モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「クライム101」感想ネタバレあり解説 この世界から抜け出すために。

クライム101

ロサンゼルスを舞台にした犯罪映画は、何十年も前から描かれてきた、ある種アメリカ映画の伝統ジャンルだと思います。

僕が好きな「殺しの分け前/ポイント・ブランク」は、キング・オブ・LAクライム映画といっても過言ではないです。

 

他にもたくさん作品はあるんですけど、NYと違って範囲が広いことや犯罪にかかわってる人種の違い、かつてアルカトラズ刑務所があったこともあり、LA犯罪映画の括りで映画史を読み解くのもめちゃくちゃ面白いんじゃないでしょうか。

 

今回鑑賞する映画は、そんなロサンゼルスを舞台に描いた「追う者」と「追われる者」、それに便乗する者や巻き込まれる者たちのノワール映画。

昨今予算のかかった犯罪映画がなかったこともあり、かなり期待しています。

 

原作はスティーヴ・マックイーン映画をリスペクトした内容だそうで、映画の劇中でも「ブリット」や「華麗なる賭け」といった1968年の作品をセリフの中で挙げているシーンがあるくらい関係性の深いものになってるので、マックイーンが好きな自分としても楽しみなところ。

 

また、マイケル・マンの「ヒート」の名を使って、映画ファンの心を揺さぶる宣伝をしているのもワクワクする要因。

とにかくね、犯罪映画は「色気」がないとだめだと思っている俺に刺され!!と観る前から祈ってますw

というわけで、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

野蛮なやつら/SAVAGES」が映画化されたことでも知られるドン・ウィンズロウの中篇小説「壊れた世界の者たちよ」の1編「犯罪心得一の一」を、事件の当事者が映画に出演したことでも話題になった「アメリカン・アニマルズ」のバート・レイトン監督の手によって実写化。

 

白昼のロサンゼルスで完全犯罪を遂行する主人公と、組織に抗いながら独自の見識眼で犯罪者を追い詰める刑事の攻防を息をのむほどの緊迫感とド迫力の映像でスタイリッシュに活写したクライムアクション・スリラー。

 

コロナに罹ってしまった時、手にした原作を読んで興奮したという監督。

犯罪映画やノワール映画、アクションスリラーなど、かつてたくさん製作されてきたジャンル映画を、豪華スターの競演でもう一度スクリーンに蘇らせたいという思いを、本作に詰め込んだとのこと。

また、本作のような犯罪映画を作るうえで「ヒート」や「ブリット」、「スティング」や「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」のような映画を目指したとのこと。

往年のアメリカ映画ファンなら必ず見ているような毛色の映画が、本当に蘇えるなら本望だ。

 

悪者しか狙わず人も殺さず、痕跡を一切残さないプロの強盗・マイク・デーヴィス役をクリス・ヘムズワースが、そしてその強盗を執拗に追う刑事・ルー・ルベスニック役をマーク・ラファロが演じる。

これまで「アベンジャーズ」シリーズや「マイティ・ソー/バトルロイヤル」でも息の合った掛け合いで楽しませた二人が、今回は猫とネズミの如く「追い追われ」の関係でシリアスに演じる。

また劇中では、ロサンゼルス市街地でのカーチェイスを描かれるが、クリス本人がドライブテクニックを披露しているのも注目だ。

 

他にも、完全犯罪を遂行するため協力を依頼する保険会社のブローカー・シャロン役を、「X-MEN」シリーズや「キングスマン:ゴールデンサークル」のハル・ベリー、監督の前作「アメリカン・アニマルズ」にも出演したバリー・コーガン、「名もなき者」のモニカ・バルバロ、「48時間」のニック・ノルティなどが出演します。

 

各々のルール<美学>が交錯することで、曲げざるを得なくなる計画。

一体どんな結末が待ち受けているのか。

 

 

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あらすじ

 

アメリカ西海岸線を走るハイウェー〈101〉号線上で、数百万ドルの宝石が消える強盗事件が多発。

 

4年間にも及ぶデーヴィス(クリス・ヘムズワース)の犯行は一切のミスがなく完璧だったが、人生最大の大金を得るために高額商品を扱う保険会社に勤めるシャロン(ハル・ベリー)に接触し、共謀を持ちかけたことから思わぬ綻びを見せ始める。

 

1,100万ドル(約16億円)の宝石をターゲットに、シャロンとの裏取引は成功したかのように見えたが、犯罪組織からの追跡や警察内部の陰謀、そしてルー刑事(マーク・ラファロ)の執拗な捜査網にそれぞれの思惑が絡み合い、デーヴィスの完璧だった犯罪計画とルールが崩れていく―。(公式より抜粋)

youtu.be

 

