坂道のアポロン
このブログではコミック実写化に関して結構辛口なことを言って叩かれることもあるんですが、本作に関しては原作未読にもかかわらず、予告編でのジャズ演奏シーンと微妙な三角関係に、めちゃめちゃ心動かされてしまい、これは見たい!見たいぞ!!
と、気持ちを高めてしまうほど気に入ってしまいました。
音楽をやっていたということもあり、どうもこの手の青春映画には目がないのです。
演者に関してはあまり期待してないんですが、監督は恋愛マンガ、青春マンガを実写化させたらこの人におまかせ!の三木監督なので楽しみにしています。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!!
作品情報
「このマンガがすごい!2009オンナ編」で見事1位を獲得した小玉ユキ原作の青春コミックを、青春映画の名手として知られる監督によって実写映画化。
事情により長崎へ越してきたピアノが趣味の孤独な主人公が、学校一の不良とその幼馴染に音楽を通じて出会うことで、生涯忘れることのできない青春を綴っていく物語。
学生時代、誰もが必ず出会ったであろう友達や恋人。
そこで出会った彼らは一生ものであり、年を重ねても決して色あせることのない、かけがえのない思い出。
そんな一生ものの恋愛や友情を、ともに奏でた音楽をテーマに、3人の10年に及ぶ物語を描く。

坂道のアポロン コミック 1-9巻 セット (フラワーコミックス)
- 作者: 小玉ユキ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/05/04
- メディア: コミック
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あらすじ
医師として病院に勤める西見薫(知念侑李)。
忙しい毎日を送る薫のデスクに は1枚の写真が飾られていた。
笑顔で映る三人の高校生。
二度と戻らない❝特別なあの頃❞・・・。
10年前、父を亡くし親戚に預けられた薫は、家の中で居場所を見つけられないでいた。唯一、ピアノを弾いている時だけが孤独を忘れられる時間だった。
そんな薫が転校先の高校で出会ったのは、誰もが恐れる不良・千太郎(中川大志)と、その幼馴染の律子(小松菜奈)。律子に導かれ訪れた地下室で、荒々しく、けれども自由で楽しそうにドラムを叩く千太郎とジャズに薫は心奪われる。
その日を境に、憂鬱だった毎日は楽しいものへと変わり、ピアノとドラムでセッションし、三人で過ごす楽しい毎日が始まる。
やがて薫は律子に恋心を抱くようになる。だが、律子の思い人は千太郎だと気づいてしまう。
律子の想いに全く気づかない千太郎。だが、薫が羨む千太郎にも誰にも言えない孤独があった。千太郎は薫に、自分は教会に捨てられた孤児であり、今の家族が里親であることを告白する。
お互いの心の欠けたピースを埋めあうように、二人は絆を一生ものの友情へと変えていく。
しかしそんな幸せな青春は長くは続かなかった。
ある事件を境に、千太郎は二人の前から姿を消してしまう。
そして、10年が経ち・・・。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのは、青春映画の名手、三木孝浩。
今までキラキラ映画の人と思っていたモンキーですが、「ソラニン」以来の観賞となった監督作「先生!、、、好きになってもいいですか?」を観て、完全に間違った見方をしていたことに気づき、猛省している今日この頃。
登場人物はあくまで10代の少年少女というだけで、描いている内容はどストレートな青春恋愛映画。
やはりMVやCMを手がける人は、被写体をどう映すか、今何を思い感じているのか、そんなキャストの表情を逃すことなく、光の加減やコントラストを巧みに使って表現し、心の機微をしっかり捉えてる。
今作を見ようと思った理由のひとつは彼にあります。
すごく期待しております。
監督に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
主人公の西見薫を演じるのは、Hey!Say!JUMPの知念侑李。
ここ何年かTVでレギュラーが増えてきているHey!Say!JUMPの面々ですが、彼はどちらかと言うとバラエティ班ではなく、ドラマ班なんですかね。
ここ最近映画に出演しているのを見かけます。
僕はジャニーズでいうと、嵐より上のグループでないと興味がないので、彼の出演作品て中々見ないんですが、今後も見据えた上で楽しみであります。
そんな彼の出演作品をサクッとご紹介。
彼のデビュー作はまだグループ結成前にまでさかのぼります。
藤子不二雄A原作の漫画「忍者ハットリくん」を実写化した「NIN×NIN忍者ハットリくん」でケンイチ役に抜擢され、香取慎吾と共に出演。
幕府の陰謀で、たった5日間で参勤交代を命じられた貧乏小藩が、意地と知恵で乗り切る様をユーモラスに描いた時代劇「超高速!参勤交代」。
続編である「超高速!参勤交代リターンズ」に出演。
アイドルに相応しくないふんどし姿が話題になりました。
他にも、子供のころから一等賞を目指す男の波乱万丈な人生を、TVでも共演している内村光良とのW主演で演じた「金メダル男」。
天正伊賀の乱を元に、織田の大軍に対し、わずかな人数で戦術や奇策で迎え撃つ忍びたちの闘いを描いた「忍びの国」。
16歳のお嬢様が金目当てのイケメン男子と、超セレブ御曹司に挟まれ三角関係になっていくラブコメ映画「未成年だけどコドモじゃない」などに出演しています。
学校一の不良・川渕千太郎を演じるのは中川大志。
事務所のゴリ押しで出てきたぽっと出の兄ちゃんかと思ったら、子役時代から芸能界で活躍してた方なんですね。知りませんでした。
てか子役から芸能界にいると、大人になった時に子役時代とのギャップのあまり活躍できない風潮がありますが、むしろめっちゃいい大人になってるじゃん!
