コート・スティーリング

サッカー日本代表がフランスW杯で世界との差を痛感し、「終わりなき旅」で本格的に活動再開したMr.childrenに歓喜した俺の1998年。
ちょうどそのころアメリカでは、モニカ・ルインスキーとの不倫問題で専ら話題だったクリントン元大統領が2期目に突入し、Googleが創立し、ビンラディンのクルーがタンザニアのアメリカ大使館を襲撃し、マイノリティが暴行によって死んでしまう事件があったりと、色々なことがあったようです。
今回鑑賞する映画は、そんな1998年のNYを舞台に、夢に破れた青年が犯罪に巻き込まれていくお話。
海の向こうを意識することなど毛頭なかった1998年の俺でしたが、映画を通じて何となく「当時のNYって…」みたいに認識してるクチ。
この手の映画って作ってたっけ?なんでこれ手掛けたん?と疑問しか浮かばないダーレン・アロノフスキー監督が、どういう思い入れで手掛けたのか、自分なりに想像しながら楽しみたいと思います。
しかし当時のニューヨークって、まだ今よりも治安が良くなかったんじゃ?
その辺も意識したお話になってるんでしょうか。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
『ブラック・スワン』で自身もアカデミー賞監督賞にノミネートされ、その後『ザ・ホエール』では同賞において主要部門2冠をもらたした名監督ダーレン・アロノフスキーが、チャーリー・ヒューストンの小説を映画化。
メジャーリーガーの夢を断たれ、NYで体たらくな暮らしをする若者に、突如訪れる悪夢の連続と負の連鎖を断ち切るべくリベンジに挑む姿を、多種多様なキャラの登場や世相など、生粋のニューヨーカーだから描けた当時のNYを、バイオレンスとアクションで満たした、娯楽性あふれるクライムムービー。
今回「生身のアクションが映画の要」と語るダーレン・アロノフスキー。
ジャッキーチェンの映画で育ったと語る監督が、暴力シーン、マフィアの魔の手からの疾走、カーアクション、爆発まで、本作は手に汗握るアクションに挑戦。
「DUNE 砂の惑星part2」でも活躍したオースティン・バトラーのアクションにも太鼓判を押した。
また本作は、監督が感銘を受けた70年代映画を手本にして撮影したそう。
精通してるものならシーンを見ただけでどの映画かわかるかもしれない。
キャストには、「エルヴィス」、「エディントンへようこそ」のオースティン・バトラーが、主人公であるメジャーリーガーの夢に挫折し、今はいち野球ファンとなった若者ハンクを演じ、、「ザ・バットマン」のゾーイ・クラヴィッツがその恋人役、「あの夜、マイアミで」のレジーナ・キングが主人公を助ける刑事を演じ、「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」のマット・スミスが主人公の隣人役、他にもリーヴ・シュレイバーやヴィンセント・ドノフリオ、「ブレット・トレイン」で俳優デビューしたベニート・マルティネス・オカシオなどが脇を固める。
タイトルの“コート・スティーリング”は「盗塁失敗」を意味する野球用語で、広い意味では「チャンスを掴もうとして失敗すること」を指す。
ネコの世話が原因で犯罪に巻き込まれてしまう主人公は、どんな一発逆転をかますのか。
あらすじ
本作の舞台は1998年、ニューヨーク。
メジャーリーグのドラフト候補になるほど将来有望だったものの、運命のいたずらによって夢破れた若者・ハンク(オースティン・バトラー)。
現在はバーテンダーとして働きながら、恋人のイヴォンヌ(ゾーイ・クラヴィッツ)と平和に暮らしていたある日、変わり者の隣人・ラス(マット・スミス)から突然ネコの世話を頼まれる。
親切心から引き受けたのもつかの間、街中のマフィアたちが代わる代わる彼の家へ殴り込んでは暴力に任せて脅迫してくる悪夢の日々が始まった!
やがてハンクは、自身が裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれてしまったことを知る──が、時すでに遅し!
警察に助けを求めながら戦々恐々と逃げ続けていたある日、ついに大きな悲劇が起こる。
理不尽な人生に堪忍袋の緒がブチギレたハンクは、一念発起して自分を巻き込んだ隣人やマフィアたちにリベンジすることを決意する──!(HPより抜粋)
感想
#コートスティーリング 鑑賞。野球と犯罪が絡むから木更津キャッツアイ的な軽いノリのクライムモノかと思ったら、追い込まれ過ぎて逃げるしかないくらい最悪なゴールデンスランバー。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) January 9, 2026
🐈ちゃん爆カワだけどハゲのチンピラが怖すぎる。その頭突きは効果あるのか?
楽曲提供したIDLESの曲が超かっけえ。 pic.twitter.com/4UKX2Pltnn
ネコ預かっただけなのにみんな死んで人生急降下の主人公!
9回裏ツーアウト満塁のピンチをどう打開してチャンスにするのかのドキドキが楽しい!
しかしやたら接写が多かったなぁ…ネコちゃんが近いのはいいんだけど。
以下、ネタバレします。
いつまで逃げてんだ!?
