モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「アマチュア」感想ネタバレあり解説 ちゃんと素人感出てたよラミ・マレック。

アマチュア

我々がよく知るスパイ映画「007」や「ミッション・インポッシブル」のキャラクターは、どんな危険も顧みず作戦を成功させる、いわば「プロ」。

 

その流儀を肌で感じながら、普通の人間では到底無茶であろう戦闘や格闘をしてくれるから「非日常体験」を味わえるというもの。

おまけにカッコいいからたまらない。

 

しかし今回鑑賞する映画は、スパイアクション映画だけどプロじゃない。

戦闘の訓練も受けてなければ実践すらもしていない。

唯一の能力は「頭脳」ときたもんだ。

 

かつて分析官が現場に出て諜報活動をする「エージェント・ライアン」なんてのがありましたが、あっちは不慣れとはいえそこそこ腕が立っていたので、今回はそれ以上に「素人」なんでしょう。

こんな地味なキャラで「スパイ映画」になるのか…。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ロバート・リテルの同名小説で、かつて「ザ・アマチュア」として映画化された作品をTVシリーズでキャリアを積んできたクリエイターの手によってリメイク。

 

愛する妻をテロリストによって殺されたCIA分析官が、「アマチュア」ならではのやり方で敵に復讐する姿を、誰にも予想できない斬新な戦い方で追い詰め、想像を超えたスリルとサスペンスを生み出す、新しいスパイアクション映画。

 

ブラック・ミラー」シリーズを手掛けたジェームズ・ホース監督は、今回様々なロケ地で撮影を敢行したが、あえて有名なランドマークでは行わなかったそう。

その理由に「ユニークで新鮮な印象を与え、他とのスパイ映画と差別化を図るため」とのこと。

 

「観光映画」ではないことを強調づける判断によって、より主人公の心の旅が浮き彫りになり、彼のスマートな戦法と巻き込まれた陰謀に度肝を抜くことだろう。

 

そんな「アマチュア」な主人公チャーリーを演じるのは、ラミ・マレック

 

ボヘミアン・ラプソディ」で大ブレイクして以降、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」ではヴィランを演じるなど幅の広い役を演じてきた彼。

本作では「ダークナイト」のヒース・レジャーからインスパイアを受けて、爆破シーンに臨んだなど、「リアル」を追求した演技を披露。

ずば抜けたIQを持つ頭脳派スパイとして、どんな活躍をするかに期待だ。

 

他にも、チャーリーを導くCIA教官ヘンダーソン役を、「マトリックス」シリーズ、「ジョン・ウィック」シリーズのローレンス・フィッシュバーンが、チャーリーの妻サラ役を、ジェームズ・ガン監督「スーパーマン」でロイス役に抜擢されたレイチェル・ブロズナハンが、ムーア役を、「ミッション・インポッシブル/ファイナル・レコニング」に出演予定のホルト・マッキャラニーが、チャーリーをサポートするインクワライン役を、「フォードVSフェラーリ」のカトリーヌ・バルフが、そしてCIAエージェント・ザ・ベア役を「ザ・コンサルタント」のジョン・バーンサルが演じる。

 

ラミ・マレック自身がプロデューサーも務めたという渾身の1作。

果たして頭脳だけでテロリストに復讐できるのか。

そして彼にも予想できなかった敵の「陰謀」とは。

 

 

 

あらすじ

 

CIAで分析官として働くチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)は、愛する妻と平穏な日々を過ごしていた。

 

しかし、彼の生活はロンドン出張中の妻がテロリストによって命を奪われたことで一変。

最愛の妻を殺害したテロリストたちへの復讐を決意したチャーリーは、CIAの上官ヘンダーソンに特殊スパイとしてのトレーニングを志願する。

 

そして、ヨーロッパ各地に潜むテロリストを“彼ならではの方法”で追い詰めていく。(Movie Walkerより抜粋)

