モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「キャラクター」感想ネタバレあり解説 演技初挑戦とは思えないFukaseの怖さがたまらない。

キャラクター

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 どんなキャラクターにもモデルだったり元ネタがいると思います。

市民ケーン」のモデルは新聞王ハースト。

サイコ」のノーマン・ベイツは連続殺人犯エド・ゲイン。

パイレーツ・オブ・カリビアン」のジャックスパロウは、ザ・ローリング・ストーンズキース・リチャーズ

国民的コミック「ONE PIECE」だって、映画のキャラや松田優作といった実在する俳優に至るまで元ネタと思われるキャラがいますよね。

 

「無」から創造して作り上げる方もいるかもしれませんが、こうした創作物に「モデル」は欠かせないのではないでしょうか。

 

ただヤバい奴をモデルにしてキャラを作り上げると大変な目に遭っちゃうんじゃないの!?って話が今回鑑賞する映画。

 

なんと、売れない漫画家が実際見た殺人犯の顔をモデルに漫画を描いたら大ヒットしちゃって、警察からも犯人からも一目置かれてさぁ大変というダークな内容。

 

面白ければ何やってもいいわけではない倫理的な部分や、欲に駆られて一線を越えた漫画家の心理的な描写、そして今回お芝居初挑戦のシンガーが、どんなサイコパスを演じるのでしょうか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

20世紀少年」や「マスター・キートン」など浦沢直樹作品を数多く手がけてきた共同制作者・長崎尚志が10年の歳月を経て作り上げた企画を映画化。

 

もしも、売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?

しかも、その顔を❝キャラクター化❞して漫画を描いて売れてしまったら?

をコンセプトに、登場人物たちが幾重にも交錯し翻弄されていく完全オリジナル作品。

 

若手俳優No.1の実力を誇る俳優と、メジャーデビュー10周年を迎え新たな表現の場として初の俳優に挑戦する人気バンドのボーカルが、正反対な立場にも拘らず共依存していく人物を熱演。

彼らを支える脇役も豪華な布陣となった。

 

また劇中漫画には、「帝一の國」の古谷兎丸や「亜獣譚」の江野スミが作画を担当。

物語に欠かせないコミックが、彼らの手によって見事な化学反応を起こす。

 

世界から猫が消えたなら」、「恋は雨上がりのように」などCMクリエイターの経験を活かして新たな映画像を模索してきた監督が、今回も日本映画界に新風を巻き起こす。

 

相まみえるはずのない二人が織りなす危険な物語。

誰も見たことのないダークエンタテインメントを体験せよ。

 

 

 

Character

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あらすじ

 漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。

高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。

 

ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。

住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。

そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……

そして、彼らの前に佇む一人の男。

事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。
それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。

 

山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。

山城は売れっ子漫画家となり、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚。

二人は誰が見ても順風満帆の生活を手に入れた。

しかし、まるで漫画「34」で描かれた物語を模したような、4人家族が次々と狙われる事件が続く。

 

刑事の清田俊介(小栗旬)は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることを不審に思い、山城に目をつける。

共に事件を追う真壁孝太(中村獅童)は、やや暴走しがちな清田を心配しつつも温かく見守るのだった。

そんな中、山城の前に、再びあの男が姿を現す。

「両角っていいます。先生が描いたもの、リアルに再現しておきましたから。」

 

交わってしまった二人。

山城を待ち受ける❝結末❞とは?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、永井聡

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ジャッジ!」、「世界から猫が消えたなら」、「帝一の國」、「恋は雨上がりのように」と定期的に作品を作り上げている監督。

コメディにドラマ、恋愛モノなど、ジャンルがバラバラなのが面白いですよね。

 

今回は初のスリラーモノに挑戦ということで、さぞかし気合いが入ったことでしょう。

 

監督といえばCMクリエイター出身ということもあって、一つの映像に斬新な演出をするのが売りでしょうか。

「ジャッジ!」では一見そこまで面白みを感じないCMを何度もみせることでクセになるし、「世界から猫が消えたなら」では、レンタルビデオ屋の棚から映画がとめどなく溢れる演出、「帝一の國」では菅田将暉と野村周平のヘナチョコな決闘シーン、そして「恋は雨上がりのように」ではOPで小松菜奈をカッコよく見せる疾走シーンなど、挙げてみると記憶に残る、インパクトのある演出をやってますよね。

