AI崩壊
人間の生活の中で欠かすことのできない家電製品や自動車、スマホといった製品。これらに「人工知能」が搭載されているのは、今や基本中の基本になってますよね。
だからごく最近の事のように感じますが、実はかなり前から開発は進められたようで、科学の進歩によってようやく僕らの身近な存在になったのだと思います。
この人工知能の事を「AI」と呼ぶのも、だいぶ浸透したのではないでしょうか。
じゃあぶっちゃけ、AIって何よ?って言われると、なかなかうまく説明しにくいと思うんですが、ざっくり言うと「人工的に作られた知能を持つシステム」ってのが一つの定義とされているようです。
これまで人間にしかできなかった知的な行為を、計算能力やらアルゴリズムやらデータなどを用いて答えを導きだしてくれるってのが、このAIなんですね。
これは多分ですけど、僕が初めて「AI」という言葉を聞いたのは、「ドラゴンクエストⅣ」だと思います。
「ガンガンいこうぜ」とか「いのちだいじに」、「じゅもんつかうな」のような、さくせんコマンドを入力することで、AIが自動的に攻撃や防御を選択して戦闘してくれるという、当時RPGとしては画期的なコマンドだったと思います。
これが今や当たり前にあるのですから、時代は変わったもんです(遠目・・・)。
しかし、この技術がこれ以上発達すると、人間がする仕事をAIを搭載したロボットや機械が奪い、最終的には様々な場所や会社で彼らの方が多くなるんじゃないのか、なんてのも言われてますよね。
学習すれば何でもできてしまうわけですから、もはや人間のすることなんてなくなるんじゃないか。
となると、人間の価値さえ奪われてしまうのではないか。
機械が進化すれば、AIが進化すれば、立場も変わってしまうのではないか・・・。
洋画でも「ブレードランナー」や「A.I.」、「2001年宇宙の旅」、「ターミネーター」といった代表的なものから、「エクス・マキナ」、「アイ、ロボット」など、様々なSF映画でその問題を危惧した作品が多く存在していますし、あながち遠い未来の話ではない、のかもしれません。
じゃあ邦画は?あまりないよなぁ…。
と思ったら!
洋画ではほぼ出尽くしたんじゃないかというほど描かれた「AI」にまつわる映画を、日本でもようやく大作映画として製作、公開される日が来ました。
きっとド派手な映画ではないだろうけど、エンタメ要素盛りだくさんのお話になっていることでしょう。
満を持して作られた近未来SFサスペンス映画。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
韓国映画のリメイクながら、当時の日本の社会問題を上手く取り込み話題を呼んだ「22年目の告白~私が殺人犯です~」の監督が、今度は10年後の未来の日本を舞台に、人々の生活にかかせなくなった「人工知能」によって未曾有の大混乱を招いてしまう、という完全オリジナル作品で挑む。
全国民の個人情報などを把握しつくしているAIが突如暴走し人間たちを選別し始めていく。
警察はテロリストとして、AIを開発した天才科学者を指名手配、科学者の孤独な逃亡と最新AIで容疑者を追走する警察の姿を、破格のスケールで描く。
人を救うために作られたAIのはずが、なぜ突如暴走したのか。
予測不能な展開とスピーディーなアクションで圧倒的画力で観衆を楽しませる、今冬最大のサスペンンス超大作です。
あらすじ
2030年。
人々の生活を支える医療AI「のぞみ」を開発者である桐生浩介(大沢たかお)は、その功績が認められ娘とともに久々に日本に帰国する。
英雄のような扱いを受ける桐生だったが、突如のぞみが暴走を開始——人間の生きる価値を合理的に選別し、殺戮を始める。
警察庁の天才捜査官・桜庭(岩田剛典)は、AIを暴走させたテロリストを開発者である桐生と断定。
日本中に張り巡らされたAI監視網で、逃亡者・桐生を追い詰める。
桐生が開発したAIを管理していたのは、桐生の亡き妻でありAI共同開発者の望(松嶋菜々子)の弟、西村(賀来賢人)。
事件の鍵を握る西村も奔走する一方で、所轄のベテラン刑事・合田(三浦友和)と、捜査一課の新米刑事・奥瀬(広瀬アリス)は足を使った捜査で桐生に迫る。
日本中がパニックに陥る中、桐生の必死の逃亡の果てに待っているものとは?
一体、AIはなぜ暴走したのか?
