EXIT(イグジット)
今や「EXIT」といえば、ピンク色のヘアーでチャラさ満点の細身と、やたらでかい顔を髪型とヒゲで何とかごまかしてる男二人が、やたらとチャラいネタで大人気の渋谷系イケメン漫才師をすぐ連想させますよね。
しかし今回僕が言ってる「EXIT」は、韓国映画のこと。
今月の新作映画の中で、まず見ないだろうな、とリストから外していたんですが、劇場で予告を見たときになんて面白そうなんだ!となりまして。
韓国映画のエンタメ系って、すごくわかりやすい構成でできてるんですよね。
悪い言い方になっちゃいますけど、予告を見た時点で大方の予想がつくw
だからある意味安心して観られるって利点はあります。
加えて、アクションありスリルあり恋愛ありドラマありと、あらゆるジャンルを網羅しているのに、全然ごちゃごちゃしていない。
また。大がかりなロケーション撮影を兼ねての大迫力溢れる展開も、拍車をかける面白さに直結しているのが魅力の一つですよね。
そんなゴリゴリエンタメ系の韓国映画であろう今作。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
公開する前から大規模な試写会を行い、それを見た観客のSNSでの口コミによって、あの「ライオンキング」を抑え、韓国映画興行ランキングで初登場1位を記録。
しかも2019年9月の時点で940万人を動員するという特大ヒットを記録している本作が、ついに日本で公開。
上昇してくる有毒ガスから逃れるために、元山岳部の経験を活かし、地上数百メートルの高さのある超高層ビル群の屋上を上り続けるという、超サバイバル映画。
サバイバルパニックを多くの人々が行きかう都市部を舞台にして描く大胆な設定と、いくつものツールを多様的に利用することで現代的で斬新な取り入れ、そして根っこにあるのは男と女が共に助け合いピンチを斬りぬけるという古典的な物語の構成。
今作が長編映画デビューとは思えないセンスで、観る者を圧倒することは間違いないだろう。
二人の命がけの脱出劇。
果たして出口はあるのか!!
あらすじ
韓国のある都心部、突如原因不明の有毒ガスが蔓延しはじめる。道行く人たちが次々に倒れ、パニックに陥る街——。
そんな緊急事態になっているとも知らず、70歳になる母親の古希のお祝いをする会場では、無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)が、大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていた。
しかし、上昇してくる有毒ガスの危険が彼らにも徐々に迫ってくる。
ガスに触れてしまった姉と両親・親戚たちは、なんとか救助のヘリコプターで運ばれたが、取り残されたヨンナムとウィジュ。
彼らの手元にあるのは、ロープとチョークと山岳部で鍛えた知恵と体力。
地上数百メートルの高層ビル群を命綱なしで登り、跳び、走る出口は町の一番高い高層ビルよりも上!
絶体絶命の中、決死の緊急脱出がはじまる! (HPより抜粋)
監督
今作を手掛けるのは、イ・サングン。
これまで多数の短編映画を手掛けたり、「史上最強スパイ Mr.タチマワリ」の助監督などを経験してきた監督。
どんな人間でも必ずひとつはスキルを持っており、それが危機的状況の時に発揮されたら絶対面白いだろう、という発想から今作は誕生したそう。
また、今作は普通の災害パニック映画のそれとは違い、夜中から朝方まで休む間もなく、一睡もすることなく逃げ続けなければならない状況を描くこと、これだけでも十分なエンタメ性が保てると思ったそうです。
意欲溢れる彼のインタビューはこちら。
キャスト
今作の主人公、ヨンナムを演じるのは、チョ・ジョンソク。
僕にとっての彼は、なんといっても韓国で大ヒットした映画「建築学概論」で、主人公の学生時代の親友を演じたのが、唯一の鑑賞作品。
確か主人公の恋の悩みをアドバイスするような立場だったと思うんですけど、お調子者感がすごく良くて、何度も笑った記憶が。
どうやらそれが映画初出演だそうで、それまではミュージカルで活躍してたんだそう。
だからこんなユニークなキャラを演じられるんですね。
今作の脚本を読んで「これだ!」と思った彼は、ロッククライミングやワイヤーアクションの練習をハードにこなし、本番に活かしたそう。
そうそう、これほとんどのアクションを演者がやってるみたいで、それがかなり効果をもたらしてるんだとか。
これが彼の代表作としてアップデ―トされればいいですね。
いやぁ~楽しみです。
他の出演者はこんな感じ。
ヨンナムの思い人で学生時代の後輩ウィジュ役に、「コンフィデンシャル/共助」、またアイドルグループ少女時代でも活躍中のユナ。
ヨンナムの母・ヒョノク役に、「グランプリ」、「グッドモーニング・プレジデント」に出演していたコ・ドゥシム。
ヨンナムの父・ジャンス役に、「怪しい彼女」、「執行者」のパク・インファン。
ヨンナムの姉・ジョンヒョン役に、「あなた、そこにいてくれますか」のキム・ジヨンなどが出演します。
得体のしれない有毒ガスに追われるのに加え、危険な高所を登るならければならないという2重構造なドキドキパニックアクションサバイバル。
こんなん絶対楽しそうじゃん。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
いやぁ~ドキドキした!!
