モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ハミングバードプロジェクト/0.001秒の男たち」感想ネタバレあり解説 夢は真っ直ぐな方がいい。

ハミングバード・プロジェクト/0.001秒の男たち

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急がば回れ、ということわざ。

急いで物事を成し遂げようとするとき、危険を含む近道を行くよりも、安全確実な遠回りを行くほうがかえって得策だ、という人生の教訓ともいえるお言葉。

目標や目的地などの様々なゴールに、誰よりも早く誰よりも急いで向かいたくなる気持ちも十分わかるんだけど、本当に早くたどり着ける道のりは直線でなく曲線だと。

 でも本当のところ、一直線で早くたどり着けた方がどんなに平坦でラクチンだろう、てかイライラせずにいられる、とだれもが思うはず。

 

今回鑑賞する映画は、まさに誰よりも早く株取引を成立させるために、長距離ある光回線を直線で結ぼうと画策する、「善は急げ」な男たちの話。

株取引には0コンマの秒数の差によって儲ける桁が全然違ってくるそうで、ぶっちゃけ急がば回れなどと言ってる場合じゃないのであります。

そのためにとんでもない大掛かりな作業を開始するんですが、そこにはたくさんの障害が発生するってわけで。

そりゃあそうだよ、だから急がば回れなのに~、と。

 

とりあえず金融業界を舞台にしたお話はどれもこれもスリルがあって栄光があって挫折があってと、金に目がくらんだ人たちのジェットコースターのような人生がめちゃんこ楽しいので、そんなドラマを期待しつつ早速鑑賞してまいりました!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

 

リーマンショックを経て、リスクを負うような荒稼ぎができなくなった大手金融機関の隙を狙って、機械での超高速で大量の売買を実行する「高頻度取引」が徐々に増え始めた昨今。

誰よりも早く先回りすることこそ勝利への近道となるこの取引を、とんでもないアイディアで実現しようとした二人の男たちが実在した。

そのアイディアとは、0.001秒早く取引を成功させるために、証券取引所のあるニューヨークと自分たちのいるカンザスシティ1600Kmの距離を、最短の一直線でつなぐ専用回線を敷く、というもの。

 

わずか0.001秒の短縮のためにとんでもなく途方に暮れた、前代未聞にして無謀であまりにも大胆なプロジェクトは、果たして成功するのだろうか。

様々な試練と難関といった高い壁に何度ぶつかろうとも、絶対引き下がることのできない事態も手伝って、きっと成功できると確信を抱きながら突き進む二人の愚直な姿に、手に汗握るエンタテインメント作品です。

 

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち (文春文庫)

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ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち

ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち

 

 

 

 

 

あらすじ

 

 

ヴィンセント・ザレスキ(ジェシー・アイゼンバーグ)と、従兄弟のアントン(アレクサンダー・スカルスガルド)は、ニューヨークで株の高頻度取引を進めるトレス・サッチャー社で働いていた。

株の取引はミリ秒(0.001秒)単位の差で、莫大な損得が発生するので、ヴィンセントとアントンの会社もそのレイテンシー(遅延)を減らすべく、システムを構築することに血眼になっていた。

トレス・サッチャー社では、マイクロ波タワーの建設や光ケーブルを計画中だが、巨額となる予算などに難航していた。

 

ヴィンセントが思いついたのは、カンザス州にあるデータセンター近辺と、ニュージャージー州にあるNY証券取引所のサーバーまで、1,600kmの直線距離に光ファイバーケーブルを敷くことだった。

 シカゴとニューヨークの間での最短アクセスが可能になり、大金をもたらすという仕組みだ。

現在、17ミリ秒かかるアクセス時間を、16ミリ秒に縮めるだけで、このケーブルを使えば年間500億円以上の収益が見込めるはずだと、ヴィンセントは確信する。

掘削とケーブル用のパイプ埋設のプロフェッショナルであるマーク(マイケル・マンド)とも手を組み、アントンと一緒に会社を辞めたヴィンセントは早速、ケーブルが通る土地を所有する、一万もの物件の買収に取り掛かった。

 

