モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

Netflix映画「ハウス・オブ・ダイナマイト」感想ネタバレあり解説 大国に「核」が落ちるまで。

ハウス・オブ・ダイナマイト

2024年のNetflixは、なぜか劇場公開されませんでした。

あれだけ賞レースに力を入れていたネトフリは、もう映画では力を入れないのか?

じゃあ今年も配信だけなのね…と思っていたら、日本では3作公開されるとのこと。

 

その第1弾とも呼べるのが、この「ハウス・オブ・ダイナマイト」であります。

相変わらず事前情報も少なく、雑な公式サイト、そして劇場数が鬼少ねえ!

 

配給会社が抱えるシネコンではかけることができないという、しょうもねえ大人の事情でこうなってしまってるわけですが、せっかくネトフリさんのご厚意で劇場で見れるわけですから、何とか足を運んで堪能したいと思います。

 

…そもそも今ネトフリ加入してないんでねw

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

1867年にデトロイトで起きた事件を題材に、陸軍州兵による民間人への無慈悲な行為を余すことなく描いた「デトロイト」以来、8年ぶりとなるキャスリン・ビグロー監督のオリジナル作品。

 

出所不明のミサイルがアメリカに向けて発射されたことから、大統領はじめホワイトハウスの人間たちが混乱に陥りながらもどう対処するかを、監督らしい重々しさとスリリングな展開によって、まるでシミュレーションの如く見せていく。

 

ハートロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティー」など、戦争をメインにした題材の多いビグロー監督。

今回核ミサイル攻撃の危機に直面するアメリカを多角的な視点で描いた主な理由として、核兵器の削減へ望みと、現実問題今我々の住む世界はダイナマイトの家の中に住んでるようなもの、だからこそ本作を通じてこの事実を広めたいと、初披露となった第82回ヴェネツィア国際映画祭の会見で語った。

 

キャスト陣も監督作品史上最も豪華な布陣となった。

アメリカ大統領役には、「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」、「ヘッド・オブ・ステイト」ではイギリス首相も演じたイドリス・エルバ

本作の主人公ともいえる海軍大佐役には、「DUNE」シリーズのレベッカ・ファーガソン

大統領副補佐官役を、「陪審員2番」のガブリエル・バッソ、国防長官役を、「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」のジャレッド・ハリス、戦略軍司令官役を、「フォードVSフェラーリ」のトレイシー・レッツ、軍事基地の司令官役を、「ツイスターズ」のアンソニー・ラモス、NSAの北朝鮮専門家役を「パスト・ライブス 再会」、「トロン:アレス」のグレタ・リー、海軍大将役を「オッペンハイマー」のジェイソン・クラーク、国防長官の娘役を「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」のケイトリン・デヴァーが演じる。

 

ここ数年激化する侵略や領地をめぐる争い。

抑止力として保持を続ける国が増える中、もしその境界線を越えたらどうなるか。

世界のリーダーである大国の判断は。

 

デトロイト(字幕版)

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ゼロ・ダーク・サーティ (字幕版)

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あらすじ

 

ある日アメリカに向けて正体不明の核ミサイルが発射される。

 

この突然の極限事態に対し、政府関係者、専門家、軍人らはそれぞれに対応を迫られることに。

 

そして、刻一刻とタイムリミットが迫る中、このミサイル発射の真相を解き明かそうと奔走する者もいて……(映画ナタリーより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

いやぁヒリヒリした。

良い1日を迎えようとしたのに、飛来する爆弾のせいで最悪の1日と化す。

役人も大統領も人間、迷う者も嘆く者もいれば、報復しようとする者もいる。

核がもたらす未曽有の危機を迎えるまでのシミュレーションが、がこの映画に詰まっていた。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ビグローらしい。

相変わらずネトフリなので事前情報も少ない中、どんな内容なのかドキドキしながら見ていたが、まぁヒリヒリした。

 