 

感想

元締めと手を切りたい、腐敗だらけの警察から抜け出したい、昇格できない会社から出たい。

犯罪映画のガワを見せながら、この世界とおさらばしたい3人が交差した、一風変わった映画でした!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

この手の映画よ、もっと増えろ。

いきなり結論から言うと、惜しいの一言に尽きる。

宣伝文句通り、確かに「ヒート」の系譜で描かれた、追われる者と追う者が交錯していくLA産クライムアクション映画として括って良いが、男の、オトコの、漢の映画としてはヒートに到底及ばない。

 

この後そもそも全然違う話だったってことは語るけど、マックイーンの映画を引き合いにしてしまうように、これまで描かれてきたロサンゼルスが舞台の犯罪映画のおいしい所だけを抽出した「二番煎じ」感はやっぱり感じたよねって話。

 

でもよ?いくら過去の名作に到底及ばないからって手放しに本作を貶したり酷評するってのは違くて、なんなら割といい映画だったよ!って褒めたい思いが強い。

 

で、本作を語る前にまず褒めなきゃいけないことがある。

BLM然り他の問題然り、警察を一切信用できなくなってしまったアメリカの空気がそのままハリウッド映画でも反映された結果、今や正義を語るのはアメコミが主流になってしまったわけですよ。

 

刑事映画が廃れてしまうとどうなるかっていうと、犯罪映画も減ってしまうわけ。

ただでさえ、今じゃ「IP」がなくちゃ映画も作れないくらい予算くれない時代なもんでね、かつてあった事件を映画にするのも大変だと。

そんな中、原作読んで大興奮して「俺が子供の頃に見ていた映画をもう一度スクリーンに戻したい!!」って思いをちゃんと実現した監督をまず褒めたいんですよ。

 

正直ね、監督のキャリアってそこまで凄いわけじゃない。

アメリカン・アニマルズは斬新だったけど、どうしても歯切れの悪さが目立ったし、急にドキュメンタリータッチにされて持って戸惑いがあって、俺はそこまで大歓迎とは思わなかった。

そんな監督に、これだけの予算とちゃんとしたスターを何人もキャスティングして、大々的に公開してくれたソニーピクチャーズ並びに製作会社、予算を出してくれたスポンサーに感謝したい。

 

「犯罪映画を映画館にもどしてくれてありがとう」と。

 

冒頭でも書いたように、LAクライムアクションの歴史はポイントブランクだけにあらず、ザ・ドライバーやリーサルウェポン、ビバリーヒルズコップといったコメディ要素の強いものもあれば、裏切者探しのレザボアドッグスだってある種のクライム映画で、LAコンフィデンシャルのような汚職ものがあり、マイケルマンを代表するヒートやコラテラルがあり、凝った視点で言えばナイトクローラーだってその部類に入る。

数十年経ってリメイクされたドライヴだって誰もが興奮したクライム映画だったし、とにかくそこまで詳しくはないけれど、犯罪とLAは切っても切れない関係でそのロケーションの中でカーチェイスがあって銃撃戦があって、各キャラクターの美学や矜持に心奪われるわけですよ。

 

本作もそうしたエッセンスがちゃんとあった以上、一風変わったとはいえ立派なLAクライムアクションだったんです。

 

で、こうした映画があったから映画スターは生まれたんじゃねえのかとも言いたい。

昨今アメコミはじめIP作品が増えたことで、俳優を覚えるのではなくキャラクターを覚えてしまいがち。

それが当たり前になると、今回の作品のように「ソーが!ハルクが!!「ストームが!!」みたいに俳優名よりもキャラクター名で呼んでしまうわけですよ。

それはあまりにも怖い!怖いんです!!

彼らは、れっきとした俳優で、決してソーやハルクが刑事や強盗を演じてるわけじゃないんだ!!

そんな風にしてしまうから、スターが生まれないんじゃないのか!?

こういう映画で彼らがもっと活躍すれば、名前も覚えてもらえる、しかもアメコミ映画とは全然違うカッコよさや渋い芝居を見せてくれる、するとどうだ、彼らをTVでなくスクリーンで観たくならないか!?

こうした循環こそ、今ハリウッド映画が取り戻さなきゃいけないことなんじゃないのか!?

