アムステルダム
デヴィッド・O・ラッセルが久々に帰ってまいりました。
なんと「Joy」から7年ぶりです。
彼が次に手を出したのは「巨大な陰謀に巻き込まれた3人の男女」の物語。
こうまとめちゃうとよく聞く話に思えますが、監督が重きに置いたのは、そんな逆境に立たされても友を思えばきっと乗り越えられるという部分なのではないかと。
名優同士の共演も楽しみですが、あくまで僕は監督の持つユーモアな掛け合いを楽しみたいと思います。
というわけで早速観賞してまいりました!!
作品情報
「世界にひとつのプレイブック」や「ザ・ファイター」など、アカデミー賞作品常連のデビッド・O・ラッセル監督による7年ぶりの新作。
1930年代のニューヨークを舞台に、かつて「アムステルダム」の地で固い絆を誓った3人の男女が、殺人事件の容疑者に間違われ、さらには巨大な陰謀に巻き込まれていく姿をユーモアを交えて描く愛と友情のクライムストーリー。
世界の歴史を変えた衝撃の裏側を描いた本作には、監督と何度もタッグ経験のあるクリスチャン・ベイルを主役に、「スキャンダル」のマーゴット・ロビー、「テネット/TENET」のジョン・デヴィッド・ワシントン、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のラミ・マレックといった今話題の俳優陣に加え、「オースティン・パワーズ」シリーズのマイク・マイヤーズに、監督作に4度連続出演のロバート・デ・ニーロも出演という、名匠だからこそ実現できた豪華キャスト陣がそろった。
痛みを抱える同志を救済したり負け犬たちの奮闘を描いたりと、これまで弱者に暖かな目を向けつつ、ユーモアな掛け合いで楽しませたラッセルだが、本作はそのユーモア性を保ちつつ史実とフィクションをうまく融合させ、友情こそが困難を救うと強く伝える。
かつてニューヨークはオランダ人が入植していたことから「ニューアムステルダム」と呼ばれた地。
本作のタイトルと舞台からこのような歴史が推測されるが、何か関係があるのか。
果たして、巨大な陰謀とその裏側とは。
あらすじ
1930年代のオランダ、アムステルダムで出会った看護師ヴァレリー(マーゴット・ロビー)、医師バート(クリスチャン・ベイル)、弁護士ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)の3人は、固い絆で結ばれていた。
「なにがあっても守り合う」と誓い合った3人だったが、とある殺人事件の濡れ衣を着せられ、容疑者として事件に巻き込まれていく。
そのなかで彼らは、自分たちが世界の歴史を変えてしまうほど大きな陰謀のなかにいることに気づく。(Movie Walkerより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、デヴィッド・O・ラッセル。
心に傷を抱えた2人が社交ダンスに挑む「世界にひとつのプレイブック」や、実在したボクサーと破天荒な兄、そしてクレイジーな母親などある家族の姿を描いた「ザ・ファイター」、FBI捜査官と詐欺師が手を組んで悪徳政治家をしょっぴこうとする姿を個性豊かな面々で描いた「アメリカン・ハッスル」。
彼がすごいのはこの3作でアカデミー賞25部門にノミネートされたということ。
まさに彼にとっての黄金期です。
残念ながら3作ほど話題にならなかったものの、ある発明によって成功していくシングルマザーの奮闘する姿を描いた「Joy/ジョイ」は、監督らしいユーモアセンスと一人の人間が試練を乗り越えていく物語でした。
そして7年ぶりの本作。
全容がなかなか見えてこないですが、これだけの豪華メンツを使ってドタバタ劇を見せてくれることでしょうし、やはり彼の作家性ともいえる「アウトサイダーの奮闘」を描いてることでしょう。
そこに過去作のようなちょっと普通じゃない個性のぶつかり合いがユーモアとなり、楽しませてくれることでしょう。
キャラクター紹介
- ヴァレリー・ヴォーズ(マーゴット・ロビー)・・・生きる意味を込めた作品を生み出すミステリアスなアーティスト。負けん気の強い性格。かつて従軍看護士としてバートとハロルドの命を救う。「守り合う」という誓い通り、バートとハロルドの危機を救うべく奔走する。
