エデン 楽園の果て

ロン・ハワード監督の映画を何年劇場で見ていないだろう。
「ヒルビリー・エレジー」、「13人の命」そして今回鑑賞する「エデン 楽園の果て」と、日本では3作続けて「配信」という…。
一応アカデミー賞監督賞受賞作家ですよ?みんな「バックドラフト」とか「アポロ13」とか「ダヴィンチ・コード」とか好きじゃん?
あの絶妙に面白くなかった「ハン・ソロ」も、彼が立て直してあそこまでできたと思うんですよ。
あのまま出してたらかなりヤバかったと思うんですよ。
別に俺そこまでロン・ハワード好きじゃないけどさ、一応名匠だと思うんですよ。
ロバート・ゼメキスといい、ポール・グリーングラスといい、最近この手の監督が配信なの、かわいそうだよ…。
と、愚痴はこの辺にして。
なんと今回、ヴァネッサ・カービィー、アナ・デ・アルマス、そして我が愛しのシドニー・スウィーニーと旬の女優をブッキングした作品てことで、めっちゃ楽しみでした。
残念ながら配信ではありますが、「ガラパゴス事件」なる実際にあった奇妙な出来事を実写化したみたいなので、スリリングなお話なんでしょうか。
楽園を求めてやってきた無人島に、こんな美女三人もいたら俺どうなっちゃうんだろ…ww
早速自宅で鑑賞いたしました!!
作品情報
1930年代にガラパゴス諸島のフロレアス島で実際に起きた出来事をベースにしたノア・ピンクの脚本を、「ダヴィンチ・コード」シリーズはじめ、数多くのハリウッド映画を製作してきた名匠ロン・ハワード監督が実写映画化。
1929年を舞台に、ガラパゴス諸島に移住してきた医師と恋人だったが、新たなグループが加わったことで平穏な生活に歪みが生じ、楽園どころではなくなっていく事態を、自然の中でのサバイバルや人間の欲と支配をベースに、スリリングに描く。
ガラパゴス諸島の博物館でこの物語と出会ったロン・ハワードは、未だ解明されてないこの事件が現代にも通じていること、そしてリアリティショーのようなキャラクター同士の衝突や飽くなき欲が渦巻いていたことなど、とても映画の題材に相応しいと感じたとのこと。
前作「13人の命」での経験を活かし、クィーンズランド州でガラパゴス諸島に見立てたセットを組み立て撮影に挑んだ。
キャストには、「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」のジュード・ロウ、「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」のダニエル・ブリュール、「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」のヴァネッサ・カービィー、「バレリーナ:The World of John Wick」のアナ・デ・アルマス、「恋するプリテンダー」のシドニー・スウィーニーと豪華布陣が集まった。
ユートピアを求めたのに、なぜその島はディストピアと化したのか。
自然の厳しさよりも恐ろしいものとはいったい。
あらすじ
1929年、現代社会に失望し、母国ドイツから安住の地を求めフロレアナ島へやってきたフリードリッヒ・リッター博士(ジュード・ロウ)と恋人のドーラ・シュトラウフ(ヴァネッサ・カービィー)は、互いの理想を実現すべく、文明を忘れ自然と共存しながら平穏な生活を続けていた。
しかし、同じくドイツから移住してきたハインツ(ダニエル・ブリュール)とマーグレット(シドニー・スウィーニー)のウィットマー一家、そして二人の恋人と使用人を従えたエロイーズ男爵夫人(アナ・デ・アルマス)らが島に到着すると、これまで保たれていた平穏が崩れていく。
リッターと、ウィットマー家、そしてエロイーズら3組は、平静を装いながら腹の探り合いをし始め、緊張を高めていく。
やがて緊張が切れた時、ユートピアはディストピアへと姿を変えていく。
感想
エデン ~楽園の果て~ 鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) October 25, 2025
偏屈な哲学カップルVS自称男爵夫人VS一般家庭!何もない島で生き残るのは誰だ!