これからの活躍が楽しみですね。
そんな彼の出演作を簡単にご紹介。
幕末維新で活躍した中村半次郎の生涯を描いた「半次郎」で映画デビュー。
その後はTVでの活動でしたが、近年は映画で主演に抜擢されたり、キーパーソンとして演じたりなどの目覚しい活躍ぶり。
ピアノが弾けなくなった元天才少年の高校生が、自由奔放なヴァイオリニストのヒロインに導かれ、再びピアノに向き合っていく様と、2人を待ち受ける運命を描いた青春ラブストーリー「四月は君の嘘」、学校イチのイケメンと変わり者のヒロインの切ない恋の行方を描いたコミック原作の映画「きょうのキラ君」、ニートの青年がある実験により、1年限定で2度目の高校生活を送ることになる青春映画「ReLIFE/リライフ」などに出演しています。
他のキャストはこんな感じ。
千太郎の幼馴染・迎律子役に、「ディストラクション・ベイビーズ」、「沈黙ーサイレンスー」、「恋は雨上がりのように」の小松菜奈。
律子の隣人でトランペット奏者、桂木淳一役に、主演映画「海を駆ける」、「空飛ぶタイヤ」の公開が控えているディーン・フジオカ。
律子の父親でレコード店で経営している迎勉役に、「たそがれ清兵衛」、「おかえり、はやぶさ」の中村梅雀。
薫の先輩・深堀百合香役に、「新宿スワン」、「不能犯」の真野恵理菜などが出演します。
ジャズを演奏するシーンもあるので、どんな曲を披露するのかも楽しみですね。
ジャズ超疎いんですけどw
今のうち言っておきますが、僕は多分・・・泣きますwそれくらい期待してます。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
言葉なんかなくたって、音を重ねれば思いは伝わる!
吹替えナシのジャズセッションシーンで一気に感情のボルテージを上げてくれる、友情、恋愛、音楽三拍子が詰まった、男の友情最高!!の青春映画でした!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
どストレートの青春映画。
一見接点がなさそうに見える主人公二人が、ジャズセッションと一人の女性と通して友情を奏でていく中で、喜び、悲しみ、怒りといった感情をぶつけ合い、やがて同じ境遇の持ち主だと認識することで、さらに絆を深めていく。
そして一方通行の恋に思いを馳せ、先走る行動や傷つけないための配慮といった思春期ならではの恋模様を、言葉でなく視線で見せ、彼らの心情をうまく映像に収めた、どストレートな青春でした。
期待が大きすぎた故に、つまらなかったらどうしようと一抹の不安を寄せていましたが、ふたを開けてみれば、抱いていた不安など全く感じさせない作品でありました。
何を隠そう元ミュージシャンとして学生時代から音楽をこよなく愛していた自分にとって、この映画は正に自分が過ごした青春時代を蘇らせ、日常生活がどんな暗い影を落とそうとも、友達と仲間と好きなことをしている時間だけは決して裏切らなかったことを想起させてくれました。
高校時代誰もが経験したような恋愛や友情を取り上げたよくある映画だろ?
