DROP/ドロップ

はじめに
今回も手抜きで申し訳ありません。
そもそも急きょ見ようと思ったもので。
あらすじ
「ハッピー・デス・デイ」の監督が作った、巻き込まれがたスリラーとでも言いましょうか。
夫に先立たれたシングルマザーのバイオレットが、過去を忘れるためにマッチングアプリでマッチした報道カメラマンと、高層階にあるレストランで初デートを決行するも、スマホについている「DROP」機能によって、息子を人質に取られてしまい、目の前に座っているデートの相手ヘンリーを殺害するよう次々と脅迫されてしまうという巻き込まれ型のシチュエーションスリラー。
感想
#映画DROP 鑑賞。drop機能でひたすら脅される「こういうので良いんだよ」と納得のヒッチコック的巻き込まれ型スリラー。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) July 11, 2025
主人公と相手の男性に「支配されていた」背景があり、それを克服しようと動くのもアクセントになっていて良い。
会話の充実ぶりなど正直もう一捻り欲しいが、十分満足。 pic.twitter.com/xXiFl501nK
まぁ、簡単にいうと
「こういうので良いんだよ」。
あ、以下ネタバレしますね。
まず最初に俺はDROP機能とやらを使ったこともなければ、勝手に送り付けられたこともない。
いつだったか、電車内でエッチな画像を勝手に送り付けられるという新手の痴漢行為が多発してるなんてネットニュースをみたことがあって、そんなクソみてえな奴がいるのかと憤りを感じたことがある。
そもそもDROP機能とは、同じ製品のデバイスなら動画や写真、ファイルを共有できるサービスだそう。
ただ、相手と近い距離にいないと送信することができないという縛りがあるのが特徴。
自分はiphoneなのでAirdropがついてるけど、劇中ではDigidropなる機能を使っていて、主人公のバイオレットが、これから夫以来の初デートで緊張してる中、次々と妙なミーム的画像を送りつけられていくのが悲劇の始まり。
最初こそ「お前はどっちを選ぶ?天国?地獄?」といった旨のDropが送りつけられ、ただのいたずらかよとあしらうバイオレットですが、無視する度に次々と迷惑Dropが送りつけられてくるため、デートの相手であるヘンリーにも相談することに。
バイオレットは、今夜のデートのために息子の子守をしてくれている妹ジェンとの連絡をするため、息子がちゃんと寝たかどうか、アイスとか食い過ぎてないかなどを逐一報告を待たなければならず、スマホから目をそらすことができない状況でもありました。
ぶっちゃけデートの最中にスマホに釘づけなんかにされちゃ男としてはすごくがっかりだけど、事情が事情なんだからそこは「大丈夫だよ」といってあげるのが優しさってもん。
その辺デートの相手ヘンリーは、しっかり兼ね備えており、イタズラDropを送りつけてきても「俺が怪しい奴見つけてきてやる」とか言うし、バイオレットのぎこちなさに気付いてユーモアで返す辺りは、さすがといったところ。
俺にもそんな余裕欲しいわ。
さてさて、留まることを知らない謎の相手からのDrop。
やがてそいつからメールが送られてきてしまいます。
それは「監視カメラを見ろ」。
家についている屋内の監視カメラを覗くと目出し帽をかぶった黒づくめの男がリビングに居座っているではありませんか。
そう、息子を人質にとられてしまうのであります。
解放する条件はただひとつ。
今から言う仕事をしてもらうこと。
まず最初にヘンリーが持っているカメラのSDカードを破壊。
続いてトイレにある手拭き用のタオルボックスの中から、薬を取り出しヘンリーの飲み物に混入させること。
そう、謎の相手の目的はヘンリーを殺すことだったのです。
バイオレットは、誰にも相談してはならないと命令されているせいで、さっきまで気がかりだったイタズラDropをヘンリーに相談していたにもかかわらず、不穏な表情を見せても「なんでもない」というしかない。
誰かに助けを乞うものなら、監視カメラと店内の隅々に設置されていた盗聴器によって、全てが筒抜けという圧倒的不利な状況下にあります。
一体全体これをどうやって回避し、ピンチを切り抜けることができるのか、さらにはほとんど席が埋まっているほど人気の店内で、一体誰が指示を送っているのかという犯人探し。
半径15mという狭い範囲では、皆がこぞっておしゃべりしてたり、ディナーを楽しんでもらおうと気配りするスタッフ、そして相手が来ないため一人でスマホをいじる者などさまざま。
こんなガヤガヤした店内で、どうやってこっちの様子を探りながらディナーをしてるのか。
冷や汗が止まらない状態で、バイオレットは命令に従うしかないのか、それともどのタイミングで形勢逆転するのかってのが、本作の面白い所。
勝手に冤罪にされながらも、たまたま巡り合った女性と一緒に逃亡し、真相を突き止め犯人を捜す作品は、ヒッチコックに多くありますが、正に本作は巻き込まれてしまった主人公が限られた状況下で真相を究明しながら犯人を捜す物語であります。
もうね、何がきついってヘンリーに悟られてはいけないというところ。
劇中のバイオレットはとにかく落ち着いてられない状態なんです。
SDカードを盗むためには、ヘンリーに席から離れてもらわないといけない。
何かと都合をつけて席を離れてもらい、その隙に盗みに成功しますが、今度は自分が席から離れないといけない。
トイレに行ってカードを破壊して。席に戻ったら、今度は薬を飲み物に入れないといけない。
