LOGAN/ローガン
ひとつの役をずっと続けていくこと。
役もそのまま歳を取るのならずっと続けていけるだろう。
ジャックスパロウ、イーサンハント、ルーク・スカイウォーカーなど意外と挙げればでてくるもので。
しかし、再生能力を持つ男、という役をやり続けるのには限界がある。
歳をとらない役なのだから。
そんな特殊な役を17年演じ続けてきた俳優が、ついにこの役を引退する。
その名はヒュー・ジャックマン。
今回最後のウルヴァリン=ローガンを全身全霊で演じたと語っており、その役から離れることに思いもひとしおだったことでしょう。
その甲斐もあってか、世界中で絶賛の嵐を巻き起こし、高い評価を得ています。
早速鑑賞してまいりました。
作品情報
2000年代からアメコミ人気を牽引してきた人気アメコミキャラ・ウルヴァリン。「X-MEN」シリーズからスピンオフ映画として過去2作公開され、アメコミキャラとして確固たる地位を築いてきた。
その役を長きに渡り演じたヒュー・ジャックマン。
彼といえばウルヴァリンという代名詞として定着するほど、彼にぴったりの役であったが今作でウルヴァリンを卒業する。
今作では不死身であるウルヴァリンのはずが、治癒能力の著しい低下により、体は衰え、老化も目立った風貌で登場する。
そんな老いた姿で、生身の人間として戦うウルヴァリンを満干の思いで演じたヒュー・ジャックマンの最後の勇姿を見届けろ!!
あらすじ
既にミュータントの大半が死滅した2029年。
長年の激闘で心身ともに疲弊し、超人的な治癒能力が衰えてしまったローガン(ヒュー・ジャックマン)は、雇われのリムジン運転手として日銭を稼ぎながらメキシコ国境近くの廃工場で、衰弱しきってスーパーパワーをコントロールできなくなったチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)と、太陽光の下では生きられないミュータントのキャリバン(スティーヴン・マーチャント)で暮らしていた。
そんなある日、ローガンはヒスパニック系の看護師ガブリエラ(エリザベス・ロドリゲス)から、ローラ(ダフネ・キーン)という少女をカナダ国境のノースダコタまで送り届けて欲しいと頼まれる。
図らずも擁護することになったローガン一行は、ローラを奪い返すためにやってきたピアース(ボイド・ホルブルック)率いる武器集団からの襲撃を受ける。
辛くも一派から逃げ出したローガン一行は、ノースダコタ目指して車での旅を繰り広げていく。
ローガンそっくりの能力を備えた少女ローラを奪うため最強の敵がローガンの前に現れる。
ミュータント最後の希望を守るため、ローガンは命がけの戦いに身を投じていく(HPより引用)
監督
監督はウルヴァリンの前作「ウルヴァリン:SAMURAI」に引き続きジェームズ・マンゴールド。
前作のウルヴァリンが正直つまらなかったので、また彼なのか!?と思いましたが、それとは打って変わっての評価なので、非常に期待しております。
そんな彼の代表作をざっくり紹介。
リヴ・タイラー主演の青春恋愛映画「君に逢いたくて」で監督デビューした後、警察内部の闇にスポットあてたサスペンス映画「コップランド」、精神療養施設に送られた少女が自分よりもさらに深い心の闇を持つ患者達とかけがえのない時間を過ごす「17歳のカルテ」、現実主義の女性とタイムススリップしてきた英国貴族が織り成すファンタジックラブコメディで、ヒュージャックマンと最初の出会いとなった「ニューヨークの恋人」など、あらゆるジャンルを手掛けています。
他にも、カントリー歌手ジョニー・キャッシュと、2人目の妻で歌手のジューン・カーターのヒューマンラブストーリー「ウォーク・ザ・ライン/君に続く道」では、主演の2人がアカデミー賞はじめ多くの賞レースを席巻し話題となりました。
彼の作品はこちらもどうぞ。
キャラクター紹介
ローガン=通称ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)
本名ジェームズ・ハウレット。
超人的な鋭い感覚と身体能力、治癒能力を秘めたミュータント。ストライカー大佐による「ウェポンX」計画により体内にアダマンチウム合金を組み込まれ、あらゆるものを切り裂く体へとなった。
