4月20日
いぬやしき
タイトルのニュアンスと扱ってるジャンルがこれほど結びつかない映画が果たして合っただろうか。
いぬやしきだぜ?
一応漢字で「犬屋敷」ってしたら、なんか犬が棲みついてる屋敷に肝試しで入った中学生が痛い目にあう、見たいな話が想像できるんですけど、これはホラーではないと。
ちなみに、犬つながりで言うと、この公開から1ヵ月後にウェス・アンダーソン監督の「犬ヶ島」ってのがやるんだけど、何、今年戌年だっけ?
と、何の先入観なしでタイトルから推測するとびっくりするようなお話でございます。
機械化されたジジイと高校生が空中でガチバトル。楽しそうじゃないか!
原作コミックからの実写化。知りませんでした。しかも「GANTZ」の人。その「GANTZ」を映画にした監督が再び手がけるというわけで、ちょっと危険な匂いがしなくもない。
しかし今CGでアクションやらせたら彼くらいしか信頼できるクリエイターはいないとも思う。
何はともあれ早速観賞してまいりました!!
作品情報
類型発行部数2000万部を越えた人気コミック「GANTZ」の原作者と、それを映画化した監督が再びタッグを組み実写化。
家族からも職場からも必要とされていなかった初老のサラリーマンと、不平等で理不尽なことを機に自分以外の人間を憎む高校生が突如サイボーグと化し、能力を欲望のままに使う高校生の暴走を食い止めるためサラリーマンが立ち向かう。
クライマックスで描かれる新宿決戦は、実際に新宿の街を封鎖して撮影されたようで、その映像にCGを加え、よりリアルでバーチャルな体験が味わえ、キャッチコピーでも謳っている「空飛ぶ映像トリップ」を楽しめるとのこと。
映像以外にもジジイが善で若者が悪というわかりやすい構図の中に、そんな二元論では片付かないバックボーンも描かれており、なぜ高校生が欲望のままに破壊の限りを尽くすのかもみどころの一つ。
いったい新宿の街はどのような戦場へとなっているのか、最強のジジイを堪能しよう!
あらすじ
定年を間近に控えるサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は会社や家庭から疎外された日々を送っていたが、ある日突然、医者から末期がんによる余命宣告を受け、深い虚無感に襲われる。
その晩、突如墜落事故に巻き込まれ機械の体に生まれ変わった彼は、人間を遥かに超越する力を手に入れることに。
一方、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓(佐藤健)は、手に入れた力を己の思うがままに行使し始めていた。
自分の意思に背く人々をただただ傷つけていく獅子神と、獅子神によって傷つけられた人々を救い続ける犬屋敷。
人間の本質は善なのか、それとも悪なのか・・・。
強大な力を手に入れた二人が、
いま、それぞれの思いで動き出す――。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのは佐藤信介。
CGを多用したアクション映画といえばこの人、だと思ってます。
正直今まで手がけた作品が、「GANTZ」に「図書館戦争」、そしてあの忌まわしい「デスノート Light up the NEW world」などなど、色々脚本に難ありの作品ばかり。
どれも彼が脚本を書いたわけではないですが、まぁ映画ファンからはツッコまれましたよね。(ちなみに今作は「ビリギャル」を書いた橋本祐志)
ですが、「アイアムアヒーロー」だけは別格。
やはり韓国でロケをしたということが大きく、決して日本ではできない大掛かりなカーチェイス、街全体をゾンビだらけにしたりとコミックに忠実に再現したのと、何より主人公の成長がきちんと心に染みた作品でありました。
よくよく考えるとコミック原作ばっかりな作品を映画化してるので、そろそろオリジナルでなんかやればいいのにと思うのですが、そこまでの権限はないのかお金集めで着ないのか。いっそのことハリウッド行って映画何本か作ればいいのに。
監督の次回作は人気コミック原作の実写化「BLEACH」とこれまたあーだこーだ言われちゃいそうな作品なんですが、きっとCGやらVFXなんぞは邦画の中で言えばすんごいことになっているのでしょう。
キャスト