 

本作では山城と両角両者を対比させるカットを連続させることで、二人の関係性を際立たせているとのこと。

映像面ではきっと文句のない作品に仕上がっていることでしょう。

 

 

監督に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

キャラクター紹介

  • 山城圭吾(菅田将暉)・・・画力はあるが、お人好し。その性格ゆえにキャラの強い悪役を描くことが出来ず万年アシスタント生活を送る漫画家。偶然、自分だけが見てしまった一家殺人事件の犯人を基に殺人鬼の主人公「ダガー」を生み出し、サスペンス漫画「34」を描き始める。

 

  • 両角(Fukase/SEKAI NO OWARI)・・・住宅街で発生した一家殺人事件の真犯人。神出鬼没な上、犯行の目的や身元など、全てが謎に包まれている。殺人のやり口にある種のこだわりを持つ異常者。「34」を連載する山城の前に突然現れ、漫画で描かれた事件を自分が再現した事を伝える。

 

  • 川瀬夏美(高畑充希)・・・山城と同棲中の彼女。持ち前のやさしさで応援し、漫画家として鳴かず飛ばずの山城を陰で支える良き理解者。北欧系の家具を扱うインテリアショップに勤めている。一家殺人事件の第一発見者となった山城の様子に変化を感じるのだが……。

 

  • 真壁孝太(中村獅童)・・・神奈川県警察本部捜査第一課警部補。兄貴肌で人情味があり、同僚からの信頼も厚い刑事。管轄内で発生した一家殺人事件を班長として担当。消えてしまった犯人を部下の清田と共に追う。

 

  • 清田俊介(小栗旬)・・・神奈川県警察本部捜査第一課巡査部長。暴走族あがりの刑事。人との距離を縮めることに長け、事情聴取や取調べには天性の才能を見せる。直感が鋭い反面、やや暴走する気があり真壁の手を焼かせることも。山道で起こった殺人事件が、山城の描いた「34」の内容に酷似している事に気が付く。

(以上、HPより)

他、中尾明慶小島聖宮崎叶夢小木茂光などが出演します。

 

 

 

 

 

 

描いてはいけない主人公(キャラクター)との奇妙で危険な「共作」。

長崎さん原案ですから、コミック感覚で進んでいきそうな内容になってるのかも。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

人間の本性はわからない、だから社会は怖いんだ。

猟奇殺人犯を生んでしまった作者の苦悩と、生まれてしまったキャラの作者への偏愛が垣間見えたダークエンタメでした!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラづくりって大変だよね

殺害現場と犯人を目撃してしまったお人好しの漫画家志望が、その犯人をキャラに作り上げた連載漫画によって、次々と連続殺人が起き苦悩していく姿を、漫画家、刑事、犯人の3人の視点から事件解決までの過程を見せていく物語は、血まみれの遺体や痛々しい描写や演者のキャラ的魅力を推進力に、漫画や作者に対するリスペクトと、作品を犯罪目的として使われてしまったことに対する罪の是非を突き付ける問題提起、そして意味深な結末に至るまで、映像と演技のインパクトと分かりやすい脚本がマッチした娯楽作品でした。

 

 

漫画もアニメも映画も音楽も人間が作り上げる「作品」。

何かをモデルにすることもあれば、無から創造する人もいるでしょう。

でも元を辿ってみると、キャラは案外自分の内面に潜む何かを具現化したものなのかもしれない。

 

漫画家志望山城が描く漫画は「サスペンス」もの。

デジタルではなく手で描くことで圧倒的な臨場感を生み出す才能がありながら、キャラ造形に難があり、なかなか連載にこぎつくことができない。

 

漫画を作るにあたってキャラを作り上げることができないのは致命傷らしい。

確かにどんなに画力が優れていても、主人公や悪役などの主要キャラに魅力が無ければ読者を惹きつけることはできないし、物語ものってこないだろう。

 

また殺人犯を魅力的に描くために人を殺して絵を描く者など実際存在しないし、存在してはならない。

だから山城が描く漫画のキャラには、想像力が必要とされる。

 

本作はそうした漫画家を目指していく上で避けて通れない「キャラ造詣への苦悩」がしっかりと描かれていた。

 