高校時代にメジャーリーグからスカウトもあったほど将来有望だったハンク。
約10年後、彼は野球など一切せず、NYでサンフランシスコジャイアンツを応援しながらバーカウンターで酒を作る生活を送っていた。
彼女とも関係は良好で、昼に起きて酒をくらって彼女を見送る。
同じくジャイアンツファンの母親にも必ず電話をするし、仕送りだって欠かさない。
体たらくではあるかもだが、それはそれで楽しい日々を送っていた、はずだった。
パンクロッカーな風貌の隣人ラスから猫を預かった日から、人生は急転直下していく。
ラスを訪ねに来たスキンヘッドのロシア人に暴行され腎臓を摘出する羽目になり、アルコール摂取が出来なくなってしまう。
事情を話した刑事から注意されたユダヤ人の2人にも目を付けられるし、ラスが隠していたものを見つけた途端、監視や脅迫がエスカレート。
何とか回避をしたはいいが、彼女が、そしてバーのマスターや常連客が殺されてしまうなど最悪の事態に。
この負の連鎖を断ち切るには、ラスが残していった鍵を渡すこと。
しかし!鍵をどこにやったのかマジで覚えてない!
摂取してはいけないアルコールを流し込んだせいだ!!!
果たしてハンクは、鍵の在り処を見つけ出し、ユダヤ人とロシア人マフィアたちから逃れることができるのか!
・・・てのがざっくりしたあらすじ。
アロノフスキーがどれだけNYが好きだとかぶっちゃけよくわからないんだけど、ブラックスワンやレスラーの様な「追い込まれて悟る主人公」ってのは本作でも一貫していて、そこに対するけじめや落とし前をどうつけて人生の第2章を歩んでいくかって面白さは確かにあった気がします。
本編を見ていて感じたのは、やたらポストパンクやグランジっぽいロックといった、90年代のUSロックめいたる曲がガンガン流れていたことと、洗練された街並とは違い、低所得者層が暮らす、ジェントリフィケ―ション前のロウア―イーストサイドが、その音楽の雰囲気によくあっていたこと。
特に楽曲提供したIDLESってイギリスのポストロックバンドの曲がカッコよくて、映画館を出るや否や彼らの音楽を聴いてしまうくらいに気に入りました。
普通の青年が犯罪に巻き込まれてしまう作品は色々あると思いますが、本作は犯罪に巻き込まれながらもわが身を守ることに必死なせいで大事な存在を失ってしまうことが、かつて「野球を諦めてしまった本当の理由」が原因であることを主人公に突きつけていくのが、どこか僕自身の人生にも通じるメッセージにも思えて、色々複雑な気持ちになりました。
彼がなぜ野球を諦めてしまったのか。
それはドラフトにひっかかるくらいの実力があったにもかかわらず、交通事故を起こし、膝を悪くしてしまったことが原因でした。
毎日その夢を見るたびに驚いて起きる姿が本編では何度も描かれていますが、それは彼にとって、人生が一変してしまった日であると共に、10年経っても「あの事故さえなければ俺の人生は順風満帆だった」としがみついていたのでした。
自分も音楽で飯が食えたならと夢を追いかけていましたし、プレッシャーに潰されて諦めるという、逃げに近い選択をして夢を諦めた身分で、あの選択さえしなければ…と、夢に出てくるほどではないですが今でも当時を思い出して悔しさを露わにすることがあります。
彼女にも「いつ真剣になるの?」と促されるほど楽天的な考えになってしまっていたハンクの背景には、真剣になる=現実を見ることができないでいるほど、10代の時の事故がネックになっていたのであります。
さらに彼を苦しめていたのは、膝の怪我だけではありません。
助手席には自分と同じくメジャーリーガーとして将来有望だった友人が乗っており、自分が起こした事故のせいで彼が死んでしまったことが大きかったのです。
ハンクは自分の野球人生が終わってしまったことにばかり目を向けて、命を奪ってしまったことから目を背けていたのです。
若い時に逃げ癖をつけてしまうと、大人になっても続けてしまう。
そんなことを聞いたことがあります。
実際それが本当かどうかはわかりませんが、いざとなったらどんなことにでも向き合う覚悟が、今の自分にあるかと言えばないかもしれません。
それって「いざとなったら逃げればいい」という保険のような考えが根付いているからかもしれません。
音楽を「逃げる」形で諦めた俺は、ハンクを見ていて「俺のようになるな」と、どこか応援しながら見ていたのかもしれません。
もし、これを見る人に逃げ癖がついていたら、どうか彼の行いを厳しく見るのではなく、温かい目で見てやってほしいですね。
意外とダラダラした話にも思えた。
とまぁ、やたらハンクを擁護するような話になってしまいましたが、どうもこの映画、アロノフスキーっぽくない。
というか、そこそこのキャリアの人が作ってきた映画にしては、色々物語のテンポが遅く感じてしまった。
彼がニューヨークでどんな生活をしているかなんてのは、軽く流してくれればいい。