かつてのウルヴァリンの面影はどこへ。もうぐちゃぐちゃ状態のX-MENシリーズの時系列ですが、去年公開した「X-MEN アポカリプス」にウルヴァリンが登場していたこともあり、あれからどうなったのかが語られることでしょう。
チャールズ・エグゼビア=通称プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)
史上最強のテレパシーを持ち、他人の心を読んだり、記憶を操作することが出来る。
人類とミュータントの共存を夢見ており、「恵まれし子らの学園」を設立した。
最近は若かりしプロフェッサーXばかりだったので、一応言っておきますが、パトリックこそ真のプロフェッサーです。マカヴォイもいいけども。
にしても彼の身にも何が起こったのか。ただの老化なのか。ミュータント自体なぜこんな調子悪くなってるのか気になりますね。
ローラ(ダフネ・キーン)
見かけはあどけないが、性格は凶暴で並外れた戦闘能力をもつミステリアスな少女。
手足からアダマンチウム合金の爪が飛び出すことから、ローガンと何らかの関係が持たれる。
彼女の正体をすでに分かってますが、ここはネタバレの場所じゃないので伏せるとして。
予告での彼女の凶暴さハンパないっすね。目といい吊り上がった眉毛といい獣の表情です。よくこんな子見つけてきたよなぁ。
ドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)
メカニックな義手を持つ冷酷な追跡者。
トランシジェン研究所から逃げ出したローラを奪い返すため、武器集団を引き連れてローガンの前に現れる。
彼は原作コミックでは、世界支配をたくらむ秘密結社ヘルファイヤークラブの幹部として登場しています。
原作ではいろいろな能力を持ってるようですが、義手からどんな能力が発せられるか見ものです。
キャリバン(スティーヴン・マーチャント)
ミュータントを感知する能力を持つミュータント。
太陽光を浴びることができないため、 全身を日よけで覆って過ごしている。
もともとミュータントを感知できる能力はチャールズが持っていたのですが、チャールズの設定が老化による衰えもあって、このキャラが必要だったのかなと。
ということは、誰かミュータントを探しあてるのか、それとも敵の感知だけなのか。
ドクター・ライス(リチャード・E・グラント)
邪悪な野心に取りつかれた遺伝子学者。
新たな人間兵器開発のため、子供たちを使って悪魔のような人体実験を行っている。
彼は原作コミックでのザンダー・ライス博士と思われます。ウルヴァリンを誕生させたウェポンX計画を親子2代で携わっており、父はウルヴァリン脱出時に殺害されてしまい、それから彼に恨みを持ってるそうです。
果たして原作通りなのか。
X-MEN アポカリプスのエンドロール後のおまけ
X-MENシリーズ前作にあたるアポカリプス。
劇中で政府によって捕らえられたミスティークたちの前に、ゲストキャラとしてウルヴァリンが登場したのを覚えてますでしょうか。
実はここ、ウェポンX計画をしていた施設だったんですね~。
サイクロプスとナイトクロウラー、ジーンを前に、雪景色の中へと姿を消したわけですが、その後のおまけ映像が次作を予感させる終わり方でした。
それは、施設の後片付けをしながら、ある血液の入った試験管をケースに入れて持ち帰ろうとするスーツの男が映っています。
試験管のラベルには「ウェポンX」の文字。
そしてケースのにはエセックスコープと記されています。
これはどういうことかというと、遺伝学の科学者であるナサニエル・エセっクス、後のミスター・シニニターという不死の肉体を持つ能力でX-MENを苦しませる代表的な敵が、この計画の背景にいることを示唆したものなんだとか。
そして、持ち出されたウルヴァリンの血液。
今作で登場するローガンと同じアダマンチウム合金の爪を持つ少女。
はい、何となくつながってきましたね。
劇中でこの計画の全貌が明かされるのか、それとも。
シリーズがどうつながっていくかも重要ですが、まずはその前に、物語を楽しみたいですね。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
これが最後のウルヴァリン!満身創痍で敵に立ち向かう、彼の勇姿を目に焼き付けろ!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
これアメコミ映画ですか?