止まらないAI社会の崩壊は、衝撃の結末へ——。(HPより抜粋)
監督
今作を手掛けるのは、入江悠。
気が付けば、豪華俳優陣をキャスティングして作品を作れるまでになった監督。
確かに「22年目の告白」はヒットしましたからね~、それもあっての抜擢だってのもわかります。
そして小規模作品などで続けてきた「社会性」を取り入れる姿勢も忘れてないのがいいですよね。
ただ、今作は洋画では見慣れすぎてしまったテーマ。
一体どうやって日本風のSF映画に仕上がてるのかが気になります。
今回は「人工知能学会」にまで入会し、約1年かけてメーカー担当の型や教授など、その道のスペシャリストに取材を敢行して脚本を作り上げたそうで、これだけ力を入れたとなれば、穴のない設定になっているはずでしょう。
また逃亡劇ということで、脚本執筆の際にはスピード感を重視したそうで、テンポの速い展開が予想されます。
監督にとって念願の企画、非常に楽しみです。
彼に関してはこちらもどうぞ。
登場人物紹介
- 桐生浩介(大沢たかお)
かつて東北情報先端大学大学院の研究室に所属していた、天才科学者。
愛する妻=望を死の淵から救うため、その並外れた頭脳と知識で高度な医療AIを開発するが、国の許可が下りず、妻を助ける事が叶わなかった。
望の死後すぐ国からの許可が下り、AI「のぞみ」の天才開発者として国内外から称賛を浴びるが、「のぞみ」の管理・運営は西村に一任し、一人娘心と共にシンガポールへ移住。
研究職から足を洗い穏やかな生活を送っていたが、「のぞみ」の功績が認められ総理大臣賞の授与が決定。気の進まないまま心と共に久しぶりに帰国する。
しかし、桐生の帰国を待っていたかのように、突如暴走を始めた「のぞみ」。日本中がパニックに陥る中、「のぞみ」を操ったテロリストとして警察から追われる身に…。
- 桐生望(松嶋菜々子)
桐生の亡き妻。
共同開発者だった桐生と結婚後も大学院で研究を続けていたが、がんに冒され医療AIの認可直前で他界。
死の直前まで、世界中の苦しんでいる人達を救うため医療AIの認可を願っており、同時にAIの暴走も危惧していた。
- 西村悟(賀来賢人)
桐生の義弟で、HOPE社の代表取締役。桐生と亡き姉=望の思いを継ぎ、❝人を幸せにするためのAI❞をモットーにAI「のぞみ」の管理・運営を続けていたが、「のぞみ」の暴走になすすべもない。
桐生との信頼関係は強く、逃亡者の身となった彼をフォローしつつ、サーバー室に閉じ込められた心の救出に奔走する。
- 飯田眞子(玉城ティナ)
HOPE社に勤務する有能な広報担当。幼い時に父を亡くして以来、父の写真を持ち歩いており、同じく亡き母との家族写真を持ち歩く心の思いに理解を示し温かく接する。
- 桐生心(田牧そら)
桐生の一人娘。
医療AI「のぞみ」が完成していたのに、亡き母にAIを使った治療を行わなかった桐生に対して、憤りを感じている。
- 桜庭誠(岩田剛典)
警察庁警備局理事官。
海外で人工知能研究でMITの博士号を取得し、帰国後最年少で理事官に就任した天才肌。
頭脳明晰なうえ、正義感も人一倍強い。
同じ研究者として、桐生にあこがれの念を抱いていたが、英雄から一転テロリストとなった桐生を、世間に公表前の捜査AI「百眼」で追う。
- 望月剣(高嶋政宏)
サイバー犯罪対策課係長。
秘密裏に開発が進められていた捜査AIを搭載した〈サイバー操作室〉で、管理官=桜庭の元、陣頭指揮を執る。
犯罪撲滅のためには捜査AIは必要だと考えている。
- 林原舞花(芦名星)
望月と共に桜庭を支えるサイバー捜査官。
桜庭の才能に心酔しており、彼の右腕。
現場捜査官及び、CITEの指揮を執る。
- 合田京一(三浦友和)
麹町署の所轄刑事。
定年間近の大ベテランで、「刑事の基本は現場」という昔ながらの足を使った捜査がモットー。
桜庭が陣頭指揮を執るサイバー犯罪対策課の捜査AI「百眼」の、全国民のプライバシーをさらす捜査法に激しい嫌悪感を覚え、奥瀬と共にスタンドプレーを開始。刑事の勘を発揮する。
- 奥瀬久未(広瀬アリス)
警視庁捜査一課の新米刑事。
仕事の情熱はあるものの、経験値はまだまだ低い。
最先端の技術を駆使したサイバー犯罪対策課の強引な捜査法に、素直に感嘆するイマドキの若者。
昔気質の合田とは一見ソリが合わないが、合田と行動を共にするうちに次第に感化されいいコンビになっていく。
- 田中英子(余貴美子)
女性初の現職の総理大臣。
かつて、厚生労働大臣時代に桐生が開発した医療AI「のぞみ」に対して許可を出さなかった過去を持つ。
しかし、自身がAI「のぞみ」と連動するペースメーカーによって命を助けられると態度を一変、医療AIを許可した。
(以上、HPより抜粋)
AIは本当に勝手にバグを起こしたのか?
