モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

Netflix映画「ベルベットバズソー」感想ネタバレあり解説 アートで金儲けしてる奴らに制裁を!

ベルベット・バズソー~血塗られたギャラリー~

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以前、人間は絵に興味を持つか音楽に興味を持つかで分かれる、なんて話を聞いたことがあります。

どっちもって人もたくさんいるんでしょうけど、趣味としてどっちをやるかに分かれるんですって。

 

そんなアートや芸術に関しては全く疎く、音楽に没頭していたモンキーです。

展示会とかほぼ行かないですし、美術に関しても知識がない。

そんなオレにアートを扱った映画が理解できるのか。

 

まぁなんでこの映画チェックしてたかって、ジェイク・ギレンホール主演てのもそうだけど、タッグを組んだ監督が「ナイトクローラー」のダン・ギルロイってことで。

 

ナイトクローラー(字幕版)

ナイトクローラー(字幕版)

  • ジェイク・ギレンホール
Amazon

 

 ムチャクチャ頭の切れる男がジャーナリストとしてのし上がっていく姿を、昨今のジャーナリズムや報道での行き過ぎた部分を風刺的に描き、スリラーテイストで仕上げた良作だったんですが、今回その二人が「アートギャラリー」を舞台に、一体どんな映画を作ったのか楽しみですということで。

 

早速自宅にて鑑賞いたしました!!

 

作品情報

ボーン・レガシー」や「キングコング/髑髏島の巨神」の脚本で知られ、刺激的なスクープを求めるあまりモラルを逸脱していく、フリーランスのカメラマンの姿を描いた「ナイトクローラー」で監督デビューしたダン・ギルロイ。

そしてその映画に主演したジェイク・グレンホールが再びタッグを組んで製作した映画を、ストリーミングサービスNetflixによって配信される。

 

大金を稼ぐアーティストとメガコレクター。アートとビジネスが絡んんでいくにつれとてつもない代償を払う羽目になっていく姿を、「ナイトクローラー」同様に皮肉な風刺を用いてホラーチックに描く。

 

 

 

 

あらすじ

 

ロサンゼルスのアート業界。

画廊の商売人たちは如何にして絵を高く売りつけるかということばかり考えていた。

 

そんな彼/彼女らにとって、絵の価値が分からないのに良い絵を買おうとする金持ちはカモでしかなかった。

商売人たちはスノッブを上客として扱いつつも、心の底では軽蔑していたのである。

 

ジョセフィーナ(ゾウイ・アシュトン)はそんな世界に飛び込んだばかりであった。

 

ある日、ジョセフィーナは偶然にも素晴らしい絵の数々を発見した。

それは同じアパートに住んでいた老人が描き残したもので、極めて不気味な作品ではあったが、傑作の風格がそこにはあった。

 

その話を聞いたモーフ(ジェイク・ギレンホール)とロードラ(レネ・ルッソ)はジョセフィーナを出し抜き、老人の絵画を高値で売り出すことにした。

 

老人は亡くなる間際に「自分の死後、描いた作品は全て廃棄して欲しい」と言い残していたが、利益に目がくらんだ2人は遺言を無視した。

絵画の素晴らしさはSNSを通して世界中に発信されていった。

 

ところが、2人の周辺で怪現象が頻発するようになった。

事態を重く見たモーフは絵画を処分しようとしたが、時既に遅かった。(wikipediaより抜粋)

 

youtu.be

 

 

監督

今作を手がけるのはダン・ギルロイ。

 

冒頭でも書きましたが、「ナイトクローラー」で監督デビューしたお方。

それまでは「落ちた天使」や「落下の王国」といった作品の脚本家として著名な方でございます。

 

ギルロイと聞いてあれ?と思った方は大正解。

お兄ちゃんはジェイソンボーンシリーズの脚本や、あの「ローグ・ワン」で退屈だった前半から再撮影し、後半がらりと楽しい作品へと昇華した手腕を絶賛されたトニー・ギルロイです。

 

監督これが2作目、なんて思った人も多いかと思いますが、実はこれ3作目。

人権派の弁護士が資金調達に奔走し、自分の信念を試されていく、デンゼル・ワシントン主演のドラマ「ローマンという名の男~信念の行方~」が前作なんですね。

 

 

 これデンゼルワシントンがアカデミー賞主演男優賞にノミネートした作品なんですけど、見事にDVDスルー。

デンゼルといえば、その前の「フェンス」も劇場公開しなかったですよねぇ。

日本に嫌われてるのか?