突然変異によって特殊能力を持ち、人類から脅威として見放されてきたミュータント。彼らは人類との共存を望み、片一方は人類を配下にしようと企む、そんな2つの異なる考えを持つ派閥が争いを繰り広げてきた「X-MEN」。
時に仲違いした時もあれば、協力し合い人類の危機に直面し歴史を変えてきたミュータントたちの活躍は、良くも悪くもSF娯楽大作映画として非常に楽しめる作品だった、というのがこれまでのX-MENシリーズだったように思う。
スピンオフとして単独映画となったウルヴァリンシリーズもそうだった。
一人の男の葛藤を描きながらも、やはり一番の魅力はそのワイルドで凶暴で獰猛で、いまにも血管が切れそうなほど怒り狂った彼のファイトシーンだった。
しかし今作は、そんな今までの通例ともいえるSFヒーロー娯楽大作の枠をはみ出し、一人の男の、埃にまみれながら、血まみれになりながら、汗臭く泥臭く、もがき苦しむ様を描いた極上のヒューマンドラマとなっていました。
心も体も・・・
正直言ってあんな弱々しいウルヴァリンは、ウルヴァリンではない。
好きなキャラでありながらこんな風に突き放したくなるほど、老いに老いていたローガン。
白髪交じりの頭髪、伸ばしっぱなしの髭、ロクに文字も読めず老眼鏡、常に咳をし、足を引きずっている。
戦いの後の傷も直ぐに癒えず、常に苦しく、傷跡は残ったまま。
目は真っ赤に充血し、今にも倒れそうな姿。
冒頭でのバトルシーンも、たかがチンピラごときに防戦、銃弾も直ぐに体外に出ないくらい弱った治癒能力。
一発の銃弾によってあおむけに倒れたローガンの横に、タイトルバック。
ああ、この物語は彼がこうなるよ、といっているかのよう。
俺が好きなローガンはどこへ行った。
髪は逆立ち、葉巻をくわえ、すかした表情で観衆をにらむ、あのローガンはどこへ行った。
そんなボロボロの体に加え、心もボロボロだった。
「正しいことをしたとしても、人殺しの烙印を押される」、チャールズとローラがホテルで見ていた西部劇「シェーン」の1シーンが物語っているように、ローガンは沢山の相手を葬ってきた。
時には友や愛する人でさえも殺さなければいけなかった。
そんな彼の悲痛な後ろめたさが、体調の変化によって心までも蝕んでいったのだった。
最後にして報われたもの
常に周りの輪を乱しながらも、優しさを持ち合わせていたローガン。
その不器用な性格は今作でも変わっていなかった。
どこか強がり、他人を煙に巻きながら、何かあれば汚い言葉で荒れるけど、それでも薬の副作用でわけのわからない言葉をまくしたてるチャールズを放っておけず、無口から多くを語らない、暴走ばかりするローラを放っておけず。
だけど辛かった。
俺が愛した人は傷つく、と思っていたからだ。
これ以上愛をもって接してけば必ずその人は自分の前から姿を消し去っていく。
案の定劇中ではそんな描写が訪れる。
もうこんなこと繰り返しながら生きていくことに疲れた、死にたい。
そう、ローガンは死に場所を探していた。
そんな彼に、あなたは生きて、生き抜いて!とゲキを飛ばすのがローラ。
仲間が待っているエデンという名の場所へ行くには彼が必要だった。
ようやく喋ったかと思えば、まだそんな夢みたいなことを言うのかこいつは。
怒鳴りながら夢から覚めろと激高するローガンに、一歩も引かないローラ。
そんな二人の逃避行は、結果楽園という名の場所へ向かうローラと、天国という名の場所へ向かうローガンのロードムービーにもなっていた。
ローラにとってはゴール目前での悲劇だったかもしれないが、ローガンにとっては最後にようやく孤独から解放され、幸せを掴んだ一瞬を映し出していたように思う。
残虐描写がすごい
はい、めちゃめちゃ箇条書きのような書き方してしまいましたが、一人の男の生き様を描いたヒューマンロードムービー調のアメコミ映画だったわけです。
この映画で特筆すべきなのは、話の中でのローガンよりも、そのバトル描写です。
なんてったって、殺し方がエグい!グロい!
