モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「アメリカンアニマルズ」感想ネタバレあり解説 オーデュボンの本の重さくらい計算しとけよ。

アメリカン・アニマルズ

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誰にでもあると思うんですよ、自分はほかのやつと違って特別だ、って実績も積み上げてねえくせに自信だけは一丁前みたいな。

やる前から「負ける気がしねえ」みてぇな。

 

今回鑑賞する映画の登場人物は、どうやらそんな奴らの集まりな気がするんですよね。

田舎でくすぶってて、俺はほかのやつらよりも違う!

もっとビッグになれる!

その時が来た!

ってんで泥棒しちゃうっていうね。

 

へぇ~、何おまえら、そんな簡単にお宝盗めるような頭脳と行動力あんの?

と思ったら、犯罪映画のパクリっていう幼稚さ。

 

果たして登場人物を単なる馬鹿な奴らとみるか、それとも、まるで過去の自分を見ているような愛すべき青春野郎とみるか

早速鑑賞してまいりました!!!

 

 

作品情報

ケンタッキー州トランシルヴァニア大学の図書館に飾られた、時価1200万ドルもするジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集「アメリカの鳥類」を、4人の大学生が窃盗したという事件が発生。

実際に起きたこの事件を、ドキュメンタリー映画で高評価を得た監督が、実際の犯人たちとアポイントを取り、しかも出演までさせたという前代未聞の青春クライム映画が誕生した。

 

普通の大学生が起こした普通じゃない事件。

何一つ不自由のない中流家庭の彼らが、なぜこのような大胆不敵な事件を思いつき計画し実行に移したのか。

捕まれば大罪になるのは間違いない強盗事件、何が彼らを突き動かしたのか。

 

アメリカの動物たちが起こした過ちの、滑稽で虚しくて、輝きに満ちた日々が映し出されていく。

 

 

 

あらすじ

 

「I’m Alive!!」とジョニー・サンダーを歌いながら車で飛ばしていく青年、ウォーレン(エヴァン・ピーターズ)とスペンサー(バリー・コーガン)。

廃棄された食べ物を盗むことで最小限のリスクを楽しむ、そんなどうしようもない毎日だ。

 

くだらない日常に風穴を開けたい、特別な人間になりたいと焦がれる2人は、大学図書館に貯蔵される貴重な本を盗み出す計画を思いつく。

手に入れれば1200万ドル、誰よりも自由を求めるウォーレンと、スペシャルなことを経験したいと願うスペンサーは仲間集めを始めることに。

 

目をつけたのは、FBIを目指す秀才エリック(ジャレッド・アブラハムソン)と、当時既に実業家として成功を収めていたチャズ(ブレイク・ジェナー)。

 

彼らは互いを『レザボア・ドッグス』に習い「ミスター・ピンク」「ミスター・ブラック」などと呼び合うのだった。

強盗作戦決行日、特殊メイクをして老人の姿に扮した4人は遂に図書館へと足を踏み入れる――。
そこで彼らを待ち受ける運命とは?

 

これは、刺激を求めて道に迷ったアメリカン・アニマルズ達の物語。(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

 

 

監督

今作を手掛けたのは、バート・レイトン

 

今回が初の長編ドラマ作品だそうです。

以前制作したドキュメンタリー映画「The Imposter」で高い評価を得たことで、いまっ注目されているんだとか。

次回作の007の監督としてもオファーがあったようで、今後の作品にも期待が持てそうなお方です。

 

今回の映画、実際に起きた事件ということで、ドキュメンタリー映画出身の監督は、直感で犯人である彼らと接触しようと考え、彼らと文通でやりとりし、それをもとに脚本を作り上げたんだそう

 

結果、実在の人物たちが劇中に登場するということで、ドキュメンタリーならではのリアルさと、映画としてのフィクションが融合した、画期的なつくりに仕上がっているんじゃないか?という評判。

 

果たして次世代のクライム映画になっているのかどうか、楽しみですね。

 

 

キャスト

破天荒なリーダー、ウォーレンを演じるのは、エヴァン・ピーターズ。

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はい、皆さん2012年公開の傑作映画「キック・アス」を覚えてますでしょうか。

主人公でなく、隣にいたメガネのデブを。

あれがエヴァン君だったんですね~。

まさかこんなイケメンになってるなんてねぇ~。

 

後に彼は髪の毛をシルバーカラーにして「X-MEN」のクイックシルバーとしても大人気。

X-MEN/ダーク・フェニックス」でも大活躍しており、ジーン・グレイの暴走を止めることができるのか!楽しみです。

 