そしてAIに頼りがちな今の社会に、監督がどんな風刺を突き付けるのでしょうか!
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
これ普通によくできてるんじゃない?
目新しさはないが、これぞ日本風のSFサスペンスとして無理なく仕上げた佳作でした!
以下、ネタバレします。
もしAIが暴走したら、怖いぜ~。
第4のライフラインとして人々に寄り添うAIが暴走をし始めたら、というIFを題材に、テロリスト扱いされる開発者の逃亡、彼に協力する義弟、サーバールームに取り残された娘、最高基準の監視網で容疑者を追うサイバー課や現場主義の警部、そしてAI機能に頼るあまり命の危険にさらされたり、AIによって仕事を奪われた者たちのデモ、さらには暗躍する権力者の陰謀など、今後起こりうるかもしれない事態を想定しながら、しっかりエンタメ要素を盛り込ませ没入感あるサスペンスに仕上げた監督の真面目さがよく出た佳作でした。
人の命を救うために作られた医療AIのぞみ。
このデバイスによって、救われた命はたくさんあるはず。
しかしそればかりに頼ってはいけないのかもしれない。
なぜなら、そのAIを管理するのも、結局は人間なのだから。
今作は正にAIに頼るばかりに、そのデバイス自身が本来の機能を見失うことで起こり得る事態を、余すことなく描いてました。
病院でのパニックはもちろんのこと、日常生活に支障をきたさないように装備しているペースメーカーが機能を停止すれば心臓も止まり死に至るし、個人情報を全て登録しているから預貯金も引き出せない、電車も止まる、スマート機能の自動車も運転停止、それがきっかけで玉突き事故になり、国民は大パニックになる。
その怒りはやがて管理する会社や国に矛先を向け、大規模なデモと化す。
またAIの管理によって人間の労働は必要なくなり、仕事にありつけなくなる人多数増え、ラッダイト運動(産業革命時にも起きた機械の普及によって、失業の恐れを感じた市民によるデモのこと)を起こす人を描かれるなど、進化したAIによっておこるメリットとデメリットを明確に提示した背景は、非常にリアルでした。
そして容疑者を追うために起用された監視網「百眼」による捜査も怖いものがありました。
街に設置された監視カメラや個人のスマホカメラ、ドライブレコーダーなどにいとも簡単にアクセスし、リアルタイムで特定の人物を追跡できるというシステム。
個人情報保護法というモノがありながら、犯罪を未然に阻止するためにそれを無視した捜査は明らかに違法的なものですが、僕らの知らないところで秘密裏に進めている捜査法なのかもしれません。
「キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー」で扱われたインサイト計画は、犯罪者を犯罪を犯す前に特定し排除するという画期的なシステムでしたが、法を犯す前の人間はあくまで善人であること、個人のプライバシーを無視した捜査であること、また法を執行する者にとって明らかに一線を越えたやり方であることに異を唱えたスティーブ・ロジャースの物語でした。
それと非常に似た設定でしたし、この手の捜査は「踊る大捜査線/レインボーブリッジを封鎖しろ」でも扱われていた捜査。
これがもしかしたら近い将来現実になるのか?と考えると、恐怖でしかありませんね。
逃亡劇ならではのスリリングな展開
こういった設定に加え、本作は「逃亡劇」であるために、とにかくスリリングな描写が多々施されていました。
高速道路内で立ち往生する桐生の前に、すぐさま容疑者として特定し包囲する警察の前に、AI暴走により運転を制止された車が上からツッコんできて大きな事故に。
渋滞した車の間をすり抜けて必死の逃走を図る桐生。
そこから街という街を逃げ回るんですが、逃げる桐生を追う「百眼」のハイスピードな監視能力が凄い。
カメラというカメラから情報を引き出しすぐさま探し当てるという動画をガンガン上書きして我々につきつけるんですね。
この「逃げる」桐生と、追う「百眼」の映像をどんどん流すことで、こちらも追われているような感覚に。
また使用にBGMを使わない演出も緊張感を生んでましたし、ここぞというときにBGMを使う手法も見事でした。
そんな攻防の中、桐生は裏路地を這いずり回ったり、建設途中の地下道にもぐりこんだり、果てはカメラの死角を利用して長距離トラックの荷台に乗り込んだりと、これぞ逃亡劇!といえる足と頭をうまく利用した逃げっぷり。
その間にも義弟である悟と緻密な連絡を取ったり、罠を仕掛けるためのプログラムを急いで作ったりと大忙し。
そしてフェリーに乗り込むものの、あっという間に見つけられ海に飛びこむ体を張った逃亡から、うまく悟と合流するもこれまたすぐ見つかってしまう追いかけっこ。
ここから一体誰がAI望みを暴走させたのか、という真相にあと一息まで描く。
と、このように、澁谷のスクランブル交差点や高速道路、娯楽施設、船内などにたくさんのエキストラを入れることで、如何にパニックであるかを映し出し、その中で本気で逃げる桐生演じる大沢たかおの切迫した表情がリリティを生むんですね。
さらには千葉のデータセンターに設置されたAIのぞみ本体の近未来的ならせん状のデザインや、サーバールーム内にあるたくさんのサーバーが記号的で規則正しい配置、白を基調にすることでどこか無機質で温もりを感じさせない背景が、さらにデジタルで近未来を助長させるし、ハリウッドのような大規模な予算で描けない世知辛い事情もありながら、ドローン機や様々な映像を矢継ぎ早に映す監視カメラの映像も相まって、極限まで近未来であることを描いた手の込んだ編集に拍手を送りたいです。
AI崩壊=愛の崩壊?
