モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「俺ではない炎上」感想ネタバレあり解説 「俺は悪くない」とか思ってません?

俺ではない炎上

今や日常生活において切手も切り離せない「SNS」。

僕自身もX(旧Twitter)を見まくったり書きまくったりして過ごしているほど身近なコミュニケーションツールとして利用していますが、本当に下手なこと書いて「炎上」しやしないかヒヤヒヤすることもしばしば。

 

映画の感想一つにおいても、文脈を理解せず曲解して解釈して拡散し攻撃する、またはされてる方をちょくちょく見かけることもあり、一見楽しそうに見えるX界隈は、ここ数年殺伐としてますw

 

特に映画垢界隈は、マウントおじさんによる被害報告をはじめ、劇場マナー問題から公開前のネタバレや低評価の発信など、なにかとモラル的な件でバチバチやりあってる様子が窺えます。

 

とりあえず、燃えたら沈下するまで我慢することですかねw

基本1週間で消えるかと…。

 

さて、今回鑑賞する映画は、そんな我々も対岸の火事では済まない「SNSの炎上」がテーマの逃亡劇。

身に覚えのない投稿が炎上し生活を一変される男が、どうやって切り抜けるのか、そして仕掛けた犯人は誰なのか。

シリアスなのかコメディなのかふたを開けてみないとわかりませんが、楽しみです。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

映画化もされた「六人の噓つきな大学生」などを手掛ける浅倉秋成の同名小説で、第36回山本周五郎賞候補にもなった話題作を、2020年に映画『AWAKE』で商業映画デビューを果たした山田篤宏が実写映画化。

 

ある日突然SNS上で、身に覚えのない女子大生殺人事件の犯人に仕立て上げられた主人公が逃亡する姿を、社会問題にまで発展したSNSによる炎上をテーマに、必死に逃げる様をユーモラスに映しながら、あらゆる仕掛けを盛り込んでエンタテイメントに仕上げたサスペンスミステリー。

 

監督の山田篤弘は、棋士という夢に破れた主人公が別の姿で復活を遂げる姿を、スタイリッシュな現代的映像で泥臭くも眩しい青春映画に仕上げた「AWAKE」で脚光を浴びた人物。

大学を中退してまでアメリカで映画を学んだ彼が、本作でどんなエンタテイメントを発揮するか期待だ。

 

悲劇の主人公・山縣を演じるのは阿部寛。

2025年は「ショウタイムセブン」、「キャンドルスティック」と映画への出演が目立つ阿部。

ネット黎明期のようなデザインが話題の彼の公式ホームページが「HTTPS化」したことでネット界隈がざわついたのが記憶に新しいが、やはり本人自身SNSをやらないことから「もし自分の身にこんなことが起きたら」という気持ちで臨んだそう。

 

他にも「はたらく細胞」の芦田愛菜、「大きな玉ねぎの下で」の藤原大祐、「室町無頼」の長尾謙杜、「沈黙の艦隊」の夏川結衣などが出演する。

 

バイトテロ、私人逮捕、なりすましにデマ、デジタルタトゥーにキャンセルカルチャー。

もしかしたら自分の身に起きるかもしれない物語が、ここにある。

 

 

 

あらすじ

 

大手ハウスメーカーに務める山縣泰介(阿部寛)は、ある日突然、彼のものと思われるSNSアカウントから女子大生の遺体画像が拡散され、殺人犯に仕立て上げられる。

家族も仕事も大切にしてきた彼にとって身に覚えのない事態に無実を訴えるも、瞬く間にネットは燃え上がり、“炎上”状態に。

匿名の群衆がこぞって個人情報を特定し日本中から追いかけ回されることになる。

 

そこに彼を追う謎の大学生・サクラ(芦田愛菜)、大学生インフルエンサー・初羽馬(藤原大祐)、取引先企業の若手社員・青江(長尾謙杜)、泰介の妻・芙由子(夏川結衣)といった様々な人物が絡み合い、事態は予測不能な展開に。

 

