名無し

作品情報
右手で触れた瞬間、相手は消え、死が訪れる--
世にも奇妙な凶器なき犯行と謎に包まれた動機。
その過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、一度は封印されかけた物語を生み出したのは、『爆弾』(25)の怪演で第50回報知映画賞の助演男優賞を受賞し、唯一無二の個性を放つ佐藤二朗。
自ら漫画原作を手がけ、原作・脚本・主演を兼ねる実写映画となった。
この危険な世界に身を投じる共演者にも大胆不敵なアンサンブルキャストが顔を揃えた。容疑者の名付け親となるキーパーソンには、人間味の滲む存在感で近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平。
容疑者の最大の理解者にしてトリガーでもある正体不明の女性には、異色のヤンキー恋愛リアリティショー「ラヴ上等」などでプロデューサーとしても辣腕をふるMEGUMI。
異常な執念で容疑者を追う刑事には、駆け出しの頃に同じ演劇畑出身の佐藤と切磋琢磨した佐々木蔵之介が、“同志”の熱望に応えて駆けつけた。
監督は『嗤う蟲』『悪い夏』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫がつとめ、劇中に仕掛けられた歪みとタブーに潜む闇をえぐり出す。
見えない刃が光るとき、切り裂かれたスクリーンの向こうから、名もなき怪物の未知のうめきが聞こえてくる。(以上、公式より抜粋)
あらすじ
昼下がりのファミレスで、残忍な殺人事件が発生する。
防犯カメラには、犯人と思われる坊主頭の中年男が映っていたが、男の手には凶器のようなものはない。
男が近づき、軽く接触するだけで人が血を吹き出して倒れていくという異様な光景が記録されていた。
捜査を進める警察は、坊主頭の男が11年前に万引きの疑いで調書を取られた「山田太郎」と同一人物であることを突き止める。
山田の自宅住所に急行した捜査員が目にしたものは、腐敗した女性の遺体だった。(映画.comより抜粋)
感想
#名無し 鑑賞。なんだか韓国映画みたい。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) May 22, 2026
無差別殺人事件と並行して描かれる過去とを照らし合わせながら、右手の意味と彼の思いを知る。
しっかりした陰影を意識した撮影の中で飛び散る血飛沫がなんとも豪快。あまりの描写に眠気が吹っ飛ぶ。… pic.twitter.com/aNXAUpMbkh
カメラ目線で牙を向ける佐藤二朗の姿は中々。
見えない凶器で一般人をメッタ刺ししたり銃ぶっ放したりバット振り回したりと、近づいたらヤバイ視覚的怖さと面白さはあれど、物語自体はなんだか。
以下、ネタバレします。
神に見放されたと思い込む典型的な奴。
あなたに災いが起こらないよう祈ってもいいですか?
突然ファミレスの席に座り勝手に悩み事を語った後、話を聞いてくれたお礼に祈らせてくださいとお願いする女性。
今回最初の無差別殺人の被害者である。
なぜ彼女が一番最初に殺されるのかは後に「なるほど」と繋がってくるんだけど、今回の名無しこと「山田太郎」は、どうやら右手に持っている物が、他の人には見えないらしい。
それを良いことに彼は見えない包丁でファミレスの客や店員を見境なく殺傷していく。
料理を運ぶ店員は刺されたことに気付かず、客の指摘によって慌てふためく。
それを見た客は何をされたわけでもないのに山田と目が合っただけで「すいません」と言い放ち、それが引き金となって首を掻っ切られてしまう。
カメラは外からガラス越しに飛び散る血を捉え、如何に店内が阿鼻叫喚と化しているかを映し出す。
一体こいつは何者なのか。
何故無作為に人を殺すのか。
彼に一体何があったのか。
物語は突然過去の回想シーンへと突入。
丸山隆平演じる巡査長が、雨が降りしきる夜の巡回で建物の隅っこで隠れるように座っている少年を発見する。
まるでハズレくじでも引いたかのようなばつの悪い表情を浮かべる警察官だったが、派出所に連れていき調書を取るという警察官としての業務をこなす。
しかし、いざ名前を聞こうにも一切答えようとしない。
耳が聞こえないのかもしれないと思ったが、どうやら耳は聞こえる様子。
一行に名前を答えない少年は、なぜか右手を電気コードのようなものでぐるぐる巻きにし、それを隠す様に汚い布で覆っていた。
とりあえずキャラメルでも食べろよ、そう彼に下手で投げる警察官は、おかしな光景を目にする。
飛んできたキャラメルの箱を少年は右手でキャッチした途端、キャラメルが手の中から消えてしまったのだ。
今のは何だ?そう思った瞬間キャラメルは机の上に置いてあり、錯覚かと思い返す警察官。
このように本作は、無差別殺人を起こす中年男性を止める刑事と、無差別殺人を起こす中年が警察官と同い年の少女と過ごした幼少期の日々を交互に描いていく。
全体的に韓国映画を見てるかのような容赦ない殺戮シーンで、さすがに目を塞ぎたくなったし、なんなら長い幕間のせいで睡魔が襲ってきた俺を覚醒させるほど刺激の強い描写だった。
冒頭から景気の良すぎる血しぶきと、見えない凶器の謎、成す術の無い警察の動向など、目が離せない映画だと確信した。
