ザ・サークル
「いいね!」のために、生きている。
味よりも見た目が盛られたものを食べ、友達をレンタルしてパーティーを催し、さりげなくブランド物を隅に置いてアピールしたり、充実した休日、人気のカフェでまったり、友達を踏み台に自分をキレイに、何かと自撮り、あ~あげたらキリがない!!
こいつらみんな「いいね!」が欲しくて生きてます。
「いいね!」が人生のバロメーターになってます。
自分より「いいね!」が少ない奴を見下します。
自分をインフルエンサーだと勘違いしています。
三度のメシより「いいね!」です。
と、これはあくまで過剰にSNS(というかもうこれインスタに特化したことだけど)でアピールをする人たちだけの話で、ここまでいかなくとも自分を含めて自らをさらけ出す人は多いはず。
で、今回鑑賞する映画はそんなSNSがどれだけ便利な可能性を秘めているか、その逆にどれだけ人々を脅かすものなのかを描いたお話です。
今ならではのテーマだと思い、早速劇場で観賞してきました。
作品情報
2013年に発行され、瞬く間に全米ベストセラーとなったピューリッツァー賞作家デイヴ・エガースの同名小説を映画化。
巨大ソーシャルネットワーキングサービスに晴れて就職した女性が、自ら24時間を公開する事で、想像もしなかった事態を描き、遠くない未来に待ち受けるSNSの光と闇を浮き彫りにしたサスペンスエンタテインメントです。
あらすじ
世界No,1のシェアを誇る超巨大SNS企業〈サークル〉。
創始者であるカリスマ経営者のベイリー(トム・ハンクス)が掲げる理想は、全員類が隠すことなくオープンにする“完全”な社会だ。
大きな輪を意味する〈サークル〉はでは、誰もがいつでも繋がりあい、互いの体験をシェアしあい、最高に刺激的な毎日を送ることができる。
憧れの最先端企業〈サークル〉社に採用され、日々奮闘する24歳の新人・メイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけにベイリーの目に留まり、新サービス〈シーチェンジ〉の実験モデルに大抜擢される。
至る所に設置された超小型カメラにより自らの24時間をすべて公開したメイは、あっという間に一千万人を越えるフォロワーを獲得し、アイドル的存在となる。
ベイリーの理想「全人類の透明化」を実現するため更なる新サービス〈ソウルサーチ〉の公開実験に臨むメイ。
だがそこには思わぬ悲劇が待ち受けていた。
あまりにも膨大な善意の渦に隠された〈サークル〉の重大な欠陥に気づきはじめるメイだったが・・・。(HPより抜粋)
監督
今回この作品を手掛けたのは、ジェームズ・ポンソルト。
今回原作のデイヴ・エガーズと共同で脚本もこなしている監督さん。
この手の作品はやはり若い監督がやったほうが現代チックでいいですよね。
これを大御所がやると作家性が強く出てしまう気がしてなりません。
要するにちょうどいいってことです。はい。
いつもながら新進気鋭のクリエイターは全くわかりませんので、彼が手掛けた作品を調べてのご紹介。
インディペンデント映画の祭典・サンダンス映画祭がプレミア上映された作品「Off The Black」で長編映画デビュー。
その後も映画祭に出品し、アルコール依存症の女性の挫折、そして再起していくまでを描いた「スマッシュド~ケイトのアルコールライフ~」、「The Spectacular Now」が2年連続同映画祭の審査員特別賞を獲得。
他にも、ローリングストーン誌の若手記者が人気作家に密着取材する「人生はローリングストーン」などがあります。
キャスト
主人公メイ・ホランドを演じるのはエマ・ワトソン。
ようやくハリーポッター以外の彼女の代表作になった「美女と野獣」。
それに続いて今年2作目の主演作です。
正直彼女を一度もかわいいとかきれいとか思ったことないタチなんで、彼女の魅力とかはスルーで!!
というか彼女についてはこちらで。
超巨大SNS企業のCEO、イーモン・ベイリーを演じるのはトム・ハンクス。
ある意味トムハンクスイヤーだった2016年。
2017年はこれで2本目で、しかもそこまで目立った作品ではないので、なんか久々な感じ。
トムはどちらかというと、ロマコメ、ヒューマンドラマの人のイメージが強いので、こういう社長!というかCEO!みたいな役柄ってどうなんだろう、とちょっと違和感があります。
まぁ彼もオスカー俳優ですから、そんなもの忘れさせてくれるほどトンデモCEOを演じてくれることでしょう。
彼に関してはこちらをどうぞ。
こちらもどうぞ!