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

臆病なアーティスト、スペンサー役に、「ダンケルク」、「聖なる鹿殺し」のバリー・コーガン。

内気なインテリ、エリック役に、Netflixドラマ「トラベラーズ」、「ザ・インターセクソンズ」に出演しているジャレッド・アブラハムソン。

短気な筋肉オタク、チャズ役に、「エヴィリバディ・ウォンツ・サム!!未来はボクらの手の中に」、「スウィート17モンスター」のブレイク・ジェナーなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レザボアドッグスやオーシャンズ11などといった犯罪映画を参考に計画を企てるそうで、他にもどんな映画を参考にしているのかも見どころになっているのではないでしょうか。

刺激を求めた4人の末路は一体。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

本人の語りというノンフィクションな面と、エンタメ映画としてのフィクションが融合した、正にハイブリットで新しいクライム映画でした!

そしてこいつら無能にもほどがある・・・。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別になりたい。

大学での生活に満足感を得られず退屈な日々を送っていた4人の男たちが、ど田舎に眠った1200万ドルのお宝を強奪しようとする姿を、本人たちの視点での回想インタビューに基づいた再現VTRとはまた違う映画的演出が光る前半、犯罪実行理由のバラバラさや計画の荒さ、ハプニングやトラブルに即時に対応できない臨機応変の無さなど、あらゆる面での無能っぷりに笑いと情けなさと怖さと、それでも何とか逃げ切ってほしいという感情が一気に押し寄せる後半の演出の転換が光った、全く新しいクライム映画であり青春映画でした!!!

 

僕の好きなMr.childrenのある歌にこんなフレーズが。

「何もかも思い通りになったとしても すぐ次の不満を探してしまうだろう 決して満たされない 誰かが傷ついても」

 

この大学生4人は、せっかく奨学金もらってスポーツ推薦で入学できたのに、一生懸命絵を描きまくって入学できたのに、恐らく適当に勉強していてもFBIに入れるほどの知能を持っているのに、お父さんの背中を見ながら子供ながらに実業家になって富を得ているのに、今の生活に不満を持ってるんですよね。

 

不満、というか、満たされていない、というのが適切でしょうか。

ここまでの道のりはきっと険しいものだったと思うんです。

でなければ大学に入れなかったんですから。

 

でも、いざ入学すると自分が思い描いていたものとはかけ離れていたものだった、のかもしれません。

理想の生活ではない現実、退屈な日常。

 

何か大きなことをしたい、今を打破する刺激のある体験が欲しい、そして何より地道に努力して一歩ずつ成長していくのではなく、一発逆転で大成したい、などのあらゆる欲求が、彼らの理性という一線を越え、動物の本性である野性を露わにしてしまったのではないでしょうか。

 

スーパーマリオでも土管の下を潜ったら次の面にワープ出来たりショートカット出来たりする裏技あるじゃないですか。

人生ってマリオのように裏道もなければゴールまですぐ行ける道なんてないんですよ。

 

彼らはきっと裏道を求めたんでしょうね。

俺らはお前らが地道にやってる間に、いとも簡単に成し遂げたんだ!って実績というかハクを付けたかったのかなぁと。

 

今の人たちは「何者かにならなければいけない」という意識が強くあると思います。

そんな映画もありましたし、何者にもなれない奴はそのまま何者にもならずに人生を過ごす、それは非常に哀しい、みたいな風潮というか。

 

また普通の人たちは違う存在でありたい、普通の人にはなりたくない、お前らと俺は違う、みたいな思いも強いのかなと。

 

ぶっちゃけ生きてりゃ勝手に何者かになるし、お前らは生まれた時点で既に特別なんだよ、オンリーワンなんだよってことなんすよね。

 

まぁ僕が思うオンリーワンてのは、ナンバーワンになった奴しか言っちゃいけないことだと思ってるんですけども。

まぁいいや。

 

まとめると、今の風潮やそうでありたいと行き急いでしまうと、彼らのように行き当たりばったりでも、どうにもできないような事態に陥ってしまいますよ~ってお話だったんじゃないでしょうか。

 

本人がこんなに出てくるとは。

今回うまい!と思ったのは冒頭。

ここ何年もトレンドにもなってる、「事実を基にした話」ってテロップ。

いつになったら表記せずに事実に基づく話をやってくれるんだろうか、なんてどうでもいいこと思ってしまうんですが、今作は「Based on true story」から「true stroy」って変化させてから始まるんですね。

 

要するに事実を基にした話でなく、本当の話だと。

今から語られる物語は本当のことだよと。

 

でも一応さ、映画じゃん。

フィクションの部分もあんじゃん。

そう構えて観てしまうわけですよ。

映画ばっか見てると。

 

