打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
今作の元となった作品をTVでリアルタイムで見ている身としては、非常に思い入れの強い作品だけに、今回アニメーション映画としてリメイクされたことに、時代からくるアップデートの必要性に納得をしたと共に、作品本来の美しさが損なわれてしまったような失望感を抱いてしまっております。
どんなに美しく描こうとも実写に勝る美しさはない、とは思いません。
ですが、なんかあの時の感じた思いを台無しにされてしまった感じがして、どうも今回はモヤモヤしながら見ることになりそうです。
またアニメを馬鹿にしているやつがいる、なんて冒頭から苛立った方、どうか元の作品を見てほしい。
とんでもなく胸につきささる青春物語ですから。
まぁ思いの丈なんかは感想に書くとして、これはこれで期待していた作品なのでしっかり目に焼きつけたく、早速鑑賞してまいりました。
作品情報
岩井俊二が映画界に進出するきっかけとなった作品を、今作を敬愛してやまない大根仁が脚本を執筆、人気作品を数多く手掛けるアニメーションスタジオ「シャフト」が製作、社会現象にまでなった作品を手掛けた監督という、豪華製作陣によってアニメーション映画化。
もしも、あの時・・・、もう一度時間を戻せたら・・・
誰もが心に秘めた切ない思い出をのせて、恋の奇跡を打ち上げる。

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あらすじ
夏休み、とある海辺の町。花火大会を前に、
「打ち上げ花火は横から見たら丸いのか?平べったいのか?」
で盛り上がるクラスメイト。
そんななか、典道〈声:菅田将暉)が想いを寄せるなずな〈声:広瀬すず)は母親の再婚が決まり転校することになった。
「かけおち、しよ」
なずなは典道を誘い、町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。
それを見ているだけで助けられなかった典道。
「もしも、あのとき俺が・・・」
なずなを救えなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を投げつける。
すると、いつのまにか、連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた・・・。
何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は?
(HPより抜粋)
監督
今回監督を務めたのは新房昭之。
はい、全くのアニメ素人なので全然知りませんでしたが、手掛けた作品は名の知れた作品ばかり。
「魔法少女リリカルなのは」や、「さよなら絶望先生」、「荒川アンダーザブリッジ」、「〈物語〉シリーズ」、そして「魔法少女まどか☆マギカ」と、どれも1作も見ていないのですが、聞いたことある作品だったり、当時レンタルビデオ店に勤めていた頃高回転されていた多数の作品は、彼が作っていたんですね~。

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キャラクター紹介
及川なずな〈声:広瀬すず)
中学1年生。クラスのマドンナ的存在。
母親の再婚など複雑な家庭環境に育つ。
どこか影があり、思わせぶりな言動で周囲を翻弄する。(HPより)
この物語の主人公は、田舎町なのに田舎臭くない垢抜けた圧倒的美人でなければいけない、と自分は解釈してるんですが、このビジュアルだとその条件はクリアしている様子。
あとは広瀬すずの声次第といったところでしょうか。
島田典道〈声:菅田将睴)
中学1年生。
クラスメイトのなずなにひそかに想いを寄せている。
が、周囲にはその気持ちを隠している。(HPより)
元の作品から年齢を中学生にし、変声期を迎えた設定にしたことで、菅田君を起用できたのでしょう。
実際は小学生の話なのだから、キャスティング決まったとき少し疑問だったんですよね。
今回はじめての声優のお仕事だそうなので、頑張って欲しいです。
安曇祐介〈声:宮野真守)
典道となずなのクラスメイト。
幼馴染で親友である典道に、なずなに告白することを宣言する。(HPより)
タレント優先になってしまうと、主役をやらせてもらえない声優業の方々。
上のふたりに負けない存在感を出して欲しいです。
特にこの祐介は・・・まぁ鑑賞してからにします。
なずなの母〈声:松たか子)
恋愛に奔放で、自らも駆け落ちした経験を持つ。
三度目の結婚をきっかけに、一人娘のなずなを転校させようとする。(HPより)
実写のほうはあまりお母さんの出番がなかったような気がしてたんですが、松たか子を起用するということは、なずなをかき回すような感じで登場するのでしょうか。
てか、松たか子に恋愛に奔放なイメージがないので、ミスキャストになってないか心配。
どうしたって元の実写がチラつくので、大絶賛か大批判かどっちかになりそうなんですが。もう不思議な玉の時点で予測はついてるんですけどね・・・。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
よくこれでオッケー出したな!製作陣よ!