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キャラクター紹介

  • チャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)…殺しはアマチュアのCIA分析官。人は殴ることはおろか、銃の扱いさえままならない彼は、愛する妻の命を奪った国際テロ組織へたった一人での復讐を決意する。
  • サラ・ヘラー(レイチェル・ブロズナハン)…チャーリーの最愛の妻。出張先のロンドンのホテルでテロに巻き込まれて命を落とす。
  • ヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)…CIAの訓練プログラムでチャーリーをトレーニングする教官。人も殺せない、銃も扱えないスパいらしからぬアマチュアぶりに半ば呆れつつも心を寄せる。無骨で不愛想なところもあるが、相手を観察する能力、格闘戦での能力は長けている。
  • インクワライン(カトリーヌ・バルフ)…チャーリーの情報提供者で彼の復讐をサポート。ある仕掛けが施されたアジトで身元を隠して暮らしている。冷静沈着で、データの扱いに慣れたクールな佇まいだが、いつも孤独と寂しさを抱えている。
  • ムーア(ホルト・マッキャラニー)…CIA本部の幹部で、チャーリーが愛する妻を失うことになったテロの真相をひた隠しにする。

(HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにラミ・マレックって派手なアクションよりも、こうした知能で敵と戦うタイプの俳優ですよね。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

終始地味。

想定してた通りなので、その地味さがキャラをしっかり引き出してる。

果たして彼は静けさを埋めるためだけに暗殺を実行したのだろうか。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

ロンドンへ向かう妻のためにコーヒーを淹れる主人公チャーリー。

彼女を見送った後、CIA本部の地下5階にある分析課で働くチャーリーは、仕事前に情報提供相手のインクワラインとチャットをしながら素性を探るやりとりをする。

 

そんなインクワラインからCIAがひっくり返るような情報を提供される。

中身はここ数日世界各地で起きていた自爆テロ事件は、実は上司であるムーアの手引きによって隠蔽されていたという事実。

 

同様を隠せないチャーリーは同僚から「俺たちは分析するのが仕事、だから目を瞑るのが正しい」と促される。

 

翌日、そんなムーアからロンドンで起きたテロ事件に妻が巻き込まれ、殺されたというニュースを聞かされ、チャーリーは信じられずにいた。

呆然とするチャーリーは遺体を受け取った後、独自で実行犯の身元を特定し、ムーアたちにするべきことをしてもらうよう直談判する。

 

しかしムーアは、様々な事情を考慮した後に実行に移すとだけしか言わず、重い腰を上げようとしなかった。

 

再び居ても立っても居られなくなったチャーリーは、インクワラインから提供された情報をムーアにつきつけ、自分にエージェントとしての訓練を受けさせるよう願い出る。

ムーアにとっては決して外に漏れてはいけない機密事項だったことや、上司の命令に背く行為をしていること、それが反逆罪にも繋がることを通告するが、チャーリーは自分の要求を飲めなければ、直ちに報道各局にこの書類が届くよう、前もって準備していたのだった。

 

こうしてヘンダーソン教官のもと訓練を受けるようになったチャーリー。

銃の扱いも射撃の腕前も素人並みのチャーリーにヘンダーソンは「向いてない」と一蹴するが、爆弾作りは誰よりも早いチャーリーに一目置くようになった。

 

一方チャーリーが訓練を受けている間、ムーアたちは別の分析官をつかって、ここ数日のチャーリーの行動範囲を探り、機密事項をどこに隠したのかを徹底的に洗い出した。

なんとかたどり着いた在り処は、チャーリーによるフェイクだったことが判明。

その間しっかり訓練を受けられたチャーリーは、盗聴がバレたタイミングで訓練所から脱走、ロンドンへと移動することに。

 

まず標的にしたのは、テログループの連絡係だった女性。

彼女が足しげく通うパリのパン屋で姿を現すまで張っていたチャーリーは、彼女の部屋に侵入しスケジュールを確認後、彼女がぜんそく持ちだったことを特定し、ヒマワリの花粉を入手して、検査中の彼女に吸わせる作戦に打って出る。

 

他のメンバーの居場所を中々吐かない彼女が苦しむ姿を見て、躊躇したチャーリーはへらから出そうとした瞬間、彼女の反撃にあう。

逃走した彼女を追いかけたが、彼女は車に轢かれて命を落とす結果に。

 

