ハウス・オブ・グッチ
「GUCCI」。
ハイ・ブランドに興味のない人でもマークや名前は知っているって人も多いはず。
ホテルに勤務していただったグッチオ・グッチによって作られたこのブランドは、100年経った今でも多くの人に愛されているブランドです。
自分も高校時代に香水を愛用していたり、ローファーも流行ったし、ベルトも使ってたし、父から時計をプレゼントしてもらったりと、何かと縁のあるブランドでして、今回映画化されると知った時はどんな物語なのだろうと興味を抱きました。
しかし世界をまたにける一族の話となると、結局どす黒い話ないし闇はあり。
あのグッチにもお家騒動があったのねと。
現在はグッチ家が運営をしてはおらず、別の企業が運営してるようです。
どうでもいいけどグッチとドラえもんがコラボしてた時は引いたよ…。
というわけで、どんなお家騒動があったのか。
早速鑑賞してまいりましたw
作品情報
今や知る人ぞ知るファッションブランド「グッチ」。
気品あふれるGGのロゴやGGラインなど、優雅でありながらカジュアルさも忘れないデザインに、誰もが魅了されたことだろう。
しかしそんなハイブランドにも、生々しい黒歴史が存在した。
一人の女性が嫁いだことで勃発する「愛、憎悪、裏切り、内紛、復讐、殺人」など、世界を席巻したグッチ一族崩壊の真相を、「最後の決闘裁判」で再び名匠の名をとどろかせた男が、生々しく描くクライムサスペンスだ。
世界の歌姫でありファッションアイコンでもあるレディ・ガガが主演を務め、脇にはアカデミー賞俳優がずらりと並ぶ豪華布陣。
特にパオロ演じるジャレット・レトの化けっぷりには驚かされることだろう。
これまで数々のファションデザイナーの伝記映画が作られてきたが、本作はそれらとは一線を越えた物語になっていることだろう。
実際相続人からも「史実とはかけ離れている」と批判を浴びている本作。
本作を鑑賞したうえで史実を調べるのも面白いのかもしれない。
果たして華麗なる一族の闇とは。
あらすじ
その名前は、富、スタイル、権力の象徴—
貧しい家庭出身だが野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、
イタリアで最も裕福で格式高いグッチ家の後継者の一人であるマウリツィオ・グッチ
(アダム・ドライバー)をその知性と美貌で魅了し、やがて結婚する。
しかし、次第に彼女は一族の権力争いまで操り、強大なファッションブランドを支配しようとする。
順風満帆だったふたりの結婚生活に陰りが見え始めた時、
パトリツィアは破滅的な結果を招く危険な道を歩み始める…。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、名匠リドリー・スコット。
「最後の決闘裁判」が高い評価を受けているのが記憶に新しいですが、早くも次の作品をシュートするという凄さ。
80歳を超える老体にもかかわらず、そのバイタリティには脱帽です。
クリント・イーストウッド然り山田洋次然り、モノづくりできる力って年齢関係ないんですね。
本作に関しては「リアルグッチ家」からかなりの批判を受けているのが度々報道されています。
アル・パチーノ演じるアルドはあんな人物ではないとか、レディ・ガガ演じるパトリツィアを男性優位文化から生き抜こうとした女性像を作り上げているが、実際には経営に携わる女性も複数いたなど、映画で描かれていることは出鱈目だと声を荒げています。
そりゃ自分の家族が全然違うように描かれてたら嫌ですよね~。
仲良くさせてもらってる映画仲間の一人も、こういう映画が作られるたびに「実名で描くのは良くない!」と怒ってますw
監督曰く、「映画は時間の制限上時間軸を飛び越えなくてはいけない」ことや、「可能な限り事実に基づき、敬意をもって製作した」と反対意見を述べていますが、僕としてはちょっと歯切れの悪い回答だなぁと。
「名優が演じてるんだ、これのどこがダメなんだ」とか「これのどこが不快なんだ」みたいないい方は今のご時世まずいので、監督ご注意をw
彼の作品はこちらもどうぞ。
登場人物紹介
- アルド・グッチ【次男】(アル・パチーノ)・・・商才に優れ、NYに支店を出すなど海外進出を積極的に行い、グッチを拡大した人物。
- ロドルフォ・グッチ【四男】(ジェレミー・アイアンズ)・・・女優の妻亡きあと、一人息子を溺愛している。マウリツィオとパトリツィアの結婚に反対する。
- パオロ・グッチ【アルドの次男】(ジャレッド・レト)・・・独自のデザインセンスでブランドの新たな路線をつくろうとするが、経営面ではお荷物となる。
- マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)・・・パトリツィオとの結婚によって父親に勘当され、パトリツィアの実家の稼業を手伝うが、父親と和解後、グッチの経営の中心に。
- パトリツィア・レッジャーニ(レディ・ガガ)・・・輸送業を営む家に生まれる。パーティーで会ったマウリツィオと結婚。アルドやパオロを追いやろうとするなど、グッチを仕切る存在になっていく。
- ピーナ・アウリエンマ(サルマ・ハエック)・・・TVCMを見て電話をかけてきたパトリツィアから数々の悩みを聞き、占いで忠告を与える。(HPより)
帝国に加わった女の強欲な思いは、果たしてどこまでいってしまうのか。
泥沼の展開になること必至の、華麗なる一族崩壊の物語を堪能したいと思います。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#ハウスオブグッチ 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年1月14日
パトリツィア荒らすねえ!!