冒頭からものすごい音で爆発する爆弾を見せた後、危機管理室で働く大佐演じるレベッカ・ファーガソンや、上司のジェイソン・クラークなどが中国で行われている軍事演習を監視。

 

同僚は仕事後に指輪を買いに行く予定だと明かしたり、レベッカ演じるオリヴィアは、熱を出している子供が気がかり。

政府の仕事という重要な責務を果たしながらも、彼らもまた我々と同じ家庭があり生活があることが示されていく冒頭。

 

一方アラスカの軍事基地では、アンソニー・モラス演じるダニエル少佐が妻と揉めている。半年で戻るからと説得するも、どうやら帰ってこない夫に嫌気がさし離婚を考えている様子。

話が進まないことに苛立つダニエルは、ついお菓子を食べながら任務をしている同僚に八つ当たりしてしまう。

 

そんな中突然、未確認の大陸弾道ミサイルが確認される。

 

本作が面白いのは、ミサイルがどこから飛ばされたのかわからないという点。

劇中ではたまたま衛星がミスをして発射地点を確認できないことが明かされていた。

これが物語の後半でサスペンスを盛り立てるんだけど、僕としてはこの設定が正に「現代の映画」だなと思った。

 

かつてのハリウッド映画なら、冷戦下の時代だったからソ連やロシアを敵国と見做しての戦いを描いてたし、それから時代を経て中国、北朝鮮、中東と今でも監視対象の敵国が、映画の中でも敵国と見做して描かれていたことが、当たり前だったから。

 

いつからか敵国に設定された国では「上映禁止」になっているニュースをよく目にする。

「勝手に敵国にすんじゃねえ」、そう思う国の気持ちも分かるが、フィクションだというのにそうした設定がセンシティブなモノになってしまい、配慮せざるを得ないことから、今の戦争映画やこうした作品ではものすごく曖昧なモノになってしまっている。

 

 

話を戻しましょう。

試験飛行だと思っていた爆弾は、傾斜していた状態から水平へと軌道を変え、アメリカに向かっていることが確認される。

国への脅威を監視しているオリヴィアは、すぐに行動を開始。

大統領や国防長官を始め各高官らを招集し、安全保障会議を始めていく。

 

アメリカに着弾するまで19分しかないという緊急事態に、幾度も訓練や演習をしてきた面々は動揺を隠せない。

ロシアの外相から電話がかかってきたり、デフコン(危険度レベル)が4から2へと上がる中、アメリカのどこに落ちるかを予測していく。

ダニエルのチームは上官の命令により迎撃ミサイルを発射するが、命中に至らず絶望を抱き始める。

 

標的はシカゴ。核が落ちれば約1000万人に被害が及ぶ計算がされる。

もちろん放射能による汚染で都市としての機能は停止し、周囲の都市にも想定できない被害が及ぶことは容易だ。

 

オリヴィアの上司や高官たちに避難命令が下り、核シェルターへの移動が余儀なくされる。

残された面々は抗えない絶望を前に、打ちひしがれる者、それでも抗おうとする者と多様な表情が見える。

 

残り6分。敵国と見做す国に対し、報復攻撃をする提案が浮上。

国家安全保障担当副大統領補佐官のジェイクは、北朝鮮の内情に詳しい専門家のアナにコンタクトを取り、北朝鮮が原潜を保持しているかの情報を収集する。

 

可能性は0ではないという情報を材料に、報復をするか否かを迫られる大統領。

迎撃ミサイルを発射したことで、ロシアや中国も臨戦態勢に入っていることが危機管理室で確認された。

 

どこが撃ったかもわからないのに、どこに報復攻撃をするのか。

攻撃をすれば「戦争」となり、攻撃を止めれば国民が黙ってない。

 

シカゴに着弾するまで残り僅か、大統領は起爆コードを読み上げ、起爆装置のボタンを押すのか押さないのか、決断する寸前で物語は幕を閉じる。

 