もちろん知ってる俳優がその役になってお芝居してるんですから、なおさらじゃないですか。

 

でも、始まって数分もしないうちに、急にバリー・コーガン演じるスペンサー本人がカメラの前に出てきて当時の事を話し出すんですね。

 

だ~れ~このキレイに整った顔立ちのイケメン青年~、なんて一瞬でも思った私がバカでしたよ、すぐさま、お前か!このマヌケな事件を計画し実行した愚か者!犯罪者!と。

 

というのは冗談で、彼を通じて語られる話は、映画をより真実味のある物語へ誘ってくれるんですね。

 

 

また演出も効いていて、一瞬役と本人が入れ替わったり、役を演じてる俳優がいわゆる第4の壁を壊して話して来たり、車で逃げてる最中に本人とすれ違ったり、果ては役と本人が同じ画面に映って共演していたりと、人を殺したような奴らではないにしても、犯罪を犯した者と俳優が同じ場所で共演させるって、なかなか攻めたことしてるなぁと。

 

 

一番話すのはスペンサーなんですけど、後から今でも調子に乗ってるような身振り手振り話しぶりをするウォーレン、ひどく落ち着いた感じの秀才エリック、筋トレ好きは今でも一緒なのかと思いたくなるチャズ、最後には本を管理している司書さん本人まで登場する徹底ぶり。

 

本人が出てくるときって、例えば前に演じていた役者さんが、リメイク映画でサプライズとして出てくるのも本人出演て言えるし、こういう実話を基にした映画なら、最後にインタビュー映像として出てきたり、当時の映像をそのまま流すって手法があったりした程度だと思うんですが、ここまで本編に絡んでくる本人てのは初めてなんじゃないでしょううか。

 

実際ドキュメンタリー映画で名を上げてきた監督だからこそできるやり方だろうし、何よりこれが彼の映画製作における強みなのかもしれません。

 

 

これがホントうまくハマっていて、彼ら4人の視点で語られることは微妙に違ったりするんですね。

 

一番色濃く出ていたのが、本を盗んだ後すぐ売るためにバイヤー探しをするんですけど、そこであった人物の容姿がどんなものだったのかウォーレンとスペンサーで違うってこと。

遠くから監視していたスペンサーは青いマフラーだか紫のマフラーした男、って答えてるんだけど、実際接触したウォーレンは小ぎれいな白髪の男と答えていて、これをちゃんと映像で再現してるんですね。

 

しかもスペンサーは最後、事実ではあるけれど真実はわからないと語っているんです。

 

実際に自分たちが盗みを働き、逮捕され実刑を受けたことは事実だけど、そこに至るまでの経緯やプロセスはその人の視点でしかわからない、誰も立証できないと。

これもやはりドキュメンタリー映画を作ってきた監督だからこそできる演出だなぁと。

 

 

また、本人たちが語る様子が非常に後悔の念が強く、言葉や仕草からもの悲しさが溢れた映画にも感じました。

 

序盤こそ、この時僕は何をしたか、とか、どう思ったとか語ってるんですけど、後半はただ4人のそれぞれの無言の表情だけを切り取った映像を流したりして、観衆の感情を煽るんですね。

 

 

このように本編では、理想と現実、虚構と現実、フィクションとノンフィクション、娯楽とドキュメントといった、あらゆる一線をボカシたり曖昧にさせることで、なんとも言えない映画体験をさせてくれる新しい映画だったと思います。

 

 

とはいえ不満も。

後半、いよいよ4人が計画を実行するんですけど、これがまぁあまりにも無計画で無謀で無能でお粗末なものでして。

 

あれだけ夜はまずいから白昼堂々とやるぞ、変装もバッチリ、逃走用の車も用意、監視カメラの確認、盗んだらすぐ売れるように流通面と報酬金額の把握、口裏合わせアリバイ工作などなど散々練ってきたのに、当日に限って司書が4人、別日決行、変装ナシ、人を傷つけてまで犯罪を犯す覚悟の無さなどから始まり、肝心の逃走経路を下見してなかったり、本の重さを計算してなかったり、スタンガンで人を気絶できると思い込んでたりと散々。

 

オマケに連絡先によって正体がバレないようにするのが鉄則なのに、トラブル続きの連続で危機管理出来てなくて、うっかり自分の携帯番号をオークショニアに教えてしまうマヌケぶり。

呆れてモノが言えません。

 

確かにあれだけ意気揚々としていた彼らが少し計画がずれてしまっただけで、あんなに慌てふためいて仲間内で言い争ってしまう姿を見てしまうと、いかに犯罪することが怖いものか、計画が大事なのかってのを手に取るように感じるんですけど、僕はずっとこのマヌケっぷりを見ながらクスクス笑ってました。

