ハニー・ボーイ
時代の移り変わりとともに、日本もアメリカも「名子役」という存在は必ずおりまして。
遡れば「タクシードライバー」のジョディ・フォスター、や「レオン」のナタリー・ポートマンなんてのは今でも語り草ですよね。
他にも「ホームアローン」で世界を席巻したマコーレー・カルキンくん、
シャマランやスピルバーグに見出された「シックス・センス」のハーレイ・ジョエル・オスメントくん。
「アイ・アム・サム」で世界中を涙させたダコタ・ファニングなどなど。
どれも強烈な印象を与えた子たちばかりです。
現在の名子役といえば、「ギフテッド」のマッケナ・グレイスちゃんや、「ルーム」のジェイコブ・トレンブレイ君が有名です。
そしてこの2大名子役の中に加わろうとしている子が一人いるのをご存じでしょうか?
そう、ノア・ジュプくんです。
ここ数年の話題作に何作も登場している彼。
同僚と、
「あの映画見た?」
「観た観た、面白かったよね~。」
「前に薦めた映画覚えてる?あれに出てた子だよ」
「え?あの映画の子なの!?」
なんて会話をよくするんですが、ノアくんもその一人。
意外と気づかれてなかったりするんですよね~・・・
でも、今回彼の初主演作ということで、日本でも一気に注目されたいと密かに願っております。
彼、きっと10年後はクソイケメンになってることでしょう。
既に甘いマスクが出来上がってますもの。
どうか、マコーレー君のような非行に走らず、ハーレイ君のようにおデブちゃんにならないように祈っておりますw
というわけで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
サンダンス映画祭で審査員特別賞に輝いたのを筆頭に、世界各地の映画祭で9つの賞を獲得した作品がいよいよ日本に上陸。
子役としてスタートし、「トランスフォーマー」で脚光を浴びたシャイア・ラブーフの自伝的作品で、脚本と父親役で出演した本作。
トップスターになるもトラウマを抱える主人公が、原因を突き止めるために子役時代を振り返り、問題の多かったステージパパとの関係に向き合っていく。
数々の作品で才能を見せつけた子役俳優が今作初主演を飾り、子供ながらに大人になろうと背伸びして演じる姿と、健気で優しい瞳で我々の心を締め付けていく。
忘れていた「痛み」に向き合う時、一筋の光が訪れる。
あらすじ
若くしてハリウッドのトップスターに躍り出たオーティス(ルーカス・ヘッジズ)は、撮影に忙殺されるストレスの多い日々の中で、アルコールに溺れるようになっていた。
2005年のある夜、泥酔して車を運転し事故を起こしたオーティスは、更生施設へ送られる。
そこでPTSDの兆候があると診断され、「まさか」と驚くオーティス。
原因を突き止めるために、今までの思い出をノートに書くようにと言われたオーティスは、過去の記憶を辿り始める。
真っ先に思い出すのは、父のこと。
10年前の1995年、子役として活躍する12歳のオーティス(ノア・ジュプ)は、いつも突然感情を爆発させる前科者で無職の“ステージパパ“ジェームズ(シャイア・ラブーフ)に、振り回される日々を送っていた。
そんなオーティスを心配してくれる保護観察員、安らぎを与えてくれる隣人の少女、撮影現場の大人たちとの交流の中で成長していくオーティスは、新たな世界へと踏み出すのだが──。(HPより抜粋)
監督
今作を手掛けるのは、アルマ・ハレル。
父と息子の物語ということで、男性監督を想像してたんですが、女性でしたか!
彼女が手掛けたドキュメンタリー映画「ラブ・トゥルー」に、シャイア・ラブーフがエグゼクティブプロデューサーとして参加したり、彼女が監督したシガー・ロスのMVに彼が出演したりした縁があり、ラブーフが初めて書いた脚本を最初に見せたのが彼女だそう。
独特の美学を持つ才能を持つ彼女は、ポン・ジュノ監督から「2020年代に注目すべき気鋭監督20人」の一人に選ばれたんだとか。
何気ない会話の中で父親の話へとスライドし、共感したと監督。
ラブーフは当時リハビリ治療を受けていたそうで、彼の治療の一環も兼ねて、現行のやり取りをしながら映画製作の作業を進め、無事完成したとのこと。
一体どんな作品に仕上がっているのでしょうか。
ラブーフの脚本、演じる父親も含めて楽しみです。
キャスト
今作の主人公、オーティスの子供時代を演じるのは、ノア・ジュプ。
冒頭でも書きました通り、今を時めく子役スターであります。
クラスにいたら確実に持てるイケメンフェイスであることはもちろん、屈託のない笑顔と優しい眼差しで、物語を温かい雰囲気にさせてくれる役者さんではないでしょうか。
そんな彼の代表作をサクッとご紹介。
TVドラマでキャリアをスタートさせた彼は、ヒトラーに次ぐ実力者として知られる男ハイドリヒの暗殺計画の行方をスリリングに描いた戦争サスペンス「ナチス第三の男」で映画デビュー。
その後、一見平和な街を舞台に、住民たちの秘められた悪意が引き起こす事件の顛末を、ヒッチコックオマージュとブラックな笑いで包んだ、ジョージクルーニー監督作「サバ―ビコン 仮面を被った街」、