- バート・ベレンセン(クリスチャン・ベイル)・・・復員軍人の治療に献身的に携わる、楽観的な医師。戦争で受けた体と心の傷を、様々な薬とユーモアで癒している。
- ハロルド・ウッズマン(ジョン・デヴィッド・ワシントン)・・・しっかり者の弁護士。バートの戦友で今でも唯一無二の友。困った人を見捨てられない正義感を持ち、バートと共にある陰謀に巻き込まれてしまう。
- ギル・ディレンベック(ロバート・デ・ニーロ)・・・元軍人。退役軍人に大きな影響力を持ち、軍のカリスマ的存在。陰謀に巻き込まれた3人の運命を握る。
- トム・ヴォーズ(ラミ・マレック)・・・資産家。弁護士のハロルドに“検死依頼人”を紹介した人物。何か重大な秘密を隠している様子も。
- リビー・ヴォーズ(アニャ・テイラー=ジョイ)・・・トムの妻。
- イルマ・クレア(ゾーイ・ザルダナ)・・・バートと共に検死を行う有能な看護師。
- ベアトリス・ヴァンデンフーヴェル(アンドレア・ライズボロー)・・・バートの妻。
- ミルトン・キング(クリス・ロック)・・・かつてバート屋ハロルドと共に戦場で戦った仲間。
- ヘンリー・ノークロス(マイケル・シャノン)・・・アメリカ政府の諜報員。バートらと並行して、“巨大な陰謀”とその裏で暗躍する組織を追っている。
- ポール・カンタベリー(マイク・マイヤーズ)・・・ヘンリーと共に事件の真相に迫っていく、ヘンリーの相棒。
- リズ・ミーキンス(テイラー・スウィフト)・・・謎の死を遂げた将軍の娘。
(以上FASSION PRESSより抜粋)
物語の3人は人種が違うわけで、当時のことを考えても本作のテーマである「交友を深めること」には深い意味がありそうです。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#アムステルダム 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年10月28日
出てくるメンツがあまりにも豪華なのにセリフばっかりで後半あたりから飽きてくる。
しかしデニーロ登場からのクライマックスはアガりますな。
てかルベツキ使ってあの撮り方かよ…って思ったけどあの人被写体撮る時こんなんばっかだったわ。 pic.twitter.com/LqtJ4Y7y2U
巨大な陰謀って何なのか予想はついたが、権力者も人生のパートナーも必要ではなくしっかり選ばないとね。
てか、ラッセルっぽくもあり、ラッセルにしては弱くもあり。
以下、ネタバレします。
その時歴史が動いた
1930年代のニューヨークを舞台に、かつて戦争を止めるための戦争で絆を深めた3人の男女が、巨大な陰謀の渦に巻き込まれながらも再び固い絆を武器にデカい権力に挑んでいく姿を、エマニュエル・ルベツキのカメラアングルによって芝居の良さを拡張していく豪華メンツのアンサンブル演技を堪能しつつ、大国が戦争後にどう進んでいくかという歴史の狭間にフォーカスを当てることで、「必要だからではなく選ぶこと」の必要性を訴えた作品でございました。
時は1933年ニューヨーク。
養子として育てられやがてその娘と「必要」だから結婚した開業医のバートは、かつての戦争によって義眼をつけ、背中にコルセットを巻きながら、復員兵の治療を中心に新薬の開発に勤しんでいた。
義父から娘を奪ったことで嫌われているが、彼のおかげでこうして医者として日々過ごせている。
そんな彼には親友がいる。
かつて共に戦争で戦った仲で、今は弁護士として働いているハロルドだ。
共に命を助け合うと近い深い傷を負って生還した二人は、戦争から12年経った後でも関係性は良好。
そんなハロルドから、二人の上官だったミーキンス将軍の遺体の解剖を頼まれる。
依頼主は将軍の娘リズ。
ヨーロッパから船で帰還したにもかかわらず、何故遺体となって帰ってきたのか不審に思ったリズは、是非解剖して調べてほしいと二人に依頼したのだ。
かつての恩師の娘の頼みを断るわけにもいかず、遺体を回収される前に、看護師のイルマと共に急いで解剖を進めるバート。
胃の中には何やら白い液体の中に異物が混入されていた形跡があり、やはり何者かの手によって殺害された可能性があると示唆。
ハロルドと合流したバートは、リズの待つレストランへ向かうが、彼女は脅えながら店を後に。
どうやらこの件は危険だと「ヴォーズ氏」から忠告され脅えていたのだ。