主人公犬屋敷壱郎を演じるのはとんねるずの木梨憲武。
30年間木曜の夜を楽しませてきた「とんねるずのみなさんおおかげでした」。
惜しまれながら終了してしまいましたが、今後は役者としても活躍の場を広げるのでしょうか。モンキー的にはコントやって欲しいんだけどなぁ。
今はネットでもできるし期待したいんですけど、やっぱりこの人はテレビの人だからなぁ。急にネット配信とかしないで徐々にお願いしますw
そんな彼の出演作をご紹介。
映画初主演は、若き営業マンの奮闘描いた森田芳光監督の異色コメディで、とんねるずの二人で主演した「そろばんずく」。
その後10年あいて次に出演したのは度々コントでもやっていたウルトラシリーズのパロディ版「ウルトラマンゼアス」と「ウルトラマンゼアス2/超人大戦 光と影」。ウルトラマンとウルトラセブンの出演者も出るというファンにはたまらないレアな作品で、当時出光のCMでもやってました。
その後も、竜馬暗殺から13年後の横須賀を舞台に、彼を巡って男女4人が繰り広げる騒動を可笑しく描いた三谷幸喜原作舞台劇の映画か「竜馬の妻とその夫と愛人」。
人間の世界にさらわれたわが子を探す父親の大冒険を描いた魚の物語「ファインディング・ニモ」とその続編「ファインディング・ドリー」では初のアニメーション映画の吹替えを担当するなど映画アニメバラエティ映画など多様な作品に出演しています。
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同じく機械の体になった高校生獅子神皓を演じるのは佐藤健。
も~う高校生役はきついんじゃないかなとは思いますが。
去年の「亜人」に続き今回もCGアクションで見せてくれます。そして今作では何を木に悪の道に堕ちて行くのかといった部分も見どころになってくるんじゃないかと。
影を背負う感じもカッコイイよね、うん。
彼に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
皓に好意を寄せる高校の同級生、渡辺しおん役に「リバース・エッジ」「何者」「SCOOP!」の二階堂ふみ。
皓の幼馴染で高校の同級生、安堂直行役に、「GANTZ」、「鋼の錬金術師」の本郷奏多。
壱郎の娘で皓の高校の同級生、犬屋敷麻理役に、「グッモーエビアン!」の三吉彩花。
壱郎の妻、犬屋敷万理江役に、「血と骨」、「アンフェアTHEMOVIE」の濱田マリ。
壱郎の息子、犬屋敷剛史役に、「茅ヶ崎物語 MY LITTLE HOMETOWN」、「光」に出演した福崎那由他。
大量殺人事件を捜査する萩原刑事役に、「ジョジョの奇妙な冒険」「新宿スワン」の伊勢谷友介。
そして皓の母、獅子神優子役に「三度目の殺人」「BALLAD 名もなき恋のうた」の斉藤由貴が出演します。
新しいCG技術を使用し、今までにない映像表現を作り上げたと謳う今作。
ジジイ役にノリさんという意外なキャスティングがどう出るか。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
いつも行く新宿の上をジジイとイケメンが飛び回る飛び回る!!!
色々と惜しいのが残念だけど普通に楽しめることは間違いなし!
以下、核心に触れずネタバレします。
率直な感想。
仕事先では年下の上司に平謝りをし、家庭では父としての威厳もない、おまけに末期がんステージ4。生きていく上でこれ以上の三重苦はないというぐらい辛い立場として生きているおっさんと、外で女作って新しい家庭を築き、そのせいで苦しい生活を強いられている母親とその息子。
偶然いた公園で異星人と衝突したことで、サイボーグとしての力を手に入れた不遇の二人が、片方は救いの手を差し伸べ、もう片方は人をその力で裁く道を歩む。
おっさんの悲哀と少年の憎悪を全面的に押し出しながら、それぞれの背景を端的かつ丁寧に組み込み、今まで抑えていたアクション描写をクライマックスで一気に放出することで見慣れた街並みを舞台にダイナミックに且つ縦横無尽にぶつかりまくる爽快エンタテインメントアクション映画でございました。
また善と悪は紙一重というような、悪になるにはそれなりの理由があり、彼がどうやってダークサイドに墜ちたのかが非常にわかりやすい映画でもありました。
佐藤信介監督ってことで、不安と期待はありました。
