あの人が消えた
久々にTOHOシネマズで映画鑑賞したんですけど、面白そうだなと思ってチョイスした今回の観賞映画。
なんでも「先読み不可能」とか「ネタバレ厳禁」とかめっちゃ煽るじゃん!?みたいな感じで興味をそそられたんですよね。
この手の作品で先が読めようがそうでなかろうが、個人的には映画的に面白いかどうかの基準に置いてはいないモノの、そこまで言うなら見てみようかという気持ちになり。
単純に気持ちよく見れたらいいなと思い、早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
2023年に放送され、社会現象化した人気ドラマ「ブラッシュアップライフ」で国内外の名だたる賞を総なめしたクリエイター・水野格が、完全オリジナル脚本で挑んだ劇場長編作品。
とあるマンションを舞台に、怪しげな住人の秘密を知ってしまった配達員が思いもよらない事件に巻き込まれていく“先読み不可能”ミステリー・エンタテインメント。
監督は本作について、コロナ禍でのステイホーム期間に、初めてマンションの隣人の存在を知り、自らが住む場所を全く知らないことに恐怖を覚えたことから着想したとのこと。
そして実はマンションの事を一番知っているのは「配達業者」ではないかという視点を置くことで、物語を膨らませて言ったそう。
そんな本作の主人公で配達員の丸子役を演じるのは、高橋文哉。
2021年放送のドラマ「最愛」で注目を浴び、2024年には主演映画『交換ウソ日記』で第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』、映画『からかい上手の高木さん』、映画『ブルーピリオド』など話題作への出演が相次ぎ、本作を含め今年最注目の俳優へと成長した。
他にも、「おっさんずラブ」や「哀愁しんでれら」の田中圭、「春画先生」での演技が記憶に新しい北香耶、「あのコはだぁれ?」の染谷翔太、坂井真紀、袴田吉彦、菊地凛子などが出演する。
トリッキーな展開が目白押しの本作。
見終わった後の衝撃から、もう一度見たくなること必至の「完全オリジナル」ミステリーエンタテインメントです。
あらすじ
「次々と人が消える」と噂されるいわくつきのマンションの担当になった配達員・丸子(高橋文哉)。
日々マンションに出入りして荷物を届ける彼は、その住人のひとり・小宮(北香耶)は自身が愛読しているWEB小説の作者ではないか? と察して、密かに憧れを抱いていく。
しかしその一方で、挙動不審な住人の島崎(染谷将太)に小宮のストーカー疑惑が持ち上がり、丸子は運送会社の先輩で小説家志望の荒川(田中圭)の協力を仰ぎ、他の住人たちに聞き込みを開始。
引っ越し先を探しているという沼田(袴田吉彦)や、詮索好きのおしゃべりな女性・長谷部(坂井真紀)から「島崎の部屋に血だらけの女がいた」「血痕が付いた服を着た姿を見た」というとんでもない目撃情報を聞き、彼を危険人物と断定する丸子。
小宮を守りたい一心で部屋に単身侵入を試みるが、運悪く帰宅した島崎と鉢合わせてしまう!
時を同じくして、世間を揺るがす大事件を追っていた警視庁がマンションに接近! ?