他のキャストはこんな感じ。
メイの親友で、彼女をサークルに入社できるよう取り計らうアニーアラートン役に、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のネビュラ役でお馴染み、カレン・ギラン。
サークルの開発者にして、会社の目指す未来に危機感を抱くタイ・ラフィート役に、「アタック・ザ・ブロック」、続編も控える「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のフィン役、「パシフィック・リム/アップ・ライジング」のジョン・ボイエガ。
メイの幼馴染マーサー役に、「6才のボクが、大人になるまで」で主演を務めたエラー・コルトレーン。
そして、メイの父親ビニー役として「エイリアン2」、「アポロ13」で注目を浴び、今年急逝したビル・バクストンなどが出演します。
ありとあらゆる個人情報をオープンにし、理想の世界を目指すSNS企業。
それに翻弄される一人の女性を通じて、ネットの闇を映し出すであろう今作。
一体どんな問題提起をしているのでしょうか。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
何かず~~っと気持ち悪い。
SNSがもたらす可能性と行き過ぎた危険性を孕んだ、警鐘的映画でした
!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
何か新興宗教にハマッた人たち見てるみたい。
世界的に成長著しいSNS企業に就職した主人公を中心に、個人情報の開示をすることや世界中の人々がシェアすることで、互いが助け合えるという可能性を示しながらも、開示自体が果たして本当に必要なのか、それゆえに起きてしまう事故を通じて、SNSという媒体と如何に向き合って付き合ってかなければならないのかを痛感させられる作品でした。
主人公のメイは水道局の電話係というかクレーム処理のようなものの担当として日々働き、家に帰れば半身マヒの父とその面倒を見る母見て暮らしている。
明らかに理想とは程遠い生活を送っているわけですが、友人から世界的SNS企業「サークル」の面接の日程を組んでもらえたことで、彼女の生活が一変していく。
よく企業PRの映像とかでありがちな風通しの良い雰囲気とか、みんなが笑って楽しそうに仕事してる姿、課外活動のイベント風景などなどを見ると、正直そんなわけねえだろ!なんて思ってしまうタチなんですが、このサークルという会社は正にそれを絵に書いたような雰囲気でございまして。
とてつもなく広い庭で、ヨガやら映画、読書、スポーツなどなど、みんながそれぞれ満喫しながら社員と関わり、いざ仕事となると、顧客満足度でいい数字をとるために必死になって業務をこなす。
でもってシェアすることが全てと謳ってるもんだから、あらゆることは社員に筒抜け。
友人関係、家族構成、日々の出来事、社内成績などなど。
そして何か悩みがあれば彼らは助けてくれるし、相談にのってくれる。
だってシェアこそケアなのだから。
その極め付けがフライデー何ちゃらという社長ベイリーによる講義というか、新作発表というか、ただのスタンディングパフォーマンスというか。
ここで彼が素晴らしい言葉や新しいアイディア、そこから生まれた機器を紹介することでみんなが声を荒げる。
シェアって最高!
その中心で働いてる俺ら最高!
世界の最先端にいる俺ら最高!
そんな会社を紹介した友人のアニーは社内の重要な40人の一人だそうで、世界各地を飛び回り不眠不休でサプリメントやら何やら摂取して働いているにもかかわらず、毎日を楽しく過ごしている様子。
ざっくりいうならみんなベイリーという教祖に洗脳された信者というか。
で、その教祖が段々政治家と絡んできて、世界を乗っ取ろうと画策してる、みたいな。
メイの現状からしたら、この会社の居心地は今まで体験したことのない刺激的な場所ではあるが、正直見てるこっちはまぁ気持ち悪い気持ち悪い。
仕事に喜びを感じて一生懸命頑張る人たちには申し訳ないが、仕事にこれっぽっちも情熱を持っていない自分としては、拷問に近いものを見せつけられている気がして、終始不快な顔をしてみていたわけで。
きっと単純という言葉の細胞で構成されているモンキーとしては、このメイの立場にいざなったら、たとえどんなに疲労困憊でも、そこにいることが関わっていることが楽しくて幸せで常に笑顔で働いているんだろうけども、明らかに今そっち側にいない身としてはやっぱり気持ち悪いんですよ、このサークルという会社が。
SNSという麻薬。
今でこそ生活の一部と化しているSNS.。
匿名でつぶやく人もいれば、自分の顔や私生活を堂々とさらし、他人から「いいね!」をもらうことで、自分をさらけ出すことを正当化していることがトレンドになっているわけですが。
正直自分も過去に人前で歌を歌ってパフォーマンスをしていた身としては、こういうことに関しては全然抵抗がなく、むしろ喜んでやりますよくらいのスタンスで、インスタやらtwitterで自身をさらしてるわけで。
確かに何か自分の事を発信してレスポンスがあるのって気持ちいいですよね。
自分もこのブログで共感のコメントをもらうと嬉しいですよ。
でもってそこそこアクセスもあるので、数字が増えたり反響があると嬉しい。
だからもっとやるぞって気になる。
