DIE MY LOVE ダイ・マイ・ラブ

自分が映画を見始めた00年代後半、よく名前を聞いたのはエマ・ストーンとジェニファー・ローレンスだった。
二人ともコメディができ、シリアスな演技ができた。
スパイダーマンのヒロインなどビッグバジェットの作品には出たものの、エマはランティモスとタッグを組み始め、小規模予算の賞レース作品に頻繁に出ることに。
一方のジェニファーは、デヴィッド・O・ラッセル作品で花を咲かせながら、X-MENやハンガーゲームといったフランチャイズ作品にも積極的に顔を出していた。
今でも最前線で活躍する二人だが、賞レースという観点でいうとエマの方が頭一つ抜けている印象で、一方のジェニファーはあと一歩及ばずな作品が連続してしまっている。
比較するのは違うとわかっていながらも、同年代の女優だしどちらも応援したいわけです。
ベテランの空気あるけど、まだ35歳だからね!?これからよ彼女がすごいのは。
だから彼女の主演作は見ようということで、今回鑑賞する映画はジェニファー主演の産後うつがテーマのお話。
ジェニファーの何が良いってね、キレ芸ですよキレ芸。
エマのキレ芸はいまいちユーモア性に欠けるんだけど、ジェニファーの場合はキレればキレるほど笑えるんですよ。
プレイブックもアメリカンハッスルもドントルックアップも、彼女がキレるから面白いんです。
キレない映画はあんましですw(ウィンターズボーンは素晴らしい!!)
あくまで個人の感想ではありますが、そんな彼女がどんなふうにキレるのか、楽しみです。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
アルゼンチン現代文学シーンを牽引する作家アリアナ・ハルヴィッツが、むきだしの感情をもって執筆し、ブッカー国際賞ノミネートをはじめ世界的に高い評価を受けた小説『死んでよ、アモール』を、「ビューティフル・デイ」でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したリン・ラムジー監督の手によって実写映画化。
夫とともに安らぎを得るため引っ越してきた田舎町を舞台に、出産を機に仕事はおろか、生活にまで支障をきたすほどの重圧と孤独が襲い狂いだし、現実と幻覚の狭間で崩壊の一途をたどっていく姿を、特殊なカメラワークで表現しながら主人公の内面世界へと引き込んでいくドラマ。
監督のリン・ラムジーは「“結婚”というものの凡庸さ」に興味を抱いていたことを明かし、「結婚の閉塞感や、アイデンティティを失っていく感覚、そしてそこに漂う不条理なユーモアも、本作を描く上で重要な要素でした」と本作を振り返っている。
また、現実と幻想の境界が曖昧になっていくグレースの物語について監督は、「観客にもグレースと同じ感覚を味わって欲しい」思いから、グレースの⽬に映る現実世界をどこか夢のように歪んだ感覚で描き出すため、コダック35mmエクタクロームフィルムを採用し1.33:1のアスペクト⽐で撮影を敢⾏。
新たな挑戦に挑んだ監督は「登場するキャラクターたちの顔や繊細な表情を捉えるのに最適でしたし、圧迫感のある画を撮ることができました」と明かしている。
そんな出産後に狂気に駆られていく主人公グレース役を、「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、「ドント・ルック・バック」や「マディのおしごと 恋の手ほどき始めます」などで存在感を放つジェニファー・ローレンス。
今回マーティン・スコセッシとともに製作にも参加したジェニファーは、第1子を授かったときに原作と出会い、第2子誕生の際につらい経験をしたことが、本作に生かされていると語っています。
ほかにもグレースの夫・ジャクソン役を、「TENET/テネット」「ドラマなふたり」のロバート・パティンソン、グレースの母・パム役を「キャリー」、「さらば愛しきアウトロー」のシシー・スペイセク、その夫・ハリー役に「クライム101」のニック・ノルティ、謎の男カール役を、「プレイ・ダーティー」「ルーフ・マンー屋根の下の逃亡者」のラキース・スタンフィールドなどが出演します。
母になろうと努めるたびに壊れていく自分。
彼女の身に起きる危うさとはいったい。
あらすじ
情熱的に愛し合うグレース(ジェニファー・ローレンス)とジャクソン(ロバート・パティンソン)。
ニューヨークを離れて田舎町へと移り住んだ二人は、結婚してまもなく子供を授かる。
しかし、幸せの絶頂にあるはずの日常は、それを境に静かに軋み始める。
作家であるグレースは執筆が滞り、言葉は思うように出てこない。
ジャクソンとの関係もすれ違い、セックスレスに。
満たされない欲望。
言いようのない不安と苛立ち。
閉ざされた日々のなかで、行き場を失った感情が積み重なっていく。
そんな彼女を気遣う周囲の声は空しく、孤独はさらに深まるばかり。
やがて現実に滲むように浮かび上がる幻覚が、静かに彼女の心を蝕んでいく。
正気と狂気の狭間で揺れるグレース。
激しさを増していく夫との衝突。
そして、極限まで張り詰めていた心の糸が切れたとき、その先に待ち受けるものとは――。(公式より抜粋)
感想
DIE MY LOVE鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 12, 2026
産後うつによる異常なまでの行動と妄想、子を産まない男勢は、これどうしたらいいんすか?ほっとけってこと?