一触即発の緊張感が流れ始めるなか、事態は思わぬ方向へと突き進んでいく──。(HPより抜粋)
登場人物紹介
- 丸子(高橋文哉)・・・コロナ禍配達員を志すが、4年目になっても未だ慣れない青年。好きなWEB小説家の連載更新が唯一の楽しみ。
- 小宮(北香耶)・・・最近越してきた物静かな205号室の住人。丸子が荷物を届けた際に書きかけの小説が目に入り、丸子の推しのWEB小説家・コミヤチヒロであることを勘付かれる。
- 長谷部(坂井真紀)・・・猫と暮らす301号室の住人。詮索好きのおしゃべりな女性、丸子に島崎にまつわる噂を提供する。
- 沼田(袴田吉彦)・・・圧が強めな303号室の住人。何やら一刻も早く引っ越したいようだが、その原因は島崎にあるらしい。
- 寺田(菊地凛子)・・・警視庁の捜査官。丸子が配達を担当するマンションで、ある事件が起きていることを疑い始める。
- 島崎(染谷翔太)・・・不気味な雰囲気が漂う302号室の住人。挙動不審な様子を丸子に目撃され、「小宮のストーカーでは?」と疑われるが・・・・。
- 荒川(田中圭)・・・プロの小説家を目指している丸子の先輩配達員。いつも元気で面倒見のいい性格だが、たとえが独特で少々わかりにくい。
(以上HPより)
ストーカーによる連続殺人・・・とかではなさそうなミステリー。
一体彼女はなぜマンションから消えてしまったのか…。
そして、配達員て、そこまで踏み込んでいいのか…。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#あの人が消えた 観賞。寿司屋で例えると勝手に大トロが2回も3回も出てくるような意外な展開。シリアスからユーモア、そしてハートフルな感情で味わえる気持ちよさ。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) September 20, 2024
見終わった後に「実は〇〇だった」系の映画を思い出す。
ネタ感強めだし作為的なので嫌いだという人もいそう。 pic.twitter.com/BFMa9DnNn4
章立てで描かれる「人が消えるマンション」の真相に驚き。
脚本で描いた内容のため映像による面白さはないものの、よく出来たネタ映画。
シックスセンスやパッセンジャーズなどを思い出すオチも良いよね。
以下、ネタバレします。
ネタバレ厳禁な映画。
僕は見てませんが大ヒットした映画「ラストマイル」では、配送業者によるひっ迫した現状を背景に描いていたそうで、今やワンクリックでモノが届く便利な時代になった中、それによるしわ寄せがあることを、我々はしっかり意識しなくてはならないと思います。
本作もコロナ禍によるロックダウンによって職を失い、配送業者として働くも、時間通りに届けて当たり前、少しでも遅れれば罵声を浴びせられえる過酷な労働を続け疲労困憊な青年が主人公という、社会問題を一応取り入れた序章が描かれていました。
そんな彼のオアシスとも言えるのが「小説家になろう」というアプリで連載されているコミヤチヒロの「スパイ転生」という小説。
王女の死亡フラグを回避するためにS級スパイが奮闘するという物語だそうで、既視感のあるトリックでありながら主人公・丸子はその爽快感に何度も興奮し、一気にファンになったという経緯が描かれている。
そんな彼が担当するマンションに、その「コミヤチヒロ」が住んでいることから、彼は益々彼女の事を一目置くようになり、しばしば目に余る行動をしてしまう。
自己紹介をしたり、集荷も頼まれてないのに呼び鈴を鳴らして会話を試みようとしたりと、少々リアリティに欠けるし怪しまれて当然な行動が多々あるが、それは後に起こる事件のきっかけに過ぎないのだから、個人手的には目を瞑ろうと物語を追うことに集中した。
第2章では、コミヤチヒロが消えてしまったことや、302号室に住む島崎の怪しい行動を目にした丸子が、マンションの住人から配達を介して聞き込みをし、それを配送業者の先輩で、小説家志望の荒川に相談をしながら、物語は不気味な空気を漂わせていくのであります。
301号室の長谷部によれば、隣に住む島崎は男前だが、ある日ベランダでタバコを吸っている姿を目撃した際、血まみれのシャツを着ていたなどと証言していたり、201号室の住人(なんと中村倫也がシークレットキャストでした)は、コミヤチヒロが男性に担がれている姿を目撃していたり。303号室の沼田によれば、島崎の部屋がうるさいと注意したら血まみれの女性がいたという証言が飛び出るなど、いかにも島崎は「怪しい男」として浮かび上がっていく。