詳しく事情を聞こうと彼女を引き留めた矢先、後ろから背中を押され足りずは車に轢かれ即死。
その場にいた野次馬の「この2人が押した!」という扇動によって二人は容疑者扱いされ、濡れ衣を着せられてしまうのだった。
なんとか逃亡に成功した二人は、リズのハンドバッグから「健全推進委員会」のパンフレットを発見。
妻ベアトリスからヴォーズ氏の詳細を聞いた二人は、その後訪れた二人の刑事から逮捕されないようヴォーズ氏の名前を使ってスル―することに成功。
保証人を立てることと、リズのハンドバッグ、将軍の解剖申請書を引き渡すことを条件になんとかその場を切り抜けたのだった。
ヴォーズ氏の家に行き、直接面会しようと画策するも、妻のリビーから断られてしまい詰み状態の2人だったが、その時奥の部屋から出てきたのは、かつて戦争で追った傷の手当てをし、アムステルダムの地で共に自由を謳歌したヴァレリーの姿だった。
時は1913年。
義父から医者としての拍が付くからと戦争の地へ半ば強制的に生かされたバートは、ミーキンスの命令によって黒人だけで構成された部隊の上官として任命される。
フランス軍の服を着て潜入した戦地で重傷を負った二人を、他の看護師が制しようとするも必死で手当てをしてくれたヴァレリー―と、友情を深めたのだった。
目を負傷したバートは義眼が欲しいということで、ヴァレリーがアムステルダムへ案内。そこで紹介されたガラス技師のポールと財務省の役人ヘンリーと仲を深め、祖国へ帰ることなくしばらくの間3人で遊びつくしたのだった。
しかし妻への思いを止められないバートは一足先に帰国。
ヴァレリーと恋仲になっていたハロルドも、モルヒネ依存症になってしまったバートを救うためにアメリカへ帰ることを決意。
ヴァレリーを連れて帰ろうとした翌日、彼女は手紙を置いて消えてしまったのだった。
それから12年の時が経ち、現在。
ヴァレリーは、アメリカへ戻りてんかんと神経症を患い、治療を続けていた。
しかも二人を依頼したのはリズに相談されたヴァレリーだった。
ヴォーズ氏は彼女の兄であり権力者でもあった。
今回の件でなぜ将軍が殺されたのかを探るべく協力してもらおうとしたが、かつてミーキンス将軍と肩を並べるほどのカリスマ性を持っていた元海軍将軍のディレンベックを訪ねるといいと促される。
少しづつ協力者の力を借りながら真相へと向かう3人は、巨大な陰謀の正体を暴き、無実を証明することができるのだろうか。
…というのがざっくりしたあらすじです。
豪華メンツの共演を見れるだけでも価値ある作品
これまで「ザ・ファイター」や「世界にひとつのプレイブック」などル―ザーたちの奮闘劇をコミカルに描いてきたラッセル監督。
その功績は監督の欄でも書いた通りですが、やはり賞レースで勝ち抜いてきただけあって、一流スターを一堂に会して作品を作れるネームバリューは大きく、今回も一つのスクリーンに一体どれだけのスターが並んで演技してるかを考えるだけで素晴らしい。
特にクライマックスの演説シーンでドタバタ劇を終えた後の控室では、クリスチャン・ベイルにマーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントンの主役3人に加え、マイク・マイヤーズ、マイケル・シャノン、ラミ・マレック、アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ロック、そしてロバート・デ・ニーロと、超がつくほどのスターが一つの部屋でお芝居をしてるではありませんか。
ここではある者が疑われ追い詰められてる中、クリスチャン演じるバートは被弾したことで意識を失いかけてる状態にあり、彼の語りによって物語が進行するというシーンであり、個人的には一人ずつ喋るようなやり取りでなく、わちゃわちゃしたようなシーンにしてほしかったというワガママな欲求があったわけですが、そんなことはおいといてもたまらないシーンでした。
元々ベイルもデニーロもクリスロックも監督の過去作に出演経験のある役者ですから、これくらい揃って当然だろという思いも正直在りますが、大作映画でもないいわゆる賞レース狙いの作品でここまでのメンツを揃えて映画を作れるって、やっぱラッセルってもってるなぁってw
ラッセルにしては弱くないかい?
