8番出口

「バイオハザード」や「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」、「名探偵ピカチュウ」など、日本のゲームがハリウッドで実写化することは多々ありますが、日本でゲームを実写化するという例はあまりありません。
今回鑑賞するのは、無限にループする地下鉄の通路に閉じ込められたプレイヤーが様々な“異変”を探し、「8番出口」から地上への脱出を目指すウォーキングシミュレーターゲームの実写化。
一人で製作されたゲームだそうで、映画になるようなドラマ性もないんだとか。
それを一体どうやって「映画」にしたのか楽しみです。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
2023年にゲームクリエイターのコタケクリエイト(KOTAKE CREATE)がたったひとりで制作し、シンプルながら独特で不気味な世界観が話題を呼び、瞬く間に社会現象になったゲームを、「君の名は。」や「怪物」などをプロデュースし、自身で小説も執筆するなどマルチな才能を駆使してクリエイトする川村元気の手によって実写映画化。
突如地下鉄通路から抜け出せなくなった男が、ルールに従って攻略する姿を、様々なギミックや男の背景を加えて描き、新たな「映画体験」を追求したワンシチュエーションスリラードラマ。
初監督作の「百花」が、サンセバスチャン国際映画祭で日本人初の最優秀監督賞を受賞した川村元気監督。
認知症の人が見る世界をワンカットで見せた腕が評価され受賞したそうだが、本作はさらにそれを応用し、真っ白な通路を無限ループする男の姿を映すことに挑んだ。
また、ゲームの実写化ではあるものの、ゲームと映画の間にある映像としてとらえ、迷う男のドラマを必要最小限で挿入、さらに撮影しながら物語を組み立てるという難易度の高い映画作りを目指した。
さらに、是枝裕和や山田洋次、李相日監督らにも助言をもらうなど、人脈をフル活用して完成させた。
そんな映画の主人公である「迷う男」を演じるのは、二宮和也。
所属事務所を退所後初の主演映画となったニノは、ゲームが趣味ということもあり、今回脚本協力としてもクレジット。
シナリオ通りに撮り、その場ですぐ編集しリテイクを重ねていくという作業の中で、二宮はいくつもアイディアを提案して意見交換したとのこと。
ゲームで培った発想が本作でいかに発揮されるか注目だ。
また、「歩く男」役をシェイクスピアの舞台俳優として知られる河内大和、「謎の女性」を「余命10年」の小松菜奈が演じる。
本作は、第78回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション【ミッドナイト・スクリーニング部門】に選出し、アジア、ヨーロッパなど既に30以上の国と地域での上映が決定。
しかも海外の配給を「パラサイト半地下の家族」や「TITANE/チタン」など、海外の賞レースにかなり強い「NEON」が担当することが決まっている。
無限ループの迷宮から、あなたは抜け出すことができるか。
あらすじ
地下通路を男(二宮和也)が歩いているが、出口にたどり着くことができず、何度もすれ違うスーツ姿の男(河内大和)に違和感を覚える。
やがて自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づき、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つける。
「異変を見逃さないこと」
「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」
「8番出口から、外に出ること」。
【1番出口】【2番出口】【3番出口】…正しければ【8番出口】に近づき、見落とすと【0番出口】に戻る。
次々と現れる不可解な異変を見つけ、絶望的にループする無限回廊から抜け出すことができるのか?(HPより抜粋)
感想
#8番出口 鑑賞。無限ループから抜け出せない男は、迷っている。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) August 29, 2025
そして普段の我々も無限ループに陥ってるのではと問う。
日常の異変に気づけばこの退屈で同じような毎日から抜け出せるかもしれない、と。
少々淡白に思えたが、95分なのでちょうどいいのかも。
ボレロは最後まで聞いてね。 pic.twitter.com/tJIFJrozoA
なるほど、ゲームはあくまで「舞台」であり、迷う男が決断に至るまでの物語だと。
もう少しアトラクション性が欲しかったし、少々わざとらしさが鼻に突くが、決して嫌いではない。でも認めたくない。
何故なら川村元気だからw
以下、ネタバレします。
ボレロの如く
満員電車でボレロを聞く男。
車窓に映る顔はどこか顔色が悪く、血色も悪そうな表情をしている。
車内では泣きやまない赤ん坊をあやす母親に、サラリーマンが激昂する。
うるせえんだよ、母親なら何とかしろ、大体満員電車に赤ん坊乗せるとか非常識だろ。