顔に障害のある男の子が、いじめや偏見に遭いながらも、家族の愛情に支えられながら、クラスメイト達と友情を育んでいく「ワンダー 君は太陽」、
音に反応する❝何か❞に脅えながら生活する家族のサバイバルの行方を、極度の緊張感で描いたホラー映画「クワイエット・プレイス」などがあります。
近年は、60年代のル・マン24時間耐久レースを舞台に、絶対王者フェラーリを倒すためにフォード社から勝利を命じられた二人のはみ出し者の、熱き友情と不可能への挑戦をダイナミックな迫力とリアルなレースシーンで興奮の渦に巻き込んだ傑作「フォードVSフェラーリ」に出演。
また、「クワイエット・プレイスpart2」にも出演とのこと。
他のキャストはこんな感じ。
ステージパパのジェームズ役に、「トランスフォーマー」、「ピーナツ・バター・ファルコン」のシャイア・ラブーフ。
大人時代のオーティス役に、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、「WAVES/ウェイブス」のルーカス・ヘッジズ。
シャイ・ガール役に、本作映画初出演の音楽アーティスト、FKAツィッグスなどが出演します。
シャイア・ラブーフ渾身の脚本に今後注目の女性監督、さらに将来有望な若手俳優とネクストブレイクばかりが集った今作。
大人になって知る「愛」とはどんなものなのか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
これ思いっきりシャイア・ラブーフの話なんだね・・・。
息子への歪んだ愛情、父への真っ直ぐな愛情。
痛みを解放し、ようやく本来の自分を取り戻す、ラブーフ自身のセラピー映画でした。
以下、ネタバレします。
これで彼のキャリアも安泰になるのか?
人気絶頂のさなかに起こした事故をきっかけに、PTSDを治すため暴露療法に踏み切った主人公オーティスが、10年前に過ごした父との生活を振り返ることで、本来の自分を取り戻そうと葛藤する物語。
ここ1年毎日酒を飲んでいた私ですが、先々月友人宅での宅飲みで泥酔し、道端で寝転んでは嘔吐を繰り返す愚行をしでかしたことを機に、酒を断ち、その代わりに筋トレで汗を流すライフスタイルに変えることで、日々の脂肪とストレスを燃焼する生活を送っています。
何自分語り始めてんだって?
いいじゃねえか!ラブーフだって自分の話を映画にしたんだから!
というのは冗談で、アルコールに頼ってばかりの生活は、周り回って自分を破滅に追い込むのだな、体たらくな生活にさせるんだな、と改めて思ったのです。
しかしながら、コロナの自粛期間中毎日酒を煽りながら見ていた自宅での映画鑑賞がぴたりと止まってしまって、家ではシラふで映画が見られなくなってしまったことが、現在の悩み。
何とかしようと現在自宅映画の生活を取り戻すためにリハビリ中でございますw
何故に酒の話をしたのかというと、オーティスも酒の飲み過ぎで事故り、さらには彼の親父もまた酒で人生つまづいた経緯があり、今回の映画を観てここ最近の自分を見てる、というと大げさですけど、何か通じるものがあるなぁと、自分と重ねて見ていた節があったからです。
アル中の夫婦から生まれた子供はアル中になる、なんて話聞いたことないけど、正にオーティスの親父・ジェームズがそう。
戦争に行きストレスで除隊、解消するかのようにアルコールに溺れ、レイプ未遂を犯しムショ暮らししたり、妻から虐待野郎のレッテルを貼られたり、4年間禁酒したり、しっかり稼ぎ頭の息子オーティスのステージパパとして演技指導やマネンジメント、スタジオの送迎など、オーティスのために公私共に努力する姿が描かれております。
しかしながらオーティスに対しどこか高圧的。
汚い言葉を使ったら叱るってのはわかりますが、オーティスはどこかしら脅えているし、普通の会話が段々エスカレートして、「言葉を慎め」みたいな口論になるし、オーティスが慕うトムという政府の職人にも、メキシコから来た奴が偉そうに何俺に一丁前なこと言ってんだ、俺の息子に近づくな!と、プールへ落としたりと、なかなか暴力的なことだったり暴言を吐いたりってのが日常的に繰り返されています。
とはいえオーティスはジェームズを父親として慕っているのですから不思議。
不思議、というかそれ以外選択肢がないってことなんでしょうか。
ジェームズがいなければ子役としてのお仕事が成り立たないし、ジェームズもまたオーティスがいないと食っていけないわけですから、父と息子という関係よりも役者とマネージャーの関係の方が色濃く出てるなぁという印象です。
その視点はあくまでジェームズであり、オーティスはやっぱり父親らしく振る舞ってほしいってのがどんどん強くなっていくんですよね。
一番印象的だったのはタコスを買いに行くシーンで、手を繋いでたのにジェームズが振り払うんですよね。
きっと誰も見ていないところでは父親になれるのに、誰かが見てるから振り払ったのかなと。
