ジェントルメン
2019年大ヒットしたディズニーアニメの実写版「アラジン」。
オリジナルを忠実に実写化しただけでなく、監督らしい演出が際立った作品でした。
今回鑑賞する映画は、その「アラジン」を監督したガイ・リッチーの作品。
ハッキリ言いましょう。
こっちが本当のガイ・リッチーだぜ!!
ロンドンを舞台に、武骨でガサツで男クサいワルメンたちが、どう考えても奇跡としか思えないほどの偶然が重なりまくる事態に巻き込まれていく群像劇を、超ハイスピード編集からのスローモーションでアクションをスタイリッシュに見せる技術で魅了してくれるクライムコメディ!!
これこれこれ!!
これを待っていたんですよ!!
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」といった過去の代表作に通じるような、あの頃のガイ・リッチーが帰ってきた予感をさせてくれる本作は、大麻ビジネスを巡る騒動を描くんだとか。
きっと今回も些細なきっかけから大きな事態へと発展していくのでしょう。
彼の作品は、この過程と顛末が最高に楽しいのです。
そんなわけあるかよwってオチね。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
俺たちのガイ・リッチーが帰ってきた!
「スナッチ」以来20年ぶりに彼の地元ロンドンを舞台に描かれる本作は、一流の紳士(ワル)たちが、時価500億円にもなる大麻ビジネスの利権を巡って巻き起こす熾烈な争奪戦。
普段彼の作品に出演しないような激シブなオジサン俳優が、裏稼業に通じる役柄を見事に熱演。
枯れ具合を一切見せない華麗な駆け引きを魅せていく。
また、緩急ある編集や小粋な掛け合い、クセのあるキャラに大胆な脚本の構成など、本作は正しくガイ・リッチーの原点回帰とも言える作品に仕上がった。
既に世界興収は1億ドルを突破。
TVシリーズも製作されるほどのスマッシュヒットを記録している。
超痛快ノンストップクライムサスペンスをその目で堪能せよ!
あらすじ
ロンドンに緊急事態発生。
長年にわたる大麻の大量栽培/販売で財を成したアメリカ人ミッキー(マシュー・マコノヒー)が、ビジネスを売却し、引退するというウワサに暗黒街に激震が走った。
その利権総額500億円。
目の色変えた強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ誌の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズ&ロシアンマフィア、さらには下町のチーマーまでもが跡目争いに参戦。
一筋縄ではいかないジェントルメン=一流のワルたちによるダーティでスリリングな駆け引きが始まった!!(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、ガイ・リッチー。
冒頭でも書いた通り、ディズニー映画「アラジン」の大ヒットによって代表作みたいなことになってますが、あれが本当の彼ではないことを強く言いたい。
やっぱり彼の作品は、悪ガキが金盗んで大事になっちゃう「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や、ダイヤモンドを巡る争いを描いた「スナッチ」、罪を着せられた凄腕ギャンブラーを描いた「リボルバー」、不動産ビジネスに手を出し借金まみれになった小悪党の悪あがきを描いた「ロックンローラ」など、基本的にはロンドンの裏社会で生きる男たちを野性味たっぷりで描いてるのがたまらないのであります。
モンキー的には正真正銘なジェントルメンであるナポレオン・ソロが主人公の「コードネームU.N.C.L.E.」も好きですし、原作とは全然違う小汚い変人探偵の「シャーロック・ホームズ」も大好きですし、下っ端階級からのし上がる変化球的アーサー王伝説「キング・アーサー」も大好きなんですが、やっぱり彼の持ち味は現代のロンドン裏社会で発揮されるといいますか。
要はめっちゃ楽しみということです、はい。
監督に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
マリファナ王ミッキーを演じるのは、マシュー・マコノヒー。
「インター・ステラ―」や「ダラス・バイヤーズ・クラブ」以降、彼の主演作品をあまり見てなかったんです。
ですが最近、彼とウディ・ハレルソンが主演した「トゥルー・ディテクティヴ」を最近見て、やっぱりこの人はすげえなと。