朗らかなユーモア描写を挟むことで緩急つけたアイディア勝負の佳作!
もったいない部分もあるけど、デビュー作として上出来。
以下、核心に触れずネタバレします。
アイディアがすごくいい。
謎の有毒ガスが蔓延したことでビルに閉じ込められた主人公とヒロインが、家族を助けるため、そして自分たちも危機を脱出するために、唯一の特技であるフリークライミングと、それで培った知恵と経験を生かして決死のサバイバルを繰り広げる姿を、自身の哀しい状況や家族内での立場を目いっぱいのユーモアで朗らかにし、現実的に可能な道具でうまく危機を脱出する姿、手に汗握る演出を見事に表現することで、緊張と緩和を上手く融合し、最高のエンタメ映画に仕上げた佳作でございました。
恐るべし韓国映画。
ヨンナムの就職難と、全くいうことを聞かない寧ろこきつかわれまくりの立ち位置を、悲哀でなく笑いで緩やかに進めたかとおもえば、すぐ下ではとんでもねえバイオテロで街の人たちを混乱にさせ、どう考えても脱出不可能だろうという舞台を、序盤でたっぷり時間をかけて整える丁寧さがまずお上手。
その後ヨンナムが唯一得意とするクライミングで危機を回避する姿!
彼にはこれしか取柄がないということが既に情報で入ってるから、一見頼りなさそうな青年でも期待が持てる瞬間を惜しみなく描くことで、彼を一瞬でヒーローに仕立て上げる中盤の面白さ。
このクライミングでの緊張感は、明らかに無謀であるという周囲の怒号と罵声により、さらに緊張感を煽り、さらにはどうしても届かない距離にあるホールドに手をかけるために、ロープを外し体一つでジャンプしようとすることで、この時点で一番の山場を迎えるMAXの緊張感を味わえます。
しかも大学時代での回想で失敗した映像をダブらせることで、うわ!やっぱ無理か!?という思いをリードさせるんです。
これが見事にハマっていて、僕は鼓動が半端なかったです。
後半からは後輩でかつて告白に失敗したウィジュ(ユナマジでかわいいw)と、逃げ遅れたことで、夜のコンクリートジャングルを縦横無尽に逃げ回るというもの。
頼りない先輩だから、急に弱音はいたり途中でいなくなったりサポートする姿が不安になったりする部分もあるけど、彼は決してウィジュを置いて逃げたりしない男らしさもしっかり描かれており、逆にウィジュもクライミング経験者だから先輩が頼りない時はリードしますし、女性だから泣きだしたりする様も。
立場がうまい具合に逆になるのも効果的でしたし、かなり感情的になってるけど、それが状況のヤバさを際立たせている点でもありました。
今回非常に面白いなぁと思ったのは、有毒ガスを脅威にした点。
例えば台風ならクライミングどころじゃない。
例えば火災なら別の建物に逃げればいい。
例えば自身なら建物倒壊してるからそれどころじゃない。
じゃあ煙ならどうだろう、と。
煙は下から上へと上がっていくから、上に逃げないといけない。したがってフリークライミングで逃げるという設定にうまく機能していることが窺えます。
さらに風によって方向を変えたりするなどの行動パターンが読めないために、追われる側はあらゆることを想定して動かなければならないという思考力も備えなくてはならないなど、難易度の高い脅威なんですよね。
さらに面白いアイテムとしてドローン機を多用している点。
ガスが蔓延しているために現場へ急行できないTVクルーが、裏ルートで用意したドローン機を操る業者を要して独占映像を得ようとする件があります。
ヨンナムの父が神にもすがる思いで彼らにヨンナムを探してほしいとせっつき、彼らの現状を知るという流れなんですが、結果バッテリー切れにより途中で映像が途切れてしまうんだけど、それを見た国内の若者たちが自分のドローン機を飛ばして彼らが無事かどうかを知らせるという役割を担ってました。
さらにドローン機とうまくコミュニケーションを取り、向かいのビルのパイプ管にロープをひっかける作業を手伝わせるというアイディアまで披露。
いかにも現代的なやり方だったし、誰も助けられない状況の中で協力できるという点でも面白い場面でした。
他にも普通の呼吸で15分しか持たないガスマスクが公共施設にしか置いてないという制限でドキドキさせたり、焼き肉店においてある煙を吸ってくれる煙突が今回ばかりはバッドアイテムとして使われていたり、ミッションインポッシブルのイーサンハントと比べてしまうほどキレイに走る姿も印象的だったし、ヘリを呼ぶための救難信号のリズムが心地よいし、そんなときでもウィジュの体重を気にする件や、もっと高い場所にある企業で働くなどのユーモアを挟む優しさ、色々と彼らをピンチに追い込む場面や状況、どれもこれも素晴らしい出来だったと思います。
あくまで僕の経験談
実際僕もボルダリングをやったことがあるんですけど、すごく難しいんですよね。
チョークを手に付けて登るんですけど、かなりつけないと滑るんですよ、手に汗かいて。