バカだなぁwと。

自分に当てはめたら同じマヌケっぷりになるとわかっていながら。

 

そもそもこいつらね、意志の疎通ができてないんですよ。

特別なことをしたい、っていう根っこは同じ気持ちかもしれないけど、その上にある茎の部分で考えや価値観が違うといいますか。

 

スペンサーは当初やりたくなかったけど、ウォーレンがノリノリだからつい、みたいなふわっとした感じだし、エリックはケンカ別れしたウォーレンともう一度友達になりたかったからだし、チャズは手っ取り早く金が手に入るならやるぜ、って気持ちだし、肝心のウォーレンがリーダーになるんだろうけど、本人はリーダーの自覚ないし、みんなができないってことを引き受けるけど実際は口だけでビビリで賢くなくてとりあえずノリと欲求だけで動いてる、そんな感じ。

 

こういう気持ちのズレをちゃんと事前に修正しておくとか、こうなった時の対処法とかプランB、C,Dくらい立てとけよとか、どれもこれも杜撰で。

 

情けないくらいのマヌケな4人を見せてくれるんで、僕としてはすごく面白かったし、その反面、怖さもにじみ出た良い演出だったなぁと思ったんですが、僕の不満は前半にあります。

 

 

前半はざっくりいうと4人が結集するまでの計画ってのがメインで、それこそバイヤー探しでドキドキさせたり、実行のシミュレーションでわざわざ「オーシャンズ11」のプレスリーの歌流して演出したり、冒頭こそ全員が特殊メイクしたりする姿から入ったりと、犯罪ドラマっぽい映像を流してくれるんですけど、何というかテンポがよろしくない。

 

もっと言うと、血気盛んで、まだしっかりした大人になってない大学生4人が集まるんだから、計画を立てる時のワクワク感が全然ないんですよね。

 

もうこれは僕が冒頭でも書いた通り「木更津キャッツアイ」を崇拝し過ぎってのがあるんですけど、例えばウォーレンがなかなか無茶な計画立てる時に、チャズがいいね~!!それやろう!いややりたい!とか子供っぽいこと言ってノリ出したところを、エリックがいやバカか!無理に決まってるだろ、よく考えろって制止して、それをただ黙って観てニタニタしているスペンサー、みたいな構図とかを映すことで、やってることは犯罪の計画だけど、計画ってところだけを抜き取れば、嗚呼青春の日々、みたいな、今に夢中な4人の若者、みたいにそれこそ表面上は美しい画になるし、なにより男4人がわちゃわちゃしてるのってポップじゃないですか。

 

旅行も計画の時の方が盛り上がったりしません?

あれやってほしかったなぁと。

 

前半でそんなポップで明るくテンポのいい演出をさせてから、後半重々しい現状を突きつけるっていう、理想と現実の2面的な構造にした方が、落差が大きく出ていいのになぁと。

 

てかねぇ、実際4人もそんな時あったはずですよ。

失敗の事なんか考えずにわちゃわちゃしたときあったと思うんですよ。

 

でもまぁこれやっちゃうと本人映像が活きてこないし、こいつら反省してないのか、なんて思っちゃう人も出るだろうし、そもそも監督はそういう映画を目指したわけじゃないんでしょうけど。僕としてはこうした方が面白いんじゃない?という提案て事で、ここはどうか穏便にw

 

 

最後に

後半は自分も一緒に盗みをやっているかのような気分を味わえるくらいの没入感があるし、彼らの失態の連続に心拍数があがっていく感覚になります。

なにやってんだよ!

ばか!

ちがうよ!

そっちじゃなくてこっち優先!!

早くしないと警備来ちゃうよ!

なにもたもたしてんだよ!

なんだよ!

ちげぇよ!

と、段々カンニング竹山になることでしょう。

 

 

とにかく、いくら若いからといってもこれだけのことをして失敗したら人生終わりですし、そもそも成功したとしても、すぐ次の不満を見つけて失敗するまで悪さするんです。

 

そしてお父さんお母さんがあの子と仲良くするのはやめなさい、っていうよくある説教はもしかしたら正しいのかもしれません

スペンサーはウォーレンと仲良くしてなきゃあんなことせずに済んだんですよ。

それでも別のことしでかしそうでしたけどもw

 

どうでもいいんですけど、ウォーレンが司書にスタンガン向けた時、隣で座って見てた女性が凄く驚いててつられました。

というわけで以上!あざっした!!

 

 

アメリカン・アニマルズ(字幕版)

 

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10