その生活がどういう経緯で一変してしまうかが重要だと俺は思うので、彼が恋人とどんなエッチをしようが、その光景を猫が見ていようがどうでもいい。
早い話が、さっさとロシア人マフィアにボコられてほしいと思った。
ただまぁ98年のニューヨークの街並や当時のトレンドを抑えるような会話も、映画の雰囲気を作る上で大事だろうから削るわけにはいかないという事情は認めたい。
しかしボコられた後も話が停滞してるように思えてならなかった。
予告編から見る限り、大金が動きそれを盗で一発逆転!という話なのは透けて見えた。
だから、こっちとしては、なぜハンクが犯罪に巻き込まれてしまったのか、なぜ色んな奴から追われるのか、そしてその原因となる大金がどこにあるのかをスムーズ且つ、割と早めに出してほしかった。
要は俺もハンクと同様「なんで俺今こんな目に遭わなきゃいけないの?俺が何した?」って気持ちが大きくて、答えをハンク以上に求めてたところにあると思う。
その後も、ハンクが警察に頼るでもなく、ヤバいことに近づかないようにうまく立ち回ろうとしたら、恋人は愚か、職場の雇用主まで死んでしまうという事態になっていく。
この辺の「ガーン…」な感じはオースティン・バトラーによる「瞬きしないで流す涙」というハリウッドスターなら誰でもナチュラルにできる芸当に心奪われて冷静でいられなかった。
ハンク自身も冷静でいられず、目の前で親身になってくれる刑事を信じてしまったことで、不運を招いてしまったわけで、仕方ないとは言いつつも、それも「逃げ」による自業自得なところもあるわけで。
しかしあれですな、バーでマスターらを含めたマフィアとの対峙は笑えましたな。
常連客とマフィアの若頭的存在を相打ちにした状態に見せかけ、ハンクが預けた鍵を渡すふりをして金庫から散弾銃出してマフィアに復讐するマスターの姿よw
こういうちょっと笑かしに来る辺りが、野球と絡めた犯罪ってことで木更津キャッツアイを想起してしまったわけですけど、こっちが青春要素を含んだ話ではないまっとうなクライムモノですから、ここから大人の素人がどう逆転するかをずっと待ち望んでいました。
しかし、ハンクが何かものすごい作戦を考えた、または思いついたのかと考えると、ぶっちゃけその場しのぎの作戦だったとしか思えず。
普通この手の場合、主人公が誰も思いつかないような形勢逆転劇を、爽快且つ痛快に見せてくれるんだろうと思ったんですけど、この辺が残念だった。
ハンクが事故以来車の運転を頑なに拒んでいたことが伏線になっていたので、恐らくそういうことになるだろうと予測できたこともあったし、それが予定調和ではなく思い付きで仕掛けたってのが、どうもスッキリしない。
そこでオチをつけるなら、これまで散々逃げてきて、安パイな道を選択してきたわけですよ。
だからこそ盗塁失敗=コートスティーリングって話です。
じゃあ成功するにはどうしたらいいかって、ここまで大事な人殺されて自分の人生をめちゃくちゃにされて、このままだと指名手配で捕まってしまうってくらい大ピンチなんだから、相当な賭けをしてほしい、それも相当な覚悟を持ってってことなんですよ。
だからさ、当初の予定はどうだったのか、めっちゃ気になるんですよ。
ラスを自分の身代わりにして悪徳刑事に渡しますよね?
ラスに鍵を渡していたら、刑事に金が行くのでこれで手打ち。
でもユダヤ人は?刑事たちは彼らが邪魔な存在だったんですよね?
全然解決しねえじゃん。
だからね、当初どういう作戦で行くのか、こちらが理解できるような説明を一旦言ってほしかったんですよね。
そりゃ見てりゃ行き当たりばったりでやってるのはわかるんだけど、逃げないことを決めたハンクがどうやってこの四面楚歌な状況を打破しようと考えたのかを、いったんは見る人ように提示するのが物語的に普通じゃないかと。
最後に
この手の犯罪巻き込まれ系の映画だからこそ、テンポが気になってしまった作品でしたね。
ディテールが大事なのはわかるけど、あそこまで見せなくても十分伝わる。
そして何が絡んでるのかがわからない状況が興味を削いでいくのも僕としてはいただけない。
主人公の性格に絡める意図はわかるけど、面白いかどうかは別。
しかしあれですな、この頃のメジャーリーグは詳しくない俺でさえ、名前知ってる選手多いよなぁ。
まだイチローがメジャーリーグ行ってない時代でしょ?
ボンズにサミー・ソーサ、マグワイアとかホームランガンガン打つ選手の名前は知ってるし、野茂の女房役のマイク・ピアザとか、それこそケン・グリフィーJr.とかいたでしょ。ランディ・ジョンソンてこの辺の時代の人だっけ?
基本サッカーなんですけど、それだけ当時のメジャーリーグはものすごい場所だと記憶してましたね。
アロノフスキーもこうした自分の若かりし時代の物語を製作して、色々気が晴れたんじゃないでしょうか。
作りたいモノを作ったら、次は本格的なヤツをお願いしますね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