目の前で人が死んだ姿、しかも自分が関与したことに動揺を隠せないでいたチャーリーは、クラブでテキーラを飲み干し朦朧としていた。

亡き妻の幻影を見てしまうチャーリーの前に、ヘンダーソン教官が姿を現す。

実は彼はムーアが送り出した刺客だったのだ。

 

別のバーに逃げ込むことに成功したが、テログループの女が持っていたスマホの位置情報で居場所が筒抜けだったという凡ミスにより、すぐさまヘンダーソンにバレてしまっていたのだ。

人を殺すのに鳴れていないチャーリーに、ヘンダーソンは「ここまでだ」と引導を渡す。

 

しかしチャーリーは「誰にでも得意不得意がある」と告げた瞬間、トイレが爆発。

チャーリーがあらかじめ仕掛けておいた爆弾が起動し、そのはずみで再び逃走することに成功する。

 

翌朝マルセイユに移動したチャーリーは、次の標的を探すも手掛かりがない。

そこでインクワラインに協力を求め、いると思われるイスタンブールへ移動する。

 

相手の指示通りやってきたカフェに現れたのは、なんと女性だった。

彼女は6年前に夫であるインクワラインを亡くしたことで、彼の仕事を引き継いでいたのだった。

海岸沿いの家出一人孤独にチャーリーに情報提供していた彼女は、チャーリーの協力を受け、サポートをはじめていく。

 

次の相手はSNSに投降した写真からスペインのホテルに滞在していたことが判明。

2棟を繋ぐ屋上のガラス製のプールを独占していた彼に、スキューバダイビング用の酸素ボンベを利用して、プールそのものに圧縮をかけるという誰も思いつかないやり方で彼に詰め寄る。

 

しかしそこにもヘンダーソンが現れ、妨害されるのを恐れたチャーリーは、装置のボタンを押し、結局何も聞けないまま標的を殺してしまう。

 

何とか逃げ切ったチャーリーは、インクワラインから最愛の相手を失ったことで世界が物凄く静かである話を聞く。

あなたは静けさを埋めるために復讐をしてるの?と聞くインクワライン。

答えの出ないチャーリーは夜中、これまでずっと一肌恋しかったインクワラインからお願いされ、隣で眠ることに。

 

しかし、ムーアが送り出した部隊に場所を特定されてしまい、急いで逃亡を図る。

車で逃げ切ったかと思われたが、インクワラインは遭えなく被弾、命を落としてしまう。

 

インクワラインが蒔いた種に引っかかった標的に、インクワラインに扮して取引を持ち掛けたチャーリーは、ブツの中にセンサーに反応すると起爆する爆弾を仕掛け、相手を待つ。

見事にひっかかった標的は、グループのリーダーのアジトを明かした後、チャーリーの罠によって殺される。

 

バルト海近郊の港町に潜んでいたリーダーと、いよいよ直接対決をしかけるチャーリー。

果たして彼の復讐は成功するのか。

 

 

というのが、本作のざっくりしたあらすじです。

 

終始地味だが味わい深い。

全体を通して感じたのは、スパイアクションとはいえかなり地味だったということ。

大した格闘要素もなければ、驚きの展開が待ってるわけでもない。

 

妻を失ったことに対するチャーリーの悲哀が終始消えないまま、復讐することでしか静けさを埋められない主人公を捉えながら描かれた、一風変わったスパイアクション映画でした。

 

そもそも黒幕は長官の許可を取らずに、アメリカの利益だと妄信してドローン攻撃を繰り返していたムーア。

彼が手配した実行グループと取引上の決裂をしたことが、今回ロンドンで起き、それに妻が巻き込まれてしまったことが発端だったわけです。

 

よって、大きな陰謀は、実は序盤で全てわかってしまうので、そういう驚きは特にありませんでした。

しかし、それをチャーリーが知ってしまい機密情報を持っているということから、チャーリーは復讐を実行しながらもムーアから狙われていたって話です。

 

ぶっちゃけ、標的のスマホを持ち歩いちゃったり、一人目との対峙では優しさからつい油断してしまったりと、素人感丸出しの詰めの甘さが露呈していたチャーリー。

アマチュアというタイトルだけあって、そうした部分は正直見てられない部分がありました。

 

