大怪獣のあとしまつ
2022年公開の「シン・ウルトラマン」や大ヒットを記録した「シン・ゴジラ」、ハリウッドでは「MCU」を筆頭に、数々のヒーロー映画が横行している昨今。
日本では昔から特撮作品として愛されてきた「勧善懲悪」な実写作品は、やっぱり怪獣を倒してこそ感動するもの。
今や善悪の区別がつけずに描くことで多様な答えを提唱するようなテーマがメインとなってますが、実際問題敵を倒した後の処理ってどうしてるのかって、一度は考えたことある人いるんじゃないでしょうか。
「シン・ゴジラ」ではゴジラ自体が原発のメタファーと取れるような終わり方をするので、終わった後我々がどう向き合わなくてはならないかを考えさせるよう仕向けた作品だったと思いますが、もっと現実的に後片付けとかどうすんねんという。
他にも「スパイダーマン/ホームカミング」では、ニューヨーク決戦の後片付けを民間業者が独自にやっているところをトニーが全てかっさらってしまうことで「悪」が誕生する悲劇を描いてましたけど、現実的に国は何をすべきなの?と。
そんな怪獣のお片づけ問題を、誰が、いつ、どんな手段でするのかを描いたのが「大怪獣のあとしまつ」でございます。
僕はどちらかというと怪獣よりヒーローの方が好きなので、ヒーローの出番がないのは悲しいですが、これまでやってこなかった部分見せてこなかった問題を映画にした配給会社の心意気に期待を込めて、早速観賞してまいりました!!
作品情報
日本大手の配給会社「東映」と「松竹」が創立以来初タッグをし、共同配給をする歴史的、記念的本作。
暴れ狂う怪獣の出現によって混乱する人々。
そんな時いつも我々を助けてくれたのはヒーローだった。
子供の頃TVで何度も見かけたおなじみの光景は、決して「その後」を描かない。
倒された怪獣の処理は、一体誰が、いつ、どんな風に後片付けをするのか。
そんな誰もが一度は思った「あとしまつ」の行方を、緩いユーモア描写と唯一無二の世界観で根強いファンを作る監督の手によって実写映画化。
政府や官僚といった国家の人間から、急きょ現場を任されることになった人間、バズを狙うYouTuberに至るまで、大怪獣のあとしまつを巡って様々な「押し付け合い」を、特撮映画のプロフェッショナルの手によってリアルに描きつつ、笑いとシリアスを緩急つけて描く。
いかにして巨大怪獣は処理されるのか。
空想特撮エンタ―テインメントをとくと見よ!
あらすじ
人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、ある日、突然、死んだ。
国民は歓喜に沸き、政府は怪獣の死体に「希望」と名付けるなど国全体が安堵に浸る一方で、河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。
「誰があとしまつするの?」
大怪獣の死体が爆発し、漏れ出したガスによって周囲が汚染される事態になれば国民は混乱し、国家崩壊にもつながりかねない。
終焉へのカウントダウンが始まった。
しかし、首相や大臣らは「大怪獣の死体処理」という前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往を繰り返すばかり…。
「なぜ、私がゴミ処理の責任者に?」
絶望的な時間との戦いの中、国民の運命をかけて死体処理という極秘ミッションを任されたのは、数年前に突然姿を消した過去を持つ首相直轄組織・特務隊の帯刀アラタ(山田涼介)だった。
そして、この死体処理ミッションには環境大臣の秘書官として、アラタの元恋人である雨音ユキノ(土屋太鳳)も関わっていた。
果たしてアラタは爆発を阻止し、大怪獣の死体をあとしまつできるのか!?