正反対のバディ刑事が、長い年月をかけて少女惨殺事件の真犯人を見つけ出す物語を、過去のバディ時代と現在の供述のシーンを交互に見せながら描くドラマなんですけど。
マシューは過去にワケアリでインテリジェンス感のある刑事を演じてるんですが、非常にめんどくさく回りくどい言い回しをするのが既にナイスなんですが、現在パートでは飲んだくれながら供述をすることで、クドさに拍車がかかってる辺りがさらに良いんですw
それでいて事件にはめちゃくちゃ本気で、壁に貼られたフローチャートを見つめる眼差しは正に刑事といいますか、「インターステラー」や「ダラスバイヤーズクラブ」とは違う彼の一面が堪能できるんですよね。
本作でも一体どんなクセのあるキャラを演じるか楽しみなんですが、こちらも一級品のドラマですので、是非見ていただきたいところです。
彼の作品はこちらもどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ミッキーの右腕レイ役に、「キング・アーサー」、「パシフィック・リム」のチャーリー・ハナム。
チャイニーズマフィア、ドライ・アイ役に、「ラスト・クリスマス」、「シンプル・フェイバー」のヘンリー・ゴールディング。
ミッキーの妻ロザリンド役に、TVシリーズ「ダウントン・アビー」、「アンナ・カレーニナ」のミシェル・ドッカリー。
ユダヤ人大富豪マシュー役に、「シカゴ7裁判」、「デトロイト」のジェレミー・ストロング。
ゴシップ誌の編集長ビッグ・デイブ役に、「ワールズ・エンド」、「デッドプール2」のエディ・マーサン。
ボクシングジムを経営するコーチ役に、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」、「聖なる鹿殺し」のコリン・ファレル。
ゲスな私立探偵フレッチャー役に、「パディントン2」、「ブリジット・ジョーンズの日記」のヒュー・グラントなどが出演します。
どう見ても「紳士」とは言えない連中が巻き起こす熾烈な利権争い。
ロンドン流の仁義なき戦いを拝もうではありませんか!!
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
ジェントルメン。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年5月7日
尻上がりに面白くなるタイプの映画でした。
ヒューグラントがナイス👍 pic.twitter.com/H1qqbDeMxp
裏社会の利権争いは、ジャングルの王が風格を見せる!
イケオジたちの裏のかきあいが癖になる!
お帰りガイリッチー!!
以下、ネタバレします。
原点回帰とは違う感覚
賢いが貧乏だった男がロンドンに渡り、得意分野を生かして財を成した大麻ビジネス。
それを手放し妻と余生を過ごす計画は裏社会を騒然とさせ、利権というエサ目当てにハイエナたちが群がり、大麻王となった男に様々な危険が差し迫っていくまでの物語を、探偵とナンバー2の劇中劇で回想に次ぐ回想でじっくりと物語を構築させ、クライマックスになるにつれ二転三転していく展開が、しり上がりにワクワクさせてくれた、ウェルカムバック!ガイリッチー!!なクライムサスペンスでございました。
「アラジン」で稼いだ金を自分の描きたい作品に費やしたと言っても過言ではないほどの原点回帰な映画でした。
ロンドン、大麻、ボクシング、ストリートギャング、どいつもこいつも紳士なフリして男クサくて、賢いかと思ったらバカな奴もいて、そうそう!これがおれたちが見たかったガイリッチーだよな!と終始ニンマリして見ていました。
「ロック、ストック~」では散弾銃と大金の奪い合い、「スナッチ」では84カラットのダイヤモンドを奪い合う構図でしたが、構成や展開は違えど、それらを彷彿とさせる「大麻ビジネス」の奪い合い。
マシュー演じるミッキーと、彼の右腕レイモンドのグループ、彼のビジネスを高額で譲り受ける大富豪マシュー、謎の中国人ドライ・アイと彼を従えるジョージ卿、ミッキー―が管理する農園に忍び込むトドラーズと彼らをまとめるコーチ、そして全ての情報を嗅ぎつけ特ダネをゆする探偵フレッチャーと彼を雇う編集長。
登場人物の多さも過去のリッチー作品と似ているためにこれまた話が複雑になっていくパターンか?と思ったのですが、ロック、ストックやスナッチほどではないのが、ご新規様に優しい所。
リッチー作品の特徴として、
- 移動やどうでもいい所作をコマ感覚で編集した素早いカット割り(リッチーカットというらしいw)