アイドルが主役の映画なんてたかが知れてる。
そんな風に思ってスルーしている方はきっと勘違いされてます。
冒頭から敗戦後の港町の世界をジャズと共に映し出すスタッフロール。
千太郎との初めての出会いを演出するまばゆい光と白いシーツと差し伸べる手。
スローモーションと雨を巧妙に使って描きだすケンカシーンでの、フラストレーションを爆発しながらも拳と表情から沸き立つ躍動感。
生きているという実感。
涙を雨で隠し悲しみに暮れる表情を1ミリも逃さない視点。
その視点は登場人物全ての心情を物語っており、誰が誰を好きかを言葉でなく視線で伝えるというオーソドックスでありながら、視線をキチンと捉えて離さない映像。
これら全てをスクリーンに収めた監督のセンスと技術によって、ありきたりに感じられる青春映画を、こんなにも青春時代って美しく恥ずかしくそれでいて楽しい輝いていた一生もんの日々だったことを教えさせてくれます。
ジャズセッションシーンは必見。
そして劇中で一番輝いていたのは、力の入った映像を見せてくれた薫と千太郎二人によるジャズセッションシーン。
クラシックしか弾けない薫に、律子を通じてジャズを教える千太郎。
ジャズは決まりのない自由な音楽だ、と語りかける千太郎のイキイキとした表情と力強くて荒々しくも芯を正確に捉えリズムを刻むドラム。
それはまるで、自分の思うままに自由奔放に生きてきたような千太郎を象徴とするかのような音楽で、楽譜を正確に弾かなければいけないクラシックをこよなく愛する薫にとっては野蛮で低俗なものにしか感じられなかった。
親戚の家に世話になることで自分の意思でなく、誰かの意思で道を決められていた薫の進路とクラシックという音楽とリンクしており、出会って早々他者に壁を作っていた薫の心に土足で堂々と入ってくる千太郎の強引さが、クラシック好きの薫にジャズをやれという件に繋がってくる。
そして楽譜もない規則的な動きのない音楽にはじめて触れる薫の戸惑いは、千太郎とどう接していくかの戸惑いとも重なるメタファーに感じられ、飛び込めという千太郎の声で奏でた旋律は、息苦しい毎日から脱却し自由の翼を手に入れた瞬間でありました。
初めて見せた笑顔。
その後の彼の人生を大きく左右させるものにまでなっていくターニングポイントでもありました。
このシーンで、トランペットの高らかな音に、速いビートで刻むウッドベース、リズムに合わせて主張するドラム、そして薫が戸惑いながらもあわせていくピアノがうまく絡み合い、音楽ってジャズってなんて楽しいんだ!ということを彼らが体現してくれます。
このセッションは意外にも教室でも行われるんです。
アート・ブレイキーの「モーニン」を授業中でも空ピアノで練習する薫の姿に、後ろの席に座る千太郎が気づき、鉛筆で机をスネア代わりにドラムを叩くことで、二人だけの世界を構築し、彼らの脳内で鳴る音は完成されたセッションとして流れるという、学生時代自分もよくやったシーンにニンマリが止まりませんでした。
他にも淳一が入り浸るバーで、米軍海兵と口論になった際、暴力では何も生まれない、とトランペットを奏で、その場の空気を一変させるタイミングでステージに乱入し、即興でセッションを始めるシーンもテンションのあがる展開。
そして最大の見せ場である文化祭のシーン。
律子の想いが分からないまま百合香への想いに明け暮れる千太郎。
しかし百合香は淳一に思いを寄せて佐世保を訪ねていた。
全てを悟った薫は初めて人を好きになった千太郎を傷たくない一心で、そこがくっつけば律子が自分を好いてくれるという計算も入れて、彼にそのことを伏せていた。
しかしそれがバレたことで、友情に亀裂が入ってしまう。
仲違いしたまま迎えた文化祭。
ドラムを叩いていることを知ったクラスメートが千太郎とバンド演奏したいと申し出る。
薫はジャズ一本でやってきた千太郎がやるわけないと豪語するも、好きな人も友達も失った抜け殻の状態の千太郎にとっては暇つぶしになる絶好の口実であり、あっさりドラム担当を受け入れるのであった。
ここでのBGMが唯一エレキギターの音になってるのがナイス演出。
ジャズセッションを文化祭でやってという提案も無視したことで、激高した薫が殴りかかるも反撃しない千太郎。
虚しさとやるせなさ、しこりが残ったまま迎えた文化祭当日。
バンド演奏が始まり淡々とドラムをたたく千太郎。
しかし突如停電。
電気系統の復旧にいそしむ文化祭実行委員の薫は、律子と千太郎が会話しているところを立ち聞きする。
取り返しのつかないことをしてしまったと自分を責めている千太郎。
彼の想いを知った薫。
バンド演奏が中断している中、自分のピアノ演奏でつなぐと言い出しステージのグランドピアノへと向かう。
奏でる曲は律子の好きな「My Favorite Things」
その演奏に観客は静まり彼に注目。
するとステージからドラムの音が。
千太郎が薫を見つめながら叩く。
目と目で合図を送りながら、息ピッタリとキメを打ち、即興とは思えない演奏を繰り広げていく。
俺たちが言葉を交わしたところで、強がったり意地を張ったり。
まともに素直になる瞬間なんてほとんどなかった。
俺たちが心を通わせるのはこの演奏の時だけだ。
おいが悪かった、
いや僕の方こそ、
ボンはなんも悪いことしとらん、おいが勝手に突っ走っただけたい。
そんなことより今この瞬間楽しくないか?