配給会社は頑張って上映してほしいものです。

事情はあるんでしょうけど。

 

というか、ナイトクローラー以外監督作品は劇場にかかっていないんですよね、日本では。

今後も配信映画に尽力するのでしょうか。

 

 

 

キャスト

アートディーラーのモーフを演じるのは、ジェイク・ギレンホール。

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「ナイトクローラー」では、ガチムチの体をできるだけ絞ったことで、ボディはひょろひょろ、目はギョロ目という、まさに不摂生でカタブツで何かに取り付かれたようなキャラへと変化をし話題となったんですが、今回は一体どんな役作りをしたのでしょうか。

 

見るところヘアースタイルがマッシュルームに黒縁めがね。

いかにもアートに詳しい雰囲気の姿ですね。

やっぱサスーンカットなのか?

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

www.monkey1119.com

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

その他のキャストはこんな感じ。

モーフと組んでディーラーをしているロードラ・ヘイズ役に、「ナイトクローラー」、「マイティ・ソー」に出演し、監督の奥さんでもあるレネ・ルッソ。

グレッチェン役に、「500ページの夢の束」、「ヘレディタリー/継承」のトニ・コレット。

新人ディーラー・ジョセフィーナ役に、 「ノクターナル・アニマルズ」のゾウイ・シュトン。

ジョン・ドンドン役に、「パイレーツ・ロック」、「メアリーの総て」のトム・スターリッジ

ココ役に、Netflixドラマ「ストレンジャー・シングス」のナンシー役でおなじみ、ナタリア・ダイアー

そしてピアース役に、「マルコヴィッチの穴」、「マイル22」のジョン・マルコヴィッチなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

予告見る限り結構怖そうなんですが、ジェイクが驚いたときの顔で笑っちゃうんですけどw

まぁいいや、アートの見る目もない拝金主義のディーラーに一体どんな罰が下るのか。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

俺もそのうちに映画に殺されるのか?

現代アートを食い物にする画商たちが恐怖に染まるアートホラーでした。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品の価値とは。

LAの現代アートを富裕層に高値で売りつけることを商売とする画商たちが、無名作家の作品を展示販売していくうちに、その作品の呪いによって恐怖の沙汰に追い込まれていく姿を、資本主義によってただただ消費されるだけのアートに対して、また一つの批評によって作品の価値を左右させてしまう批評家たちに対して、皮肉と警鐘を鳴らした強いメッセージ性の作品であると共に、渦中の人物たちが救いようもなくアートに殺されていく様をスタンダードなホラーテイストで描くことによって娯楽性を高めた、監督の作家性が秀でた作品でございました。

 

最近東京都内の壁に落書きされたアートが、街の片隅の壁に社会風刺的なグラフィックアートをゲリラ的に書くことで世界的に有名な覆面芸術家・バンクシーのものかもしれないと話題になりました。

そんな彼の作品がオークションに出品され、落札された瞬間、内部に装置されたシュレッダーが自動的に動き出し裁断されてしまうというニュースがありましたよね。

www.huffingtonpost.jp

バンクシーはオークション自体を嫌っており、挑発でこういうパフォーマンスをしたそうです。

いつからか現代アートはアーティスト至上主義から、金持ちが金を落とすことで資本主義による経済へと発展していき、一つのビジネスと化してしまっているそうで。

 

そこに群がるのが、アーティストと顧客を仲介し、作品に付加価値をつけ売りつける画商たちや、作品を自身の観点で批評し価値をつける批評家たちなのであります。

 

今作はそんな現代アートを描き続ける作り手の懐に入って金をちらつかせ価値そのものの基準を崩壊し、それを巧みな戦術で高く売りつけたり、言葉一つで0にも100にもさせてしまう批評家たちへ一杯食わせてやろうといった、監督独自の皮肉たっぷりの映画になっておりました。

 

作品の価値は誰が決めるのか。

そもそも価値とは、その商品に対して提示された額以上の価値があると判断した時に価値が決まり、買い手はお金を出すことで、商売が成立するわけです。

だから本当ならアーティストと買い手が直接値段交渉して成立するのが一番いいことだと思うのですが、アーティストが単独で作品を売るのに、宣伝しなければ世に広まらない。

その間に宣伝してくれる人が立てば、売買はより発展する可能性がある。その代わり仲介料をいただきますよ。

うん、段々ビジネスになってきた。

気が付けばその仲介人によって「付加価値」という名の単なる値段のつりあげによって作品の価値は徐々に高騰し、ビジネスが拡大していく。

観てください、彼、今後絶対アーティストとして名が売れます、この画この値段で買っとけば、あとで付加価値が付きますよ!