無実を証明するため、そして真犯人を見つけるため、決死の逃亡劇が始まる――。

やがて明らかになる#ネタバレ厳禁な衝撃の真実。

その“真実”はあなたの目で確認してほしい――(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

感想

見事に叙述トリックにやられましたw

己の正義が暴走して袋叩きにするネットユーザーに見てほしい「道徳」映画であると共に、「逃亡者」のようなサスペンスにもなっていて楽しい。

今ほんとSNS界隈がおかしいよね。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

この手の映画がどんどん増えてる。

ここ数年X(旧Twitter)を中心にしばしば見かける「袋叩き」。

ポスト(ツイート)した者に異を唱え、それに同調して各々が「正しさ」を突きつける。

もしそれが間違いだったとしても、彼らは決して「謝ること」をしない。

 

台本があることなんてちょっと考えればわかるのに、リアリティショーでの行動に怒りが沸き、ネットで一斉攻撃をして自殺してしまった人を、みんなは覚えてるだろうか。

あれはホント酷かった。

諸悪の根源はどこなのか、文句言った奴謝れ、そんなことはどうでもいい。

 

拡散したらどうなるか、「己の正しさ」で攻撃したらどうなるか、束になったら言われた側はどんな気持ちになるか。

 

起きてからでは遅いということを肝に銘じてSNSで発言するべきだと思うんです。

ちょっと想像すれば、パッと思ったことをそのまま書く衝動をグッと我慢すれば、それだけでいいはず。

 

つい先日もお笑い芸人が女性にいやがらせをしていた旨のニュースがありました。

本人曰く「アカウントを乗っ取られた」と。

でも、SNSの人たちは見た目や信ぴょう性の低い過去の情報だけを鵜呑みにして「嘘をついてる」だの「最低だ」だの、彼の言うことを誰も信用しない。

 

ようやく「アカウントを乗っ取った人が逮捕」された報道がされ、インフルエンサーがSNS上で謝罪するなどして収束に向かいました。

もし仮に、リアリティショーの時のように心に深い傷を負って命を絶ってしまったら、その責任は誰が取るのか。

 

今や私人逮捕YouTuberやら暴露系告発系アカウントなど、薄っぺらい正義で人を裁こうとするしょうもない連中が横行してますが、やる方ものぞく方もそんなことしてねえで自分の事にもっと時間を注げば?と思えて仕方ありません。

 

たださ、ついつい俺もその辺が制御できない時があるわけよ。

TLに流れてきたモノを瞬時に信じたり鵜呑みにして拡散してしまったり、真実がまだ定かではないのに、一方的に先入観で決めつけてクソみたいな「正義」を発動してしまう。

痴漢したヤツをひたすら撮影して追いかけ捕まえる動画を、ついつい見てしまう。

 

色んな情報をひとつずつ把握してTLを見てる人なんてそこまでいません。

流し見して面白そうなトピックがあったら、そのノリでサクッと書いてしまったり拡散してしまったりする。

 

そう、考えることなく手軽に「正しいこと」が出来てしまうことが危うい。

それをしたことで、日常生活で溜まった怒りを発散できてしまう。

 

日々の生活に追われ、考える事すらストレスになりがちな昨今、どうしたって止めることは難しいわけです。

だからこそ、本作を見て肝に銘じてほしいと自分は思ったのです。

 

クスッと笑えてグサッと刺さる。

とまぁ、いきなり説教臭い話から入りましたが、本作は自分のSNSライフを改める必要性があることを思い知らされることはもちろん、エンタメとしても普通に楽しい逃走劇でございました。

 

まず本作の主人公を阿部寛が演じてることがナイスキャスティング。

彼はハウスメーカーに勤めるやり手の中間管理職なんです。

 

人望も厚く、自分にも他人にも厳しい一面がある、なかなかそうはいない立派な中年サラリーマン。

無駄なことを嫌がり効率的に物事を進め、他人からの指摘を素直に受け取ろうとしない現代の若者に苦悩して、つい愚痴をこぼしてしまう一面がありながらも、それでも仕事はちゃんとしようと言える「正しい」大人。

 

そんな彼がいつ作られたかもわからないSNSのアカウントを乗っ取られ、殺人犯に仕立て上げられてしまうわけです。

ネットリテラシーのかけらもないですし、炎上したらどうなるかの想像力もない。

そんな彼が渦中の人物になってやった対処は、「そんなのデマです信じないでください」、「俺は悪くない」から放っておけばいいと。

 

しかし彼の予想はすぐさま覆り、会社からは早退を命じられ、自宅にも帰れずとどんどん悪い方に事は進み、結果的に「逃亡」せざるを得ない状況に追い込まれるのです。

 

 