 

本作は、この19分間による緊迫した模様を、3章に渡って映し出します。

1章目は、大佐のオリヴィアと、アラスカの軍事基地にいるダニエルを中心に、2勝目はアメリカ戦略軍(STARTCOM)の軍事将校ブロディ将軍と、国家安全保障担当副大統領補佐官のジェイクを中心に、そして3章は国防長官と大統領を中心に、3つの視点で描いてます。

 

1章では、母でもあるオリヴィアの「家族を守りたい」想いが切実に映し出され、見る側も悲痛な気持ちを抱きながら見つめることになります。

 

しかし2章では将軍という肩書故に報復攻撃を辞さない姿勢を見せる反面、急きょ代理で会議に参加したジェイクが、他国との窓口となって対話をしながら攻撃を制止するよう説得する姿がメインとなって映し出されます。

 

そして3章では、ケニアで象の保護のための視察をしている大統領夫人と衛星電話をやりとりをしたり、女子バスケチームを訪問する大統領の姿、そしてシカゴに住んでいる娘の安否を心配する国防長官の姿などをメインに、決断の時が迫るまでを映していました。

 

政府関係者のあらゆる視点を見せることで、もし核爆弾がアメリカに飛来したらというシミュレーション的展開を、ドキュメンタリータッチで見せていく本作。

人間ドラマでもありながら、短い時間で何をどうすればいいかや、危険度レベルが上がる度に慌てふためく面々の姿が物凄くリアルです。

 

ビデオ通話でも議論が白熱するし、気が付けば着弾への回避から報復攻撃へと話題はスライドしていくのが、いかにもアメリカだなぁと。

 

将軍の話を聞いていれば一理あるなとも思ってしまった報復攻撃。

要はこれが1発目で、2発目があるかもしれない。

そうなった時に国としてどう対処するのが適切なのか、世界のリーダーであるアメリカがすべきことは報復でしかないという意見はもっともだとも思う反面、果たしてそれは「正解」なのか?と見ながら葛藤していた自分がいました。

 

急きょ招集された会議で必死に報復をやめるよう説得するジェイクの切迫した表情や意見は、きっとビグローの思いだったりするのかもしれません。

目には目をのような発想や考えは、結果的に負け戦であるし、何より何も良いことはないと。

 

 

最後に

こんな緊急事態では一般市民を避難させることは愚か、政府の人間にまで伝達することもできない。

本当に「生存してなくてはいけない人物」にのみ核シェルターへの移動が許され、選ばれなかった人間はそれに反感を抱く姿まで映るので、よくできた映画だと思います。

 

爆薬に囲まれた家=アメリカという意味が正直よくわからなかったんでんすが、要するに、アメリカに核を撃とうモノならば、それが火種となって世界中が火の海になってしまう事を指しているんだろうと。

着火剤に火を放てばたちまち世界は大爆破に見舞われ、誰も救われることのない事態=終末を迎えることは容易だということなのかと。

 

劇中の大統領は、マニュアルすらよく理解してないし、着任して疲弊している姿や判断に迷うなど人間味のあるキャラとなってましたが、では実際の大統領はどうだろうと考えると、瞬時に報復をするよなと。

それは9.11の際もブッシュがやってるし、劇中でもわざわざゲティスバーグの戦い再現イベントを映していることから、どれだけの人が死ぬかを可視化させたシーンだったのではと。

 

また、核は本当に抑止になるのかという点ですね。

結局撃ち込む意思があれば撃ち込むし、撃ち込まれても核は決して誰も守ってくれない。

寧ろ報復と称して核を使う。それが一体何の「抑止」なのか。

 

オバマ元大統領が「核なき世界への実現」への姿勢を示した日からもう15年以上絶ちます。

あれから何か変わったのでしょうか。むしろ後退してませんか?

是非本作を見て、色々考えてみてはいかがでしょうか。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10