言えば罪と赦しというものまで引き裂き、照らすものとして表現されていたんじゃないか、と大雑把ではありますが読み取れるんじゃないでしょうか。
あぁ、誰かうまくまとめてwww
演技も圧巻
やはりオスカー俳優ですよ。
細かい表情がまぁ巧い!
マイケルに至っては、X-MENでもべた褒めしましたが、涙の流し方ですね、抜群にうまい!
町一番の金持ちの娘、アナがルーシーの本当の母親だったことを、彼女が墓参りしてたのを見かけ、墓石に掘られた文章を見て知ってしまい、トムは驚愕の真実と偽りの家族の生活に終わりが見えてしまったことで、悲しい表情を浮かべるわけですが、片方の目から涙を流すんですが、垂れ流すんじゃなくて、寸止めさせるんですね~。
涙を溜めるのはできますが、粒の状態で寸止めさせるってなかなかできないですよこれ!しかも片方だけ!!!
これは話がどうこう以前に演者としてすげ~表現力だなぁと感心しました。
もちろんアリシアを負けてない。
デレク監督がこれみよがしにドアップで彼女の表情を捉えてますが、そんなとこよりも(いやそこも十分素晴らしい表情なんですけど)、まだ来てはいけない、早すぎる陣痛が来てしまった時の、辛い表情!
お願い待って!
まだ生まれてきちゃダメ!!と苦しい表情をしながら願うアリシア。
この辛さを少しづつ平静を保ちながら、ピアノの前で悶えていく様がね~真を突いていてよかったです。
他にも、怒り狂ってトムに当たるとことか、絶対トムを許さない時の表情とかいい顔してました。
すげ~どうでもいいとこですけど、早歩きがですね、ほんとに早い歩き方しててw
あんな早い歩き方する早歩きなかなか普段の生活でも見ないなぁとw
あれもまた真を突いていた迫真の演技でした。
最後に
孤島からの絶景をロングショットでおさめ、表情をドアップで映す上質な映像から2人の罪と赦しを描いた物語だったわけですが、いかんせん、後半のトムに対するイザベルの強硬な態度が腹立って腹立って。
お前マイハートイズ良心のトムが、おめえの事黙って罪を告白してんのに、なんだその態度は!!
オモチャ取り上げられたガキか!!と。
こういうところから2人の兄を持っていた末っ子ガールの性格が出るというか。
欲しいものは手に入れるという姿勢が冒頭から溢れてたしね。
まぁ最後には改心するので結果オーライだけども、そりゃないぜと途中でムカついたという部分がですね、満足度を下げる原因だったという・・・。
ラブストーリーというよりもそういった罪への意識、それに対する赦し(何が赦しなのか書いてなかった・・・)を描いた作品でした。
やっぱブルバが好きだなぁ。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10