画だけ豪華な、何にもない話。
以下、核心に触れずネタバレします。
やっぱりアニメって苦手。
密かに思いを寄せていたヒロインとの夢物語を、カラーリストまで使って極彩色で彩り、超豪勢に仕上げた映像に拍手を送りつつも、明らかに自分の嫌いなアニオタ臭のするビジュアル、全然笑えないユーモア描写、なぜか悪役扱いになっている親友やヒロインの家族、突拍子もない劇中歌、極めつけは不思議な玉による妄想の中の妄想といった深層部分まで突き進んでしまう物語構成と、起承転結のないチグハグした展開にヤキモキと感情の吐き出し口が見つからない、なんとも陳腐な作品でありました。
やっぱり一番危惧していたキャラクターのビジュアル面ですが、この手の顔立ちがホント大嫌いで、特になずなに至っては、真顔の時や頬を赤らめた時、海中など、ことあるごとに別人であるかのように変わっていて。
そこだけ切り取るものならば非常によくできた画なんだろうけど、全編通してみるとなんでそこまで変わっちゃうの?と疑問に感じてしまう。
後は目のアップが多すぎること。
そこまでクローズアップしたところで何のカタルシスも生まれないし、目の奥に相手が映っていたとしても、何か劇的な描写になってるわけでもない、非常に意味の感じないものでした。
あとは無駄にエロ描写が多すぎること。
スクール水着姿、白いワンピース姿、無駄に揺れる肩ひも、デコルテ強調する描写など、足からなめるようになずなを見上げるところとか、制服脱ぐシーンとかいらないんですよ。
三浦先生が巨乳過ぎるのも全く必要ない。
実写で三浦先生やってたの麻木久仁子ですよ?
当時貧乳イジリされまくってたあの人が何で巨乳になってるんですか。
誰に対してのサービスなんですか。
実写でも確かにありましたよ。
うわ、エロっ!みたいなところ。
でもそれってまだ健康的なエロスというか、健全という枠からたまたまはみ出てしまったハプニング的なもので、今回のようにいかにもエロく見せるような描写はどこにもなかったので、ほんと意味のない部分だったなぁと。
どうしてもこういう部分に関しては、なかなか受け入れられない節がある故、強く拒絶をしてしまったわけなんですが、もっと一般大衆的にビジュアルだったり描写だったりを意識して作るという発想はなかったのでしょうか。
なずなはもっときれいだ。
やっぱり見終わった後に確信したことの一つは、なずなはやっぱり奥菜恵でないと無理だったなぁということ。
これはもう記憶だったり思い入れの強さが先行して、それを超えることは無理だろうと思っていたことなので、今更っちゃあ今更なんですが、アニメーションのなずなは、やっぱりアニメアニメしてて微塵も可愛いという感情が芽生えなかったです。
いいですか。
実写でのなずなはあんなに細くないし、
髪下ろしっぱなしじゃないし、
あんなに目釣りあがってないし、
もっと思わせぶりなこと言うし、
化粧して私服に着替えたらあんなもんじゃないし、
プールでスクール水着来てないし、
白いワンピースでもないし、とにかく色々デフォルメし過ぎなんですよ!