 

 

・・・だいぶ白熱しておりますが、本作の評価を語る前に、語らなきゃいけない作品だったんじゃないのかと思い熱弁してしまいましたw

時代がそうだから、ではなく、かつての映画の方が面白かったからこそ、そこに立ち返ってほしいからこそ、言いたかったのであります。

これがヒットすれば、きっと風向きも変わるんじゃないか、そう願って本作の感想を語りたいと思います(遅かったらゴメン)

 

ここから抜け出すために。

さてさて、本作の内容をバーッッと語りますと、完璧な強盗をするマイク、みんなとは違い真実を追う刑事ルー、前々出世できずにいる保険ブローカーの3人の視点によって物語が語られていきます。

 

直接的なことは描かれていませんが、幼いころから貧しくて場所を転々としながらホームレス生活も経験していたマイク。

絶対に痕跡を残さない、暴力を振るわないなど自らルールを課し実行する強盗で、とにかく完ぺき主義。

寧ろ潔癖症なんじゃないかと思える節も。

 

そもそもミスなく痕跡を残さず強盗をし続けるって、相当念入りに計画立てないと無理なわけで、こうした注意深さや汚いものに触れたくないみたいな部分は、幼少期の生活が大きく関わっていたのかもしれない。

 

そんなマイクは、どうも人と目を合わせることができない様子。

車をぶつけられたことがきっかけで恋仲になったマヤや、共謀関係を提案するシャロンとも目を合わせようとしない。

 

これ、クリヘムが良く表現してたんですよね。

人と話す時、ホントキョロキョロしてて落ち着きがない。

じっと見つめさせるためにマヤがダンスしようとさせる辺りのシーンはなるほどと思った。

 

俺も人と目を合わせて話すことができないタイプで、色々勘違いされたこともあるんだけど、相手から見るとあまりよく思われることはないみたい。

 

で、こんな潔癖完璧主義用意周到、でも肝っ玉小さい男には、パートナーがいる。

それがニック・ノルティ演じる老人で、マイクが盗んだものを売りに出してくれるような存在。

冒頭の宝石強盗も、マイクが持ち掛け計画し実行、その後彼がブラックマーケットみたいな場所に流してマネロンしてくれるんでしょう。

 

だけど、冒頭での宝石強盗でちょっとしたハプニングが起きたことで、マイクの中に動揺がひた走り、次の計画を中止しようと持ち掛けます。

しかしパートナーは「買い手が待ってんだよ!早くやれよ!」とはっぱをかけます。

 

決して従わず、自分の勘を信じるマイクは、これを機に縁を切ると言い出すんですが、パートナーはバリー・コーガン演じるオーマンに次の強盗をさせることに。

 

このオーマン、マイクとは真逆のタイプのいかれた野郎で、平気で銃はぶっ放すし、j人を平気で殴るし、がっつり痕跡を残す強盗。

もちろんバリーが演じるので、だいぶイカれた行動で物語全体を掻き廻していきます。

強盗の際、奥の部屋で赤ん坊が泣いてることにかなりイラついていて、もしかしたらコイツ赤ん坊に発砲するんじゃねえか?とドキドキして見てましたよ。それくらいヤバい奴でした。

 

 

こうして少しずつ歯車がずれていくことに不安を覚えたマイクは、独自で共謀関係者を探すことに。

保険会社に勤めるシャロンをターゲットに、高額の貴金属を持っている富裕層を紹介してもらおうと画策。

何とか口説いて関係を結び、いよいよ1100万ドル相当の宝石と現金を強奪すべく、人生最後の賭けに出るのです。

 

それと同時に、今回の強盗事件が同一犯だと疑わない刑事のルーが、同僚や上司たちが平気で真実を曖昧にさせて事件を解決している様を見て呆れる様子や、どんなに成果を上げても出世させてもらえない原因が「年齢」であることに呆然とするシャロンの姿など、大都会ロサンゼルスのあらゆる組織の中で、真実も女性の価値も搾取されてしまう現実を、裏テーマとして映してる感じがあった映画でした。

 

そう、この3人に共通するのが「今いる世界に対する複雑な気持ち」なんですよね。

マイクも目標金額を達して自由になりたいし、ルーも妻に浮気され同僚にも裏切られたことで自由を求める節が見て取れ、シャロンも結局利用されていたことに気付いて以降動揺を隠せないでいる。

システムの中で与えられた役割以外の事が出来ずにいる3人が、強盗事件をきっかけに交差し、思いがけない結果を生んでいく物語だったんです。

 

そもそもマイクは強盗=悪い奴で、ルーは敵、シャロンは協力者という役割があるんだけど、あることがきっかけで役割を超えた関係になっていく、それが本作の面白さの一つだったんじゃないでしょうか。

 