しかしふたを開けてみれば「GANTZ」や「デスノート」のようなむちゃくちゃな展開はそこまで見当たらず、割かし没入して楽しめたというのが率直な感想です。
いい感じの序盤。
まず何がいいって冒頭から音楽を使わずに、壱郎の現状を淡々と描く場面。
いきなり豪勢な一軒家かと思いきや、その奥にこじんまりとした日当たりの悪い地味な一軒家。奮発引っ越し祝いもロイヤルホストに負け、一人寂しくエビの握りにキャビアを乗せて庭先で夕日にあたりながら頬張る壱郎。お前はいい年してそんな食生活だからガンになるんだ。
職場での仕事のミスでひたすら年下の上司に頭を下げ、思い方を下げて家に帰ればまた肩身の狭い立場。犬を拾っても捨ててきて、と言われ親父の威厳はどこへやら・・・。
ここまで一切無駄のない運びで見せるので、ひしひしと壱郎の哀愁がたっぷりと伝わり、スッと映画に入り込めていたと思います。
そして師子神ですが、彼は不登校の友達と仲のいい高校生。授業中ずっと窓の外を見つめ、他の生徒とは絡まないロンリーウルフな感じ。
そんな彼を見つめるしおんがまたせつない。
両親は離婚をしており、親父は別の家庭を作り何不自由ない生活。そんな裕福な家庭を作った親父にはついていかず、弁当屋のパートでやりくりしてくれるお母さんと共に暮らしていることが分かります。
なぜお母さんがこんな貧しい生活を強いられながら暮らさなければならないのか。両親が離婚していなければ僕も幸せな生活を送れていたはずなのに。
序盤から師子神の心の奥のざわつきが、水面下で広がっている感じが伝わります。
悪の染まり方。
まず感じたのは師子神がどうみてもアナキン・スカイウォーカーのような墜ち方だなぁということ。
力を手に入れたからと言っていきなり殺しまくるわけではありません。
父の家に行き夕食を頂いた後義理の兄弟である弟と妹を相手にしながら、ふと我に返ると憎悪が沸きあがります。ここで正気を保ち無事帰ろうとしますが、なんでしょう。富裕層の家が軒並み並ぶ住宅街だったのでしょうか、どこもかしこもクソがつくほど幸せそうな笑い声が聞こえるではありませんか。
そのせいでとうとう行動に移してしまいます。留学の許しを得た核家族の家に侵入し、バンバンバンと一家を銃殺してしまう師子神。
この衝動的殺戮をきっかけに、彼は大事な人を次々と失い、それが自分のせいだとは微塵にも思わず自分を責める人たちのせいだと考えてしまうわけです。
アナキンも自分の凄まじい力を誰にも認めてもらえず、また禁断の恋に溺れたことも加えて、焦りが出てくるんですよね。そこに付け込んだシディアス卿のせいもあり、見事自分が悪いのではなく自分を認めてくれない奴らが悪いと思い込むようになりダークサイドに墜ちるんですけど。
そういう意味では無理くりではありますが、墜ち方は同じなのかなぁと。
僕が今まで見てきた映画の中上位に入るで心にグサッと刺さったセリフ、「アフタースクール」の「お前がつまらないのはお前のせいだ」という言葉がここでも適応されるのかなと。
おかれた環境や相手のせいにして自分は何一つ変わろうとしない。たまたま得た力を得たことで神だと勘違いしはじめ、力を自分のためだけに最大限に発揮する。
哀しいことではあるし誰かが止めることもできたであろう師子神の心。
そんな悲しみと憎しみでできた悪がジジイと新宿で激突するわけです。
壱郎の底知れぬやさしさ。
その点師子神と全く対照的な道を歩む実年齢より老け込んだジジイの壱郎。
これはちょっとした不満要素でもあるんですが、壱郎はなぜあんなにまで家族から見放されていたんでしょうか。
そこを描いてないので、娘の麻理がなぜあそこまで嫌悪感を示すのかよく分からなかったんですよね。どちらかというと、そこまで言うか?と。
いきなりローンを組んで買った一軒家をけなしまくり、友達にも親父の悪口をボロカス言う、授業参観には来るな、全ての衣類を一緒に洗濯するな、などなど僕の家族では見たことない光景だったため、この娘のセリフがいちいち頭に来ました。
一つ赦せたのはまだ会話があったことくらいかな。これでか言わなかったら完全に親子として終わりでしょう。
そしてそうなってくると、壱郎はなぜそこまでして家庭をおろそかにしたのかがよく分かりません。外で女作ったから?稼ぎが少ないから?その性格が災いしたから?