しかし、ヘンダーソンにも語っていた通り、人には得意不得意があるってことで、IQ170もある彼だからこそできる絶妙なパズル的計画が、今回見事に映画の面白さを引き立ててましたね。

 

例えば序盤でのムーアたちを見事に撒く手引き。

命を狙われる可能性を示唆して、自分がしっかり訓練を受けられるようムーアたちには別の事をしてもらうと。

 

具体的には、機密情報をどこに隠したのか徹底的に探るムーアたちに、チャーリーは嘘の場所へと導く準備を事前にしていたってわけです。

ロビーのフロアに40分も隠れていたこと、妻が亡くなってから入り浸ったバーなど、とにかくエサを用意して導くやり方は、分析官っぽい方法だったように思えます。

 

そんなチャーリーはしっかり盗聴しながら様子を伺い、ヘンダーソンの手荒い訓練で色々学ぶという。

まぁ、銃の扱い方しか学んでなかったですけどねw

実戦訓練とかやってなかったしw

 

他にも、命を前に銃の引き金を引くのに躊躇してしまう不向きな性格から、どうやって敵を追い詰めるのかという方法も面白い。

最初の女性は喘息持ちというウィークポイントを利用し、診療所で検査をしているところを狙い、閉めきられた空間に花粉をばら撒いて苦しめる。

 

2番目もガラス製のプールで一人泳ぐ標的に対し、あらかじめ爆弾をしかけ、向こう側にたどり着く前に落下させるという、中々残酷なしかけ。

3番目の敵も取引を持ち掛けて、箱の中身に「閉じても離れても起動するしかけ」を施したセンサータイプの爆弾を仕掛ける。

最後のリーダーも、恐らく連行されることを予想して、あらかじめ船をハッキングし、暗号を書き換えてチャーリーがリモートで動かせるよう細工をし、相手が及ばないフィンランド領に移動させて御用。

 

 

これらを「ドヤ顔」せずに演じたラミ・マレックが素晴らしかったですね。

基本的にオーバーアクトはせず、いかにも陰キャっぽいデスクワークを得意とする理系男子なイメージを保ちながら、冷静さと冷徹さを兼ね備えて演じてたような気がします。

それこそ妻が亡くなった際も、同様の色を隠せない表情を一度はするモノの、その後は家で黄昏たり、心ここにあらずといった表情で我々にチャーリーが今どんな気持ちでいるかを見せていく。

 

その後端を発したかのように何かにひらめき黙々と計画を立て上層部に訴える姿は、怒りという感情をなるべく潜めて演じていたように思えます。

他にも、人を殺めてしまった際の動揺やそれを乗り越えて実行する姿は、他のハリウッドスターでは出せない色香を醸していたように感じました。

 

スパイアクションなのに、めちゃめちゃ繊細さを出す主人公の映画って、正直あまり思いつかない。

だからこそ本作はその分特殊なタイプの作品だったんじゃないか、それを大きな予算をかけて製作した20世紀スタジオは、いい度胸してるなとさえ思ってしまいましたね。

 

 

最後に

「空に舞い上がり過ぎて、迷子にならないように」

亡き妻が最後にチャーリーに送ったパズルの中身にはそんなメッセージが刻まれていました。

この言葉がなければ、もしかしたらチャーリーは舞い上がり過ぎて、復讐に失敗していたのかもしれません。

リーダーとの対面で、ヘンダーソンに言われた時と同じように「俺を撃ってみろ」と言われたチャーリーは、きっと妻からのメッセージが無ければ復讐心に駆られ引き金を引いていたかもしれません。

 

だからこそラスト、ずっとセスナの修復作業をしていた彼が、完成したセスナで舞い上がった瞬間は美しかったですね。

 

あくまでリメイク作品ではありますが、どこかオリジナル感ある、それこそ15~20年前に製作されたようなハリウッド映画にも思えたし、そういう意味で懐かしさも感じた作品でしたね。

変にプロットをこねくり回さず、シンプルな設定の下、悲哀を抱く主人公に寄り添ったスパイアクション映画でした。

 

たまにはこういうのも良いと思うんだよ。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10