アルド&パオロ親子に笑ってしまったw pic.twitter.com/adthmzgUEL
お家騒動の真相は部外者のせいなのか、それとも。
やっぱり一族経営はビジネスとしてはよくないよね。
以下、ネタバレします。
俺たちはグッチをよく知らない。
1970年代から殺人事件が起きた90年代半ばまでの30年間に及ぶ「グッチ家」のお家騒動の顛末を、職人リドリー・スコットが見事な編集と美術、さらに主人公2人の馴れ初めから別居に至るまでを、駆け足ながらも丁寧に見せていくことでドラマチックに描くことで、華麗なる一族の栄枯渇水を堪能させてくれた作品でございました。
ファッションに疎い僕らは、そもそも超有名なブランドが一族で経営していたことや、こんなドロ沼騒動があったことすら知らない。
おそらく常にファッションにアンテナを張りながら生活しているファッショニスタでさえも、服飾やアクセサリーに興味はあるものの、一体どこの企業が経営しているのかさえも知らないでのはないか。
まさか3代目がアラブ資本にブランドごと売るとは知らなかったし、そいつらがASローマのファンだなんて知らないし(もしかしたらスポンサーだったのかも)、そいつらがティファニーを再建したことすらも知らない。
あくまで「事実から着想を得た物語」であり、結末しかしっかりした事実ではないと思った方がいいが、家族の経営に興味のなかった男が、ばったり出会ったムチムチで床上手なオンアに骨抜きにされて、気づけば一族の経営にガンガン口出して家族の中を引き裂くまでしてくるなんて、出会ったばかりのマウリツィオが見たらどう思ったろうねと。
さらに言えば、ホテルの従業員としてコツコツ働きながら自身のブランドを設立した初代のグッチオ・グッチは、空の上から部外者パトリツィアによって家族をめちゃくちゃにされてしまったことをどう思っていたのだろう。
というわけで、グッチ家の歴史です。
最高級ホテル「サヴォイ・ホテル」で働いていたグッチオは、フィレンツェで乗馬専門の皮革製品を作り出し、伝統的でありながら洗練されたデザインが評判を呼び、世界的なブランドへと成長したそうです。
ダブルGGによってブランド化が強まったグッチは、第二次世界大戦による素材不足をチャンスに変えた「バンブーシリーズ」や豚の革で作った「ビグスキンバッグ」でさらに人気を高め、よりグッチの名を世間に知らしめていくのであります。
劇中ではロドルフォが手掛けたスカーフを、パオロが小便するシーンがありましたが、あのスカーフも様々なハリウッド女優が首に巻いたことで人気となった代物だったり、バンブーの取っ手が突いたバッグや赤と緑のウェブリボンをあしらった鞄などが登場してました。
お家騒動、またはグッチオが逝去するまでに発表されたグッチの商品は「オールドグッチ」と呼ばれるそうで、世界中のコレクターから未だに愛されているんだそうです。
ちなみにお家騒動は、パトリツィアがやってくる前から6人の息子たちによって勃発はしていたそうで、特にアルドによる海外進出に関してはグッチオは猛反対したそうな。
さらにパオロが社長になった際、これまで富裕層向けにブランド展開してきたのを、中流層にまで引き下げて展開したことにより売り上げが著しく低下。
親父のアルドを怒らせたそうで、劇中通り「バカ息子」は追放されたそうな。
さて、劇中で描かれた通り、弁護士を目指していたマウリツィオはパトリツィアに出会ったことで、人生を狂わされていきます。
父のロドルフォは、妻を亡くし溺愛していた一人息子が、あんなメス豚に奪われるなんてとんでもない!と猛反対していたのも事実だそうですが、病気になるまで親子の関係が良くなかったかは不明です。
劇中ではロドルフォとアルドが株を50%ずつ保有していたために、アルドの経営がロドルフォによって阻止されたりするなど、非常に良い均衡状態を保っていましたが、ロドルフォが死んだあと、マウリツィオにグッチの株の50%が譲渡されます。