これもヘンリーのいないところで入れないとバレてしまうので、バーカウンターで入れ様と試みますが、謎の相手からは死角になっているため、席で入れないといけない。
またまたヘンリーにどこかいってもらわないといけませんが、離れた隙に入れようとすると今度はそこにウェイターがやってくる。
他にも、監視カメラを見るために席を離れたり、時計をトイレに忘れたと嘘をついて席を離れ、フロントに適当な要件を言って離れてもらい、その隙に固定電話で911に電話をかけようとしたり、PCからボイスチャットで助けを求めたりと、せっかくのデートなのに席から離れてばかりのバイオレット。
これではさすがのヘンリーも、「今日のデートはまた今度だな」ってなってしまいますよね。
でも、ここでヘンリーを帰してはいけない。
必至の抵抗の末。バイオレットは強引にヘンリーにキスをして、留まってほしい意志を示します。
あ~こんな大変な状態なのに、なんてロマンチック。これもまたヒッチコックっぽさを感じるショットでしたね。
そうそう、今回この狭いレストラン店内をどうにかして活かすために、キャラを動かすことも大事なんだけど、カメラワークもしっかりしてました。
バイオレットとヘンリーが自身の過去や置かれた立場を語る場面では、ゆっくり切り返して見せる一方で、危機的状況になれば素早くカットを割ってスリリングさを醸し出す。
一体誰が犯人なのかを見渡す時は、店内をゆっくりパンして見せる。
時に怪しい人物の場合はピンスポットを当てて注目をさせる。
そもそも高層階のおしゃれなレストランなので見栄えも良い。
また、相手からのメールが来るたびに、画面にしっかり余白をつくり、そこに文字を浮かび上がらせる。
いちいちスマホの画面に切り替えずに、相手の要求とバイオレットのリアクションを同時に見ることができる辺りは、若干しつこさも感じたけど映画として機能した演出だったように思えます。
また本作は、バイオレットにはつらい過去があったことが示唆されています。
冒頭血だらけの中で男から暴行されるバイオレットの姿が映るんですが、これが一体いつの事なのかわかりません。
もしかしたら最後の起きる事態かも知れないし、ここから物語が始まるかもしれない。
男に銃を突き付けられたと思ったら、俺に向けろと妙なことを言う男。
全く状況が分からない中で、実はそれが前の旦那であったこと、彼がDVだったことが明かされ、しかも旦那はバイオレットが殺したかもしれないという謎が新たに加わり、謎が謎を呼ぶ要素にもなっているわけです。
もしかしたら犯人は夫に通じる誰かかも知れないし、バイオレットが隠している秘密を知っておどしてるのかもしれないと。
さらには、報道カメラマンであるヘンリーにも背景が加わっていくわけです。
SDカードを盗む際、画像を確認すると市長の写真と一緒に収支報告書を始めとした数字がたくさん書かれた書類の写真が目に飛び込んできます。
ヘンリーは、市長のただのお抱えカメラマンなのか、なにか裏を取るために秘密裏に動いているのか。
そんな2人は、誰かから「支配されていた」という共通項が浮かび上がります。
支配から逃れるためには行動するしかない。
そんな2人が、互いの事情を知らずに語る場面はドラマチックでもありました。
ただ、バイオレットは毒を仕込もうと画策してるんですけどねw
このように、狭い範囲内で様々な技術を駆使して盛り上げる演出を施していたり、モブになりかねないキャラを巧く使ってバイオレットに絡めようとしたり、ドラマの構成も含め、非常に楽しかったですね。
ホッケーのパックや息子が母親にさし向けるラジコン、20ドル札、テキーラのライム、腕時計に至るまで、小道具の使い方も見事でしたね。
最後に
犯人の正体は案外あっけないものですが、ヒッチコック映画もそんなもんですし、犯人をどうやって退場させるかもあんなもんでいいと思います。
本作は、圧倒的不利な状況下の中、どうやって命令に従いながらも危機を回避するかが肝だと思います。
そのドキドキ感を堪能してほしいですね。
とはいえ、もう一捻りあっても良かったかなと思うのが僕のワガママな所。
例えば、もう一人犯人から脅迫を受けていて邪魔が入るとか。
それこそヘンリーも脅されていい立場なので、彼が別の誰かを殺害しなくてはならないとか、SDカードを死守しなきゃいけないみたいな状況にすれば、ややこしいながらもスリリングなったかもしれません。
また席を何度も移動しなくてはならないせいで、肝心のヘンリーとの会話が乏しいのが厄介。
状況的に落ち着かないバイオレットの気持ちも分かりますが、それをうまく隠しながらヘンリーとの初デートの会話を聞きたかった部分はあります。
1個不可解なことが。
バイオレットが注文した鴨のサラダの中に、ピアニストに助けてもらうためにメッセージを記した20ドル札が忍ばせてあったんですが、一体どこであんなことできたん?
ピアニストがバーカウンターで電話をかけようとしたときに、隣に犯人がおり、20ドル札を回収したところまでは明かされましたが、サラダにどうやって入れたのか。
作り終えたサラダをウェイターが運ぶまでの導線の中で入れたってことなんでしょうけど、あれかい?出来上がったサラダはバーカウンターのどこかにほったらかしだったのかい?
見る限り、バーカウンターで調理してるとは思わなかったんだけどなぁ。気のせいか。
ま、いっか。
とにかく色んな映画がある中で、活用されてる機能を題材にクラシックな雰囲気でまとめ上げた本作は、ホント欲しがっていた作品でした。
年べスに入るような作品ではないけれど、「こういうので良いんだよ」と思わせてくれた楽しいスリラー映画でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10