何が面白いって、乱切りした様な頭髪で、いかにも風呂に入ってなさそうな汚らしい風貌で、普通に返り血を浴びてるような男が街のど真ん中を歩いてるのに、見えない凶器のせいで、被害に遭っている一般人は誰が襲ってるのかわかってないこと。
そのせいでとにかくパニックが起きまくる。
狭いファミレス内で次々流血する客たちは、事の重大さに慌てふためくばかりで誰の仕業か把握できない。
では商店街だとどうだろう。
目が血走った山田太郎が、右手を大きく振り回すと何をされたかわからないまま次々と人が吹っ飛び、血を噴き出し、挙句の果てには失神する。
おそらく鈍器で殴られたのだろう、そこまでは把握するが、一体誰がやったのか皆気付かない。
少し離れて見届ける一般人がいてもいいのに、いかにもなみてくれの山田太郎の存在に気付かない。
外は危険だ!中に入れ!と促す誰かの声、山田自身も一緒に家の中に入って再び見えないバットを振り回す。
外も中も危険なのか、そりゃヤバいって、誰がやったかよりも、どうやって身の危険を守るかに気を取られてしまっているのだ。
終盤でのバザー会場でも、手に入れた拳銃で無差別に発砲していく山田。
ブラスバンド隊のシンバルの音に合わせて発砲したり、風船の割れた音に呼応するかのように引き金を引く山田。
ここでも人が密集しているせいで、人が撃たれて死んでいることに気付くまでそれ内の時間が要されていた。
こういう情景が、なんだかゾンビパニックものだったり韓国ノワールっぽさを助長している気がして、日本映画でこのテイストは新鮮だなと何度も頷いた。
しかし、山田の右腕の由来が明かされないことや、忌々しい右手によって人と繋がることができない辛さに神さまを恨むような姿、戸籍もない身寄りもない子供が何とか家庭を持ち仕事を手に入れ家族を作ろうとするが、それが上手くいかないことによって封印していた右手を解放してしまう山田に対する社会性が希薄過ぎやしないかと、せっかくの題材が勿体ないと感じてしまった。
何かにつけて貧困や社会問題を映画に取り入れることはしなくていいと思っているが、ここまでマイノリティを描いておきながら、山田がこうなってしまった理由はどこにあるのかといった問題提起に一切触れないのはさすがに良くない。
変な話右手の能力は、触れたモノの命を奪ってしまう恐ろしい力であり、恐らくそんな子供を持ってしまった両親は、誰にも危害を与えないようにという願いを、あの右手に撒いた電気コードの様なものに込めて外に置き去りにしたのだと思う。
そんな突然変異であり特異体質を持ってこの世に生まれてしまった山田太郎の少年期の辛さをあれだけ時間をかけて描きながら、親身になって世話をしてくれた警察官との日々を映しておきながら、一体なぜこんな人生を送らなければならなかったのかという疑問を投げずに、ただ憂さ晴らしの如く無差別殺人をして、収まりのない怒りを露わにする山田太郎に、父親の仇でもある佐々木蔵之介が「お前はクソだ」で済ませるのもどうかと思う。
そして辿りついた出口は、MEGUMI演じる幼馴染との間に生まれるはずの子供が、実は生きていて、息子と手をつなぐことで初めて「父」として「人間」として人と繋がることができたという悲願を達成して天に召されるというオチ。
やっぱり社会性が乏しい、というかそれから目を背けて展開させていく脚本だなと思ったし、それでは収まりがつかないんじゃないかと思った。
悪い映画ではない。
こうした残虐性を帯びた映画は人を呼ぶし、ショッキング故に記憶にも残る衝撃の強い作品として語られることだろう。
去年「爆弾」でスズキタゴサクというホラーアイコンを生み出した佐藤二朗が、いい意味で調子に乗った役柄であることは明白。
それが今回も見事にハマっていてキャラクターとしても見ごたえ十分なのだ。
鼻息を荒くして興奮する表情は、また新たな佐藤二朗を観れたという収穫があったし、MEGUMIとの接吻シーンは、予想をはるかに超えた「見るに堪えない」接吻シーンとして脳裏にこびりつく映像だった。
にも拘らずあんな姿になってしまうMEGUMIも印象的だし、丸山隆平もクセの強い息子と太郎と花子の面倒を見るという良き父親の姿をそつなくこなしていた。
さらに少々誇張し過ぎな気はしたが、ベテラン所轄の刑事を演じた佐々木蔵之介が、同志とも言える佐藤二朗を追う立場として手を抜かない闘志を見せていたように思う。
そうした演者の芝居も見事にハマっていただけに、非常に惜しい映画だった。
最後に
城定監督、またしても職人的な撮影でいい画を連発していたように思う。
白飛びが多くて画がつまらない日本映画の中で、こうしてしっかり陰影をつけて映画全体のトーンを統一していく腕は見事。
さらに見えない凶器を受け大きく吹っ飛ぶエキストラたちを、合成を入れながらリアルな動きを見せたアクションデザインも見事だったと思う。
総じてよく出来てるんですよ映画的に。
なのにメッセージ性が皆無という辛さ。
決して娯楽性の強い映画で終わってはいけない内容だったはず。
神に対する各々の見解も考察すればあれこれ語れそうだが、結局要素としては弱いとしか言えず。
とはいえ佐藤二朗渾身の脚本だし、ヒットはしてほしいですね。
どうか俺のしょうもない不満なんか犬に食われますようにw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10