一軒家って人生で一番大きな買い物だってみのもんたがCMで言ってたくらいですよ?家族で相談するでしょうよ、下見だってするでしょう。なぜ子供たちは初めて見るような口調だったのか。
そしてなぜ子供たちにも相談せず購入したのか。
色々推測すれば壱郎は言葉でなく背中で語るタイプの父親だったのかもしれません。
カッコをつける事で親父の威厳を保とうとしたのでしょう。言葉では守るからとか、小遣い少なくてスマン、とか、とりあえずその場しのぎの事ばかり言います。
実際家族が今どんな状況に置かれているかも知らずに。
母親が詐欺に遭っていることも知りませんでした。
娘の将来の夢もよく知りませんでした。
息子がカツアゲされているのも知りませんでした。
それを知らずに、大丈夫だ、守るから、安心しろ、の常套句。
全てが抽象的で何も解決してないしアドバイスもしてません。具体的なこと何一つ癒えてません。
説教もあまりしてこなかったのでしょう。遅くまで仕事してたから子育てをおろそかにしてきたのでしょう。妻への愛情も間違った注ぎ方をしてきたのでしょう。
仕方がないとはいえ努力をしなかった壱郎が悪い。
そんな妄想バッチリな目で壱郎の背景を見てましたが、それでも彼はおかれた立場を他人のせいにはしないんですよね。
自分が末期がんになっても、ローンの事や家族の事を考えるあたりは、やっぱり父親だなぁと。
その優しさは能力を得ても変わりません。
遠距離で人の声が聞こえる力のおかげで助けを呼ぶ声が聞こえれば、仕事をさぼってまで病院に行き、なるべく多くの難病を抱えた人たちを助けます。
その喜びに生きがいを感じたことで、自分の力で他人を押す食うという道を歩みます。
そして背中で語ることで親父道を歩く壱郎は最後までそれを貫くのがまたカッコイイ。
説明なんていらない、俺の背中を見ろ、シミだらけだけど。
最後に父親の朝飯の匂いを嗅ぐ姿を見て、ちょっとだけ改心を見せる娘の表情がよかったですね。
クライマックスはもうちょっとできなかったか。
今回も新宿で「レディプレイヤー1」を鑑賞後、別の映画館ではしごしたわけですが、そんな見慣れた新宿の街でちゃんとドローンで空撮をし、都庁まで許可を得て撮影した今作の気合の入れ様は認めたいですね。(何を上からw)
だって新宿歌舞伎町を舞台にした「新宿スワン」でさえ新宿で撮影してないですからね。それを考えればよくやった!といえる出来だったのではないでしょうか。
ちゃんとTOHOシネマズ、バルト9、ピカデリー新宿を映す配慮もしている徹底ぶりだし、空中戦もそっち行ったら都庁じゃねえじゃん!みたいな間違いもなかったです。
ただこれはあくまで都心に住む人目線ですから、他の地域の人はさっぱりなんだろな。
それは置いといて、バトルするときはバトル、しゃべるときはしゃべる、こういうやり方はせっかくのハイスピードバトルなのにもったいないです、せめて取っ組み合いの時に言うとか一個くらいあっても良かったのに。
後はやっぱり、制作費の問題からかCGがショボいです。これはしょうがないというのが一番なんですけど、クライマックスまでCGを抑えたんだから、クライマックスくらいド派手にやってくださいよ。素材としては面白いんだから。
最後に
不満を挙げればキリがないんですよね。せっかく壱郎も師子神の母親もガンという設定なんだからそこをうまく盛り込むとか、警察があまりにも無能すぎるとか、いくら凶悪犯だからって街中で発砲はねえだろとか、実際人殺しているし、臨時放送もこれテロなんだから、警視総監じゃなくて総理大臣だろうが。
サイボーグ能力ももっと見せてくれたらいいのになぁというのもありますね。結局頭のキュインキュインて回るアレはなんだ?動力源みたいなもんか?
まぁそんなことはいいとして、何も考えずに楽しめる映画ではあります。
ただもっとできた、というのが想いとしてあります。
ノリさんもよかったし、佐藤健もこの上ないかったるい表情が怖かったです。二階堂ふみのくしゅくしゅヘアー可愛かったな。
斉藤由貴の囲み会見は自虐ですか。てかあの会見普通顔映さねえだろ。おっとまた愚痴。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10