で、減ると焦るw
だからもっと躍起になる。
きっとインスタグラマーやユーチューバーを名乗る方も同じですよね。
完全に気持ちよくなってるし、酔いしれてる。
自分をさらけ出すことに喜びを感じてやっている。
与えられてるうちは気持ちよくて、いざ無くなると欲しがる。
で、これは自分が自分の意志で勝手にやってることだからいいのであって、全員を対象にSNSを通じて他人から見られる、見られなくてはいけなくなる世の中になったらどうなるのかってのが、この映画の示しているところで。
メイはある事故をきっかけに、自分のバスタイム以外の私生活を全て公開するサービス「シーチェンジ」の実験モデルに抜擢されます。
出勤途中でも仕事中でも何気ない会話も気象から終身までフォロワーにひたすら話しかけるという、まるで芸能人密着24時という状況。
まるで気が抜けない。
てか気が抜けた顔なんて見せたらみんなからツッコまれますからね。
こんなプライバシーのない24時間を約1か月続け、完全に注目されることにその気になっているメイの顔が嬉しそうでもあり、疲れてそうでもあり。
それでも充実した毎日を送ることに満足しているメイは、いいようにベイリーに使われていくんですね~。
シーチェンジを利用したまま会議に参加。
全てを一般人にさらけ出すことでクリーンなイメージを植え付けようと考える政治家とあれこれ計画し、選挙の投票をサークルを通じてできるようにするようにしたいという会社の方針を発表します。
ですがメイは義務化したらいいじゃない、と。
はい、ここで思いました。
なんでそんなこと民間の企業がやるんだよと。
そんなこと思ったら友人のアニーが全く同じこと言ってて、思わず同志!!!と心の中で叫びましたがw
どんどん他人のプライバシーをシェアすることで、世界中の人たちを監視しようとしている企業だってことが分からないのかメイよ。
それを気づかせてくれたのは、そんな事を続けるメイに嫌気が指して疎遠になった幼馴染のマーサーを探すという実験でした。
新しい試作品「ソウルサーチ」は司法からの要請で逃げている犯罪者をこのシステムを使って捕まえるというもの。
要はこのサービスを使っているユーザーが、対象を探したり情報を提供することで速やかに対象人物を探し当てることができるよってモノで。
この先離れた友人や探し人を探す手立てにもなると。
で、場内の人間の一言により、メイの幼馴染マーサーを探そうって空気になるんですが。
まぁですね、あり得ないです。
こんな会社、こんな世の中。
色々と人権を無視した話ですし、他人が他人を監視するほど人間暇じゃないでしょ。
でもだからといって今こういう監視下での社会でないと、もっと危険な犯罪が生まれるかもしれないというのも事実であって、ベイリーがやろうとしている意義というか、理想ってのはわかるんです。
それがもとでメイも事故から生還できたわけで、一部は大いに賛成できる部分もあるわけですが、だからといって全て監視されていることを考えると怖いよなぁと。
映画的には。
まぁそんなSNSがこの先間違った方向に行くとこんな世の中になっちゃうよ、最初こそ抵抗していてもみんながいいね!いいね!って言って慣れちゃうと、プライバシーなんかなくなっちゃうよっていう風刺をきかせた話ではあるんですが、映画として、サスペンスというジャンルで括るのならば、てんで面白みはないです。
まずメイがサークルや社内の人間=サークラーに困惑しながらも、徐々にやる気になってシーチェンジのモデルになっていくまでの件が長いです。
本題がそこからなのに、それまでの過程が長いから体感時間がえらく長く感じる。
それ以前にエマ・ワトソンの表情が乏しく、何も感情移入してきません。
半身麻痺のお父さんという設定がメイがこの生活から抜け出そうと頑張るカギになるかと思ったら、そこまでの力強さはなく、結果お父さんの治療は会社が負担するというオマケのような形でしかない。
元開発者のタイ・ラフィートと水面下で会社の悪行を暴こうとするのですが、メイは特にこれといったことをしないし、悪行が案外簡単にタイによって発覚する。
うん、そこまでわかってるのならタイくんや、メイがシーチェンジのモデルになる前に何とかするべきだったんじゃないか?
君を見込んで絶対入ってはいけない場所に入れたのだから、その責任はちゃんと取らないと。
で、この悪行をどうやって世間に暴くのかというと、案外簡単な方法でやっちゃうというもので。
このメイの立場だから実現できることってのはわかるんですが、あ~そうやって解決か!って思いにはならないあっけのなさで。
ざっとこんな感じですが、SNSを盛んにやっている人間としては身につまされる思いには感じましたが、映画としてはそこまで楽しめる内容ではなかったというのが本音であります。
最後に
何度も言う運びになってますが、SNSを通じて起きるかもしれない近い世の中の警鐘をならすサスペンス映画だったわけですが、作品としてはそこまでの面白さに欠けるといった内容にちょっとがっかりだったザ・サークルでありました。
意外とキャストがいいので、そういう意味では見応えはあるかと思いますが、美女と野獣の時のエマの輝きさはありません。
というかそこまでファンじゃないからそう見えてしまったのか。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10