最近解放的な演技することが増えたジェニファーローレンスは、やっぱりクレイジーな役柄が似合うなと改めて思う。… pic.twitter.com/IWzS1fFEKl
俺も忙しくなると起きてるか寝てるかわからなくなるし、常に「何かしたい」と「何もしたくない」の狭間でほげ~っとしてるので産後うつだと思う。(は?)
以下、ネタバレします。
割と露悪的な見せ方。
わざわざデカい文字にして「俺も産後うつ」とか書きましたが思いっきり冗談だし、当事者の方もしくは過去に経験のある方は真に受けないでくださいませ。
・・・こうでも書いておかないとガチで怒られそう。
実際それくらいナーバスな事情で病だと痛感しましたよ、この映画を通じて。
劇中ずっと嫌な気持ちでした。
グレースの立場から見ても、ジャクソンの立場から見てもずっと苦しい。
作品情報でも触れましたが、今回アスペクト比をいじることで目に映る世界が曖昧なモノにしており、「見ていて苦しかった」なんて感想を抱いたくらいから、ある程度は成功していたんじゃないだろうか。
昼間はざらついたフィルムっぽさや白を強調させたことで、遠い日を思いわせる幻想ぽさがあり、夜になれば透き通った青を基調とした色味により、閉塞感は出ていたように思えます。
子供を産んで半年、ジャクソンに抱いてもらえない悶々とした日々を自慰行為で消化しながら、何をどうしたらいいか表現するのも難しい感情を、くねくねしたり変な顔して耐えるグレースの日常を、昼夜とフレームを変えることで表現したのはお見事だと思います。
また、こうした映像表現に加え、音にもこだわった演出が光った作品でもあった。
田舎の古い民家を改築して住んでる傍ら、とにかく虫が飛んでいる音が聞こえる。
アメリカの田舎町の家って、風通しがいいからなのか常に網戸にしてるか窓を開けっぱなしにしてる風景をよく見かける。
本作も同じく昼も夜もお構いなしに窓が開けっぱなしに見える。
もちろん外は沢山の木が生い茂った森の中の一軒家であり、ブンブン虫が飛んでるのも当たり前。
虫が飛んでる音ならまだいい。
そこにキャンキャン喚く犬が投下されるから、うるさいったらありゃしない。
大体生後6か月で目を離せない赤ちゃんが1日中泣くだけで騒々しいわけです。
僕は経験したことありませんが、俺も赤ちゃんの頃は夜中にギャン泣きして母親を寝かせなかったことでしょう。
それくらいデリケートなお年頃の子の面倒を見なければならないのに、子育てに積極性の見えない夫・ジャクソンが犬を連れて帰ってくるじゃねえかバカ野郎。
一体どういう神経で犬を連れてきたんだろう。
しかもこいつがまぁ吠える吠える。
エサが欲しいのか構ってほしいのか、それとも得体の知れない何かが見えて防衛本能で喚いてるのかさっぱりわからないけど、ジャクソンが全く躾けないし、グレースに至っては産後うつのステージ2ともいうべき症状がでているせいで、一緒に吠えたり変顔したり外に飛び出して帰ってこなかったりと奇怪な行動してるではありませんか。
このワンちゃんが終始吠えるので、グレースは寝る時間を確保できず、家事をまったくやらなくなってしまう、それが原因でジャクソンとも険悪になってくわけです。
赤ちゃんの泣き声、虫の飛ぶ音、そして犬の鳴き声と騒音ベスト10の3つがランクインすることで、とにかく耳までも不快になっていくのが本作の凄い所です。
この辺は非常に良く作られていて面白いんですよ。
途中爆音で流れるBGMとかも、楽曲として映画に相応しい相応しくない以前に「ノイズ」でしかない効果をもたらしてるので巧いと思います。
で、結局この映画をどう見たらいいのか俺にはわかりません。
現実と妄想の区別が曖昧なのは見てる人全員が理解できることでしょう。
何なら犬を飼っていたことすらも妄想の可能性があります。
馬にぶつかって事故を起こすとか、夜中に謎の男と密会するとか、パムの家まで走って散弾銃盗んで持ち帰るとか、何ならどっかでパム自身も銃持って走ってるしと、色々わけがわかりません。
要はあの家とジャクソンと赤ちゃんだけが現実で、あとは全部妄想なのかもしれません。
いや、家もどうなんだろう、ジャクソンが塗り替えていたけど、それも本当かどうか。
車いすの子供を車に乗せている男性をモデルにしたのが、あの謎の男で、馬も彼の擬態した姿、なんて考察しようと思えばできますけど、多分違うんだろうな。
根拠を言えないしw
とにかく「あれはこうだったんじゃないか」といい合えるけど答えにたどり着くのは難しそうな本作。
やはり特筆すべきはグレースのストレス度なんだろうな。
マジでね、見てられないですよ。
序盤ので鬱屈した日々から中盤はさらにスケールアップするわけですよ。
ジャクソンが何か言えば正論とでもいうべき反論を始めるのはまだいい。
昼間っからズボン脱いでパンティー一枚の格好をしてしまってるわけですよ。
まぁ家だからいいんだろうけど、吠える犬には一緒に吠えたり虚ろな目で家事もロクにしない。気分転換に買い物に出ればレジの姉ちゃんに「あらかわいいでちゅねぇなんちゃいでちゅかぁ?」と聞かれ、苛立ち爆発。
お前の口は常に動かしてねえと取れるのか?あ?と悪態つけるグレース。
これだけじゃすまない。
ホームパーティーに行こうモノなら、子供のことばかり心配は当たり前で、知らない母親から経験談を聞かされさらに鬱!
