バーバラと心の巨人
あえてこの日本版のポスターをトップに貼り付けてみましたが、どうやら海外版ポスターとギャップがありすぎるってので、色々賛否両論が起きているようです。
確かにこの日本版のポスターだと、単館系の作品によく足を運ぶ年配の方や女性層に浸透しそうですよね。
僕も最初このポスターを観てあまり観にいこうとは思わなかったのですが、海外版のポスターを観て、あまりのギャップとめっちゃかっけー斧を持って立ち向かおうとする少女の後ろ姿に、少年心をくすぐるといいますか、単純にこれは面白そうと。
しかも邦題も色々言われているようで、実際のタイトルは「I Kill Giants」。
私は巨人を殺す、ですよ。
それに対して「バーバラと心の巨人」て、ちょっと変わりすぎてる気がするんですが。
冒頭から配給さんが決めたことにあれこれケチつけてしまってますが、要は中身ですから。面白けりゃ口コミで広がってどんな人でも観たいって思うでしょう。
そのお手伝いがちょっとでもできたらいいなと思い、感想を述べていこうと思ってます、はい。
とはいえ、邦題が既にネタバレになっている気がするのは僕だけでしょうかw
まぁいいや、というわけで早速観賞してまいりました!!!
作品情報
「ベイマックス」のキャラクターを手掛けたジョー・ケリーと、イラストレーター/クリエーターのJ.M.ケン・ニイムラ原作によるグラフィックノベル「I KILL GIANTS」を、「ハリーポッター」シリーズなどで知られるファンタジー映画の巨匠クリス・コロンバスらプロデューサー陣が加わることで映画化。
ちょっと風変わりな少女が、巨人から大切な人たちを守るために孤独な戦いに身を投じるも、誰にもその相手の存在を信じてもらえず、仕舞いにはよき理解者までも傷つけてしまう。
巨人とは一体ナニモノなのか、そして彼女はこの孤独な戦いに打ち勝つことはできるのか。
「パンズ・ラビリンス」や「怪物はささやく」に続くダークファンタジーと、現実世界での厳しさとが融合した、少女の心の成長を描いた感動の物語です。
あらすじ
ウサギの耳を頭につけたちょっと風変わりな少女バーバラ(マディソン・ウルフ)は、今日もまたひとりで森にやってきては、木々に自作の“餌”を擦り付けて回っている。
町の人々は誰一人気づかないが、ここ最近、町に不穏な空気が流れ込んでいるのだ。
そう、町に“巨人”が襲来する日が近いことにバーバラだけが気づいている。
実はバーバラは“巨人ハンター”なのだ。巨人を倒す呪文は“コヴレスキー”。
奇跡の大逆転を遂げた大リーガーの名前と同じだ。
巨人襲来を誰も信じないことはバーバラ自身もよく知っているから、バーバラは自分の殻に閉じこもり、どんどん孤立していく。
そんな彼女を、兄のデイヴは“オタク”と呼びバカにし、妹と弟の世話や家事を一手に請け負う姉のカレン(イモージェン・ブーツ)は、バーバラの言葉に耳を貸す時間がない。
ある日、一人で“罠”の見回りをしていたバーバラに、イギリスのリーズから引っ越してきた少女ソフィア(ソドニー・ウェイド)が声を掛ける。
バーバラがすることにソフィアは興味津々だが、バーバラは無視。
次の日も、一緒に登校したがるソフィアを頑なに拒絶する。
なぜなら学校でもバーバラは、不穏な巨人の気配や予兆を、おまじないで遠ざけているため忙しいのだ。
そんな不審な行動に、新しく赴任してきたスクールカウンセラーのモル先生(ゾーイ・サルダナ)が目を留める。
昼食時、いじめっ子のテイラー(ローリー・ジャクソン)ら3人組が、バーバラをいじめにやってくるが、そこにモル先生から呼び出しが入る。
だがバーバラはモル先生とのカウンセリングも拒絶。すべての人に心を閉ざし、交流を拒絶するバーバラだったが、またも話しかけてくるソフィアに、ついに重い口を開き、“巨人”について話して聞かせる。
半信半疑ながら真剣に聞くソフィアに、少しずつバーバラも心を開き始める。