とはいえですよ、物語の作り方的には正直ひねりがないなぁというのが率直な印象。
3人で物語を進めていく推進力みたいなものが欠けてるんですよこれ。
かつてなかを深めた3人が再会し、無実を証明するために奔走するってのが物語の大きな枠の一つなんですね。
だけど3人だけではどうにもならないから、いろんな人の力を借りて巨大な陰謀の正体を暴いていくんですけど、その時その時出てくる俳優が豪華だからそれなりに尺を使ってあげないといけない。
そうすると、その俳優にスポットが行く分、3人が霞んでしまうんですよ。
ベイルが主人公的意味合いを持つので、彼のナレーションで物語は進行するんですけど、クライマックスになるともうマーゴットもワシントンも必要なくなっていくんですよね~。
最後の舞台なんかマジで二人は何もしてませんから。
脇役にいる俳優の活躍で解決に導いていくし、なんならその中の誰かが黒幕だったりするので、そうするとマーゴットもワシントンも余計霞んじゃうんですよ。
そもそも時系列も変なんですよね構成として。
最初は1933年で、逃亡する際中で1918年に進む。
そして戻って3人が再会って流れなんですけど、これ普通の時系列で見せて、二人がピンチって時に実は裏でヴァレリーが動いてて、12年の時が経っていても絆はあったみたいな方が感動するしわかりやすいと思うんですよね~。
テーマ的にも「正しい神を追え」だったり「必要だからではなく、選ぶことが大切」と謳った映画だっと思うんですけど、このカタルシスが弱いんですよね~。
目先の必要性よりも何を選ぶかによって国という船は正しい航路を進むってのと、人生においてただ必要ってだけで選んでると幸せな人生は送れないっていうダブルミーニングを秘めた割には、上手いなとも思えない。
それこそ最後の勝利の決め手になるのがあの「デタラメな歌詞の歌」って方が盛り上がるでしょうに。
さらには「五人委員会」ってのが黒幕に繋がるって、ふたを開けてみたらナチスかよっていう意外性のなさ。
もうね、数字の5をバッテンのように重ねたマークが出た時点ですぐ合点がいくわけですよ。
ただナチスに心酔するアメリカの企業って所までは予想つかなかったですけど。
あと一番気になったのはカメラワークですよね。
何で被写体正面で映してばかりなのよ~、それに本の映画のやつだよ~、誰撮影したんだよって調べたらエマニュエル・ルベツキでしたよw
あの人風景撮らせたら素晴らしいのに、人を撮るとこんなにもつまんない画しか取れないの?
もっとパターン持ってる人だと思ったけど、今回の映画でちょっと信頼度下がりましたね~・・・。
やはりカメラに向かってしゃべってばかりの映画は、どんどん疲れてくるんですよね~。
中身は会話劇ベースなんだから、当事者同士が会話してるのを観衆が覗くような視点で見せないととは思います。
テニスのラリーを見てる観客のように追えるから集中できるだろうし。
最後に
ホントに我々が知らないうちに巨大な陰謀って動いてるわけで、今でも日本ではとんでもない組織が裏で糸を操っていたことが暴かれて大問題になってるくらいですから、今回描かれたことが決して対岸の火事ではないんですよね。
寧ろ今こっちが火事の真っ最中w
金を持ってる奴らが選挙などせずにデカい組織作って政治を動かそうとしてたって、もう世間を無視してるってことですから。
怖いですよホント。
しかしもっと面白くできたはずの題材なのに、ホント勿体ないなぁと。
これアカデミー賞ノミネートされるのかなぁ。
僕が見たかったラッセル映画ではなかったのが今回非常に残念でしたね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10