そして殺人犯を目撃してしまったことでインスピレーションを掻き立てられ作り出された作品「34」(殺人犯を追う人物3人が34歳であることから三銃士になぞらえ「さんじゅうし」と読む)は、恐怖を与える殺人犯のキャラクター造形と山城独自の画力がマッチし、瞬く間に大ヒット作品へとのし上がっていく。

 

しかし連続殺人犯・両角が作品をさらに盛り上げるために犯行を繰り返すことで、山城は罪の意識を感じながらも、彼の犯行通り物語を書き進めてしまう。

 

 

お人好しである山城が、なぜ殺人犯を主人公にした物語を描くのか、背景としていささかぼんやりした印象があるが、両角との対峙する終盤で見せる表情から、やはり彼の中で「漫画でしかできないことを実際に行う」ことへの欲望が表に出た瞬間だったように感じる。

 

両角から「先生だって人殺しを楽しんでるじゃないか」と言われるシーンがある。

これは実際に人を殺している自分と漫画の中で人を殺しているあなたは実質同じだという両角の理屈から出た言葉だ。

想像と実際の行動では別だというのは正論だが、絵を描いている時に浮かべる山城の恍惚とした表情から、彼自身にもそうした「人を殺したい願望」のようなものがあったのではないかと推測できる。

 

また山城が描く漫画では「幸せそうな4人家族」を殺害する描写がある。

彼の実際の家族構成も4人だが、父の再婚によって形成された家族であり、母と姉は血が繋がっていない。

そして終盤で自分の家族をおとりに使って両角を待ち伏せるシーンで山城は「これまで悪態ついてごめん」と謝るセリフがある。

 

そこから見えるのは、山城は父の再婚によって作られた家族に対し、何かしらのコンプレックスがあったように感じられる。

 

以上のことから、山城の表面的な性格は「お人好し」である一方、幸せな家族への破壊願望や狂気のような感情が内面に潜んでいたのではないかと思えた作品でした。

 

 

あくまでシリアルキラーなどが登場するサスペンス系を主流とする漫画家全員がそうであるとは毛頭ないが、本作で描かれている山城にはそんな部分があったのではないかと思えて仕方がない作品でした。

 

何者でもない自分

キャラを肉付けする苦悩を見せる漫画家に対し、両角もまた「キャラ」を見いだせない人物として描かれていた。

 

幸せそうな4人家族ばかりを狙い犯行に及ぶ両角。

物語が進んでいくと、彼は九条村という場所で「幸せな家族の理想的な人数は4人」であることを主張する怪しいコミュニティで生まれ、戸籍も名前も持たずに育った過去が明かされる。

実際両角という名前は、生活苦によって戸籍を売った者から購入した性であり、彼の本名は明かされない。

 

彼が4人家族ばかり狙う理由は、当時の生活環境に対する憎悪から犯行に及んだことだと結びつく。

 

そんな何者でもないままただただ感情に任せて犯行に及んで行く両角が、ようやく自分の「キャラ」を生み出してくれたのが山城の描いた漫画だった。

 

両角にとって山城は神のような存在だったのかもしれない。

本当の名前も知らない自分に生きる意味や生きる場所を与えられた幸福感や使命感を感じたことだろう。

実際彼は山城が描いた物語通りの犯行を行い、創造主である山城に少年のような眼差しで近づく。

 

「34」で描かれる殺人鬼ダガーのように犯行していくことで何者であるかを確信していく両角にとって、漫画の連載は生き続けるために重要なこと。

作者の手が止まれば自分がアシストすればいいと思い、読者がゾッとするようなオチまで提供していく。

 

しかし物語は、山城の良心によって連載を休載、最終回とピリオドへと向かっていく。

 

誰しもが「何者」というキャラを見つけようと模索しながら生きている現在で、罪に走ってしまう両角もまた、キャラを模索しようとしていたのではないだろうか。

 

ラストシーンで両角が語る「僕は誰ですか?」というセリフは、連載が終わってしまったことで痛感する虚無感を見せていたように思う。

同じように病室で虚無感に駆られる山城を重ねることで、キャラクターへの渇望が現れた最後だったとも思えた作品でした。

 

また、偶然か必然か、相まみえてしまった2人の対照的でありながら通じるものがある人物を対峙させた本作。

キャラを生み出せない苦悩を持つ者と、キャラになれない苦悩を持つ者が交錯し、凶悪事件へと変貌してしまう物語は、一線を越えた者と踏みとどまっている者の違いや、創造主と被造物、作者とアシスタントといった対比がありながらも、山城も両角も表裏一体のように思える作品だったと思います。

 

Fukase怖いって!