見終わった後は、この3人にどうか幸せな生活が与えられますように、なんて願ってしまうような結末でしたね。

 

 

で、また面白いのは、原作がマックイーンリスペクトらしいんだけど、映画はがっつり「マイケル・マン」リスペクト映画でしたね。

ヒートに関して言えば、仕事に明け暮れたせいで女房に愛想をつかされてしまうキャラが、アル・パチーノ演じた刑事にそっくり。

マイクも、恋仲になっていく存在が登場したり、仕事に対してプライドや美学を用いるあたりはロバート・デ・ニーロの役柄そのものだったんじゃないでしょうか。

 

そんな2人が共にするカマロの車内での会話「俺はブリットのカーチェイスが好き、俺は華麗なる賭けかな」って会話の緊張感は、ヒートでのカフェのシーンにあたるのかなと。

本作の場合、マイクが「刑事映画であるブリット」を挙げ、刑事であるルーが「泥棒映画である華麗なる賭け」を挙げるところがいいですよね。しかもその映画をマイクは見ていない。

このやりとりでルーは彼がマイクであることを確信する大事なシーンでしたね。

 

こうした共通点の他にも、マイケル・マン映画には彼独特の「青」がスクリーンいっぱいに広がるのが特徴。

特に海辺の部屋に住むキャラが、真っ青な海が映るリビングのガラスに佇むショットは、そりゃもうかっこいいのであります。

ヒートにもそんなショットがあり印象的なんですが、本作もそれに倣ってかマイクもルーも海辺の部屋に住むんですよね。

ただ、まんま真似するわけにはいかなかったのか、同じようなショットはなく、それを連想させる程度のものになってました。

 

そして配色に関してですが、本作は全体的に緑が強く出た配色でしたね。

特に夜のカーチェイスのシーンでは、青信号と赤信号が強調されていたことから、緑色の中に小さな赤が灯るようなショットをこれ見よがしに映していたように思えます。

そうした部分から、ヒートを意識したけどまんま真似はしてません!という差別化を図った節が見て取れました。

 

また、本作のマイクは盗みを最後にして好きな人と共に暮らしたいが、仲間がそれを許してくれないという設定が、マイケル・マン監督のデビュー作「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」と同じだったなと思いました。

 

こっちはかなりバイオレンスで青みもすごくて大好きで、任侠映画かってくらいラストは壮大なカチコミがカッコイイんですよw。

また、冒頭での金庫破りのシーンを尺たっぷりで見せるのも特徴的で、その辺はもしかしたら本作は意識して冒頭の強盗シーンを尺使って見せていた気がします(こじつけかなw)。

 

このように、ヒートやザ・クラッカーといった名作をオマージュしながら、現代の犯罪アクション映画を作り出したのではないかって話でした。

 

 

最後に

不満がないわけではなく、カーチェイスはもっと違った角度から映してほしかったってのが理想。

それこそ上から見せる視点がなかったですよね。

実際ロスでロケしたみたいですが、あそこで上から映すのって無理なのかな。

 

また、鑑賞前のイメージだとクリヘムvsラファロのサシの対決がメインなのかなと思いましたが、ここまでがっつりハル・ベリーが絡んで「3人の物語」になっていたとは予想外。

それがヒートと一線を画した内容になってたんだろうけど、個人的にはもっとラスト以外のサシの対決、というか二人が互いを意識するようなギラギラした展開が欲しかったな~、でもそれじゃモロにヒートかw

 

カメラワークで言うと、ワン・バトル・アフター・アナザーでも印象的だったんだけど、車のドアにカメラ付けて、開閉することでキャラを見せるショットが本作でも2回ほどありましたね。

監督は車やバイクのあらゆるところに付けてキャラを映したり、チェイスシーンを見せるのがお好きみたいでしたね。

 

またシーンとシーンのつなぎも印象的。

マイクが車を発進すると、それを監視カメラで見ているルー刑事のシーンへとスライド、他にもマイクがシャツに着替えてると思わせといてルーがシャツを着ていたなど、ちょっとした箇所から別の視点へとシームレスに変えてたのは面白かったですね。

それがもっとあらゆる箇所で起きればテンポよく話を展開できたのになとは思います。

 

140分と少々長く、思っていた内容とはちょっと違いはしましたが、割と面白い映画だったのでよかったです。

余談ですが、マーク・ラファロに「ヨガ」やらせようと提案したのは誰だw

さすがに笑ってしまったw

 

カメオ出演だったジェニファー・ジェイソン・リー、もっと見たかったなぁ。

浮気するだらしない妻でしたけどw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10