序盤でもリードクライミングっていう、コースを見極めて登ることの大事さを伝えてるんですけど、体中筋肉使ってる最中に、頭も使ってコースを決めなくてはいけないっていうのがホント難しくて。
明らかに初心者だからか、翌日腕とか腰とか股関節とかとんでもなく筋肉痛でw
手が震えてるカットがありましたけど、そりゃあ震えるよなぁ、怖いし力使うしってことで、共感しましたw
インストラクターの見本を見せてもらったんですけど、すごく軽やかに登るんですよね。
もちろん経験者ですし、体の使い方もわかってるから柔軟にこなせるんでしょうけど、どうやら腕の力でなくて脚の力を上手く使うことが重要みたいで。
どうしても上に上る時って腕に頼りがちなんですよ。
だけど脚のバネを上手く使えばすいすい登れちゃうこともできるそうで。
劇中でも手の届かないところを足を曲げて届こうとするシーンなんかありましたけど、あれ初心者は何とか腕だけで行こうとしちゃうから、クリアできなかったりするんでんすよね。
ただ僕が経験しているのはボルダリングなので、彼らがやってるフリークライミングとは全然難易度が違うでしょう。
さらにサバイバルなわけですから。
こうすればもっと面白くなるのに
今回監督デビュー作ということでしたが、ホント良くできてました(上から目線ですいませんw)。
今後目を離せないクリエイターの一人になってくれたらいいんですけど、やっぱり初めての長編映画ってことで、色々と丁寧に描きすぎな部分は否めません。
特に序盤は家族内での関係性だったり、実際に本人もアクションしていますってのをしっかり映しておきたいのか、鉄棒で彼の腕っぷしをしっかり映すとこ、韓国の若者の就職難という社会問題など、どれもこれも入れていこう、しかもしっかり描いていこうというスタンスのせいで、その中に笑いがあるからまだましでしたが、本筋に入るまでが非常に長いです。
ここはざっくり切り捨ててすぐ本題に入っても良かったかなぁ。
途中でもバイオテロの犯人がどんな人物でとかって情報も付け加えてるんですが、これが登場人物誰にも関係のない人物で、ここに尺を取るなら誰かしら関係している方が映画的にはセオリーじゃないかなと。
TV局の人たちも色々と特ダネを手に入れようとあちこち情報網を探ってる描写がありましたけど、これが特に意味がない。
きっと韓国内における様々な問題を描こうと思ったんでしょうけど、必要性に乏しかったなぁと。
まぁ韓国エンタメ系映画の良くもあり悪いところだよなぁってのはあります。
あとは舞台設定ですかね。
煙が下に充満しているせいで、彼らがいるビルの屋上が一体どれだけ高いのかってのを活かしきれてない気がします。
すぐ下に危機が迫っているという点では機能しているから、彼ら的には怖いんでしょうけど、見てる側はそれでは恐怖感が目で計れないというデメリットもあったように思えます。
だから終盤のクライミングよりも、中盤でヨンナムが屋上へ向かう時の方が怖いんですよね。下がどれだけの高さかわかるから。
他にも終盤はひたすらビルの上を飛び越えて煙から逃げるだけってのは、ちょっと芸がないというか。
ひたすらクライミングして逃げるって方が、緊張感あるかなぁと。
逆にリアリティないかもですけどね。
またユーモアもちょっと挟み過ぎあなぁってのもあります。
もうちょっと間隔をあけてサラッと一言って方が、緊張の糸がほぐれるかなぁと。
緊張8:緩和2くらいがちょうどいいのかも。今回4くらいありましたもんね。
最後に
こうした方が面白いってのはあくまで僕の個人的な観点からいったまでなんで、ほっといてもらうとして、ホントにアイディア満載な一見ベタで古臭い映画でしたけど、新しい要素もしっかり取り入れた作品でした。
誰でも得意なものがひとつあって、それを活かせる場面は人生で必ず訪れる、人はその時輝ける、という誰でもヒーローになれる瞬間がるということをこの映画は伝えています。
暗闇があるから光がある、失望があるから希望がある。
人生捨てたもんじゃないぞ、と大袈裟な捉え方ですけど、この映画はそういう意味もこめられてるんじゃないかな。
きっとヨンナムの決死のサバイバルを見て、企業が声をかけてくれることでしょう。
ウィジュとの恋模様もきっと成就する・・・のかな?w
てかね、有毒ガスがあれだけ街を覆うって、とんでもなくヤバイ状況でしょ!?
緩和する薬もできてねえし、改善策も水撒く程度。
これきっと相当数の被害者、死傷者が出てるはずですよ。
しかも都市部ですから万単位じゃないですかね。
そんな中で必死に逃げてる二人を追うTVクルーと一般市民ねw
ドラマ見てる場合じゃねえだろw
ま、映画ですからそこは咎めないでってことでw
いやぁドキドキした!
タータータタタータータタタ!!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10