例えば「結婚できない男」や「アットホームダッド」の時の様な、お高く留まった中年男のひねくれっぷりや、濃くてイカつい顔の男が不器用ながらも家事に奮闘するギャップを笑いに変えてくれるのが阿部ちゃんの素晴らしい所だと思うんですが、本作もその例に倣った「ギャップ」による笑いが多々あったように思えます。

 

まず「俺は悪くない」って思ってるところが、SNSを頻繁に利用する我々からすると見ていて楽しいわけです。

そもそもなりすましによる行き過ぎたイタズラ被害に遭ってるわけですから、まずは警察に相談すればいいんですけど、どうせすぐ収まる程度の認識のせいで悪い方に進んでしまうのが見ていて面白いわけです。

 

もうSNSって、真冬の枯れ葉並みに火の移りが早いですから、一人でどうこうできる問題じゃないのに、やることは放置!家族や同僚は信じてくれるといった他人任せ!そして挙句の果てには逃げる!という、普段SNSをやってない人がやってしまう典型的な行動パターンなわけです。

 

マスコミもプライバシーを考慮してSNSで特定されている阿部ちゃんの名前は伏せているモノの、それを見た警察もハナから鵜呑みにして捜査するというしょうもなさ。

現場の刑事も、「初動捜査が悪い」だの「自宅に行って確保しなかった交番勤務の連中が悪い」だの愚痴をこぼす始末。

 

阿部ちゃんも車で逃げるけど、国民のほとんどが持っているスマホという監視カメラを全く意識してないせいで、どこへ行っても写真を撮られてしまう始末。

 

とにかく阿部ちゃんが焦っては逃げ、戸惑っては逃げのオンパレードなのが楽しいのです。

 

車で逃げればNシステムで逃走経路がバレてしまうので、阿部ちゃんはたまたま車に積んであったゴルフバッグの中からウェアに着替えて逃走。

中年のおっさんが徒歩で遠くまで逃げれるわけもないだろう、そう踏んでいた警察でしたが、なんと彼の趣味はマラソン!!!

週二日1時間10キロを走りこなせる体力を持っており、1日で30キロ近く走ってしまうのでありますww

 

さすがに笑ってしまいました。

自分もジムで走ることがありまして、1時間10キロもしくは50分で10キロは走れる体力はあるものの、終わった後の疲労感は尋常でなく、その後何もできないくらいなんですよ。

でも映画の中の阿部ちゃんはそこからさらに走って逃げて隠れてと、心も体も休めるどころではいわけです。

それを幾度も危機を乗り越えて逃げてしまうから笑ってしまうw

 

 

道中スナックに隠れることに成功したり、私人逮捕系YouTuberに追われたりしますが、何とか部下の家に到着。

自分宛てに届いた謎の手紙に書いてある暗号を解くため、スマホを貸してもらおうとお願いしますが、ここでとんでもないことを突き付けられます。

 

自分には人望もあり友好関係もちゃんとあるモノだと思っていましたが、部下からすれば「顔は怖いしいちいち指摘するしでマジ無理」というものw

仕事も圧かけてくるし、休日のゴルフも断れなかったと告白され、阿部ちゃんはひどく落ち込みます。

 

ここから阿部ちゃん、「俺は悪くない」と思っていた強気な姿勢が大きく変化していくのであります。

 

やっぱり、自分はこう見られてるって思いこむのやめたほうがいいですよね。

僕自身、文章は大した事書けないけど喋りだったら「俺って面白い」とか根っこの部分で思ってる節があるんですよw

だから本作を見て、「自分は他人にどう思われてるか」、「自信過剰にならないように心がけること」を意識した方が良いなと。

 

叙述トリックがお見事

結局阿部ちゃんは、工務店のショールームに避難しようとしますが、監視カメラを逃れるために崖から中に入ろうと試みます。

しかしあまりの高さに呆然、衣服をロープ代わりに木に縛り付け降りようとしますが、服が見事に破れ落下。

マラソンで鍛えた肉体だけあって、見映えのするシーンでしたが恥ずかしいシーンでしたw

 

さっきから阿部ちゃんの言葉明かり書いてますが、本作の面白い所は何も阿部ちゃんの行動だけではありません。

ちゃんと物語も面白いのです。

 

逃げる阿部ちゃん以外にも、実家に逃げている彼の奥さん、阿部ちゃんを執拗に追う素性のわからない女子大生と、なりすましツイートを拡散させたインフルエンサーのペア、そして自宅で犯人を捜す阿部ちゃんの娘と同級生のエピソードがあります。