あの拳からニョキニョキっとでてくる爪でですね。
敵の顎から脳天にブシュッ!!
後頭部から頬骨に向かってブシュッ!!
これがスクリーンいっぱいに映ったかと思えば、自身も今作ではやられっぱなしなので、傷口が生々しく映っています。
ローラちゃんも負けてません。
ウガーーーッ!!と叫びながら、相手に飛びかかり両足で首をロック!
そのまま爪でグサッ!!と、ひと突き!!
オマケに生首を敵にぶん投げるおまけ付き。
おぉぉかわいい顔しておっかないことしますね~ローラちゃん。
もうその目つきは獣そのものです。
さすがローガンの子!!
結局ローラは。
はい、しれっとネタバレしてますが、ローラは、ウルヴァリンの遺伝子で生まれたミュータントだったわけです。
劇中では、ミュータントがいなくなったっから人工的に作って軍用化しようぜっていうドクター・ライスの研究によって、1から生まれた人工的ミュータント。
その一人がローラだったわけです。
残念ながら彼女は感情を持っていることから反発的な行動をとったり、自傷行為も繰り返すことから失敗作だったようで、研究所はその失敗作の子供たちを安楽死させようとしました。
しかし、働いていた看護師たちがそれを阻止しようとし、ローラを逃がしてきたんですねぇ。
じゃあ成功作はできたのかよ?と。
ええ、できてます。
無から作ったといわれるミュータントがローガンたちの行く手を阻みます。
どんな奴かは見てのお楽しみ!
なんとなく想像つくと思いますけど。
原作では彼女は「X-23」という名前で登場しており、ちゃんとウルヴァリンのクローンということで描かれているので、今作もそれに忠実に実写化していることが分かります。
ただ、上記で言及した「X-MEN アポカリプス」のエンディングのオマケシーンに直接つながっているのかどうかっていうのは、正直明確にされてないので何とも言えませんでした。
過去作とのつながり
今作では2029年までに実際何がおこったのか、事細かに語られてはいませんでした。
「X-MEN フューチャー&パスト」で時系列が変わってしまっているため、過去の作品はなかったことになってるんですが、小さなアイテムは残っていました。
まず、モーテルの自由の女神は、「X-MEN」第1作目のラストバトルの場所が自由の女神だったことから、それを想起させる演出になっていました。
他には、ローガンが首にぶら下げていた認識票。
あれも、「ウルヴァリン X-MEN ZERO」で、アダマンチウムの研究の際につけられたヤツを思わせます。
後は、愛する人を傷つけたというセリフは、きっと「X-MEN ファイナルディシジョン」でのジーン・グレイがフェニックスとしてヴィラン化した時のローガンの行動の事を指しているように思えます。
あれは切なかった・・・。
このように、過去作を関連させるような部分が他にもあると思うので、鑑賞された方は是非思い返してみてはいかがでしょうか。
最後に
実際問題、なぜウルヴァリンを卒業するのかは、ヒュージャックマンの奥さんが熱望していた、なんて記事を読んだことがあるので、彼が辞めるのはお金とか体力とかじゃなく、奥さんを愛するが故の決断だったんだ、ということにしておきましょうw
今後アメコミ映画は世代交代という問題がキーワードになってくるはずです。
今作ではそれをうまく活用した作りになっていたし、人気のあるキャラクターをしっかり終わらせることができた、いい例だったのではないでしょうか。
最期は泣けるし、いいはなシーサーだったんだけど、個人的にはあんな劇的にせずに淡々と物静かに進んでいくやり方でもよかったんじゃないかなぁと。
あの乾いた荒野の風の音を感じたかったなぁ。
どうでもいいですが、道中で一泊する農家のマンソンさん。
彼、「ER 緊急救命室」のベントン先生やってた人ですよね?
久々に見て懐かしい!!と勝手に心で叫んでました。
というわけで以上!あざっした!!
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