そしてパトリツィアの悪知恵によって、親父に追放されたパオロをうまく丸め込んで、アルドを失墜に追いやることに成功。
さらに株を売らせ50%以上を手にしたことで、これまでグッチの実権を握っていたアルドを追放することに成功。
マウリツィオはこれで社長に就任し、パトリツィアの念願の夢がかなうわけです。
パトリツィアも「女帝」の如くデカい態度で経営に口を出し、オリジナル商品を作ったりしたそうですが、やはり血のせいなのかそれとも単純にファッションセンスがなかったのか、売れ行きはパッとしなかったそうです。
さらに、パトリツィアのあまりの口ぶりや辱めを受けたことに対する罵倒に嫌気がさしたのか、マウリツィオはを彼女を捨てて友人の女性パオラと共に暮らし始めたんだそう。
結婚までこぎ付け、欲の限りを尽くすために占い師を雇い、グッチ家を崩壊まで追い込んだ諸悪の根源パトリツィア。
劇中でもマウリツィオの留守番電話に脅迫めいた伝言を残したり、裁判でも「愚痴夫人と呼びなさい」というあたりは、もう肝が据わり過ぎていて驚嘆でしたし、マウリツィオの殺害を命じておきながら、彼が死んだ後に速攻で裁判所へ赴き、自宅の差し押さえをしてパオラを追い出したのは事実だそうな(マジ怖い)。
というか、何でしょう歴史で天下を取ろうとする人物の影には占い師がいたなんてよくある話ですが、まさかおとぎ話でも昔話でもないこの3~40年の間で、占い師の予言に頼って(というか背中を押すだけにしか見えなかったけど)、行動を実行しているやつがいるんですねw
他にも劇中ではトム・フォードが登場。
実際に彼をデザイナーとして呼び寄せたことで、グッチの評価は再び上昇しブランドの地位を守ったそうで、彼がいなくては今のグッチはないと言っても過言ではなかったのでしょう。
今や彼は自分の名を冠にブランド展開したり、映画監督としても成功したりと、ものすごい才能で世界を驚かせていますが、全ての始まりはグッチだったというわけですね。
褒めポイントと不満ポイント
自分の感想を織り交ぜながら簡単にグッチ家の歴史をまとめてみましたが、いい加減作品の評価はどんなもんなのよってことで、ザックリ語っていこうと思います。
物語全体に関して言えば、リドリースコットらしい編集で要所要所に時間を割く一方で、時間軸を上手く飛ばした物語の進行は良かったと思います。
一体今どのあたりなんだろうってのは、例えば娘の成長とか見れば一目瞭然だし、次のエピソードへ移る瞬間は、余韻を残すことなくどんどん進んでいく。
それこそトラック運送を営むレッジャーニ家のオフィスでおっぱじめた途端に結婚式へ移ったり、それが終わればすぐさまアルドが登場し、スムーズにマウリツィオと結び付けていく話の流れはさすがだと思います。
しかし、パトリツィアの強欲な感情がむき出しになることで始まる「グッチ家崩壊物語」までがどうも長いです。
モンキー的には序盤が好きなんですが、やはりもっとかいつまんで描く必要はあった気がします。
馴れ初めやロドルフォとの確執、それこそパオロとロドルフォの掛け合いなんぞ飛ばして、序盤はアルドとパトリツィアとマウリツィオの3人にフォーカスをあてれば事が済むし、ここからパトリツィアの欲深さが開花し始めていくので、この辺りまでは駆け足が良かったかなぁと。
後半もかなり失速していきますね。
グッチ家の主要人物もしっかり描かないといけないのは理解してます。
ハウス・オブ・グッチなわけですからパトリツィアメインであるものの、お家騒動の中身まで描かなくてはいけない。
だから結果的にお祓い箱にされるアルドとパオロのエピソードも必要不可欠であると。
