モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「Broken Rage/ブロークン・レイジ」感想ネタバレあり解説 実験的挑戦は皮肉を込めたものなのかも。

Broken Rage ブロークン・レイジ

北野武監督の時代劇「首-KUBI-」のプロモーション。

アウトレイジの時は「しゃべくり007」をはじめとした地上波のバラエティ番組に出演してたけど、首の時はホリエモンの番組といったネット中心のプロモーションだった気がするんですよね。

 

で、今回の「Broken Rage」のプロモーションもやはりYouTubeが主体。

オリラジのあっちゃんの番組にゲスト出演してたのを見て驚いたもん。

あっちゃん、真面目に聞きすぎてたけしのボケを拾えてなかったのが残念だったな。

 

何が言いたいって世界のキタノなのにネットでプロモーションてのがめちゃくちゃ淋しい。

そりゃAmazonoriginalだからってのはあるんだけど、いつまでそんな区別というか差別をしてるんだろか。

 

とりあえずその辺は置いといて、本作は「茶の間で見る」という映画とは違う環境での映画配信ということで、尺が60分弱という短さ。

しかも同じ話で前編シリアス後編コメディという異例の試み。

早速自宅で鑑賞いたしました!

 

 

作品情報

HANA-BI」でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、「世界のキタノ」の異名を持つ北野武が、監督・脚本およびビートたけし名義で主演を務め、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに型破りな演出で撮りあげた実験作をAmazonprimevideoで世界配信する。

 

裏社会で殺し屋として暗躍するも殺人容疑で逮捕された主人公が、無罪にしてもらう代わりに覆面捜査官として麻薬組織に潜入捜査することなってく姿を、約60分の映画を前後半に分け、前半は殺し屋の奮闘を活写する骨太のクライムアクション、後半は前半と同じ物語をコメディタッチのセルフパロディで描く。

 

動画配信を見るようになった監督は、物語のペースの速さに驚いたのと同時に、自身も時間の感覚に対して速さを求めてしまったとのこと。

そうした中、自身の過去作を見て「だるさ」を感じたという監督は、今回劇場ではなく配信で作品を見せる状況に対し、できるだけ編集を意識して製作したとのこと。

 

動画配信によって映画産業が危ぶまれる中、監督は本作を通じて「試されている時期だと思って色々挑戦したい」と意気込んだ。

 

キャストには主人公の殺し屋を演じるビートたけしのほかに、刑事役として「首」に出演した大森南朋浅野忠信の二人、北野映画常連の白竜國本鍾建劇団ひとり鈴木もぐら空気階段)、長谷川雅紀錦鯉)といったお笑い芸人などが出演する。

 

日本の配信映画としては初のヴェネツィア国際映画祭上映作品。

60分尺の映画がお茶の間に、どう響くのか。

 

Broken Rage

Broken Rage

  • ビートたけし
Amazon

 

あらすじ

 

殺し屋としての才覚を持つねずみ(ビートたけし)は、ある事件をきっかけに警察に逮捕される。

しかし、そのスキルを買われ、麻薬組織に潜入するよう命じられる。

 

警察官たちと協力し、危険な裏社会に足を踏み入れたねずみは、自身の過去と対峙しながら、組織のトップに近づいていく。(シネマトゥデイより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

おふざけパートは許容できるとして、シリアスパートがまぁつまらん。

正直配信用で尺を縮めただけなので、劇場用の尺で見ないとどう評価したらいいか難しい。

でも、これはない。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

あなたたちはこういう娯楽を楽しんでるんだよ。

本作をどうとらえるかは自由だということを承知の上で言わせてもらうと、監督自身「過渡期に入ったエンタメへの挑戦」と言ってるけど、これ裏を返せば「もう俺が撮りたい映画は終わった」と言ってるようにも聞こえる。

 

シリアスパートの内容は、老齢にして尚殺しの依頼をスマートに片付けるねずみが、殺しの容疑の疑いをかけられてしまうが、罪を無かったことにするために麻薬組織に潜入捜査官として悪事を暴く手助けをすることになるって話。

 

最初の殺しはいかにもな高級ラウンジで堂々と客前で発砲し、悠々とその場を去って配達員の格好をして逃亡を図り、2つ目の依頼はジムで運動をする錦鯉長谷川演じる男を、ランニングマシンの隣で併走しながら観察、サウナから単独で出てきたところを水の中に沈めて殺害するというものでした。