そんな怒号を「見て見ぬふり」をし、再びイヤホンをする男。
突然別れた彼女から電話がかかるが、車内だったため切ってしまう。
電車を降りると再び着信。
仕方なく電話に出ると、彼女は病院にいるという。
どうやら妊娠したようだ。
別れることを決めたのに、彼女は「どうする?」と男に聞く。
動揺を隠せない男は、このまま仕事に向かおうとしていたが、迷っている。
仕事に行かずに病院にいくのか、それとも別れたんだから俺には無関係だといいたいのか。
改札口を出て地下出口へ向かう男は、彼女に「どうしたいの」と問う。
電波状態が悪く返答が聞けなかった男は、気が付くと、ひたすら地下通路から出られないことに気付く。
一体ここはなんなのか。
どうすれば出られるのか。
迷う男は、ぜんそくを悪化させながらも、なんとかして「出口」という答えを探す。
とまぁ、こんな始まりの映画です。
主題曲に「ボレロ」を使っているのは予告編で周知の事かと思いますが、何故ボレロを使用したのか、映画を見てるとなんとなく意図が読めてきます。
ボレロは一定したリズムと繰り返しのフレーズを使って演奏されるバレエ曲として有名ですが、本作は正にボレロの如く、無限ループ化した地下通路が舞台ですから非常にマッチしています。
さらに、どんどんギミックが激しくなっていく過程と、迷う男の葛藤が強まっていく姿が、代わる代わる演奏される楽器隊によって厚みを増してオーケストレーションしていいく構成と似ており、クライマックスでの迷う男の決断と、ダイナミックな転調と締めが重なることでカタルシスが生まれる、これ以上ない選曲だったように思えます。
ゲーム性はあるものの。
物語は、案内に書かれたルールに沿って8番出口を目指すんですが、さまざまな「異変」を見つけないと先に進めないという煉獄状態と化しており、白いタイルで覆われた通路が段々気味悪くなっていくスリリングな展開となっておりました。
2,3周してようやく事態を把握した男は、ポスターやドアなどの写真を撮りながら記憶していきます。
ポスターはエッシャー展や、美容整形、司法書士など、名前やイラストが「8」にまつわる」物ばかりが連なり、反対には電気室や非常ベルなどが並びます。
最初は、天井から赤い液体が垂れたり、ランダムに蛍光灯が配置されてるなど、わかりやすい「異変」が映し出されます。
ゲームでも同じような異変があるようで、経験者からすればニヤリとする演出だったのかもしれません。
また、向こうから歩いてくる「おじさん」は基本的に話しかけても返答しませんし、止めることもできません。
とある面では、おじさんが後ろから追いかけてくるパターンもあり、その姿が中々不気味です。
不気味と言えば、本作は一応スリラー要素がある作品のため、怖がりの方はそれなりの覚悟を持って臨んだ方が良いかと思いますが、ある程度耐性のある方であれば問題のない演出だったかと思います。
とはいえ、今回IMAXや音響の良いスクリーンでも上映されてる通り、音にはそれなりに拘った部分が多く、ジャンプスケアも1か所ありましたし、赤ちゃんの泣き声や不気味な動物の鳴き声など、音で怖がらせる演出がある程度用意されています。
ロッカーから聞こえる赤ちゃんの泣き声が急に増幅するホラー演出も驚いた方も多いのではないでしょうか。
さらに急に蛍光灯が点滅し画面が真っ暗になったかと思ったら、排気口から得体のしれない動物が無限増殖するという演出もあり、気持ちが悪かったですね。
毛のないネズミの様な物体で、体には人間の目や口や耳が付いているという非常にグロい動物です。
スマホの灯りでチラチラ映るため、全体像をしっかり把握できたわけではないですが、こんな肝の悪い動物が「ピギーピギー!」いいながら上から落ちてくるんですからたまったもんじゃありません。
他にも通路の向こうから津波が襲ってくる異変もあるため、この辺に耐性の無い方は注意が必要かと思います。
ドラマは割とエモい。
物語は、そんなゲームにハマってしまった男が、道中少年と出会ったり、IFを見たりしながら、別れた彼女の妊娠に対して「答え」を出していくというもの。
恐らく道中出会った少年は、彼女との間にできた自分の息子であり、彼と共に行動していくことで、定められた運命に抗うのではなく、やり過ごすのでもなく、受けれ手決断していくという内容だったと捉えます。
また劇中では、モブキャラだと思っていた「おじさん」にもスポットが当たるエピソードが挿入されています。
どうやらおじさんもこの無限ループに陥ったプレイヤーであり、道中であった少年を引き連れてクリアしようともがいている姿が映し出されます。
しかしおじさんは少年の忠告を無視して、0番出口に戻ってしまう失態を犯したり、向こうから歩いてくる女子高生に話しかけられ、同じことを話す彼女に脅える姿など、常に動揺を隠せないキャラとして描かれています。
恐らくおじさんは女子高生と何かあったんだと思います。
話しかけられるや否や目を垂らして喜ぶし、「ここにずっといるのも悪くないよ」と話す女子高生を一度は受け入れようとする表情をすることから、何かしらの罪でも犯したのではないかと想像できるのではないでしょうか。
