X エックス
ホラーが苦手と言いながらこの数年でだいぶ耐性もついてきたことで、いわゆる「名作ホラー」作品と呼ばれるモノはおさえてくることができました。
「エクソシスト」に「キャリー」、「悪魔のいけにえ」、「ゾンビ」、「オーメン」、「サスペリア」など、今まで「怖そう」ってだけでこんなにも面白い作品を避けてきた自分を後悔しているくらいですw
どうやらホラー映画は70年代が盛んで元気だったそうです。
確かにこれだけの作品がサラッと出てくるくらいですから、相当製作されてたんでしょうね。
今回鑑賞する映画は、そんな「70年代ホラーが帰ってきた!」と呼ばれているホラー映画。
79年のテキサスを舞台に、3組のカップルが映画の撮影に訪れた場所が「史上最高齢の殺人犯夫婦が住んでる場所だった」というもの。
予告編を見る限り、これまでおさえてきたホラー映画オマージュがふんだんに含まれているように見え、僕がこれまで見たホラー映画の総復習になってるんじゃないかとさえ思えてますw
真夏のエクストリーム・ライド・ホラーとってキャッチコピーされてますけど、僕はライドオンできるのでしょうかw
早速観賞してまいりました!!
作品情報
「ミッドサマー」や「へレディタリー/継承」を輩出した映画スタジオ「A24」が、新たなホラー映画を生みだした。
1879年のテキサスを舞台に、映画の撮影でとある農場に訪れた3組のカップルが、宿を提供した老人夫婦によって、思いがけない恐怖体験をしていくホラー映画。
ホラー界の重鎮スティーヴン・キングや「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」のエドガー・ライト監督らが絶賛した本作は、A24作品初の3部作構想となっており、本作はその第1作目にあたる。
既に第2作目の撮影を極秘に行っており、本作同様続編も期待の声が上がっている。
「ABC・オブ・デス」や「キャビン・フィーバー2」でホラー映画界で頭角を現してきたタイ・ウェストが、これまでのホラー映画にリスペクトを捧げつつ、死亡フラグをも見事に操作することで独創性あふれるホラー映画に仕上げた。
「X」とは一体何なのか。
極限のエクストリームか、快感のエクスタシーか、それとも未知なるファクターなのか。
あらすじ
1979年、テキサス。
女優のマキシーン(ミア・ゴス)とそのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン(マーティン・ヘンダーソン)、ブロンド女優のボビー・リン(ブリタニー・スノウ)とベトナム帰還兵で俳優のジャクソン(スコット・メスカディ)、そして自主映画監督の学生RJ(オーウェン・キャンベル)と、その彼女で録音担当の学生ロレイン(ジェナ・オルテガ)の3組のカップルは、映画撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。
彼らが撮影する映画のタイトルは「農場の娘たち」。
この映画でドル箱を狙う――。
6人の野心はむきだしだ。
そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい老人のハワード(スティーブン・ユーア)だった。
彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。
一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パール(??)と目が合ってしまう。
そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった――
監督
本作を手掛けるのは、タイ・ウェスト。
イーライ・ロスがプロデュースした前作「サクラメント死の楽園」以来9年ぶりとなる監督作だそうです。
彼が手掛けた「The House of the Devil」という映画が、メディアから「この10年で最も素晴らしいホラー映画の1本」と高く評価されたそうで、今後目が離せないホラー映画監督の一人とされてるようです。
しかも本作は3部作というA24として初のシリーズ作品になってるのも面白い所。
監督がそれだけ期待されているということの現れではないでしょうか。
どうやら本作終了後に、本作の次回作である「Pearl(原題)」の特報映像が流れるとのこと。
本作の60年前が舞台という前日譚だそうで、本作よりも全く異なるスタイルのホラーになってるとのこと。
一体どんな映画になってるのか、楽しみですね。
キャラクター紹介
- マキシーン(ミア・ゴス)・・・XFACTOR(未知なる才能)を持つ女優。テキサス出身のストリッパー兼女優。1979年に放送されていた「ワンダーウーマン」で爆発的人気の女優リンダ・カーターに憧れ、トップスターを夢みる。