そして彼に託された本当の<使命>とは一体——!?(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、三木聡。
TVドラマ「時効警察」から、「転々」、「亀は意外と早く泳ぐ」、「音量を上げろタコ!」など、クセのあるユーモアを売りとする監督。
僕自身全然通ってきてないお方でして、初めて彼の作品を見たのが「音量を~」だったのと、中々受け入れられない物語だったこともあり、今回すごく気になっていた題材を映画にしてくれたことへの喜びと、それを手掛けるのがこの人か…という感情が天秤になっており、正直期待値は50%といったところです。
要はクソまじめにやってくれるだけで既に「笑える」話だと思うんです。
ですが、色んな俳優が個性を出そうとするような室内劇で進行するようにも思えてしまい・・・。
予告編でも真面目っぽく描いてますけど、それも「フリ」な気もします。
色々鑑賞前から不満ばかり漏らしてますが、果たして。
登場人物紹介
- 帯刀アラタ(山田涼介)・・・首相直属の戦闘部隊「特務隊」に所属する特務隊隊員。死んだ怪獣の死体処理の責任者となる。
- 雨音ユキノ(土屋太鳳)・・・環境大臣秘書。アラタの元恋人であり、かつては彼と同じ特務隊の所属だった。
- 雨音正彦(濱田岳)・・・総理秘書官であり、ユキノの夫。元特務隊。
- 敷島征一郎(眞島秀和)・・・特務隊隊長。
- 蓮佛紗百合(ふせえり)・・・環境大臣。
- 杉原公人(六角精児)・・・官房長官。
- 竹中学(矢柴俊博)・・・文部科学大臣。
- 川西紫(有薗芳記)・・・国防軍隊員。
- 椚山猫(SUMIRE)・・・特務隊のスナイパー。
- 道尾創(笠謙三)・・・国土交通大臣。
- 甘栗ゆう子(MEGUMI)・・・厚生労働大臣。
- 五百蔵 睦道(岩松了)・・・国防大臣。
- 中島隼(田中要次)・・・国防軍統合幕僚長。
- ユキノの母(銀粉蝶)・・・ユキノとブルースの母親。
- 中垣内 渡(嶋田久作)・・・外務大臣。
- 財前 二郎(笹野高史)・・・財務大臣。
- 真砂 千(菊地凛子)・・・国防軍大佐。
- サヨコ(二階堂ふみ)・・・ブルース(青島涼)が行きつけにしている食堂で働く女性。
- 武庫川 電気(染谷将太)・・・大怪獣の姿を配信しようと試みる迷惑系動画クリエイター。
- 八見雲 登(松重豊)・・・怪獣の処理方法の売り込みに来る町工場の社長。
- ブルース / 青島 涼(オダギリジョー)・・・ユキノの兄でドレッドヘアが特徴的な元特務隊員で、爆破のプロ。
- 西大立目 完(西田敏行)・・・内閣総理大臣。
今まで気になってたようで気にならなかった問題を、どう切り込んでいくのか。
お仕事映画?思いっきりコメディ?それとも?
ここから観賞後の感想です!!
感想
#大怪獣のあとしまつ 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年2月4日
シリアス感もギャグもCGもオチも半端だなぁ… pic.twitter.com/nk1NVHQNYK
これまでの紆余曲折な物語をオチですべて台無しにしてしまった罪は重い。
政府や官僚、現場で奮闘するお仕事映画としても、それを茶化すかのようなギャグ映画としても、全部オチで逃げるのかよ。
以下、ネタバレします。
まぁ怒るよね。
大怪獣の出現と後処理によって日本はおろか近隣諸国まで巻き込んでしまった未曽有の事態に対する顛末を、監督作品御用達の俳優陣全員集合という豪華布陣にも関わらず、アンサンブルではなくセリフだけで笑いをかすめ取ろうとする半端なユーモア描写、色味を強くすれば誤魔化せると勘違いしたかのような配色とCG処理、シリアスオンリーで進行すればまだB級止まり出来たものを、どの方面にも置きに行ったかのような内容、さらには最後まで積み上げてきた物語の全容を全てをなかったことのようにしてしまうオチに、怒りと憎悪が沸いて仕方がない作品でございました。
正直自分は隅から隅まで語れるほどの特撮マニアでもなければ、怪獣よりも勧善懲悪が大好きなだけヒーローファンであり、こと怪獣に至っては多くの関心を持たない中途半端な人間です。