 

正直殺し屋としてのキレもなければ工夫された殺しではなく、たけし本人がやらなくちゃいけない役なのかと考えると少々疑問に思えます。

 

そんなこといってたらたけし映画すべて否定することになるので、あくまで疑問程度に留めますが、更なる疑問は「容疑がかかってる段階で、何故潜入捜査をする羽目になるのか」という点です。

面通しで確定はしているモノの、本人による自白はない。

だからなぜ「潜入捜査したら帳消しにしてやる」って言われて「わかりました」ってなるのか、俺にはわからん。

確かに逃げ道はないからってのは理解できるとして、一度自白するってカットを入れても良かったのではと。

 

俺はどうもそこが引っ掛かってしまって、その先が余り楽しめなくなってきたんですわ。

 

そこからというもの、バーで騒ぎを起こしたことがきっかけで白竜に気に入られ、中村獅童演じる組長のボディーガードに抜擢。

鉄砲玉よりも先に銃を抜いて仕留める腕前を見せたり、刑事の計らいでヘロインに別の粉を混ぜたモノを出して、彼らが麻薬取引をしている現場を抑えるための足掛かりを作っていく。

 

話の結末に関しては、見事に取引現場を押さえ潜入捜査は成功、というオチ。

 

そこから「スピンオフ」というタイトルが表示され、シリアスパートのコントが繰り広げられていく。

 

後半に関しては、ドアに頭ぶつけたり喫茶店の椅子が折れてズッコケたり、燃やした依頼書が台所のタオルに回って火事になったりと、ネズミのおっちょこちょいな一面を笑いにするというベタなモノもあれば、突然マジックショーで脅す刑事たちの姿や、視力検査を覗く刑事たち、麻薬工場で突如行われる椅子取りゲームなど、本筋とはかけ離れた風景が混ざったものになっていて、たけしの笑いをそれなりに理解していれば、クスッと笑えるパートになってるので、まぁ楽しめるといえば楽しめる。

 

笑いが合わなければ後半もつまらないだろうけど、俺自身この手のコテコテな奴は案外好きだったりするので許容範囲。

 

やはり肝心なのはシリアスパートでの物語事態なんだよなぁと観賞後改めてため息をついてしまった。

 

恐らくですよ、これ実権とかではなく、如何に我々が動画配信で娯楽を消費してることに対する風刺というか皮肉だったりするのかなぁと。

今あなたたちが消費している娯楽は、こういう一切ディテールのない、ただシーンだけを切って張っただけのしょうもないものばかりなんですよって言われてる気がしたわけですよ。

 

だから劇場で見てほしいってのを自らクオリティを下げた作品を配信で流すことで言いたかったのではと。

 

劇中でも「時間ちょうせい」と表記された後に、様々なコメントが流れるんだけど、そうやっていちいちツッコんだり言及しながらでないとあなたたちは作品を楽しめない脳になってますよ、と言われてる気もする。

 

そう考えると「過渡期を迎えたエンタメ」の内幕を案外しっかり表現してたりするのかなと。

そういう意味での挑戦だとしたら、敢えてこの程度の内容にすることで過渡期を迎えたエンタメの格を下げて、映画はやはり劇場で見るべきということを提唱したかったんじゃないかなぁと。

それってものすごくリスクの高い実験だったなぁとさえ思えてしまう作品でしたね。

 

 

最後に

ぶっちゃけブログで書くほどの分厚い感想に出来ないのが悔しいんだけど、60分尺の中編映画で、この内容だとこれ以上書けることないですって。

 

もし自分の思っていることが当たっているのなら、この「BrokenRage」を劇場用に編集したものを映画館でかけてほしい。

出ないと、そもそも面白いものだったのかどうか判断しかねます。

 

やっぱりできることならシリアスパートをもっと渋くバイオレンスに見せてほしかったなぁ。サウナから出てくるまさのりさんをスローで見せたら既にコメディだろうに。

 

そう結局のところ、シリアスとおふざけの落差がそこまでないのも結構問題なんだよなぁ。

だったら「アウトレイジ」をそのままパロディとして全編描いた方が評価できたなぁ。

 

まぁ俺は初期から中期のたけし映画をあまりみていないので、こんな感想しか書けないんだけど、ファンなら「本来のたけし映画ってこうだよね」みたいな感想になるんだろうか。

 

色々頭を抱えてしまった作品でした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10