もうここまで来ると俺変態だなぁとまで思ってくるんですが、当時リアルタイムで見たあの美しさが今作にはどこにもなかったので、わかってはいましたが、非常に悔しい部分でありました。
なぜこんな展開に。
実写版では、
「もしもあの時俺がプールで50m競争で勝っていたら・・・」
という典道の妄想からアナザーストーリーが始まっていくのですが、今作は、そこから2回3回と「もしもあの時」を繰り返し、自分の思い描いていた世界へと進んでいく流れになっていました。
だから最初は結構実写版に忠実に描かれていて、細かい小道具なんかも現在のものに変換したりしてうまくできてるなぁと思ったのですが、やはり不思議な球の存在が物語を大きくレール変更していってまして、どんどん何これ???という話になっていました。
この不思議な球を投げることで、典道がやり直したい部分へとタイムリープしていき、自分が思い描いていた展開へとなるのですが、その途中でもアクシデントが起こり、再び球を投げてやり直す、この繰り返し。
不思議な球によって、自分が思い描いていた世界でハッピーエンドのようなクライマックスになったんだけど、それは夢でしかなく。
現実に戻れば普段通りの生活が待っているんだけど、それを経て典道に心境の変化が現れたような描写があればよかったのに、そこを描かず終わってしまっているということに、これ結局何の話?と。
またまた実写の話になりますが、実写でも正直典道がどういう心境の変化をしたのかなんて描写はないので、一緒といえば一緒なんですが、そういう疑問を感じさせない画力が実写にはあって、気にはならないんですよね。
しかも、2回3回とタラレバを繰り返さない。
今作はとにかく話を広げに広げて期待させといて着地点そこかい!と。
褒めるべき点
あまりにけなし過ぎているので、ちゃんと良かったと思う部分も書いていこうと思います。
感想の冒頭でも書いた通り、カラーリストを採用したことによる花火のシーンはきれいでした。
実写でも花火が上がるシーンはかなり気合の入ったシーンだったのですが、それに匹敵する美しさだったように思えます。
正に夢の中にいると思わせるような、かすんだ視界に映る大きな花火にうっとりでしたね。
他にも、夏の匂いを感じさせる雰囲気は素晴らしかったと思います。
あとは、意外と実写に忠実な描写が多かったこと。
冒頭の典道家が営んでいる釣具店の内装がそっくりだったし、典道が赤Tにハーフパンツだったのも実写で山崎裕太が着ていた衣装と同じでした。
そう、彼の友達のビジュアルも似ていましたね。
小橋賢児が演じていた彼もルックスが似ていたし、花火はどこから見ても丸いと豪語していた彼もそっくりでした。
細かい部分で言うと、
典道の家に勝手に入ってゲームをしていた祐介が飲んでいたジュースが古くて噴き出すといった件や、
典道が祐介の家が経営している病院で、受付を呼ぶときの声が裏返ってしまうところも、実写では山崎裕太の声があまりにもハスキーすぎて、めっちゃ細い声になっていることを意識しての部分だったと思います。
後は終盤典道以外の4人が灯台で好きな女子の名前を叫ぶシーンでは、一番背のちっちゃい男子が「観月ありさ―ーっ!」と叫ぶのも実写と一緒です。
そこは現在のトレンドにアップデートしなかったのが意外でした。
ならば、是非メガネ君の「セーラームーンっ!!」も入れてほしかったww
物語にはまったくもって必要ない、なずなを担当した広瀬すずの歌声がいいなぁと。
声質的に広瀬すずは歌手には向いてない感じの声なんですが、アニメーションというフィルターを通して聞くとすごく自然に聞こえてよかったですね。
最後に
気になった点は企業広告がやけに目立ったなぁと。
気づいたところだけでも、典道の釣具店になぜかローソンの看板が置いてあったり、海辺にいるなずなに気付いて自転車を止める後ろに出光があったり、典道と祐介が飲んでいるジュースが小岩井(もしかしたらサントリーかも)だったり。
どうもこういうのは目が行ってしまってダメですね。
まぁ見事に宣伝にしてやられたわけですが。
まぁ結局は少年の妄想話を終始見せられたわけですが、あそこまで奥深く妄想を見せられると、もう独りよがりの何物でもないというか。
大根仁ワールドというか。
これなら彼が実写で監督して、若き中学生のウブな恋心に焦点をあてて描いた方が企画としては面白かった気がします。
やっぱり自分が思っている「打ち上げ花火~」の重要性って、当時メンツやらプライドという、子供ながらに男のどうでもいい見栄なんかを気にして、伝えたいことを伝えられなかったことに対しての後悔と、そんな時代があったことに思いを馳せることのできる作品だと思っていて。
で、その周りには仲のいい友達とくだらないことで盛り上がったりして遊んでいた当時を懐かしむことができる作品でもあって(実写では終始ストリートファイター2の技で遊んでます)。
それを実写で見せつけられたもんだから、今回こういう妄想だけの何も残らない話になってしまっていたことが、非常に悔しくて仕方がありませんでした。
祐介みたいな奴ね、実際いたでしょ?
周りの連中にいじられるのがいやで、女の子の気持ちを踏みにじってしまうような奴。
なずなもね、オレの勝手な妄想ですけど、親が親なら子も子だな、って思っちゃうんですよ。これ見てると。
実際女友達少ないのもそういうことなのかなぁって。
とにかく、今回のアニメーション映画よりも、断然実写の方を見てほしいモンキーの感想でした。
中1の女の子が母親をビッチって表現はアウトでしょ。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆★★★★★★★★2/10