モンキー的2021年上半期映画ベスト10選
2021年になればきっとコロナウィルスも沈静化し、いつものような映画ライフを送れるだろうと願った2020年年末。
まさか2020年よりもひどい状況になると、あの時誰が思ったでしょう。
2度3度と起きた緊急事態宣言。
新作映画の延期はおろか、1年ぶりの映画館営業自粛。
ワクチンの普及が進んだアメリカは新作映画公開を決行した一方で、日本映画は苦しい興行になってしまっています。
そんな中でも優れた作品が劇場、配信共にたくさんありました。
今回は私モンキーが超独断と偏見で選んだ、「2021年上半期に公開された新作映画ベスト10作品」を発表したいと思います。
満足度の高かった作品から選出しますが、まだ上半期ということもあり、順位は付けず公開日順での発表になります。
今年上半期に鑑賞した新作映画は55本!(配信映画作品含む)
高満足度が多かったので今年の選出も難航しました!
それではどうぞ~!!
ベスト10選
この世界は、生きづらく、あたたかい。
すばらしき世界
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10
後半めっちゃ泣いた。
人生の大半を刑務所で過ごした男が、短気で一本気な性格ゆえ、理不尽な出来事や筋の通らないことに目を背けられない息苦しさにさいなまれながらも、社会=他者との繋がりを通じて社会復帰を目指す道のりを描いた本作。
西川美和監督作品の中ではかなり上位。
何かのTVドラマのセリフで、「どれだけ凶悪な事件を起こした悪い人でも、最後にひとつだけ良いことをすれば天国に行けるよ」てのがありまして。
三上は最後に社会に寄り添った決断をしたことで、天国に行ったのだろう。
周囲の人に出会わなければ、彼ははき違えた「正義」を決行し、刑務所に戻ってしまったのだろう。
周りの人にやさしくされると自然と涙が出てしまうほど心がヨボヨボになったモンキーは、周囲の人たちが三上に優しくするたび涙が止まらないのでありました。
特に津乃田が三上の背中を洗うシーンはもう…。
三上の顔を見せない演出が余計にグッとくるんです。
南北戦争後のアメリカで新聞紙を読み聞かせる男の物語
この茫漠たる荒野で
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
現代に通じる物語だった。
南北戦争終結後から5年後のアメリカを舞台に、世界各地のニュースを読み上げる男、言葉の通じない10歳の少女を親族のもとへ届けるため、荒野を旅しながら厳しい試練に立ち向かっていく物語。
ネットフリックス映画の中から唯一の上半期ベスト。
ポール・グリーングラス監督があまり得意ではないモンキーでしたが、本作は別格。
西部劇でありながらドンパチはほぼなく、トランプ元大統領をイメージしたわる~い市長を独自のやり方で成敗するトムハンクスの見せ場がたまりません。
また言葉の通じない少女というのも、ハートウォーミングなドラマへと進行していくために必要な設定となっており、僕の心をクリティカルヒット!しました。
また南北戦争後が舞台である通り、戦争に負けたことを受け入れず、奴隷制度の撤廃も受け入れようとしない南部の者たちの差別意識が劇中ずっと描かれているんですよね。
およそ160年前の出来事がのはずなのに、未だに根付いてしまっている差別を本作で描くということ、そしてフェイクニュースを流そうと画策するの町のトップを、真実で打ちのめそうとする勇敢な主人公は、監督とハンクスによる現代への強いメッセージなのではないかと。
アカデミー賞級かなぁと思いましたが、主要部門に入ってこなかったのが不思議でした。
同じ空の下、私たちは違う階層を生きている——
あのこは貴族
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
まだ東京で生活したいと思った。
渋谷の松濤に住むお嬢様と地方から出てきたものの「居場所」を見いだせない女性という階層の違う女性たちの出会いを皮切りに、これまで関わってこなかった「世界」に触れることで「人生」をどう生きていくかを、5章から連なるエピソードで2人の出自と壁と交差を描き、コンクリートジャングルの冷たさを基調とした色味と「雨」を活かした背景、それと対比するかのような対立も分断もせず尊重し合う姿勢と、各々が「幸せ」を見出していく姿を優しく温かい筆致で綴った、非常に好きな部類の物語でございました。
一度は地元に帰ったものの、映画環境の整った都会でもう一度暮らしたいと思い再上京しているモンキー。
長きに渡って「東京の養分」として過ごした僕ですが、街に出れば違う階層の方と幾度もすれ違っているにも関わらず、絡むことは早々ないわけです。
本作はそんな階層の違う女性二人が一期一会的な出会いを通じて、誰しも悩みを抱えながらも都会で生きる喜びを描いたステキな作品でした。
そもそも本作を見る予定など無かった僕ですが、とある方のツイートに心を動かされ臨んだところ、映画技法として巧い箇所にも脱帽したし、登場人物たちのお芝居にもぐっと来たし、何より「良い映画を観た」という満足感を得た作品でした。
普通な恋愛って、なに?
