モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

Netflix映画「グッド・ナース」感想ネタバレあり解説 殺人鬼を野放しにしたのは誰か。

グッド・ナース

 

病院てのは病気を治してくれる場所。

入院すれば先生や看護師の方がちゃんと看てくれるし、何かあった場合もできる範囲で処置してくれるわけですから、基本的には安心できるわけです。

 

でもそんな安心できる病院にサイコパスがいたら…。

今回鑑賞する映画は、数十人を殺害した実在の殺人鬼を描いたシリアルキラーサスペンス。

 

予測としては彼の同僚である看護師の視点から描くお話の様子。

しかも色々アドバイスを受けていた女性が主人公というわけですから、物語はそんな良心的な存在の側面がヤバすぎた・・・みたいな人間の裏の顔の恐ろしさを描くのでしょう。

もしかして襲われたりするのかな・・・。

今回劇場で公開するということで、早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

チャールズ・グレーバーが書いた小説「The Good Nurse(原題)」を原作にした、推定数百人を殺したとされる実在の看護師をモチーフにした作品。

 

重い病を患いながらも多忙な日々を送っていた女性看護師が、同僚の献身的な振る舞いに救われていくも、彼に疑惑の目を向けてしまう事態が起きる。

 

スティーブン・ホーキング博士と彼を指せた妻との物語「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインと、全米で最も成功を収めたテレビ伝道師の栄光と失墜を描いた「タミー・フェイの瞳」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシカ・チャステインという2大スターが共演。

 

実在したというシリアルキラーをエディが、親友だと思って人物に裏切られてしまう女性看護師をジェシカが演じ、二人のアンサンブルによってゆっくりと静かな緊張感を漂わせていく。

 

監督には、アフガンでタリバンから市民を守ろうとしたデンマーク軍中隊を描いた「ある戦争」や、デヴィッド・フィンチャー製作総指揮のドラマシリーズ「マインドハンター」で監督を務めたトビアス・リンホルム

 

トマス・ヴィンターベア監督マッツ・ミケルセン主演の映画「偽らざる者」や「アナザーラウンド」にも脚本として参加。

アカデミー賞最有力の呼び声も高い本作を作ったこともうなづける経歴の持ち主だ。

 

相反する二つの顔を持つ男の姿を、民営化された病院の問題点を浮き彫りにしながら描く本作。

なぜ彼は何人もの患者に手をかけたのか…。

 

 

あらすじ

 

心臓病を抱えながらICUで看護師として働くシングルマザーのエイミー(ジェシカ・チャステイン)は、過酷な夜勤で肉体も精神ももはや限界。

そんな彼女の部署に配属されてきたのが、思いやりのあるチャーリー(エディ・レッドメイン)だった。

 

長い夜勤を共にする中でふたりは絆を育み、エイミーは自身と幼い娘たちの未来に希望を持てるようになる。

 

ところが院内で患者の不審死が相次ぎ、チャーリーを第一容疑者とした捜査が始まる。

エイミーは自身と娘たちを危険に晒しながらも、真相を突き止めることを余儀なくされ……。(キネマ旬報より抜粋)

youtu.be

 

 

感想

これを見たら安心して入院できなくなるかも?

問題はこのモンスターでなく、野放しにしていた連中だった!!

2大スターのアンサンブル芝居を堪能できるけど、物語自体は中々退屈でした…。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやって患者を殺害したのか・・・。

心臓病を患うシングルマザーの看護師と、新たにやってきた男性看護士が友情を育みながら仕事にママに精を出していくさなか起きる院内の不可解な事件の内幕を描いた本作は、いわゆるサイコサスペンスの顔を見せながらも社会派な側面を徐々に明るみにしていく展開でしたが、基本的には緊張した面持ちの会話ベースが中心の作劇のため、不穏な空気だけでドキドキさせたい演出になっており、期待していた内容とは全く違った作品にがっかりな作品でした…。

 

あと4ヶ月もすれば保険に加入できると、辛い体を身を粉にして働くシングルマザー看護師のエイミーは、規則を促す病院側のルールを無視してでも患者に寄り添いたい非常に優秀な看護師。

しかしいざ体に負担をかけすぎると突如発症する心臓の病に苦しみ、さらには夜勤労働からの朝帰りで子供たち二人に喚き散らかされるという二重苦に、さらに疲労が増すばかり。