とはいえ、慣れ親しんできたヒーロー作品のその後を真剣に描いてくれるのであれば期待しないわけがないし、映画館に足を運んで大きなスクリーンで堪能したい。
全ての空想特撮ファンの願いを叶えてくれるかのような本作を、僕以上に期待した人も多いと思う。
しかも日本映画史において刻まれるであろう大手配給会社2社のタッグによる共作。
相当な気合いが入っていることだと受け取り、今回こうして鑑賞したわけです。
しかしふたを開けてみれば、内閣の大臣らが国民の安全のため真剣に議論するかと思いきや、おふざけが過ぎるやり取りだったり、現場での主導権争いをするのはいいが、主人公と元カノ、今の旦那との三角関係にまで発展する「あとしまつ」とは無関係な設定、決断や権力が右往左往するのは良いとして、いかにも歯切れの悪い展開と、無意味なシーンの連続、その他各大臣のしょうもないギャグやウケ狙いなどなど、このクオリティで「これが見たかった」と思う観客がどれだけいるのか製作の人間たちは想定していたのだろうか?と思うほど、全てにおいて残念でした。
いやこちらが悪いのかもしれない。
何故なら三木聡という監督は、緩さと独特の世界観を作風にする人。
僕はそもそもこの人が描くユーモアセンスには肌が合わず、鑑賞前も確かな不安材料はあった。
それを解っておきながらこうやって不満を書くのはフェアじゃないのではないかと反論されても仕方のないこと。
「過去を悔やんでも仕方がないだろ、そんなの付き合った年数とHの回数を割り算すればいいだけの話だろ」
「感動して流した涙も鼻毛を抜いて出た涙も、どちらも同じ涙だろ」
「うんことゲロどっちなんですか!? 限りなくうんこに近いゲロです」
「じゃあ間を取って銀杏の匂いってのはどうでしょう」
こんなしょうもない例えと、小学生レベルのギャグをクソまじめに放つ台詞ばかりが飛び交うのは、監督の過去作を知っていれば想定内だったはず。
正直俺の落ち度もある。
三池崇史のギャグが寒いと分かっていながら見て酷評してしまう過去の自分と同じことを言っているに違いない。
だから寒いギャグのオンパレードで描かれてることに関しては、百歩譲って大目に見ようと思う。
CGに関しても予算の都合ということにしたい。
全編を思い返してみると、ロケーションはもちろんのこと、カット割りからシーン数、各登場人物まで考えると、相当な時間を要したことが窺える。
既にその時点で日本映画にしては結構な予算だったんだと思う。
そこに大怪獣の上に乗って撮影したり、空撮で半壊した風景をいじったり、怪獣の近くで調査する際の美術にも金がかかっているはず。
だからCGはそこそこのレベルでしかできなかったのではないか。
東映と松竹をもってしても予算は10億出せなかったのではないか。
紫の黒煙で覆われるオープニングから、一級河川沿いに刻まれた大きな足跡、徐々に腐敗していく大怪獣の体内の隆起から噴出されるガスまでの過程。
他にも多数のシーンでCG処理がなされている。
本来なら特撮技術でやりたかったのだろうが、現代ではそっちの方がお金がかかるわけで、これも「シン・ゴジラ」のようにはいかないよね、と割り切るしかない。
…なんだか自分が費やしたお金と時間を肯定したいかのような言い訳が続くが、そうでもしないと怒りが収まらない自分がいます、はい。
一番不満なのはオチ
僕が一番納得いかないのが最後の最後に明かされる「オチ」だ。
まず全容をザックリ説明するとします。
大怪獣出現によって、日本は大変な事態に見舞われるが、突如飛来した謎斧光によって怪獣は急死を遂げる。
国家予算をガンガンン投入しても、軍の力をもってしても歯が立たなかった生命体のあっけない死に戸惑いを見せながらも、政府はこの怪獣の後処理をどうするかの会議をすることに。
もはや国民から冷たい視線を浴びている西大立目内閣は、もはや余命わずかと睨んだ閣僚たちは、責任を押し付けられたくない一心で責務の擦り付け合い。
外務大臣はインバウンド効果で経済効果を望んだりする案もあれば、厚労省はまだ怪獣が人間の身体にもたらすマイナス要素を確認できないことから一刻も早く処分すべきだとの声。
そんな中、次の総理を狙う国防大臣と、これまでお荷物扱いされてきた環境大臣らが水面下で色々動き始める。