実際にあったガラパコス事件を脚色して描かれるサバイブサスペンス!
旬の女優の三つ巴は見応えあるし、なんと実質主役は俺のシドニースウィーニーだった! pic.twitter.com/v21Vzpe8YK
どうして人間は諍いを起こし争うのだろう。
ファシズム化していく文明社会から逃れ孤島で暮らす3組の男女が織りなすサバイブサスペンス!
藪の中の真実を脚色するなら、もう少し謎を残して描いても良かったと思うよ。
以下、ネタバレします。
人間同士助け合うこともできるし、引っ張り合うこともできる。
ニーチェの思想を重んじ、東欧と西欧の哲学を融合させ新たな哲学を世界に広げようと考えるリッターとドーラ。
リッターが投函した手紙がマスコミで話題となり、居場所を求めてやってきたハインツとマーグレットのウィットマー夫妻。
同じくリッターの記事を読み、ホテルを建てるためにやってきたエロイーズ男爵夫人と僕たち。
暮らしていくうちに秩序が乱れ、諍いが起き、やがてこの島で生き残りをかけてのサバイバルが勃発するスリリングなサスペンスでした。
いやぁなんていうんでしょう、お引越しする時って土地の値段とか日当たりとか勤務地からの距離とかいろんな理由から考慮して決めますよね。
でも実は一番大事なのって、近隣の人たちがどれだけいい人たちかってことなんじゃないの?そんなことを言いたい映画だったんじゃないでしょうかw
だってよ?
最初にやってきたリッターとドーラは誰も寄せ付けたくない、孤独と痛みを克服するためにこういう場所で暮らしてきたわけですよ。
自らの高尚で崇高な存在で、感染症にならないために歯を全部抜き、俺はベジタリアンになるとかいってる、意識高い系な奴なんですよリッターは。
そういってる割りには、腹を空かせすぎて肉を食うし、手紙だって自らマスコミ宛てに送って自分を認めてもらいたくて必死と、化けの皮が剥がれてくと薄っぺらい男だってのが見えてくる。
こんな奴がいる島にやってきたウィットマー一家は、虫刺されや野犬やらに悩まされながらもなんとか自分たちの城を家族だけで作り上げていくわけですよ。
そこに追加投入されるのが、支配欲と権力欲がダダ漏れのわがまま姉ちゃんエロイーズ。
3人の男たちを従えて、ここにでっけえホテルを作るんじゃあ!と意気込むものの、ロクな計画性もなく、とりあえずすべて男たちにやらせる。
その間自称男爵夫人は3人の中から男を選んではセックスに明け暮れ、夜は宴と贅沢三昧。
さすが自称男爵夫人ですね!
ウィットマー家からしたら、どっちの家もロクなもんじゃなく、色んなことで悩まされていくのが序盤の展開。
勝手に貯水池で水浴びされるし、勝手にすぐ近くに引っ越してきて缶詰盗まれるし、リッターにお産の手伝いを頼んでも手伝ってくれねえしと、お前ら「ご近所付き合い」って言葉知ってるか?ってくらい、どいつもこいつも非協力的で利己的な連中ばかり。
それでも何が偉いって、地道にコツコツ働いて立派な家を建てるし、雨ニモマケズ風ニモマケズな精神で作物を育て、一家そろってその恵みに感謝する。
実はどの組よりもちゃんと島での暮らしが根付いてるのがウィットマー家なんですよね。
だけどそんなごく普通の一般家庭を欺こうとリッターやエロイーズが己の欲のためにわなを仕掛けてくるわけですよ。
特にエロイーズは何を考えてるのか、リッターとウィットマーを対立させようと仕掛けるんですね。
大体缶詰を盗もうとする時点でロクでもないんですが、この時マーグレットのお腹の中には赤ちゃんがいて、しかも破水してしまうほど出産のピークを迎えてるんですよ。
誰か助けて!と叫んでるのに、息を潜めて助けようとしない。
これに追い打ちをかけるように野犬が襲ってくるという超大ピンチなのに、全く助ける気がない。
お前さ、追い出したいクセに飯無くなったら盗むって、いなくなったらどうやって暮らすの?