 

そんな中やってきた看護師チャーリーに、心をほぐされていくことで信頼できるバディとなっていく2人。

チャーリーもまた別れた妻との間に生まれた娘に会いたい一心からか、エイミーの子供たちの世話をすることで心のケアをできているように見えていた。

 

彼がやってきてすぐ2人が担当していた患者になぜかインスリンが投与されており、ミスによって死んでしまうと言いう事件が発生。

刑事事件になったはいいものの、警察に被害届が出されたのは何と患者が死んで7週間後という遅さ。

 

誰かによる犯罪の可能性で捜査を進めたい刑事たちでしたが、捜査するも何も遺体はすでに火葬されており、患者に関する書類もあった2ページ程度という内容の薄さ。

これでは捜査のしようがないし、肝心の病院側も全く協力する姿勢を見せない態度。

あくまで形式的な対処を施すだけのやりとりに、刑事たちも四苦八苦といったところ。

 

しかし疑いの目は徐々にチャーリーに向けられていく。

エイミーのいる病院で働くまでに9つもの病院を転々と渡り歩いていること、しかも彼がいた病院では、今回のケース同様患者にインスリンが投与され死んでしまったという案件が複数起きており、彼がいなくなると一気に件数が減ることから院内で働くスタッフからは妙な噂が囁かれていたことが発覚する。

 

親友同然だった男に対し疑惑の目が向けられたことを知るエイミーは、動揺を隠しながらも真実を追求するべく刑事たちに協力し真相を追うことに。

 

果たしてチャーリーは無差別に患者を殺していくサイコパスなのか、そしてどうやって患者を殺していったのか、彼の犯行動機は一体何なのか。

…というのがざっくりしたあらすじ。

 

 

全体的な雰囲気としては、終始無機質で寒色系の配色を施すことで夜の病院ならではの静かながら不気味な緊張感を演出しており、それが外に出たとしても色味も雰囲気も変わらないため一貫した映像味によって映画たらしめている感触がありました。

そこにひたすら弦楽器で構成された音楽を漂わせることで、時にはエイミーとチャーリーの出会いを祝福するかのように、時には二人が仲を育んでく様を助長させるかのように、そしてチャーリーに疑惑の目が向けれた際は一気に不穏な空気を作り上げるのに一役買っていたわけですが、どうもペースに緩急が無く、ただただスローペースで物語が運ばれていくため、僕はちょいとばかし意識が遠のいていってしまいましたw

 

サイコサスペンスというからには、チャーリーというめちゃめちゃ友達想いの良い奴が一体裏でどんなことしてるのかってのをちらちら見せることで徐々にエイミーに危険が迫るような流れなのかと思ったら、それが出てくるのが中盤以降。

それまではエイミーが病を患う体を酷使しながら働く姿ばかり。

 

恐らく序盤ではそこに天使の辛したチャーリーの側面を見せたいがための構成だったと解釈してますが、そこに行って期の不安要素を流し込めばもっとスリリングだったのになぁと。

 

ぶっちゃけ犯人は予告の時点で誰の仕業かわかってるわけだし、冒頭のシーンでもチャーリーの仕業ですって言ってるのは明らかなので、彼の本性がどうやって暴かれるかのプロセスを楽しませてほしいわけです。

もちろんチャーリーへの疑惑が確信に変わって以降、エイミーの態度が一変していくので恐怖心は生まれるわけですが、それにしてもエイミーよ、幾ら一人で子育てしてるからってハート強すぎだろ、心臓弱いくせに。

 

本来ならもっと脅えてほしいわけですよ。むしろ極端でもオーバーアクトでもいい。

ですがジェシカ・チャステイン自体強い女性のパブリックイメージがあるせいで、仮に脅えていたとしても強い母親のように見えて仕方がないんです。

 

特に彼が病院を解雇された夜に勝手にエイミーの家に上がり込んで子供の世話をしていたシーンは、今にも怯みそうな表情でチャーリーと対峙していましたが、あそこはもっとベタな音楽付けて誇張すればいいのに、監督の作家性なのか何なのかイマイチ盛り上がりに欠ける仕上がりに。

 

目の前にいるのは親友ではなくサイコパスなわけで、そいつが子供と戯れているわけだからもうちょっとヒステリーになってもいいのになぁと。

まぁ本心がバレてしまったらもっと悲惨な状況になるかもと想定したと理解してますが。

 