まともじゃないのは君も一緒
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
普通じゃなくてよかった。
普通の恋愛が分からない数学の予備校講師と、普通を解ったつもりでいる女子高生が共犯となって青年実業家を嵌めようと画策するも事態が思わぬ方向へ進んでいく姿を、気の抜けた音楽に乗せて放たれる機関銃のようなかみ合わない会話によって、ホンワカにユーモラスな空気で包み込みながら、如何に我々が「普通」という概念いしがみ付き翻弄されてしまっているかを突き付けると共に、「普通」でないことが「異常」ではないこともしっかり教えてくれる、一風変わったラブストーリーでございました。
「普通」じゃない2人を怒涛の掛け合いでユーモラスに見せながらも、普通であることや普通でない事も認めあえる関係性こそが普通で在れたらいいよなぁなんて思えてしまう、なんとも「ヘン」な映画でした(褒めてます)。
どうしても右に倣えの日本人なので、「普通○○でしょ」と言われると自分は普通でないのかと縮こまってしまいたくなるんですが、本作を見ているとそんな自分自身を愛おしく感じてしまう魔力があるように思えます。
成田凌と清原果耶のセリフの応酬も素晴らしいし、僕が一番好きなモデル泉里香もたまりませんし、まるで弟のコピーに見えてしまう小泉孝太郎も素晴らしいです。
本作をベストに入れたことが普通じゃないとか言われませんようにw。
崖っぷち出版社で生き残りをかけた逆転連発エンターテインメント!
騙し絵の牙
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
キレイにダマされた。
出版業界の老舗出版社で起こる次期社長争いや書誌の生き残り争いといった権力闘争の行方を、新人編集者と雑誌編集長の視点で描く仁義なき戦いの物語。
出版業界の裏側をチラ見させながら次々と新しい風を起こす編集長の手腕や、純粋に世に面白いものを出したいと願う新人編集者、やり手編集長の口車に乗せられる周辺や、彼をネタにのし上がる新社長、旧体制派など、どこも保守VSリベラルかよ!と思わせるドロ沼の戦いを、エッジの効いた劇伴に乗せてリズミカルにテンポよく描き、さらにはどんでん返しと一握の希望を見せるラストにあっぱれと思わせる痛快劇場でございました。
収入が生活に見合わなくなった時、真っ先に切り捨てられるのは娯楽費です。
そうなるとエンタメ企業に一気にしわ寄せがきてしまい、本も音楽も映画も製作費を削られ、物価を下げなくてはいけなくなる。
業界で生き抜くためには旧態依然のままではいられないわけです。
そんな中、大泉洋演じる速水が、社内はおろか社会全体まで巻き込んでいくような恐るべき奇策を仕掛けていく過程は非常に面白いんですよ。
僕の中ではLITEが担当した劇伴が物語にスピード感とエッジ感を上手く出しているように思えて、別の劇伴だったらこの疾走感は出ないよなぁと。
物語としてもワクワクするし感覚としてもワクワクするんですよね。
大泉洋と松岡茉優に見事にやられた1作でした。
マンハッタン島、完全封鎖。
21ブリッジ
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆☆★9/10
色気ムンムンだった。
父から受け継いだ「正義」を胸に刑事職を全うする男が、コカイン強奪及び警官殺しの容疑者を確保するため、夜のマンハッタンを封鎖し奔走する姿を、キャラクター像や撮影、音楽カメラワークに至るまで徹底的に往年の刑事アクション映画から影響を受けたことが透けて見える清々しさと、善悪の二元論では片づけられない倫理的な問いかけを与えることで現代的な作品へとアップデートし、さらにはタイムリミット近づくNYの街の風景や事件の真相に迫る緊張感が、クライムサスペンスであると共にフィルムノワール感をも漂わせた、一級品の映画でございました!!