そんなトラップを回避したはいいものの、おじさんは目の前に現れた「8番出口」の階段を、引き止める少年を無視して駆けあがる姿を最後に、行方が描かれないエピソードとなっていました。
きっと、あの出口は偽物でまんまと罠にはまり、迷う男の前に現れるモブキャラとなってしまったのではないでしょうか。
迷う男の話に戻りますが、正直それほど深いドラマでもありません。
決断できない男が決断するまでの過程をゲームに落とし込んだだけのものです。
しかし、深く読み取っていけば、泣き止まない赤ちゃんにブチ切れるサラリーマンを「見て見ぬふり」をしてやり過ごし、7時に起床して満員電車に乗り、適当に仕事をこなして17時に帰り、くだらないTV番組やソシャゲをして時間を潰すような張りのない毎日を過ごす大人を反映してるように思えます。
自分にとっては変わり映えのない日常でも、実はいい「異変」も悪い「異変」も溢れている。
それを「見て見ぬふり」をして過ごすか、『気づいて」行動できるかによって、変わり映えのない日常は一変するのではないか。
本編の最後、迷う男はある行動をする素振りを見せて幕を閉じるあたりから、パッとしない日々を送る我々大人たちへの忠告とも取れる物語だとしたら、見る価値のある作品だったと思います。
観賞後、もしかしたら迷う男と同じように、何かを決断し、日常の異変に気付いて毎日を一変する人もいるかもしれません。
残念ながら僕は、まだあの地下通路から出れそうにないですがw
演出に関して
本作はボレロを起用したり、不穏な効果音や不快な電子音、IFのシーンでの心の琴線に触れるような優しいメロディなど、音楽面では効果的な演出を施していましたが、映像面では基本的に疑似ワンカットを多用したものとなっていました。
冒頭では迷う男のFPS視点で映し、地下通路に迷い込んでからは迷う男=ニノを正面や背後から捉える映像に切り替えながら、ワンカットで無限ループを描いていました。
白いタイルが張り巡らされた異様な空間を、少々トーンを暗くした四隅にすることで圧迫感を強調した映像になっていたのが印象的です。
また、迷う男は「喘息持ち」という設定になっていて、ただでさえ決断に迷う心境に、この持病が加わることで、彼に相当な負荷がかかっていることを我々に見せた演出になっていたと思います。
疑似ワンカットで見せることで、角を曲がると再び同じ景色に遭遇する怖さが増しますし、その度に恐怖に捉われる迷う男のリアクションも効果敵だったように思えます。
ただ個人的には、全体的に淡泊に思えたのも事実。
せっかく「ゲーム」を映画化したのだから、もう少しアトラクション性を高めるとか、もっとドラマを肉付けするとかしてもよかったのかと。
例えば原作のゲームにはないアトラクションを付け加えてみるとか、何かアイテムを出してみるとか、もう一度見たくなるような「異変」を用意するとかしてもよっかったでのはと。
迷う男もおじさんも、中々地下通路から抜け出せないように見せていますが、我々観客から見ると、そこまで大変か?と思えるようなわかりやすい「異変」でしかなかったでんすよね。
それこそポスターを隅々まで見ないと異変に気づけない面とか、どこかのタイルだけ色が違うとか、細かく見ないと絶対わからないようなギミックがあってもよかったかなと。
またドラマパートも、色々説明を省いて進行してるあたりは評価しますが、キャラクターに体温が感じられません。
ぜんそくに悩まされながらも運命を受け入れるか否かの葛藤に、もっと苦悩するとか希望を見出すとかを、多少でもいいから大袈裟なセリフや行動を起こしてもよかったのかなと。
ただでさえ淡々と進まなきゃいけない迷路の中で、様々な仕掛けや演出を施して95分という短尺をエンタメに落とし込んだ手腕は認めますが、だからこそ眠気の覚めるような大胆な見せ方をしてもよかったでのはと。
最後に
決して悪くないんですが、どうしてもプロデューサー業だけやってりゃいいのに、色々て出してシャシャってる川村元気が作った映画ってことで、素直になれない自分がいますw
今回2作目ってことで、自分のキャリアを凝縮した様な作品にしたようですが、どうも全体的にオシャレぶってる映画になってるなぁとおもえてならないw
ゲームをやってないこともあり、映画を通じて「あ、こんなゲームなんだ」と認識しましたが、果たしてゲーム経験者はこの映画をどう評価するのか気になります。
それこそ「マリオ」や「バイオハザード」や「マインクラフト」のそれとは違う仕組みの映画だったと思うんですよ。
元々物語がないゲームにこうした脚色をしてるってことだけで、難易度の高い製作だったと思うんですけど、それがどう受け止められるか楽しみですね。
モンキー的には決して悪くはないけど、やっぱり淡泊だったなってのが率直な感想です。
エンタメ色やメッセージ性は最適解だったのかもしれないけど、もっとできたんじゃないか、なんかカッコつけすぎてやしないか、など色々思ってしまうことあり…。
今回のニノ、ちょっとわざとらしい芝居だったかな…
なんというかわかりみが過ぎるキャラだったし、暴れる姿がちょっと見てられなかったし…。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