- タランティーノほどではないが、どうでもいいセリフや会話のやり取り
- 主人公のナレーションによる一人語り
- 時間をさかのぼる巻き戻しタイム
- 登場人物の視点の切り替えの多さ
- スピーディーとスローモーションを巧みに切り替えたアクション
- 粋なBGM
などがあるんですが、これらを極力抑えたうえで原点回帰したように思えます。
これは僕が推測するに、年齢的に落ち着いた登場人物たち、さらには監督自身の年齢面も含めてのテンポだったように思えます。
それも手伝ってガイリッチーの映画なのに、どこか腰を据えて堪能できた部分もありましたね。
実際に作品の中身も、帰宅したレイモンドの前に現れるゲス探偵フレッチャーとの2人の話が中心。
ボスが失墜するかもしれない超特ダネを2000万ポンドで買ってくれという揺すりに対し、冷静に話を聞くレイモンド。
文春の記者のように張り込みに張り込みを重ねて手に入れたであろうネタを語るフレッチャーの話を、回想で順を追って語られていくパターンは、これまでの監督作品の中では珍しかったです。
またテンポに関して言えば、過去作と比べると安全運転というか徐行運転レベルなんですよね。
- どうしてミッキーは一代で築き上げたビジネスを他者に譲ろうとしたのか
- 何故フレッチャーは部外者が知らないミッキーの引退情報を入手し、嗅ぎまわったのか
- ミッキーは誰にビジネスを譲ろうとしたのか
- 何故誰も知らないはずのミッキーの大麻栽培所に泥棒がはいったのか
など、フレッチャーがコトの経緯を、なぜか映画の台本にまとめ上げ、オーバーアクトで語ってくれるんです。
その話を内心穏やかでないはずのレイモンドが冷静に淡々と話を聞きながら、少しづつ真相を引き出そうとするというのが本作の流れ。
序盤でこのレイモンドの姿勢が非常に気になるのが肝でして。
冷静にフレッチャーの話を聞いているのが終盤効いてくるんですよね。
そういう意味では、途中で言った通り「ご新規様に優しいガイリッチー」映画だったのではないでしょうか。
要するにこういうこと
とはいっても、よく分からなかった!という人がいると思うのでザックリ解説なんぞを。
思いっきりネタバレになるのでご注意を。
とあるパーティーで、ゴシップ誌の編集長ビッグ・デイブは、大麻王ミッキーに挨拶をしようとしたんですけど、ミッキーは親しかった貴族のスキャンダルをビッグ・デイブが暴いたことでご立腹だったことから、挨拶を無視してしまったことが発端。
ミッキーにとって、上流階級の人たちは良い顧客。
機嫌よく大麻を購入してくれることはもちろん、豪邸の維持費用を賄えない貴族たちに費用を払う代わりに、地下室で大麻の栽培をさせてくれるわけですから、貴族たちに何かあると自分のビジネスに影響が出るわけで、そりゃビッグ・デイブのようなゲス野郎なんかに挨拶なんかするわけないっていう。
恥をかいた編集長は、ロンドン一ゲスい探偵フレッチャーを雇い、彼と親しいプレスフィールド卿の娘がヘロイン中毒になっていることから、ミッキーが関与しているのではないかと疑いをかけ、情報収集を始めたわけです。
その頃ミッキーは、妻との余生を過ごすために大麻ビジネスを利権を4億で誰かに譲ろうとしていました。
目を付けたのは強欲で知られるマシュー卿。
狡猾なキツネとも言われるほど、ずる賢い彼に最初は良いイメージを持っていなかったものの、狩りで意気投合。
マシューはミッキーに、何故警察に気付かれずに大麻を大量に栽培できるのかを問うと、田舎に住む貴族の屋敷に秘密裏に作られた栽培所を案内される。
ミッキーは国内に12個もの栽培所を持っており、徹底した管理と貴族に豪邸の維持費用と題した口止め料を払っていることから、これまで誰にも場所を特定されずに財を成したことが判明します。
しかし、この農園を見せた後、トドラーズというストリートギャングたちが大麻を盗みにやってきます。
ご丁寧に自分たちのラップとダンスを加え、強盗の映像をSNSにアップ。
何故場所が特定されたのかをレイモンドにつきとめるよう、ミッキーは支持するのでした。
これにより、この農園を閉鎖しなくてはならず、代わりの場所を見つけるまでの費用や場所を特定されたことによる価値の低下により、ミッキーは多額の利益を失うことになります。
さらには中国系マフィアのドライ・アイがミッキーの前に現れ、多額でミッキーのビジネスを買収すると提案。
一旦話を持ち帰ることにしたミッキーに更なる災難。