とにかく色々物足りないんですよねこの映画。

小ギレイに見せすぎというか、スタイリッシュにしたかったのか、緩急も抑揚もないんですよ。

エイミーにはもっと動揺してほしいんですよ。

だって自分を救ってくれた恩人が、実は殺人鬼だったわけですからもっと取り乱すべきなんですよ。

きっと信じたい気持ちと疑いの目とで葛藤はしたはずなんですけど、それにしても冷静すぎるだろと。

 

どこにでもある業界の闇

本作が一番言いたいのは、殺人鬼がなぜいくつもの病院で殺害を行えたかということ。

それは単純に病院側の保身です。

上層部は事故、事件の原因はチャーリーであることに気付いていたが、それが明るみになれば病院の信用は失墜し経営不振にまで陥ることを恐れ、隠密に彼を解雇することでその場を凌ごうとしていたのであります。

 

実際エイミーが働いていた病院も上の連中は7週間後に警察に被害届を出したりするし、書類も紙っぺら数枚程度、中々協力してくれない病院側に刑事がキレれば院内出禁のお達しを出すなどとにかく非協力的。

 

また過去にチャーリーが働いていた病院では、看護師たちによる噂がいくつも出ており、彼がどうやって殺害したかまでわかってる者もいました。

何故看護師たちはそれを告発しなかったのか、そんなことをすればクビになるからです。

 

こうした業界の実態により、殺人鬼はもはや野放し、やりたい放題だったわけです。

しかも彼の殺害方法は、患者の体内に送られる生食液パックの中に針で穴をあけ、インスリンやジゴキシンといった透明の薬物を混ぜることで、誰にも気づかれることなく時間をかけて患者を殺害することができる寸法。

自分の手で殺めるのではなく、パックをつけた看護師の手によって行われており、患者が死んだとしても投与ミスで片づけられやすいというわけなんですね。

 

ここに病院側の隠ぺいや隠密処理も加わることで、噂が出たとしても誰もこの件を追求しないまま、モンスターは色々な病院で犯行を繰り返せたわけです。

 

よく学校で不祥事が起きた時も、校長や教頭、教育委員会が保身によって甘い判断をするケースをニュースで報じるじゃないですか。

それと似たようなことですよね。

とにかく組織が大事で、それを守るためには誰にも気づかれずに異物を処理したいという。

こんなのが明るみに出ればPTAが黙ってねえし報道が黙ってねえし、世間が黙ってない。

一気に信用が地に落ちるのは明らかなわけですよ。

 

それの病院版という物語だったってことですよね。

 

ちなみなぜチャーリーがこんなことを繰り返していたのかは明らかにされません。

本当の事なのでそこは改変しなかったんでしょうけど、それが一番気持ち悪かったです。

しかも彼が逮捕されて取り調べを受けるシーンがあるんでんすけど、ここでも「できない!!」を連呼して一向に自白をしないんですよ。

エディ・レッドメインのクレイジーな演技を堪能したかった僕としては唯一堪能できたシーンだったんですけど、このシーンは怖かったですねw

実は多重人格者で違う人格が出てくるんじゃないかと思いましたよw

 

 

最後に

人を信じる事って難しいなともいえる本作。

エイミーは一時疑いの目を向け真相を追う姿を描いてるけど、自分を救ってくれたからこそ「友人」として彼の気持ちを知りたかった姿を見せ、実際に何かされたわけでもないけどエイミーは彼を信じたいあまりにひどく心に傷ついたことでしょう。

 

序盤のシーンでエイミーが倒れてしまい、病院で診察を受けるシーンがあったんですけど、彼女は保険に加入してないために診察料が980ドルという破格の料金を取られていたことに驚き。

カードを2枚も使って支払ってましたが、ホントアメリカの保険制度って病気に名たら大変だよなぁと思い知らされた作品でもありましたね。

まぁ、ジョン・Qの比じゃないけど。

 

しかし最近のネットフリックスオリジナル映画は、一定のクオリティがありながらも面白いと思える作品が作られてないなぁと思います。

今回一部劇場で公開ということで足を運びましたが、それをもってしてもこの程度かと。

アカデミー賞で賞を取りたいのはわかりますが、もっと素晴らしい作品を制作してほしいですね。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆★★★★★★★3/10