そこからオーティスに気付いた店の客を見て、お前も有名人だな、みたいな皮肉を吐くし、そこから親父の低所得者的な考えとかコンプレックスが沸々と見え隠れしてくるセリフが増えてきて、オーティスが口答えすれば「俺は4年禁酒してるんだ、努力してるんだ だからお前も努力して言葉を慎め」みたいな命令口調が増えてきて、それでも口答えするようなら手を出すという、いかにも定番な虐待親父へと変貌を遂げていくわけです。
どう見たってオーティスが可哀想で、強要されながら役者の仕事を続けることで親父に息子として認められたい一心なのに、理解してもらえない、一体俺はあなたの何なのだ、といったジレンマがオーティスにも沸々と湧いてくるんですね。
ひとり廃車だらけの駐車場でレンガ投げたり棒で車突いたりする八つ当たりが見えたり、人目を避けてタバコを吸ったりすることでストレスを軽減する姿が増えているのを見ると、だいぶ精神的に答えてるんだろうなってのが窺えます。
物語は、大人になったオーティスが施設での暴露療法に挑むことで、現実と過去の回想を行っては帰っての繰り返しをしながら、オーティスのストレスの正体を紐解いていく話なのですが、2005年の冒頭がいかにもトランスフォーマーの撮影をしているシーンで、しかも当時お付き合いされていたとされるイザベル・ルーカスと思われる方とドライブして事故を起こすってのが、正にラブーフの人生と瓜二つ。
ラブーフってトランスフォーマーを機に、インディ・ジョーンズや、イーグル・アイといった大作に引っ張りだこだったのが強烈に覚えてますけど、ここ10年の彼のキャリアって何か大きな作品に出てたっけ?と思うほど、記憶が無い。
それもそのはず、なんか体に文字書いてメディアの前で過激な発言したり、不法侵入したり、最近も酩酊状態で捕まったりと、何かと世間でお騒がせな俳優として認知されてしまってるから、大きな映画からはしばらく遠ざかってたんですよね。
劇中では施設で先生の言うとおりにするんだけど、子役から培ってきた演技がが沁みついているせいで、本来の自分として心を解くことができてないってのが如実に描かれてるんですね。
特にプールで自分自身をハグする行為をみんなでやろうってシーンでは、こんなバカげたことできるかよ、と先生に悪態ついて、だったらお前森で叫んでこいよ、効果覿面だぞ、と、逆に小バカにされたようなアドバイスをされれも、やってみたら意外とすっきりしたんだけど、なんか腹立つから先生に「おかげですっきりしたよ」っていうんですけど、これがもろに芝居がかったような言いぐさで、先生にはバレバレ、んだよ素直になったらこれだよ、みたいな不貞腐れ。
ドアを思いっきり占めて怒りを露わにしている、なんてのが描かれてます。
そして後半、ようやく自分のストレスの要因である父親のことをノートにまとめて感情をむき出しにして先生に話すんだけど、まだ解放できてない事を先生に見透かされてしまうわけです。
彼が本来の自分に戻るために下した最後の手段は、親父に会いに行くこと。
過去を思い出すのではなく、実際に過去と対面して、決別していた父=痛みと、関係のわだかまりを解こうとしたんですね。
かつての職業だった道化師の姿をして登場したジェームズは、きっと父親を演じるということで彼との関係を修復しようと試みたのか。
オーティスも痛みでしかなかった親父との対面を、役者として演じたのか。
正直、ここまでラブーフの自伝だと思ってなかった自分としては、この答えはよく分からないんですけど、実際に親子関係を修復した、みたいな内容のインタビューがあった、というか、この映画を製作する条件が親父と会うことだったらしいので、どれだけ自身の映画なんだよ!と思いはしますが、これでラブーフのキャリアが上昇志向になるのなら、大歓迎な映画だったのではないでしょうか。
最後に
もうちょっと書けるけど、今回はこの辺で。
ロープにつられて撮影を終える2005年のオーティスと、パイを投げつけられる1995年のオーティスが対比していたり、プールでのリハビリ中に、プールに入るという回想シーンの入り口といった映画的な演出も冴えてたし、モーテルの紫色の照明を活かした幻想的な映像もグッドでしたね。
ラブーフも自身の父親を演じるという難役を見事にこなしていたし、その息子を演じたノアくんの痛みに苦しみながらも父に縋りたい気持ちを、細かな表情で使い分けていたし、何より大人のオーティスを演じたルーカス・ヘッジズが素晴らしかったですね。
とはいうモノの、物語としての構成というか、感情の波風の立て方、高低差とでもいうのか、そこまで大きな変化が無く、あっさり終わってしまった印象。
そしてラブーフの闇が深くて、親が親なら子も子なのか、とさえ思ってしまうほど大変な時期を過ごしてきたんだなぁ、と、作品の良し悪しよりも彼に同情してしまう方が強く出てしまった気がします。
まだ人生半分も達していない彼の自伝的映画。
この映画からのラブーフは、要注目ですね。
二度と奇行や愚行を繰り返さずに、立派な俳優としてお芝居してほしいなと思います。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10