 

もちろん犯人は山縣ではないのは周知の事実。

しかし素性の分からない女性大生はカバンに包丁を忍ばせており、殺された女子大生の敵を討とうとしてるのではないかと推測できますし、実家で取り調べを受けている奥さんは旦那の事をあまりよく思ってないことばかり話し出します。

 

一方娘はというと、父に内緒でSNSを通じて知らない20代男性と出会おうとしたことがありました。

会うことはできなかったけれど、それもそのはず、会おうとしていた相手は犯罪者だったことが明かされます。

それが原因で娘は反省の意味を込めて物置に閉じ込められてしまったことを、同級生に話します。

 

同級生のお父さんは警察官だそうで、親父譲りの正義感で、ネットで犯人探しに勤しみます。

 

こうしたエピソードから犯人は一体誰なのかを探りながら逃げる阿部ちゃんを堪能する物語なのです。

 

そして、問題のツイートに書かれた「からにえなくさ」という意味不明な文を理解した阿部ちゃん。

それは、かつて家族で見つけた「私有地」だったことが明らかに。

立ち入り禁止の看板が痛んで文字のほとんどが消えてしまったことで、娘はそう読んだことから家族の中での「暗号」になっていたんですね。

 

その場所へ行った阿部ちゃんは、置いてあった手紙を読んで全ての根源は自分にある事に気付き、全ての責任を取って自殺を図ろうとします。

 

するとそこへ素性の分からない女子大生が到着。

ガスの元栓を緩めて火をつけようとした山縣に向かって「お父さん!」と叫んで助け出します。

 

ん?お父さん?

 

はて、自宅で同級生と一緒にネットで犯人探しをしてるのは、山縣の娘なのでは…?

あ、お姉ちゃんか!

違うんです、なんと娘と同級生のエピソードは10年前の話だったんですね~。

 

これは見事に騙されましたw

実家には奥さんがいて、なぜ娘は自宅にいるのか正直よくわからなかったけど、とりあえず無事ならいいか程度で意識してなかったんですけど、まさかそれが過去の話だとは思わなかったですよ。

 

ネットで人と会うことを禁じられた娘は、ネットの良さを父に知ってもらうために勝手にお父さんのSNSアカウントを開設。

同級生だった男の子「えばたん」は、その存在も山縣が娘にした仕打ちも、さらには「からにえなくさ」という家族しか知らない暗号も知っていたわけです。

 

えばたんは自らの正義を行使すべく、山縣に面と向かって指摘しようとしますが、あのツラにデカい図体に向かって言えるわけもなく。

その悔しさと怒りから、ずっと山縣を憎んでいたわけです。

 

さらに時間は進み、えばたんは山縣が務めるハウスメーカーの取引先の工務店に務めており、ここで会ったが10年目ということになったわけ。

 

 

最後に

こういう騙しがあることで気持ちよく見終えることができる本作。

正直映画的なルックは何一つないし、いちいち羅列されたツイートの数々をボイスチェンジャーで加工して読ませるといった優しすぎる演出がいちいち気に食わないですが、誰でも楽しめるし考えさせられる、万人受けされそうな映画だったと思います。

 

特に刺さるのは、「俺は悪くない」という言葉。

なぜ自分は悪くないと言い切れるのか、それは単なる「逃げ」ではないのか。

相手を思いやる気持ちと想像力があれば、ネットリテラシーなんてなくてもこうした炎上を防ぐことはできるし、実生活の関係性も良好にできるはず。

 

優越感に浸って他人の気持ちを蔑ろにしてしまっていた登場人物を見て、自分を戒める気持ちになりますし、ちょっとだけ襟を正そうと思える内容とも言えるでしょう。

僕自身も良い歳になって心が頑固になりがち。

だからこそ、もしかしたら自分が悪かったかもしれないと謙虚な姿勢を保つ必要があるなぁと本作を見て感じました。

 

様々な点が重なって起きてしまった炎上事件。

もし自分の身に起きてしまったら、どう行動するべきかもシミュレーションできる映画だったのではないでしょうか。

さすがに乗っ取られたら運営元に連絡しましょう。

誹謗中傷を受けたら警察に連絡しましょう。

自分ではそう簡単に解決できないし、沈火するのを待っていたら遅いかもしれません。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10