編集長が疑っていたプレスフィールド卿の娘が彼氏とどこかへ消えてしまったことを聞きつけ、レイモンドを使って連れ戻そうとします。
娘ローラは、南ロンドンのマンションで、ヘロイン仲間と共に住んでいました。
レイモンドは穏便にことを済まそうとしますが、攻撃を仕掛けてきたアスランという青年をマンションのベランダから誤って落下させ死なせてしまいます。
これを下にいたギャング少年らが撮影。
誰かに知られるとまずいことになることから、少年たちのスマホを強奪します。
連れ帰った娘は結局オーバードーズで死亡。
アスランの遺体もレイモンドが隠したままで、フレッチャーに運んでいるところを見られてしまうなど、大麻ビジネスを譲る計画は、部外者たちによっててんやわんやの状態。
ミッキーは、農園の場所がバレたのは誰の仕業か探し始めることに。
まず、自分の責任不足と謝罪に来た、トドラーズの親代わりであるコーチによって、ドライ・アイの手下ファック(正確にはファ・アックという中国人)が原因であることが判明。
彼は手を縛られたまま落下して死んでしまいましたが、ミッキーは彼の親分ドライ・アイの元締めであるジョージ卿の元へ向かいます。
赤痢菌を混ぜたお茶を飲んでしまったジョージ卿はものすごい勢いで嘔吐。
その隙に今度俺のビジネスに手を出したらただじゃ済まないと脅します。
ジョージ卿はドライ・アイに勝手なことをするなと忠告しますが、世代交代を強く主張するドライ・アイは彼を射殺。
しかも彼はマシューと繋がっていたことがフレッチャーによって判明。
ドライ・アイはマシューの指示によって、ミッキーの農園を襲撃したわけです。
しかしドライ・アイはマシューと袂を分かち、ミッキーのビジネスをマシューから奪おうと画策。
要するに、農園を襲撃すれば大麻の市場価値が下がることや、10年後には合法化されることでさらに価値が下がることで、儲けが減ってしまうことなどを加味して、自分がビジネスを買収する金額4億という値段を下げようとしていたのでした。
しかしこれだけでは終わらない。
レイモンド一行が誤って殺してしまった青年アスランは、ロシアの有力者の息子で、復讐からミッキーを狙っていたのです。
結局のところ、ミッキーは色んな方面から恨みを買っていたわけですが、やはり裏社会のジャングルの王として、王らしい振る舞いだけではなく、疑いがあってはならない、その疑いはやがて混乱を生み、破滅を招く恐れがあるという冒頭と結末のセリフの如く、風格を見せつけるほどの意地と狂気を見せつけてくれたわけです。
そんな彼の奥様も非常にクレバーで、ドライ・アイに命を狙われた際も毅然とした態度で迎え撃ちました。
この王にこの女ありといったところでしょうか。
最後に
ミッキーの王としての風格も見事でしたが、彼の右腕であるレイモンドもいい仕事してましたよね。
ちゃんと彼の指示通りに動いて、先読みまでしてことが大きくならないように処理。
フレッチャーに一本取られたかのような金の揺すりは、実はすべて読まれていた。
しかも彼のおかげで黒幕の正体も突き止められたし、トドラーズという後ろ盾もできたことで、ミッキーが誰かにやられないように手を廻せたわけで。
総括として、歳をとったことでそれまでのガチャガチャした展開が落ち着いたとはいえ、初期の作品のテイストに戻ることができる製作力をマジマジと魅せてくれたガイリッチーは、これからも応援すべき監督だよなと改めて感じました。
さらに、より人物描写を深く描けたかなぁとも。
細かい点としては、オープニングシーンがカッコよかったですね~。
ビールのグラスに血が飛んだかと思ったらタイトルロールが流れ、ビールの泡の変化によって主要人物のシルエットが変わっていく流れ。
まるで007みたいな映像。
全体的にもロンドン版「仁義なき戦い」とでもいうべき頂上決戦といいますか、全員悪人な「アウトレイジ」とでもいいましょうか、ゴッドファーザーをガイリッチーに撮らせたらこんな感じになるのかなぁとも思えた内容だったかな。
また本作に登場する人物たちは、誰もが元々上流階級のジェントルメンではなく、手を汚しまくったり、のし上がって地位を得た者たち。
本来なら権力者らしく、堂々と法を犯して支配すればいいものを、とにかくバレないように秘密裏に行動しなくてはならないということも伝えてる気がします。
あれだけ暴れても表立って出来ないマフィアの人たちってのが笑いどころだったりするんでしょうかw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10