しかも丸子自身も彼がコミヤチヒロの部屋のドアノブをガチャガチャ動かし開けようとしていた行動を目の当たりにしていたりなど、明らかに彼がチヒロに対しストーカー行為を働いていると思い込んでも過言ではないことをしているわけです。
そしてコミヤチヒロの部屋を訪ねても応答がない、301号室も303号室も201号室も誰もいない。
島崎がストーカーをしていると警察に相談するも、「あのマンションは事故物件で前にも人が消えた」などという都市伝説まで聞かされ、余計に気味が悪くなっていく展開に。
丸子は果たして「生きがい」であるコミヤチヒロを行方を追うことができるのか、というのが第2章の流れとなっています。
ここまで僕はこのオチが、「実はチヒロと島崎は付き合っていた」程度のモノだと思い込んでいました。
2時間サスペンスでよくありがちな「事件に関係ない奴が事件の操作や推理を始めて事件解決していく」ように見せかけて、実は丸子の思い過ごし、見切り発車、好意を抱いてる故に自分がストーカーになっていた、など、色々な予想を立てながら物語の行方を追っていましたが、事はそう簡単にはいかない事態へと進行していくんですね~。
第3章では、突然丸子と荒川、チヒロと島崎がテーブルを囲んで会話している風景から始まっていくんです。
2章の終わりでは、チヒロの部屋へ入っていく島崎を後から追う丸子、そして部屋の奥から現れるチヒロ、背後には島崎という立ち位置で幕を閉じていたので、俺の予想もしかして当たってたんじゃね?と思ったんですが、どうもこの後の展開が読めない。
そしたらなんと「チヒロと島崎は警視庁公安部の人間で、選挙演説のテロリスト追うためこのマンションに素性を隠して潜伏していた」という、とんでもない展開が発覚。
劇中荒川が幾度も例えていた寿司屋ネタのように「寿司屋で急にガパオライスを出された気分」となっていきます。
容疑者は301,302.そして201号室の住人で、彼らの部屋に盗聴器を仕掛けたり日々の行動を監視したりしている中、チヒロと島崎=本名須藤と別府のコミカルな掛け合いが描かれていきます。
別府はMI6で工作員の経験を持つトップエージェントで、007好きが高じて、いちいち「ボンド、ジェームズ・ボンド」ばりに自己紹介したり、公安が用意した設定を無視してパーソナルトレーナーに変更したりしながら住人と接触。
あまりのムチャな設定や突発的に須藤に迷惑をかける行動を起こしたりすることで、何度も須藤に殴られたりと、フフッと笑えてしまう掛け合いが楽しいです。
また、住人と親密に会話をする丸子も容疑者の対象とされており、チヒロにしつこくアプローチをしたり、島崎の名前を聞こうとしたりなど、爆弾を運ぶのにふさわしい配達員を装っている可能性が浮かび上がり、監視されていたことが明かされます。
血まみれのシャツもた真っ赤なプロテインジュースをかけられただけ、チヒロを担いで部屋に運ぶ姿も、支給された麻酔型ボールペンの練習をしていたところにチヒロが通ってしまい、部屋へ運ぶ姿を201号室の住人に見られたこと、警察の任意での事情聴取も、公安部の人間であることを隠すために警察官が嘘を吹き込んだという、全て丸子が見たモノ聞いたモノは、公安部の2人がやっていたことが明かされるのであります。
ここまでの時点ではっきり言って拍子抜け、というのが正直な感想。
ネタバレ厳禁な映画にしては、シリアスからコメディに変わっただけの、大したことないネタバレを延々と見せられて、さっきまでのドキドキを返せこら!!と思ったのはきっと俺だけではないはず。
急に配達員に公安部ですと名乗る刑事も普通では考えにくいし、丸子が落としたメモ用紙を電話番号と勘違いして、その連絡先が梅沢冨美男本人だったてのも正直面白いとは思えない。
そのためにそんな小細工な笑いを作るのなら、もっと笑いの大きさを考えて作ってくれよと。
クスッと笑いを小出しにしてもテンポが悪いし、コミカル描写にはなってないぞと。
これで、そういうことでした、ちゃんちゃん、で終わるんじゃねえぞ!!と少々しかめ面で見ていたんですが、物語はこれで終わらなかったのであります。
伏線てのは別に無理して作らんでもいいものだと思っている自分ですが、こうも伏線を貼られていると、よく出来た種明かしだなと自然と思ってしまうものです。
本作は冒頭からしっかり伏線をいくつも張り巡らせていたんですよね。
スパイ転生ってのも、公安部と絡めたものと思ったらそうでもなかったし、血だらけの女性が地縛霊なんじゃないかという荒川の考察も、ある種間違ってない方向に持っていくし、チヒロが小説の中で使ったトリックがまさか実際に起こるなんて想像もしていなかった。