出所後パオロの自宅へ招かれたアルドが、まさか自分が実刑を受けている間に息子によって株を売ってしまうなんて思いもよらず「バカ野郎!!」と叫びつつも、息子を抱きしめ「お前はバカ息子だ」と語るシーンは爆笑モノですし、経営やデザインに向いていない無能な息子でも愛を注ぐ姿は、バカバカしくも微笑ましい名シーンの一つだったんですよね。
株の譲渡のサインを強制させられるシーンも必要だったんですが、彼ら親子とマウリツィオにばかりフォーカスが当たっているせいで、どうも集中力が切れてしまう。
この間にパトリツィアが水面下で一体何を企んでいるのかを描けば映画的に巧く見せられた気がしたんですが、実際問題そっちのパターンを見ないとなんともなぁとw
とにかくエピソードをかなり省略して作られたにもかかわらず、長尺ならではのスローなテンポで運ばれる作だったり、起伏が少ない物語であったことがネックになっていた気がします。
それでも素晴らしかったのはレディ・ガガの演技。
イタリア訛りの英語をしっかりマスターし(そもそもイタリア系でしたよね)、ヘアスタイルや身だしなみといった細部にまでこだわった役作り、さらには夫であるマウリツィオを罵る場面や、ふてくされながら喫煙する表情を寄りで映す場面や、時折見せる狡猾な表情など、ちゃんとパトリツィアになっていた気がします(パトリツィア知らんのだけどw)。
個人的にはパオロ演じたジャレット・レトが秀逸。
そもそも外見で誰だか見当もつかない変装ぶりだし、喋ってる口調もジャレット・レトだと気づかないくらいの姿。
さらにはフットボールで鼻血出してぶっ倒れたり、「俺は天才だ!」と言いブラウンとパステル調の衣服のデザインをロドルフォに見せて「お前の才能は隠しておくべきだ、無能すぎるから」と言われた時の驚いた表情、金が無くなってきてから乱れていく服装(最後ジャージだったよw)など、最初から最後まで「グッチ家の厄介者」扱いであり「グッチ家のはみ出し者」扱いされながら生涯を閉じていくのが、キャラとして非常に可哀想でもあり物語になくてはならない存在で、愛おしく感じましたw
アル・パチーノも富を得たことで傍若無人な態度をとり続ける典型的な奴を見事に演じていたしたし、彼と対照的にファッションをアートと捉える品の良さが全身から溢れていたロドルフォを演じたジェレミー・アイアンズも良かった。
もちろんどこか優柔不断が故にパトリツィアに振り回されてしまうマウリツィオを演じたアダム・ドライバーも、頭が良さそうだけどファッションにはあまり興味がないんだなぁ、しかも経営のセンスもねえのかwって感じの抜け感が出ていて良かったですね。
最後に
僕自身過去に一族経営をしていた職場で働いていたことがあるんですけど、まぁいい話は聞かなかったですね。
お家騒動や後継者争いはなかったんですけど、上層部が全員家族なので有能な人材が上に行くことはなく、業績も右肩下がりだったり、これ要る?というような行事や月次業務ばかりで、上司たちはそれに頭を抱え毎日残業ばかり強いられていて可哀想だったなぁと。
愚痴もすごかったしなぁw
大名行列みたいなのもあったなぁw
マジあれ権威を見せつける以外、何の意味があるのさ。
本作の場合一応事の発端はパトリツィアによるものとされてるけど、実際グッチ家は初代が亡くなったことでうまくいってなかったってことです。
今やグッチ家がグッチに関わることはできず、劇中人物の子供世代が裁判で争ってるようですが、正直ファストファッションに身を包んで慎ましく生活ししている僕にとっては、どうでもいいこと。
そもそも「自分はファッションで世界をまわしている」気になっているセレブ気取りのファッション業界の人たちが嫌いなのでw
最後に今回勝手ながら参考にさせていただいた記事を紹介したいと思います。
劇中の騒動がどこよりも詳しく書かれているので、ご興味ある方はこちらからどうぞ。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10