そしてまたもバーバラをいじめにやってきたテイラーらを、ソフィアが気転を利かせて救い出し、2人は急接近していく。
巨人から町を守ろうとするバーバラの行動は、不穏な空気の濃度が高まるにつれ、ますます常軌を逸していく。
バーバラの味方であるソフィアでさえ疑問を感じ、「巨人はいない」と忠告するようになる。
そしてある日、テイラーらに襲われたバーバラを家に送り届けたソフィアは、決してバーバラが上がろうとしない二階のある部屋で、バーバラが避けて来たものを目撃してしまう。
バーバラの秘密を知ったソフィアは、どうにかバーバラの力になりたいと思うが、バーバラは耳を貸さない。
姉のカレンに聞いて事情を知るモル先生は遂に、「巨人はいない。現実から目を逸らすな」と正面からバーバラに語りかける。
現実を受け入れきれずパニックを起こし、嵐の中に飛び出していくバーバラ。
そんなバーバラに、荒れ狂う波間から巨人が襲い掛かる――。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのはアンダース・ウォルター。
今回初の長編映画の監督作品だそうです。
これまでに短編映画を手がけており、「9METER(原題)」でアカデミー賞短編賞ノミネート、不治の病の少年と病院の清掃員の交流を綴った「HELIUM(原題)」でアカデミー賞短編賞を受賞した経歴を持った方だそうです。
キャスト
主人公のウサ耳少女・バーバラを演じるのはマディソン・ウルフ。
はじめて見る女の子だなぁと思ったら、「トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男」や「ジョイ」に出演していたそうで。
あ~どっちも観てるのに、どの役で出ていたか覚えてねー!!
恐らく今よりもう少し幼かったのでしょう。子供の成長は早いですから気づかないのも無理はない、そう自分に言い聞かせ、今作で目に焼き付けようと思います。なんだそのいいわけはw
そんな彼女の過去作をサクッとご紹介。
青春ロードムービー「オン・ザ・ロード」でスクリーンデューを果たした彼女は、赤狩りによってハリウッドから締め出されながらも、偽名で活動し数々の名作を世に送り出した脚本家の不屈の精神を描いた「トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男」に出演し注目を浴びます。
その後、貧しいながらも懸命に家族を支えてきたヒロインがある発明を機に人生の活路を見出していく「Joy/ジョイ」、実在の心霊研究家夫妻を主人公に、数々の心霊現象を描いたホラーシリーズの人気作で、イギリスの最も有名なポルターガイスト現象のひとつとして知られる事件の衝撃の顛末を描いた「死霊館/エンフィールド事件」に出演し、ホラーファンの間で話題となりました。
ちなみに妹のメーガンちゃんも女優さん。彼女と共に「トランボ~」に出演を果たしています。
他のキャストはこんな感じ。
バーバラのカウンセリングを試みるモル先生役に、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」、「スタートレック」シリーズのゾーイ・サルダナ。
バーバラの姉カレン役に、「28週後・・・」、「グリーンルーム」のイモージェン・ブーツ。
バーバラの母役に、「デトロイト」、「ゼロ・ダーク・サーティー」のジェニファー・イーリーなどが出演します。
物語の流れやオチなんかは正直想像がついてしまうんですが、きっとこの映画はバーバラの心の叫びと、それに呼応するかのように監督らによって作り出された様々な描写や世界観なのかなと。
とりあえず、闘うウサ耳少女を応援しながら観たいと思います。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
まぁ、邦題が既にネタバレだから全容に面白みはない。
が、バーバラの内面を緻密に練り上げてスパークするラストは涙!