そうした細かい点が線となっていく最終章、非常に納得がいき、尚且つおセンチな展開へとなっていくのであります。
ここまで来たら全部書きますけど、結局「公安部だった」というチヒロの話は「すべてうそ」だったのであります。
彼女が小説内で使ったトリック「登場人物の頭文字だけを繋ぎ合わせるとある言葉が生まれる」というトリックを知っていた丸子は、彼女の本棚に整理されていた雑誌や小説を辿ると、須藤という名や別府という言葉、そして梅沢冨美男が表紙の雑誌を見つける。
それらの頭文字を繋ぐと「すべてうそ」という文字が浮かび上がるわけです。
どこかオドオドした表情のチヒロに対し、一言も声を発しない島崎。
何かおかしいと思い、徐にテーブルの上のテープを床に落とし彼らの足元を覗くと、島崎がチヒロにナイフを向けていることを発見。
驚きを隠せない表情を荒川に見せた丸子は、とっさにテーブルの上のアルバムを島崎に投げつけ、荒川がナイフを奪って抑え込むことに成功します。
こうして、島崎は実際にチヒロを監禁し、後に殺害を企てようとした殺人犯であることが発覚。
丸子がいくら配達しても届けられなかった203号室の住人は、実は島崎が殺害しており、島崎が応対していたわけです。
沼田が見たという血まみれの女性は彼女だったことも判明し、彼が「連続殺人犯」であることが警察から明らかになります。
住人たちが忽然といなくなった理由は、あらかじめ丸子が彼らに手紙を渡して注意を促していたことから。
盗聴されているかもしれないから声に出さずに読んでほしいという前触れから、怪しい人物がいるから今のうちに避難してほしいという内容でした。
コロナ禍によって歩みたい人生を歩むことができず、日々疲労困憊だった丸子は、こうしておせっかいながらもマンションの住人を救ったのであります。
・・・しかし話はこれで幕を閉じない。
連続殺人犯である島崎は、他に一体誰を殺していたのか。
それは、丸子だったのであります。
2章の最後、チヒロの部屋に入り込んだ丸子は、背後に立っていた島崎に刺され死んでいたのであります。
島崎はチヒロを鎖で縛って監禁し、殺害を企てようとしていましたが、突然侵入してきた丸子の登場に気付き、始末したのでした。
丸子はその後、他の人間には見えておらず、急に電話が切れ連絡が取れなくなった丸子を心配した荒川がチヒロの部屋を訪ね、あらかじめ丸子から聞いていたトリックや彼らの素性から状況を読み、島崎を捕らえたのであります。
タイトルの「あの人が消えた」という意味は、丸子が見た「消えたマンションの住人」ではなく、「丸子自身」だったのであります。
最後に
あ~あ、全部書いちゃった…。
まぁ要するに「実は死んでいた」系の映画っていうのが、本作最大のオチということになるんですけど、こういう映画ってかつてたくさんありましたもんね。
だから既視感があると言われるとそうなんだけど、こういう映画を邦画で久々に見たってのと、そこまでの過程が一転コミカルに転じたりする内容になっていて、ある意味新鮮ではありましたよね。
それこそこの手の代表作「シックスセンス」なんて、もう20数年前の映画で、知らない人もきっと多いことでしょう。
そういう意味で言えば、あの映画が「転生」してこういう映画になったという解釈もでき、ネタ系映画として脈々と受け継がれていくうえで、必然的な作品とも言えるのではと。
哀しい結末ではあるけれども、どこかハートフルな締め方をしているのも見ていて気持ちよくなれたのも良かったと思ってます。
チヒロが書いていた小説を好きになり、何度もコメントで応援をしていた彼の存在があったからこそ、作り手は書き続けることができた。
そんな彼は、実際に彼女を殺人犯の手から救ったわけですから。
そういう意味では気づいてくれたことで丸子も救われたのかもしれません。
ラストでは「スパイ転生」の主人公となって本当に転生した丸子の姿が描かれており、これまた彼が望んでいた別の人生だったこともあって、ある種ハッピーエンドな終わり方だったと言えるでしょう。
粗もそこまであるとは思えないし、よく出来た映画だと思うんですけど、やっぱりこの手の映画の勿体ない所は「もう一度見たい!!」とは思えないところですよね・・・。
映像での満足度も低いので、もしもう一度見るとしたら「伏線回収の検証」程度。
そうならないよう創意工夫してくれたら満足度高かったのかなぁと。
あとはもう、まだ見てない人はこんなブログを読まずに、何も知らない状態で見るのが一番ですよ。
じゃあ書くなってか?
それはもうすいません…。こういう書き方しかできないもんで…。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10