ここまでAIが及ぼす影響や物語における背景などに言及してきましたが、この映画はこれだけでは終わらない。
人間と人間の間にある本来の関係性もしっかり取り入れていたこと。
例えばフェリーから海へ飛び込んだ桐生は、網漁をしていた漁師によって救出されるんですね。
この時漁師は今どんな事件が起きてるかということ、さらに桐生が容疑者であることを新聞で知っていたことが明かされています。
しかし漁師は彼をかばい救出したのです。
彼が作ったAIのぞみのおかげで、近しい人物が延命することができた、今起きてることは大変なことかもしれないし彼がやったのかもしれない、でも命を救った人物であることは確か。
そんな人間の中にある両親によって桐生は再び逃亡することができたのです。
また所轄の刑事役である合田の読みも、ただ容疑者を追いかけるのでなく頭と足を使って捜査をする大事さや、本当に彼が容疑者なのか?という問いを個人で考えるという、データだけでは測れない思考力を描いていたんですね。
他にもAI普及率の低い沖縄県の住民の映像や、暴走した時にどう対処するかといったっ分も描かれているために、全てがデジタルに支配された世界でなく、人間が人間を見極める判断力というか、数字では測れないアナログな部分も同時に描かれていたんですよね。
だからAIが崩壊したとしても、人間同士の信頼や愛は崩壊されない、ということも伝えていたのではないかと思います。
最後に
我々は今、スマートフォンを代表例に、ネットやAIによって大変便利な生活を送っているのが現状です。
しかしそれによって人と人との間に存在するはずの信用や信頼がぶれてきているのも事実。
機械に頼る社会も良いですが、何か大事なことを見失っているのかもしれません。
劇中では、人と機械の決定的に違うことは、責任を取れること、と語っていました。
そう、人間は責任が取れる生物です。
我々は便利な機能に責任を押し付けることもできませんし、機械を使うのは人間ですから結局は人間がどうするかを考えなけれないけないんですよね。
またAIが全てを決断するということ、それを鵜呑みにする人間という状態になってしまうことも怖いです。
あくまでAIは人間ができないことや時間のかかることを代わりにやるような機械であることを強く心に刻んでおかないと、本当に頼りっきりになってしまうわけで、あくまでAIが判断した答えは一つの選択でしかないことも考慮しなければいけないのかなとも思います。
AIは人間を本当に幸せにできるのか?という問いに対して、桐生は、それは親は本当に子を幸せにすることができるのか?と同じだ、と言って幕は閉じます。
要は完ぺきではないんですよねAIも人も。どちらも人間次第なんですよね。
それを教えるための作品だと思います。
しっかし、前半は楽しかったなぁ。
事件が起きる2030年までを足早に見せることで背景がすぐ理解できるし、そこから一気に逃亡劇へとスライドしていく。
様々な人間たちがどう動くのかもしっかり脚本に組み込んでるから、要らない描写はなかったし。
ちょっと無理ある展開はありましたけど、そこはまぁ目を瞑りましょうw
多分これを見た後、色んな人が、10年前の洋画を見たほうが楽しい、とか言うと思うんですが、それ言っちゃあおしまいです。
これまでできなかったことを入江監督が、しかもオリジナルで手掛けた大作です。
全然変なところありませんよ。既視感があるだけ、それも洋画で。
日本では、ないですこんな映画。
こういう映画を讃えないと、日本の大作実写映画というコンテンツが死んじゃいますよ。
ホント良くできてるので見てほしい作品でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10