この後催された食事会でも殺伐とした雰囲気の中行われ、誰かが話題を振ればそれに応えず別の誰かに話題を振るなど、誰もがこの場で関わりを持とうとしない空気が充満していきます。
特にエロイーズとリッターの舌戦は白熱し、ついドーラが伏せていた「子宮摘出」の話までしてしまうデリカシーの無いバカハゲ男として地に落ちます。
そもそも仲良くする気がないのになぜ食事会なんて開くのかとは思いますが、とにかく全ての諍いの原因はこのエロイーズなのであります。
この女が秩序を乱し均衡を崩し、起きてはいけない事態を招いてしまうのであります。
近隣住民問題、深刻化。
中盤以降、エロイーズの元でホテルの建設を任されていたルイーズに変化が。
元々は最初の男だったのに、元々自分の店で働いていたロバートに序列を奪われただの雑用に成り下がってしまい、度々ウィットマー家に世話になることに。
結局魔性の女の魅力に逆らえず、島を出る許しを得る代わりに、ドーラが大切に飼育していたロバを、夜中にウィットマー家の畑へ連れていくことに。
もちろん夜中に物音がしたハインツは、野犬かイノシシが畑を荒らしてると思い、ライフルで撃ち殺してしまうのであります。
再びエロイーズの策略によってリッターとウィットマー家に亀裂が生じる事態になりますが、「立場を決める」を合言葉に、ついにリッターとハインツは手を組み、エロイーズとロバートを殺害し隠ぺいを図るのであります。
とうとう起きてはいけないことが起こってしまったわけですが、事情はお察ししますよと。
支配下に置きたい、権力者でありたい、そんな醜い欲が自分を死に追いやるという皮肉な展開。
起こるべくして起こったのであります。
この時のリッターも、既に彼らが来る前の「崇高な存在」からはかけ離れ、誰の相手もしない自らの暮らしに没頭することを忘れ、人を欺くために何をすべきかという思考にとらわれ過ぎており、それまで執筆していた本も全く進まないし、あれだけ抑制していた食欲も旺盛になり、無関心から激しい思い込みを抱くようになり、すっかり野生化していくのであります。
彼の崇高な精神や哲学に惹かれ共にやってきたドーラも、もうこの時には彼に愛想が尽きており、関係を終わらせたいとまで口にしてしまうほど。
エロイーズとロバートはタヒチに行ってしまった。
そんな嘘の言い訳を口裏合わせして女性陣に告げる男たち。
ルイーズは島を出て、リッターは「エロイーズを殺したのはハインツ」と知事宛てに嘘の手紙を投函して欺くための手配をします。
実質主役のシドニー・スウィーニー
実は本作、中々のキャスト陣が揃ってるので、多様なアンサンブルで楽しませてくれるのかなと思ったんですが、どう考えてもスクリーンタイムが一番長いのはシドニー・スウィーニー。
アナ・デ・アルマスもそれなりに場を荒らす活躍をしますし、ヴァネッサ・カービィ―も距離を取りつつも見せ場がないわけではないんですが、やはりこの島の争いの決着を付けたり、カメラに抜かれるのは彼女です。
というのも、最後までこの島に残って生活できたのはマーグレット本人。
資料によると、一番内気で変わり者とされた彼女が、島に訪れるための準備をしっかりしており、誰よりも親切で、分け隔てなく接し、困ったものには飯を与え、最後は夫をと家族を守るため、この死まで暮らすためのハッタリをかますんですね。
エロイーズが置いていった愛読書「ドリアン・グレイの肖像」を忘れてまでタヒチに行くのか?という疑問から、夫を問い詰め真相をしったマーグレット。
次に狙われるのは私たちだと確信したマーグレットは、ドーラに取り繕うことに。
皆出て行けばいいと思ってるんでしょうけど、私たちが出て行けば、まるで心変わりしてしまったリッターと二人で暮らすことになるけど、本当にそれで大丈夫?とドーラは抱いてる不安を見事に的中させ、動揺を与えます。
腐ったエサを与えてしまったせいで鶏が死んでしまった話を聞いたマーグレットは、自分たちで育てた鶏を与えますが、マーグレットは「腐ったエサで死んだ鶏は焼いたところで毒素は消えない」という話をすることに。
ドーラはそのことを伏せて、リッターに腐った鶏を焼いてチキンを食わせます。
結果リッターは食中毒で命を落とし、ドーラは島を出て行くことになります。
もうお見事です、マーグレット!