登場人物を紐解いてみましたが、彼らを演じた演者たちも今回すごく良かったと思います。

 

特に両角を演じたFukaseは、本作にとって必要不可欠というかドはまりした存在だったのではないでしょうか。

セカオワのボーカルとして色々なヒット曲を作り上げた彼ですが、実際今回演技初挑戦ということで、本作への期待の中で正直一番の不安材料でもありました。

 

しかしまだ演技として未完成というハンディキャップを逆手にとったかのような言い回しが、連続殺人犯でありサイコパスな空気を上手く醸し出しており、これに加えて彼の童顔が故に覗かれる凶暴性、セカオワで築き上げてきた厨二病的キャラが本作でも見事に発揮されており、両角というキャラクターにリアリティを与えていたと思います。

 

どこか楽し気に犯行に及ぶ姿や、態度を変える山城に感情的になる言い回し、帰宅するや否や上手くいかないことに対し感情を爆発させる姿など、正に思春期真っただ中の少年とも言える姿。

1年半演技レッスンを受けたそうで、決して棒演技なんかではない役者Fukaseを拝めることでしょう。

 

彼以外に当てはまる役者などいないくらい両角でした。

 

 

安定の菅田将暉も誰にも言えない秘密を抱える苦悩を、感情を押し殺して丁寧にセリフを言ってみたり、あまり瞬きをせず相手を見つめたり目をそらすことで表現し、情緒不安定な山城を生み出していた気がします。

 

風貌も、長崎さんが原案脚本に携わっているからか、どこか若かりし浦沢直樹に見えて仕方がないです。

きっと浦沢直樹をモデルに見た目を作ったのではないかと疑うほど。

ホント違いといったらメガネかけてないくらい似ています。

 

 

さらに族上がりの刑事を演じた小栗旬も良かった。

そもそも本人が漫画好きを公言してることも手伝って、単行本や連載誌を持ちながら事件現場に行く姿になぜか説得力があります。

あ~小栗旬が刑事なら漫画本持って現場行くだろうなぁみたいなw

 

他にも山城に何度も「あなたの漫画大好きです」と言う表情や、事件を模倣されて落ち込み漫画が描けないでいる山城に対し「漫画、描いてください」と優しく語りかける彼の姿は、演技を通り越して小栗旬自身が放つ言葉に聞こえて仕方ありません。

 

また、中村獅童とバディを組む設定ってのも「隣人13号」を思い出すキャスティングで、同一人物を演じた二人がこうして別の作品で演じるというのも歴史を感じさせる作品だったのではないかと。

 

 

 

最後に

前半は物語を追うことに重きを置いていたこともあってか、そこまでの残虐描写はありませんし、実際犯行に及ぶシーンてのは見せてないので、案外怖くないのかなぁなんて思わせて進むんですけど、後半、特に山城VS両角のシーンでは包丁でガンガン刺してくるシーンが出てきます。

 

しかも小栗旬演じる清田刑事の身に降りかかるシーンでは、急に加害者がカットインしてきて襲い掛かってくるんです。

何が言いたいかって、怖いですw

 

怖いというか痛々しい描写がたくさん出てきます。

怖いの苦手な人は注意した方がいい作品です。

漫画っぽい映画なんじゃないの?なんて思って見ると痛い目に遭います。

 

僕は苦い表情をして見てましたw

 

妙な編集点とか、急に場面が変わる箇所に違和感のようなものはありましたが、もしかしたら漫画を題材にした作品ということで、ある意味コミック的な見せ方をしたのかなと捉えました。

 

また、共犯の男が未だ見つかってないことや、窓の外から夏美を映すシーンから、山城と彼女に今後悪いことが起きそうな不穏さを残して終わるラストから、色々な深読みができるのではないでしょうか。

そういった部分も怖さが引き立った作品でした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10