他にも、国防大臣が管理する国防軍と、総理直属部隊「特務隊」との現場指揮争いも加わり、なかなか前に進むことができない「あとしまつ」。
気付けば怪獣の死体はわずかに残っていた体温の上昇による腐敗が進み体が膨張。
体内の一部が隆起しだし、それが爆発することでガスが噴出。
近隣住民に甚大な被害をもたらすことになってしまう。
現場では2年間失踪していた特務隊のアラタと、総理秘書官の妻ユキノ、そして総理秘書官である雨音の三角関係が描かれる。
怪獣出現時、謎の光と共に消息を絶ったアラタと付き合っていたユキノは、それを機に雨音と結婚していた。
様々な案を考慮しながらも現場での指揮権争いに巻き込まれるアラタは、彼への未練を募らせるユキノと先輩ブルースの協力により作戦を決行するが、雨音の策略によって失敗に終わる。
国民からガスの異臭を防ぐための作戦は、雨音の成り上がりたい欲とアラタへの嫉妬心から、雨音の作戦へと切り替わり実行に移される。
近隣諸国からのクレームと手のひら返し、怒気が強まっていく国民の不満の中、いよいよ怪獣のあとしまつが始まるのだが…
というのが大まかなあらすじ。
一番のポイントは、決して「シン・ゴジラ」のように国の総力を挙げて怪獣を退治したことから始まるアフターストーリーではなく、結局国力を上げても歯が立たなかった怪獣が謎の光によって死んだということ。
この時点で色々答えがわかってしまう人もいると思いますが、この「謎の光」の部分と、2年間失踪していた主人公アラタが、その間何をしていたのかという部分をずっと隠すことで、ラストの劇的なオチが用意されているのですが、これが何よりの不満です。
恐らくアラタの視点でずっと描けばこんなオチにはならなかったのですが、それを隠し、いかにも政府官僚らの思惑がひしめくことで全然思い通りにいかないながらも、最後は国の意地を見せて後片付けに成功する「お仕事映画」に見せかけていたことに腹が立つのです。
最後にあんなの見せたら、これまで七転八倒しながらもなんとか「あとしまつ」しようと一生懸命動いていたユキノや特務隊、それこそ総理や各大臣の描写っていったい何だったの?と。
結局国防軍も特務隊も、政府主導の対策や作戦も意味ないってことじゃん。
きっとこう描けば、監督らしいギャグテイストな映画として着地できると思ったんでしょうが、正直ふざけるなと。
恐らく新型コロナウィルスという未曽有の脅威に対する政府の見解や方針て、僕らの知らないところで様々な思惑に対するせめぎ合いをしながらやってるんでしょうけど、それを皮肉ったようなラストと捉えれば、笑えるのかもしれません。
結局、人間ではあとしまつできない問題がある、みたいな。
だからと言って虚構に対して虚構で片をつける、もしくは虚構なんだから何やってもいいだろってのはどうなのよと。
ここまで引っ張っておいてそれかよと。
最後に
要は「シン・ゴジラ」の続きをパロッて描こうとしたら「シン・ウルトラマン」の方でしたみたいな話ですよ。
そう割り切ってみたら、ゴジラを製作し続ける東宝に対して、真っ向勝負を挑んだ東映と松竹は面白いアイディアだったのかもしれないです。
まぁ僕としては恋愛要素も入れたことで、自分の欲がさらに深まっていくイニシアチブ争いになっていったので、まぁいいかなと。
いちいちキスシーンをスローでやる演出は鼻を突きましたけどw
しかし錚々たる俳優陣にもかかわらず、よくやりましたよ。
アドリブガンガンできる実力ある演者のに、閣僚会議の時のやり取りがすげえ下手くそで。
誰かがしゃべったら誰かがしゃべるっていう流れが凄く見えちゃうんだもん。
受け手が誰一人いない掛け合いで、なんとも見ごたえのないシーンでしたね。
とりあえずもっといい監督を起用してほしかったですね。
若手とかで実験的起用で勝負してもよかったんじゃないでしょうか。
その方がうすら寒いギャグで攻めないだろうし。
楽しめたって方には大変申し訳ない感想になってしまいました。
一応ね、オチに大きな不満があるだけで、それまでの過程ってギャグを省けばまぁイケてたと思うんですよ。
あり得る展開だよなぁって意味で。
だからその分反発も強くなってしまうというか。
悔しいな…。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10