最初は不審に思った土地の所有者たちにも、高額の配当をちらつかせ、買収は順調に進んだ。

水平掘削機によってケーブル敷設が進むが、直線距離で通過するアパラチア山脈は国立公園であるうえに、花崗岩を掘削するのが難しい。

16ミリ秒を達成するのは不可能だと考えるアントンを横目に、ヴィンセントは大風呂敷を広げて政府にコネをもつ要人も説得。

国立公園内を横断する掘削についての許可を取り付ける。

 

ヴィンセントとアントンが突然会社を辞めたことに、上司のエヴァ・トレス(サルマ・ハエック)は怒り狂っていた。

ヴィンセントはともかく、ミリ秒短縮のアルゴリズム作成の天才であるアントンを手放したくないのだ。

エヴァは退職後の彼らの行動を監視。

カンザス/ニュージャージー間のケーブル計画を知る。

0.001秒を短縮するために、ホテルの部屋にこもりきりとなったアントンの居場所も突き止めたエヴァが、ヘリコプターで乗り込んで来た。

そして、かつて社内の重要コードを持って退職した元社員に対し、FBIの力も借りて「国家の脅威」の罪を着せ、8年も獄中生活を送らせたと、エヴァはアントンを脅迫する。

ようやくアパラチア山脈での大掛かりな掘削工事も開始されるものの、エヴァの仕業か、ヴィンセントが集めたスタッフが離れていき、追い討ちをかけるように、彼が胃がんで、余命は1〜2年の可能性が高いと宣告されてしまう。

 

それでもヴィンセントは何とか計画を完遂させようと掘削現場へ戻り、ケーブルも半分の距離は完成した。

彼の病状を知らずに、アルゴリズムの作業を続けるアントン。

そして、しつこく彼らの計画を潰し、あるいは奪おうとするエヴァ……。ヴィンセントが命をかけたケーブル工事は完成するのか? わずか0.001秒のために、熱にうなされるように人生のすべてを賭けた人々が迎える、その結末とは?(HPより抜粋)

 

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監督

 今作を手掛けるのは、キム・グエン

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カナダのモントリオールで生まれたそうで、今回は彼の生まれた場所の近くで撮影に臨んだとのこと。

その理由に、金融取引が行われる都会とのコントラストを最大限に発揮するための自然が必要だったそうで、理想通りのロケーションだったそう。

自然の暗さやもの悲しさを、彼らが向かおうとする深淵や、株式市場におけるミリ秒単位の厳しさを表現したと語る監督。

撮影や場所にもこだわる監督がどのように彼らの状況や心境を表現したのか楽しみですね。

 

そんな監督の作品をサクッとご紹介。

国内での映画を複数手掛けたのち、アフリカの少年兵問題を背景にした異色の戦争ドラマ「魔女と呼ばれた少女」が、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、ベルリン国際映画祭銀熊賞(最終週女優賞)を受賞する快挙を得ます。

その後もデイン・デハーンを主演に迎えたロマンスドラマ「ホワイト・ラバーズ」や、北アフリカとアメリカのデトロイトを舞台に、遠く離れた男女が1台のロボットを通じて繋がっていく異色のラブストーリー「きみへの距離、1万キロ」などがあります。

 

きみへの距離、1万キロ(字幕版)
 

 

 

 

 

キャスト

 今作の主人公、ヴィンセントを演じるのは、ジェシー・アイゼンバーグ。

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彼の演じる役柄のパターンは主に、非モテで弱っちい奴か、めっちゃ賢い奴。

で、これらの役をめっちゃ早口で喋るてのがお決まり。

毎回話すの早くて字幕追うのが大変なんですが、その口調は非常にリズミカルで心地よいんですよね。たぶん彼の声がそうさせてるのかもしれないですけど。

だからあまり怒鳴ったり感情を露わにするような役柄は演じてない気がします。

とにかくスマートかビビリ、みたいな。

今回も予告編で見る限り早口で喋り倒してますね~w

 