現時点では今年のベスト1位作品です。
唯一後悔してるのは劇場で1回しか見ていないことです。
これだけが悔やまれます。
ボーズマン最後の主演作ということも加わって、彼の正義を貫く姿勢や漂う色気、鋭い眼差し、全てがカッコイイ。
物語のオチは映画でよく見るようなことなんですが、一昔前の刑事映画が好きな人には刺さるような作品だと思います。
雰囲気ですよ、雰囲気。
夜のNYの匂いが立ち込めるんですよ。
刑事映画の歴史に刻んでもいいほどの作品だと僕は思います。
くそったれな青春
BLUE/ブルー
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10
全員に見せ場がある巧さ。
ボクシングの世界を舞台に、勝利を掴むことができずにいるも飄々と笑う男、才能に任せ勝利を掴むも病と闘う男、下心から始めるも少しづつ好きになっていく男、そして幼馴染と恋人を影で見守る女性の4人を中心に描く物語は、普段見るようなボクシング映画の装いではない描写で試合をリアルに表現しながら、人物描写にこだわりも入れた監督の気合がみなぎる作品であったと共に、「負け」を重ねても「好き」を貫く姿勢こそが「強さ」であることを証明した、紛れもない良作でございました。
吉田恵輔監督に甘いモンキーは、もちろん本作もベストに入れさせていただきました。
ボクシング愛、いやボクサー愛が溢れた本作は、音楽の道を諦め別の人生を歩んでいる僕に大きな後悔を抱かせたと同時に、ひたすら夢を追いかける人がどれだけかっこいいかを描いた映画だったのかなぁと。
とにかく全員見せ場を作って描いてる映画もなかなかない。
いきってる先輩ボクサーから、ボクササイズのおばちゃんたちまでしっかり物語に絡めていく巧さ。
エキストラの人にまで演技指導をしてるのが手に取るようにわかる、監督の徹底ぶり。
なんでもいいですけど「愛」を盛り込んだ作品て、最高ですよね。
老いによる思い出の喪失と、親子の揺れる絆
ファーザー
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
ぶっちゃけ怖かった。
僕の身内には認知症になった人はいません。
だからどこか他人事だったりもした。
でも本作は認知症患者の視点でずっと見せていくことで、如何に認知症患者が脳内で混乱しているかが手に取るようにわかる見せ方になってるんですよね。
舞台からの映画ということで、従来なら失敗してしまうんじゃない?なんて不安もあったんですが、初めての長編映画を監督したのに、なんでこんな魔法をかけられるんだろうと。
ホプキンスも感情の切り替えだとか使い分けも見事で、そりゃアカデミー賞主演男優賞獲るよなぁと。
ラストカットは最高です。
あれで終わるから希望を感じられるよなぁと。
一生に一度の、至福の体験!
アメリカン・ユートピア
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10
ライブ映画って良いよね。
元トーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンが手掛ける圧巻のライブショーの模様を、鬼才スパイク・リーの手によって映画化。
およそ100分に渡るライブの模様を見るだけの作品なんです。
トーキングヘッズなんて「Psycho Killer」くらいしか聞いたことなくて、当初見る予定なかったんですけど、俺が音楽映画を見ないなんてダメだろうとw
もう最高でした。
マーチングバンド形式で様々なフォーメーションを汲みながら演奏するバックバンドの緻密な音の重なりもたまらないし、一見ワイヤレスでの演奏が演出の一環かと思いきや、ちゃんと意味を持たせる説明、多様性に富んだメンバー構成にも意味があり、理想郷だったアメリカが分断によって「家を燃やそう!」とまでなってしまうことに対する言及。
暴力によって命を落とした人を声高に叫ぶ歌からは、もろにスパイクリ―色が強く出たことで少々の難色も感じたりするんだけど、恐らく本作の一番の見せ場でもあるわけでしっかり受け止めました。
メッセージ性に重きを置かずとも、こんなパフォーマンス日本のミュージシャンじゃ無理だろ!と思えるようなライブで。
そうだな、桑田佳祐辺りが影響受けてやるんじゃないかなぁ~なんて見ながら思ったり。
見逃さずに見ておいてよかった映画でした!
その全てが、想像を超える
ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダー・カット
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10
4回観ました。
本作を「新作映画」として扱うには正直抵抗がありましたが、これどう考えても「ジャスティス・リーグ」とは別物の作品です。
だったら入れてもいいじゃないかと。
監督のみに起きた悲劇を知っているととんでもなく深い物語になってる事や、ウェドン版で隅に追いやられた若手ヒーローを主人公級に描くことで理解できる「次世代へのバトンタッチ」。
スナイダーはいつだって「神話を次世代に語り継いでほしい」という継承のスタイルで終着へと向かっていくので、非常に神話的な内容でもあったのではないかと。
またコロナの影響で大作洋画が全然なかったことに対する欲求も反映されてると思います。
特にアメコミ映画で括るのであれば、かなり久々の映画でしたし、ヒーローが戦うだけで興奮してしまうモンキーにとって本作を外すわけにはいかないよなぁと。
もう全部良いの!
敵も味方も脇役も全部!
長いけどさ、長さに意味がある映画だったと思います。
最後に
というわけで上半期ベストはこのようになりました。
#2021年上半期映画ベスト10
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年6月27日
すばらしき世界
この茫漠たる荒野で
あのこは貴族
騙し絵の牙
まともじゃないのは君も一緒
21ブリッジ
BLUE/ブルー
ファーザー
アメリカンユートピア
ジャスティスリーグ:ザック・スナイダーカット
※順不同 pic.twitter.com/7SUux9jr0W
1~3月は邦画中心、4~6月は洋画が中心のベストになりました。
2021年最初は洋画の公開作品があまりなかったのも大きいかと思います。
そのせいもあって普段見ないような邦画にも足を運んで見れたのは大きいです。
下半期は北米の映画館が徐々に営業再開したことを機に、日本でもずっと延期だった大作洋画がどんどん公開されます。
特に夏休みは去年の寂しさを取り戻せそうなラインナップ。
モンキー的に一番楽しみな「シン・ウルトラマン」も、公開日未定ではあるものの楽しみで仕方ありません。
年ベスに一体何作品残るのか全く読めませんが、全部入れ替わるくらい面白い新作映画と出会えることを願いつつ、最後とさせていただきます!
というわけで以上!あざっしたっ!!