- ウェイン(マーティン・ヘンダーソン)・・・敏腕プロデューサー。マキシーンの才能に惚れ込み、彼女の主演映画でメインストリームに躍り出て、大金を稼ごうと企む。
- ボビ-=リン(ブリタニー・スノウ)・・・ブロンドの女優。ポリアモリスト(複数恋愛主義者)のブロンド女優。ウェインの話に乗っかり、アメリカンドリームを期待する。
- ジャクソン(スコット・メスカディ)・・・ベトナム帰還兵。戦争から帰還したことを誇りにしているポリアモリスト(複数恋愛主義者)の俳優。
- ロレイン(ジェナ・オルテガ)・・・若き録音担当。RJの彼女で、録音スタッフとして撮影に参加。俳優たちの自由奔放さに疑心暗鬼に・・・。
- RJ(オーウェン・キャンベル)・・・新鋭の自主映画監督。ジャン=リュック・ゴダールを研究している学生監督。今回、監督する「農場の娘たち」は、背徳的で芸術的な作品を目指している様子。
- ハワード(スティーヴン・ユーア)・・・気難しい老人。第一次、第二次世界大戦に従軍した退役軍人。戦後、パールとともに農場でひっそりと過ごす。
- パール(???)・・・謎の老人。ハワードの妻。若い頃はダンサーだったようだが・・・。
(以上HPより)
3部作になるとされている本作。
その序章ということなので、続編に繋がるような終わり方をすると思うんですが、どんな結末になるんでしょうか。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#Xエックス 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年7月8日
いやー、あのシーンは美しかったですね。
若さだけが素晴らしいなんてことはありませんもんね。
でも、素肌にオーバーオールの方が、僕は大好きです。 pic.twitter.com/ujKwSafDMA
エログロではなく、エロとグロ。
若さを失った老夫婦と、ああはなりたくないと強く願う女性の対比を下地に、名作オマージュ満載のB級ホラー映画としてよくできたと思う。
以下、ネタバレします。
悪魔とは何か
「悪魔のいけにえ」よろしく男女3組のカップルがポルノ映画での成功を夢見て訪れる悪魔の入り口は、若さを追い求める老夫婦の願いと嫉妬によってエクストリームライドしながら、あの映画もこの映画も取り入れ歌もしっかり聞かせることで心情を吐露させることで、案外丁寧な作りでありながらしっかり怖いB級ホラー映画でございました。
凄く面白かったわけではないんですが、2時間足らずで少しづつエロからグロへとスライドしていく流れ、劇中で歌を聴かせながら老婆の抱く想いと若者たちが夢見る思いを尺を取って見せていくのは、怠いと言えばそれまでだけど意味があって良かったと思います。
また裏テーマとしてキリスト教原理主義者の妄信ぶりも見て取られているのも面白い。
それこそ保守的な地域であるテキサスの田舎町が舞台であり、神を信じた結果ただの骨と皮だけとなった老夫婦が自分自身しか信じない辺りや、アバズレたちを「悪魔」と見做して裁きを下す殺戮描写は、劇中で散々流れる演説シーンをサブリミナル的に見せることでより怖さを助長していたように思えます。
では若者たちはどうなのかというと、愛と自由を掲げるヒッピーのような風貌から何かを信じるというよりも「今を楽しむ」価値観を抱いてる節が見えます。
誰とでもセックスすることが何よりも幸福であり至福でもある、快楽を求めることの何がいけないのかと堂々と宣言する潔さや、それに感化されてトライしていく若者、逆に失望して逃げ出したくなる者など、色とりどりの価値観を持つ者たちでした。
また、ロレインとRJのカップルから見て取れるように、カップルであるが故に縛られていたロレインが、相手の承認なしでも行動に移すことが強く描かれており、79年が舞台とはいえ、現代的でもあるなと感じた部分でした。
ただこの中で自分を強く信じる女性がいます。
それがマキシーンでした。
鏡に向かって薬物を吸引しながら「私はセックスシンボル」と自分に言い聞かせたり「私は素晴らしいし、自分以外は受け入れない」といったニュアンスの自己暗示めいた発言を繰り返しており、なぜ彼女がそんなことを言うのかのオチも含めて上手かったと思います。
要は互いが相手を悪魔と見ていて、信じることの良さとその顛末をミア・ゴスが演じたマキシーンと老婆の対比を「現在と未来」のように見せることで描いてたのかなと。
では悪魔とはないかと尋ねたらやはり「老い」なのではないかと。
老婆は、若者たちをアバズレとこき下ろしながらも、彼らに羨望の眼差しを見せており、かつて自分のダンサーだったという打ち明け話から「若さ=美」を、年老いても尚求めていた節が見られます。
さらには「性」に対しても興味を持ち続けており、過度な運動をすれば心臓が持たないと吐露していた老人ハワードが制止しても、体を求めてしまうシーンがありました。