でもなぁ…。
以下、核心に触れずネタバレします。
中々の曲者だが勇気と根性はある。
周囲の人間とのかかわりを避け、仕事と称し日々巨人対策に明け暮れる少女バーバラの孤独な戦いと心の葛藤をベースに、やや暗がりな画質やバーバラの繊細な面を駆り立てるかのようなBGM、誰でも一度は作ったことのある手製のガジェットや悍ましい姿を見せる巨人などのCG描写などバーバラが抱える悩みを増幅させる巧みな演出が随所に冴えわたり、唯一の友人ソフィアとの本音のぶつかり合いやモル先生とのやり取りにモヤモヤしてしまうほどこじらせてしまったバーバラの痛み悲しみ辛さが真っ直ぐに伝わるステキな映画でございました。
はい、大体まとめて書いてしまいましたが、単純に好みではありませんがいい映画でした。
それはなぜかと問われればやはりバーバラという主人公を見事に演じたマディソン・ウルフちゃんの魅力的だったからです。
その魅力的が故に彼女の一挙手一投足に本当にイライラし、どんだけ手の焼けるガキンチョなんだ!と思ったからです。もちろん褒めてます。はい。
だってもう同級生は見下すし、転校生のソフィアにも中々心開かないし、先生はひっぱたくし、兄貴と揉めるし、姉ちゃんに反抗的だし、何お前そんなに自分の殻に閉じこもってたいなら一生やってろよ、自分の世界で幸せに暮らせよ、と突き放したくてしょうがなかったからです。
ただバーバラちゃん、引きこもりなんかではない。いくら巨人対策が忙しくとも学校にはちゃんと行き授業も受ける。
食堂でケンカ売ってくる同級生の女の子(この子もめっちゃヤンキーっぽくてよかったなw)には手に唾を吐いてメンチを切ってケンカ上等!オーラをガンガン放つような強気な女の子なんですね。
そういう意味ではこいつ勇気あるし根性あるし、この心の病というか巨人との戦いが終わったら、自分が乗り越えなければならない壁を登ったらきちんと立派な女性になるんだろうな、その強さで素晴らしい未来を切り開いていけるんだろうな、なんて思いながら見てました。
そして自分が狂ってることも自覚している。ちゃんとわかってるんですよね。だから何とかなるんじゃないか、ってモル先生やソフィアみたいに見守りたくなってしまうというか。
それを解っていたとしても彼女にはどうしても何かを守らなくちゃいけない使命があって、それが実は周りの人から見たらただの現実逃避で、どうしたら彼女はそれを理解できるか乗り越えられるかっていう解決の糸口が見えてこないわけで。
どうしたもんかと。
で、ついに彼女が抱えていた問題が明かされ巨人との対決。巨人がいいこと言うんですよ。
人間必ず死が訪れる、それをどう受け入れるか、今生きている喜びを感じろみたいな。
結局バーバラがどんなに巨人から守ろうとしても、それからは抗うことのできないことを巨人は教え、立ち去っていくんですよね。
正直バーバラの抱えていた問題や奇行に全く共感はできないにしても、彼女の立場になって物事を見ていくと、相当深い悩みというか現実を受け入れられない辛さがそこにはあったんだろうなと。
巨人と対決するまで。
物語に関してですが、そこまで壮大なお話ではないんですよね。巨人が出てくるとはいえ。
ゴールは結構すぐ近くにあるんだけど、そこまでの道のりをゆっくりゆっくり歩いていくような流れで。
序盤はソフィアとの交友を軸に進んでいくんですけど、バーバラはバーバラでひたすら巨人対策。
敗者になったで列車の壁になんか文字書いて何かの粉振ったり、学校の廊下からトイレに至るまで自分がつけたマークだか呪文だかが取れてないかはがれてないかを見て回ったり、森の中や電柱の上に巨人の餌を置いといておびき寄せようとしたり、その砂浜に網やらロープを隠しておいたり。
あとあれだ、最初なんか巨人が好き好みそうな蜜みたいなの作ってたな。何やらいろいろ混ぜて着色されたねちょねちょしたモノを木の葉や木の枝に擦り付けていたり。
そんなことをソフィアに見せたりしながら彼女と仲良くなっていくんだけど、ソフィアにたしなめられたり裏切られたり(といってもバーバラのため)することで、彼女がナーバスになっていき、黒い煙の精霊みたいなやつに、そんなんじゃ巨人に勝てねえぞ!なんて言われて。