2か月以上も抱かれてないことをジャクソンにぶつけ、いつやるかを即答しないとさらに暴言を吐くグレース。
え?あたしが欲しいの?いつ?今?家に帰ってからすぐ?どうすんの?え?
帰宅するや否や車の中でおっぱじめようとするグレース。
ちょっと待ちんしゃい、母ちゃん家にいるから!と必死で抵抗するジャクソン。
ジャクソンが連れてきた犬があまりにも吠えるので、いや犬のせいじゃないなこれは、吠えてばかりの犬を連れてきたジャクソンが全く躾けないせいで、とうとうストレスMAXのグレースは、パムの家まで言って銃を奪い、草むらで犬を撃ち殺すという中々のバイオレンスを見せるんですが、ジャクソンは何も口答えせず死体を埋める穴を掘るという、笑っていいのかダメなのかわからない描写をただ見せられる。
家の中からその光景を眺めていたグレースが突然窓ガラスに突っ込んでぶっ倒れるじゃあありませんか。
病院で治療するほどの怪我をするあたりから、ジャクソンの表情も一変してくんですよ。
そう、この映画、ぶっちゃけ男勢はどう受け止めていいかわからないんですよ。
ジャクソンが決断したのは、入院させることでした。
はっきり言ってこれ以上悪化すれば何をしでかすかわからない。
だって飼い犬を撃ち殺してますからね。
勝手に森の中に逃げたりするし、ジャクソン自身も胃痛に悩む姿が描かれていたわけで、相当なストレスだったと思います。
ぶっちゃけ犬を飼ってきたジャクソンの罪は重いと思います。
あまりにも無神経です。
てかお前も産休取って一緒に面倒見やがれ。
女性陣からそんな声が聞こえてもおかしくないほどジャクソンはダメパパです。
ビールばっかり飲んでるし。
ただ誰が悪いとかの次元ではないくらいグレースの鬱は重いものがあります。
入院してもうだつが上がらないどころか、退院して普通の日常を妄想する始末。
さらに本作は現在と過去が入り乱れる構成になっているせいで、グレースだいぶヤバいぞこれってのを体感する作品でもあるから、こんなグレースと一緒に暮らしてるジャクソンの辛さってのも終盤では理解できるんですよ。
どうしてグレースはここまで墜ちてしまったのかは、彼女の両親との過去に繋がってるのか、はたまた夫を亡くしたばかりのパムと共通する部分があるのか、ま~じでわからん。
最後に
マディのおしごとでもそうでしたけど、ここ最近のジェニファーは脱ぎっぷりが男前というか、同年代のエマ・ストーンに対抗してるんじゃね?ともとれるヌードシーンには驚きました。
授乳シーンとか別に終ったら見せなくていいのに片乳出っ放しだし(あれはしまうのすら怠いってことだとは思う)、引っ越し仕立てのころのダイナミックな絡みもコマ切りではあるものの、大胆な見せ方でした。
終盤も合成だと思うけど、燃え盛る森の中で全裸になってるし、直接ドアップではっきりではないにしろ、かなり積極的なヌードでしたね。
ま、そんなことしなくてもジェニファーはキレ芸がありますから。
今回も見事でしたよ。
どちらかというとキレる姿よりも、落ち込んでる表情とか途方に暮れる表情、遠くの方を見てる、魂が抜けてるような姿といった静の演技の方が魅力的でしたね。
都会とは違う静寂さが、グレースをより孤独にさせたのではないでしょうか。
夫が帰ってくるまで車もないから、彼女はベビーカーを引いて歩いて行ってましたし、それだけ行動範囲も限られてくると。
気分転換をしようにもできない環境で、泣きわめく子供と吠える犬に悩まされ、良い母親になろうと無意識に考えてもいる。
ある種社会から切り離された場所で奮闘しようにもできないグレースの壊れていく様を、本作で体験してみてはいかがでしょうか。
しかし昨今のこの手の映画、ほんと締まりがないよねぇ…
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