アリバイも作って、ある意味殺人教唆までしてしまう。
でも自分は何も罪を犯してないし、潔白だ、そう警察からの尋問で堂々と言い放つ強い精神力ですよ。
こういうこと言うとフェミニストから怒られると思うけど、いわゆる「妻の鏡」だなと思えるキャラクターでしたね。
家庭を守るのは妻の仕事とでもいうんでしょうか。それを立派に務める賢さ。
だって、彼女にとってこの島で暮らすこと以外行く当てがないのですから、自分のためでもあるという。
実際、彼女はハインツに求婚されたから結婚したと語っており、23歳まで誰とも付き合ったことのない変わり者が、こうして手に入れた夢の形なわけですから、それを束成したくない気持ちは十分伝わります。
しかも彼女、中盤では出産までしてますからね。
ここでの悶絶ぶりは圧巻の演技でした。
苦しみながらも助けを求めますが、野犬に襲われる寸前まで追い込まれて自ら出産。
これでもかと叫び目をギラギラさせることで、極限状態に追い込まれた人間が「それでも生きたい、子を産みたい」という本能をむき出しにする瞬間を目の当たりにしました。
最後に
一応映画の中では、エロイーズを殺したのはハインツとリッターということになってますが、どうやら資料の記録によると「真相は藪の中」のようです。
確かにエロイーズとロバートは「タヒチに行く」と手紙を残して消えたそうですが、誰も船に乗る姿を見ていないし、ルイーズの証言のみ。
肌身離さず持っていた愛読書も置いたままいなくなってるので、誰かが殺したのではないか?とも言われていますし、本当に島に行って難破して餓死したか、未だわかっていません。
またリッターが食中毒で死んだわけですが、果たして病死なのか、それともドーラが意図的に食べさせたのかはわかっていません。
実際腐った肉を焼いたものをドーラ自身も少量ですが食べており、彼女も腹痛を起こしたとの記録があります。
映画の最後でもその後の彼らを文字表記で説明してる通り、ドーラとマーグレットの言い分がまるで違う手記が出版されているため、まるで「羅生門」のような謎の事件として今でも語り継がれてるのだそうです。
ハインツを亡くしたマーグレットは、本当にあの島に残って3世代でホテルを経営するまでに至り、本当の楽園を手に入れたのはマーグレットだということが伝わるかと思います。
この事件について具体的に書いてあるブログがあるので、リンクを張っておきます。
各人物の言い分を解りやすく比較してたり、ちょっとしたユーモアを挟んで書いてあるので非常に興味深く、読みやすい内容です。
しかし映画としては全体的に歯切れの悪い展開が進むので、ヒリヒリしたサスペンスにはなってませんでしたね。
真実に基づくためにこうした内容にしたんでしょうけど、もっと三つ巴のドロドロした主導権争いの方が面白かったんじゃないでしょうか。
誰もが欲に溺れ、血で血を洗う本当のサバイバルサスペンス、みたいな。
とはいえ、旬の女優3人のアンサンブルは貴重ですし、すっぽんぽんのジュード・ロウ(ぼかし入り)まで見れますからw
あとはわ~おな部分も一応ね、こういう島で暮らすってことは、まぁ、ほら、開放的になるわけですからw
でも、ちょっと程度ですよ?w
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

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