彼に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com 

11月には「ゾンビランド」の10年後の世界を描く続編、「ゾンビランド:ダブルタップ」が公開されます。

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

ヴィンセントの従兄、アントン役に、「ターザン:REBORN」、「メイジーの瞳」、「ゴジラVSキングコング」に出演予定のアレクサンダー・スカルスガルド。

彼らの元上司・エヴァ役に、「デスペラード」、「フリーダ」、「ヒットマンズ・ボディガード」のサルマ・ハエック。

マーク役に、TVドラマ「ベター・コール・ソウル」や「スパイダーマン:ホームカミング」でスコーピオン役を演じた、マイケル・マンドなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

我々が知る由もない金融業界で起こっているスピード重視の取引。その競争に勝つためにとんでもないことをしでかす二人の狂騒に心躍らせたいと思います。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

結構ミッション系のお話かと思ったら、かなりシリアス。

速さを求めた夢想家たちの顛末に何を思うか…。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザックリと語ります。

直線距離1600kmの地下に光回線ケーブルを引くという前代未聞の計画に奔走する2人の男たちと、それに巻き込まれた者たちの夢と欲としのぎを削った戦いの一部始終の中で、難攻不落の地点にどう挑むかというミッションや、それによる資金繰りが困難になっていくという積み重なる無理難題、さらには演者たちの個性あふれる芝居で作品を輝かせ、たどり着いた答えに唸らされた、見た目とは裏腹に渋い1本でございました。

 

いきなりこんなこと言うのもなんですが、やっぱり速さにこだわることでの利点てすごくあって、僕のブログがそれにあたるんですけど、今とにかくスピード重視の世界で、情報をどれだけ早く提供できるかで他を出し抜いて注目を浴びることで、独占し収入を得るっていう。

いやらしい話ですけど。

株取引もだいぶ前から何だろうけどそれがトレンドでスタンダードになっているわけで、なんでもかんでも早いにこしたことはねえんだなって。

でもこれってめちゃんこ自分中心なんだなって身につまされた部分もありまして、映画の事で言うと、株を買いたい人がトレーダーに注文して儲けるってのが手段の中で、じゃあその株を買った会社の従業員の事は無視していいのかい?っていう。

僕のブログで言えば、まだ見てない人にネタバレしてまで自分の感想をネットで公開してもいいのかい?っていう。

それによって被害を受ける人も多いわけで、劇中でもアーミッシュの人が言っていたけど、金と速さは悲劇と争いしか生まれないってまさにそうだなぁと。

凄く正論なんだけど今この冷え込んだ消費で不況の時代で、背に腹は代えられないのっぴきならない事情ってのがどうしてもあって、やはり人の欲ってのは底知れないわけで。

とまぁ、いきなりどうでもいい感想から入ってしまいましたが、作品としては笑える要素が結構あるんじゃないか、と思ったけど案がシリアスに事が運ばれていくんだなぁと、予告編での狂騒ぶりはあまり感じない、そこそこシリアスなお話でした。

 

どこよりも速く取引を成功させる目的で挑む二人の長く険しい道のりは、冒頭で触れた内容でで考えると、実は「善は急げ」よりも「急がば回れ」のように見えたなぁと。

表面的にはどこよりも速い回線を作るためにとにかく回り道などせずに直線にこだわってるわけですけど、その過程で考えると、その夢を実現するためにかなりの根回しや作業員たちの雇用、さらには秘密保持契約などの書類や顧問弁護士との密な打ち合わせなど、様々な点において用意周到であり、それって急がば回れの精神なんじゃねえかと。

ほんとに急がば回れでやるならここまであらゆる局面を想定してやらないよねぇと。

それでも崖から水が出て芯が折れた!とか、川を4つも越えなきゃいけないとか、ヘリで重機輸送しなきゃいけないとか、まさか自分のいた会社から邪魔されるとか、FBIに目付けられるとかっていう様々な降りかかる問題が湧き出るように出てきてしまうってのが実際にあるわけで、胃を痛めてまで対処するヴィンセントの苦悩に対して、ほれみてみぃ!ってならんのがこの映画の面白いところかなぁと。

 

 