みたいな感じで、富裕層はドンドン金をつぎ込んでいく。

いつしか、作品は金額の高さが評価の基準になってきている。

高いものが良いもの、優れたもの。

果たして本当にそうなんだろうか、ってところがこの映画の言いたいことの一つだったのではないでしょうか。

 

 

批評することとは。

これを観た僕の感想としては他人事ではないなぁ、ということ

現にこうしてこの映画の感想を書き、満足度という作品への評価を数値化してネット上にアップしているわけですが、嬉しいことに検索で上位にあがることが多くたくさんの方に触れていただいている、その広告収入で懐が温まっているわけで、それを読んだ人たちに僕の作品の評価を植え付けてしまっていることも事実であり、それによって興行を左右させてしまっている身分、かもしれないということです。(うぬぼれんなw)

 

 

これってモーフのやってる事と同じではないか?と。

彼は批評家として名の知れた存在であり、彼が高い評価をつければ作品の価値は上がるし、彼が価値が無いと酷評すればその作品を作ったアーティストは作家生活をもしかしたら絶たれるくらい業界から干される可能性だってある。

もちろん僕はモーフのような名の知れた存在ではないし、影響力だってないです。そもそも批評家ではないし。

しかしやってることは力の差は歴然であれ、同じではないかと。

勝手に鑑賞し勝手にあれこれ言って作り手の気持ちを無視し、酷評することもあります(最近はあまりしてないけど)。

その感想を読んだ人が、どう判断するかはその人次第ですが、それによって見に行かないという選択肢を取った人が大勢いたら、そのせいで興行が失敗したら、と考えると、僕は映画に殺されても仕方ないなと。

 

とまぁ、料理にしろアートにしろ、音楽にしろ、名だたる批評家の言葉一つで、作り手の人生は決まってしまう、なんてのは大げさかもしれないけど、この映画では実際モーフの批評によって、買い手が離れお蔵入りしてしまう人もいたり、彼が相手に対する気持ちひとつで、天にも地にも行かせることができる事を伝えています。

 

はっきり言って、批評家なんてジンベエザメの下でうようよ泳いでいるコバンザメと何ら変わりありません。

作品や作り手が無ければ食っていけないわけですから。

あくまで立場が上なのは作品であり作り手であって、その立場が逆転してはいけないのです。

劇中ではモーフに良い批評お願いね、なんておねだりしている人が多々見受けられますが、もう逆転していますよね。

こんな市場であってはいけないわけです。

謙虚な姿勢で作品を評価したり批評する。もちろん愛をもって。

僕も肝に銘じたいと思います。

 

登場人物の立ち位置。

なんか、いつものようなテイストで書けてないのが、自分でも気持ち悪いんですがw

登場人物をよくよく見てみると、色々面白いなぁと感じた今作。

 

モーフは上でも書いた通り、僕の言葉一つでアートの価値が決まると思い込んでる、

インテリ前髪ぱっつんメガネマッチョなんですが、ちょっとオネエ入ってましたよね。

彼バイセクシャルだったんですね~。アート業界然りファッション業界然りこういう方が多いんだなぁってのは色んな映画見て思いましたが、今作ではモーフがそういう持ち回りだったようで。

 

そしてロドラ。彼女かつてアート集団「ベルベット・バズソー」に在籍してたみたいなセリフありましたけど、あくまでスタンスはパンクであり初期衝動でアートを描いていたようで、結果夢破れて画商の道で食っていこうと決めたみたいな過去がある人物として描かれています。

どこもかしこも弱肉強食と悟ったことが、この業界で生きていく決め手だったんでしょう。

現に彼女は色々アーティストを口説いて他のギャラリーから出し抜こうとあれこれ策を練っているのが見て取れます。

 

そしてジョセフィーナ。

この業界でのし上がっていこうと頑張っている彼女。

彼女によって、無名作家ディーズの作品が発掘され、その恐怖が広がっていくわけですが、当初はそれを自分の手柄にしようとしていたんですよね。でもロドラに手柄を取られ、その代わりマージンをもらうことで優雅な生活を手に入れていく。