なんていうかですね、彼女の想像力がこの映画を引っ張っている気がします。ここまでやっていると本当に巨人がいるんじゃないか、という錯覚に陥るほど作り手がうまく描写しているからフィクションに感じないというか。
フォレストジャイアントと戦う時は、結構アクションぽくなっていて、車両がふっとんだり、通路走ってる時にどんどんガラスが割られて、そこからじろっと巨人が睨んでこっち覗いてきたりするんですよね。全部バーバラの妄想なんですけどすごくリアル。
尚且つバーバラ演じたマディソンちゃんも、圧倒的な表情とスパークした感情を操ることで説得力が増してるといいますか。
モル先生とソフィアの献身的支え。
ここまで真剣に巨人と戦う意志があるから本当に手に負えないバーバラ。
ソフィアも最初こそ彼女の奇行に付き合ってましたが、小鹿の死骸をいじっていたのを機に、さすがについていけなくなって逃げ出すんだけど、やっぱり唯一の友人だから、きっと彼女はちゃんとした子だからってんでもう一度向き合うんですよね。
モル先生も自分の子供の面倒でいっぱいいっぱいなんですけど、バーバラを見捨てることができない。仕事と割り切って自分の家族の事だけ心配すればいいのに、バーバラを見捨てることができない。
これ僕ならですよ?無理です。
いくら突発的とはいえ一人で勝手に抱え込んだ感情を抑えることが出来なくてついソフィアを振り向きざまに殴っちゃうし、それで傷つけられたことでいじめっ子の悪魔のささやきによって全部バーバラが作った罠を話しちゃう。
そしてバーバラが抱える問題の核心をつくとブチ切れられてしまう。
いやもうやってられないですよ。ソフィアはいい子だからすぐ他の友達作れるって、なんでそこまでしてバーバラにかまうんだよ、って。
優しすぎるよ・・・。
モル先生だって、あんなツンケンした言い方されて腹立たないことが凄い。
大人に向かってなんだその口のきき方は!ってなるような言い草だったし、何よりバーバラは先生殴ってますからね。もうここでアウトですよ、いくら可愛い生徒だからって。
モル先生も優しすぎるよ・・・。
こんないい人たちが懸命に寄り添ったことでバーバラはようやく現実に気付くことができるんですよね。
お姉ちゃんだって自分の事で手いっぱいだけど努力はしてた。妹ともっと話すべきだよね、ってちゃんと向き合おうって決めたのに、バーバラは迷惑かけるし。
そりゃあキレるわ。俺もあそこまでだなぁ我慢できるの。
ちなみにですね、バーバラの兄貴が一番クソです。こいつもきっとバーバラと同じ苦しみや問題に直面していてゲームという現実逃避をしていたんだと思います。
だからと言って、姉ちゃんが作った飯にバーバラが遊んでいたテーブルRPGのダイスを突っ込んでこんな臭いメシ食えるかよ!って八つ当たりするのはバーバラ以上に腹が立つ。
メシを粗末にする奴は俺は許さん。
こいつはこれ以上のフォーカスが当たらないので、その後どう立ち直ったかはわかりません。最後泣いてたけどね。果たしてバーバラ同様乗り越えることができたのか。
こんな兄妹を持つ姉ちゃん、マジで大変だったろうな・・・。
最後に
今回の作品は、登場人物を受け入れることができたかそうでないかという面で感想を述べたわけですが、作品としてはすごくいい出来だった半面、どうしても共感できない部分が多く、色々理解するのに苦労しました。
今年「フロリダ・プロジェクト」って映画がありましてね、そん時も母ちゃんの行動にホントイライラして酷評したんですよ。
こういう見方はもうしないようにしようと思ってたのに、俺をイラつかせる主人公がまた出てきてしまって、どうしようかと。
なので一旦落ち着かせて書いてみました。見た直後に書いたらもっと荒れてたかもw
自分だってバーバラほどの大きな問題ではないですが、殻に閉じこもって現実逃避したことありますから他人事ではない、とわかっていてもこういう子を見るとダメなんだよなぁ。
感情直結型なんで…。
とにかくバーバラを演じた女性の素晴らしい演技力、そのバーバラの想像力を見事に映像として具現化した監督の技術がうまく舵をとった力作でございました。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10