冒頭で自分たちの計画に出資してくれるどこぞの会社のCEOっぽい人に、「真っ直ぐ進め」という夢を見てから今回の計画をずっと夢見ていた、と語るヴィンセントでしたが、夢を実現させる道のりって、絶対曲線でなく直線だと思うんですよ。

例えば僕の子供のころの夢はミュージシャンになって東京ドームでライブするって漠然としたものだったんだけど、その夢を叶えるためにやっぱ歌練習して楽器やって歌作ってライブやってってことを繰り返していくことが夢の実現の一番の近道で、それってすごくゴーストレートなことで、その過程で様々な誘惑や年齢による障害とか将来のこととか人生の保険とかそれこそ才能の限界とか、様々な壁が立ちはだかっていて。

何が言いたいって、この映画もそれだったんじゃないのってことで。

アカン、段々遠回しになってきたwやはり大きな夢にはそれ相応の障害がつきものっていうことをこの映画は示してくれたんじゃないかなってことが言いたかったですはいw

その壁を避けて先へ進んだとしても避けた分辿り着くのは遅いし、それで夢を達成したとしても達成感は果たしてあるのだろうか、楽してたどり着いた場所の景色は果たして絶景なんだろうかと。

だいぶ深読みで的外れな感想になってますが、この無謀な挑戦に挑んだ二人は途轍もない代償を食らってしまいましたけど、挑戦してよかったと思える背中をしていたなぁと。

マークが言ってましたけど、目的地へたどり着く以上に、人とのつながりと人生の教訓を得たってお話でしたよね。

 

 

あと語りたいのは何だろ、アレクサンダー・スカルスガルドのお茶目な役柄が良かったですね。

ヴィンセントに頼まれた形で会社を辞め計画に乗るという、若干流される立場かなぁと思ったんですけど、ちゃんと彼なりの夢がある設定。

この計画で儲けたら、誰にも邪魔されず丘の上で静かに自分の好きなことして暮らすってのが彼の夢。

で、彼はいわゆるデスクワークが主な仕事で、ホテルに缶詰め状態になりながら、ミリ秒単位で早くなるコードを作っていたんですが、ここに行くまでの移動手段に飛行機を使うんですけど、どうやら飛行機がニガテ。

離陸してない状態の機内で落ち着きがなく水をがぶ飲み。ヴィンセントに寝ちゃえばすぐ到着とリラックスさせられるけど、途中乱気流に突っ込むよ、という機長からのアナウンスに急に発狂しだしてしまう件は、結構笑えました。

他にもホテルのテニスコートで一人ラリーの練習して気分転換してるシーンとか、FBIに追いかけられて重い体で全力疾走してる姿はどこかコミカルだったなぁと。

 

逆にヴィンセントに至ってはアイゼンバーグそのものと言っていいほどのクオリティ。

やはりめちゃめちゃ早口でスポンサーには口八丁手八丁でうまくお金を出してもらうテクニックや、胃がんが進行しても危機管理はしっかり行うしっかりした部分は、これまで見てきた彼の作品でもよく見た光景で、既視感はありつつもこれぞアイゼンバーグだなぁと。

それ以上に彼が病気にも計画にも追い詰められていくことで冷や汗浮かべて、最後にはげっそりした顔で出てくるのが新鮮。

あ~こういう引き出しは今まで見てこなかったなぁとか、これからは病人の役柄でもピッタリだなぁと思える瞬間でもありました。

 

 

 

最後に

結構自分の過去や今の立場を絡めての話になっちゃいましたけど、実話とはいえ成功した男たちのサクセスストーリーをハチャメチャに仕上げた娯楽要素は全くなく、速さともうけにこだわった男たちの夢へまい進する姿と、その夢の終わりに対する儚さ切なさを汲み上げ、そこからあぶり出た答えは、命が一番大事ってことかとwもっとあるかw

 

最後のイタチッ屁とばかりに繰り出す悪あがきと仕掛けは、スカッと爽快になったのに!とちょっと悔しい部分もありますが、たまには線香花火のように小さな火花を魅せ、後の祭り感漂う背中で幕を閉じるのもオツだなぁと。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10