しかしそんな彼女もあの絵画に襲われていく羽目になっていくんですが。

こいつ劇中で3人も恋人変えてるんですよね。

しかも、めちゃんこ被害者ヅラしてて、恋人が浮気した➡モーフに慰めてもらう➡元カレの個展ボロクソ書いてとモーフに頼む➡そのせいでモーフちょっとへこむ➡あなたに魅力感じなくなった➡別れて別のアーティストと付き合う

とまぁこんな具合でコロコロ変えるんですけど、自分を高尚な人間と思いこんでる節があるのか、それとも恋人を自分の所有物と思ってるのか、はたまた恋人は自分にふさわしい才能あふれた人物でないとダメとか、要はビッチだろこいつ!と非常に嫌いなキャラでしたね。

こんな女に近づいてはいけません。はい。

 

お次はココちゃん。

はい、ストレンジャーシングスで大活躍中の彼女もとうとう映画に進出。

今回も髪降ろしてアラレちゃんメガネかけて、あ~かわいい。

ココは最初ヘイズギャラリー(ロドラが経営するアートギャラリー)にいましたが、ロドラにボロカス言われて、商売敵のジョンがいるアートギャラリーへ転職、めちゃめちゃロドラの事リークしてます。

そして次は美術館のキュレーターからアートアドバイザーに転職したグレッチェンのアシスタントに付き、最後はモーフのお手伝い。

彼女最初から最後までリークするのと、死体を発見する役柄なんですよね。

ジョセフィーヌに恋人が浮気してることを教える➡ロドラに怒られジョンとこへ転職➡ロドラの情報リーク➡ジョンの死体発見できゃああ~~っ!!➡グレッチェンのアシスタントに写る➡グレッチェンの死体発見できゃあああ~~っ!!➡モーフの手伝い➡モーフにロドラの情報リーク➡モーフの死体見つけてきゃあああ~~っ!!➡田舎へ帰るw

あこいつ出てきたってことは寝返って色々バラすんだろうな、って途中からパターン読めてきてさすがに笑っちゃいましたw

田舎に帰りたくなくて彼女なりに必死にしがみ付いたけど、伝手を無くしたことで結局ロスから離れるというちょっと寂しい役柄でした。

可愛いから許す。(ジョセフィーヌとえらい違いw)

 

グレッチェンは、まず恰好がロスの現代アート業界で活躍してますって匂いがプンプンしてます。

いかにもな服装にいかにもな髪型、流行ちゃんと取り入れてますみたいなのが既に監督の皮肉に見えます。

本当にアート分かってる?みたいな感じ。

そんな彼女は美術館のキュレーターが安月給なのか知らんけど、アートアドバイザーとして独立します。するとすごく態度が変わるんですよね。

横柄というか傲慢というか。やっぱパトロンの存在がそうさせたのか。

もちろん彼女の言動にモーフはブチ切れ。

ディーズの作品をロドラから借りて古巣の美術館で超強引に展示会をやるよう要請。

はい、もちろんこんな女性もアートの呪いによる制裁が行われます。

 

最後にピアース。

劇中の中で一番の巨匠なんですが、画商につられて複製を作って売ろうと。その間新作創作に励もうとしているようで。

あれですな、アンディ・ウォーホルみたいなことやろうと。ちとちがうか。

田舎にファクトリー作って複製を作っている傍ら新作製作に打ち込んでるんですが、完全に創作意欲が沸いていません。

恐らくディーズのすごい画を見てしまったことで、自分を信じられなくなってしまっているのか、それとも限界に達したのか。

僕は恐らく複製して売ってる事への罪悪感からきてるのかなと。

 

まぁこんな具合に登場人物の欲が渦巻いた作品としても楽しく鑑賞できるのかなと。

 

 

最後に

「ナイトクローラー」が不気味で胸くそ悪かったのに対し、今作はアートで金儲けする人たちが殺されていくという一種の復讐が成立しているせいで、そこまでの胸くそ悪さは感じませんし、その殺され方も意外性があまりなく、ホラーとして見るとパンチはだいぶ弱いです。

ただ監督はこの映画を通じて、お金がお金を生み市場をどんどん大きくしてしまうことで制作者へのリスペクトが無いまま商品が売買されてしまう現代アートに問題提起していることは容易です。

こんなこと続けるとバンクシーにまたシュレッダーかけられちゃうぞ!

ただまぁあれだよなぁ、これ売る方が罰せられて、買う方が罰せられないのはいいのか?

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10