ハワードからすれば若者たちの性にどん欲な姿は、パールに目の毒であり、それが自分に負担がかかることにもつながることから、排除することで生きながらえようと感がていたのかもしれません。
とはいえ長年連れ添った妻ですから、彼女が再び性に目覚めたのであれば死を覚悟して受け入れるのですから、美しいではありませんか。
ただまさかボカシを入れてまで性行為を見せるってのは聞いてませんw
このように「若さ」を求めるパールは、過去の自分にそっくりなマキシーンを見るたびに「若さ」を追い求めながらも彼らを処理していくのでありました。
名作オマージュ満載
本作はとにかく当時の代表作を取り入れた作品だったように思えます。
それこそ若者たちが田舎町をバンに乗って訪れたら悪夢の連続でしたというプロット自体が「悪魔のいけにえ」と同じ。
ラストシーンで単身バンに乗って逃げる際に見える朝日の美しさも、どこか「悪魔のいけにえ」ぽさを感じさせます。
他にも劇中で言及していたヒッチコック監督の名作「サイコ」ですが、ジャクソンが沼に沈められた車を見つめるシーンはサイコにも登場していることから、オマージュとして取り入れてそうでしたね。
かなり直接的だったのは「シャイニング」。
斧でドアの扉を壊し顔を覗かせるシーンは見たことない人でも知ってるほど有名ですが、本作の場合「地下室に閉じ込められたから扉を壊して鍵を外す」シーンとして使われていました。
扉の向こう側から牙むき出しの殺人者が顔を覗かせるのではなく、被害者であるロレインが外に出たくて顔を覗かせるシーンになってましたね。
またポール・トーマス・アンダーーソンの「ブギーナイツ」からも影響されていたように感じます。
ポルノ業界でスターになることを夢見るマキシーンが、「ブギーナイツ」でボルの業界にスカウトされ大成しようと夢を見出すマーク・ウォルバーグ演じた主人公と重なります。
また何より「ブギーナイツ」は、それ後普及していく家庭用ビデオ機によって衰退の一途を辿っていくポルノ映画の栄枯盛衰を描いた作品でしたから、マキシーンがポルノ女優のスターになると言って逃亡を図ったとしても末路が分かっている我々からすれば、彼女がその後どうなるかと推測できるわけで、意外と悲しい物語とも受け取れる映画だったようにも思えます。
他にも細かい部分で言えば、老夫婦が殺人者だったという設定がシャマラン監督の「ヴィジット」だったり、本作と同じくA24作品である「ミッドサマー」にも通じる設定。
さらには牛小屋でうっかり釘を踏んでしまうウェインは、「クワイエット・プレイス」でも同じようなシーンがありました。
手前に釘があることを先に見せることで「踏んでしまうかもしれない」という恐怖心を煽る演出は一緒で、誰もが踏んでほしくないと祈るも踏んでしまうホラーお約束のパターンは、どの作品でもドキドキしてしまうモノです。
最後に
最後に殺害現場を訪れた保安官たちが、撮影で使っていたカメラを見つけるや否や「どうせクソつまんないホラー映画でも撮ってたんだろ?」という言葉で幕を閉じる、非常に自虐性の高い締め方だったんですよね。
先にご覧になった方々も「ホラーコメディ」だと仰ってたのが良く見受けられたんですが、僕の場合結構真面目な映画だなぁと捉えてしまいました。
確かに今思えば、ババアが若者のいる部屋に勝手に入ってきては、ピチピチしたお肌に興奮したり、そこからまさかおっぱじめてしまうなんて、ベッドの下に隠れていたマキシーン同様「嘘でしょ!?」と思わず笑ってしまう描写だったかもしれません。
しかし僕も気が付けば中年となったことで、過去の若かりし自分が持っていた体力や輝きはもはやありません。
もし今後自分とうり二つの青年を見たら、憧れと嫉妬を抱いてしまうかもしれませんから、決してパールを笑いものにできないよなぁと、どこか自分と重ねて見てしまいがちでしたねw
またマキシーンの衣装はドキドキしました。
時代とはいえ素肌にオーバーオール、しかもショートパンツタイプはエロいw
幾ら開放的な場所とはいえ、あんな姿で歩かれたらそりゃもうw
結局「X」ってタイトルやX-ファクター(未知の才能)って何だったんでしょうね。
若者たちには誰でも当てはまる言葉だと思うんですが、なぜ彼女だけだX-ファクターがあるという設定だったのか。
それと序盤は時間の経過をスムーズに見せてましたが、現地に着いてからはテンポが損なわれていたのは勿体なかったなぁと。
あとはエロとグロを分けずに見せても良かったかもですね。
ポルノ女優が裸になりながら殺されていく方がよりB級感が出て良かったのになぁと。
次回作は老婆パールを描く前日譚だそうで。
なぜ彼女はあんな老婆になってしまったのかが理解できる「アンサー映画」になってることでしょう。
とりあえず早く公開してほしいですね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10