初めて生徒の前で演奏して、みんなリズムに乗って、僕たちの演奏に聞きほれてるよ?
ああ、最高の気分たい!
そんな会話が聞こえてきそうな彼らの表情と眼差し。
その姿を見つめる律子の表情を見て一気に感情移入。
うおおおおおおおお~~~
アオハルだよ~~~(涙)!!!!
感想の冒頭でも書きましたが、僕自身もバンドメンバーとうまくいっていなかったことが何度もありました。
高校時代の友人と上京し、音楽で、しかもこのメンバーで絶対成功しようと日々練習をしてきた中で、理想と現実のギャップに苦しみ一時期練習がケンカばかりでした。
でもそんな険悪ムードを抱いたまま迎えた本番では、今まで腹立ったことやムカついたこと、理解し合えなかったことなどが吹き飛び、今この瞬間をこのメンバーで共有し楽しんでいることが何よりも嬉しく、その楽しさがオーディエンスに伝わり演者とお客さんが一体となった瞬間こそが、かつての僕の「My Favorite Things」だったわけで。
そんなかつての青春の日々を思い出させてくれたこの文化祭のシーンは、ちょっとどころでは済まない涙腺決壊のシーンでした。
どうやら知念君も中川君も今回の撮影に向けて楽器を猛特訓したらしく、演奏を流してのシーンではあるものの、吹替え一切なしで挑んだという今作。
てっきり二人とも趣味でピアノとドラムをやっていたのかと思いきや、そんなたゆまぬ努力をしていたとはつゆ知らず。
文化祭のシーンはかなり張り詰めた緊張感だったそう。
そして演奏を成功し外へと駆け出す二人の表情は、緊張からの解放なのか演技なのか見分けのつかないほど素晴らしい笑顔でありました。
最後に
僕にとって一生もんの友達はバンドメンバーだってことを改めて教えてくれた映画だったように思えます。
ジャズセッションはもちろんのこと、一方通行の片思いを会話ではなく視線で見せることで、より切なさを増幅させる演出も注目して見てほしい作品です。
当時の街並みや、彼らが抱く悩み苦しみ、音楽や友人、思い人を通して成長していく描写はありがちながらも、ど真ん中をあえて描くことで観衆の心にズバッと突き刺さることでしょう。
あえていうのであれば、知念君の演技はもうちょっと頑張ってほしかったというのはありますが、それを中川君の不良番長的グイグイ来いのバックボーン切な~いという役柄からくる圧倒的インパクトと、小松菜奈の純情可憐でその眼マンガじゃん!的な透き通った眼差しのおかげで違和感なく鑑賞できました。
色々ツッコミどころとかあるように思えましたが、涙でそんなもん気になんなかったよww
淳一もセクトに出入りしながら学生運動を繰り広げていましたが、暴力では何も解決しないという言葉が、学生運動から逃げ出した要因だったのでしょう。
しかし友を思い合う二人を見て、彼も途中で投げ出してしまったことに後悔し、再び東京へ戻るというサイドストーリーもきちんと端折ることなく描かれており、原作ではもっと緻密に描かれていると思うとちょっと読んでみたくなりました。
あ~バンドやりたい。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10