モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「これって生きてる?」感想ネタバレあり解説 君と「不幸」になりたい。

これって生きてる?

夫婦の離婚危機をテーマにした映画、結構あると思います。

 

好みの映画でいえば「ブルーバレンタイン」。

始まりと終わりを織り交ぜながら描いた切ない恋愛映画でした。

他にも、本音をぶつけ合って口論する姿が印象的だった「マリッジストーリー」、残された夫が幼い息子の面倒を見る「クレイマー、クレイマー」、離婚を突き付けられた夫が、妻を見返すために男を磨くコメディ「ラブ・アゲイン」、名優二人が織りなす夫婦喧嘩「31年目の夫婦げんか」、そしてイランならではの複雑な事情が背景に浮かぶ「別離」など、シリアスな別れを映す物語をもあれば、あまりの滑稽さに笑ってしまうコメディなど様々な離婚危機が描かれています。

 

今回鑑賞する映画は、そんな離婚危機にまつわる物語。

順調に見えていた夫婦が、それぞれ置き去りにしてきた思いと向き合い、人生の転機を迎えていくというもの。

こうやってみるとかなりシリアスに聞こえるんですが、監督はあのブラッドリー・クーパー

過去作と比べると…やっぱりシリアスな映画になるのでしょうか…。

というわけで早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

監督デビュー作「アリー/スター誕生」でいきなりアカデミー賞作品賞にノミネート、その後も偉大な音楽家の生涯を描いた「マエストロ:その音楽と愛と」など、俳優だけでなく監督業でも成功を収めているブラッドリー・クーパーが、主演のウィル・アーネットから聞いた実話を題材にしたオリジナル映画。

 

中年期を迎え行き詰まりを感じ別居生活を送ることになった夫が、突如訪れたコメディクラブで自身の人生を自虐することで活路を見出し、人生を見つめ直していく姿を、妻の視点も入れることで、「愛している」だけでは埋まらない夫婦生活の理想と現実を浮き彫りにしていく、ちょっぴりほろ苦さのあるドラマ。

 

監督のブラッドリー・クーパーは、「マエストロ」の撮影中、友人である俳優ウィル・アーネットから、イギリス在住のコメディアン、ジョン・ビショップに起きた話に影響を受け、急いで脚本を執筆したそう。

離婚したばかりのジョンがいかにしてスタンダップコメディに出会ったかを描いた本作は、大学院時代にスタンダップコメディにのめりこんだ監督が「人間社会の縮図」と語るコメディセラーを舞台に、新たな人間関係の構築や互いを尊重する二人が再発見していく物語に仕上げた。

 

 

主演のアレックスを演じるのは、「俺たちニュースキャスター」や「レゴバットマン・ザ・ムービー」などコメディ映画で活躍するウィル・アーネット。

今回出演するにあたり、自身もほぼ6週間毎日コメディセラーに通って猛特訓したそう。

自身の名を伏せ役名であるアレックスとして参加したアーネット。

彼に気づく観客もいれば全く気付かない客もいたりと、毎晩違うオーディエンスに驚いたそうですが、そこは「笑いを欲しがる客」たち。

昼間に仕込んだネタが大成功した夜もあれば、大失敗した夜もあったそうで、相当苦労したとのこと。

 

そんな彼の努力が映画にどう生かされるのか注目です。

 

他にもアレックスの妻テス役に、「マリッジ・ストーリー」「ジェイ・ケリー」のローラ・ダーン、クリスティーン役を「ザ・ユナイテッド・ステイツVSビリー・ホリデイ」のアンドラ・デイ、ボールズ役を本作の監督であるブラッドリー・クーパー、ヤン役を「ベルファスト」のキアラン・ハインズなどが演じる。

 

過去2作とは違う、日常的な物語を作ったブラッドリー・クーパー。

3作目にしてさらなる巧さは出ているでしょうか。

 

 

 

あらすじ

 

中年期を迎え、妻・テス(ローラ・ダーン)との結婚生活に行き詰まりを感じていたアレックス(ウィル・アーネット)。

妻子と別居しアパートで一人暮らしを余儀なくされている中、彼は何げなく訪れたニューヨークのコメディークラブで、思いがけずステージに立つ機会を得る。

 

夫婦の赤裸々な関係を笑いに変えながらステージを重ねるうちに、アレックスは自らを見つめ直していく。

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感想

中年の危機を迎えた夫婦の本音と建前、理想と現実。

愛とはプレッシャーでもあり、関係は吸血鬼でもある。

ならば、いっそのこと不幸になろう。そう言い切れる夫婦は一生うまくいく。

結婚式の誓いは「病める時も健やかなる時も」にもうひとつ「不幸になる時も」を加えよう。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

粗削りだけど愛がある。

原題である「Is this thing on?」とは、「電源入ってる?」と直訳できるようだが、実際にはスタンダップコメディでスベッた時に「マイクの電源入ってないんじゃない?」という常套句として使われるらしく、それを「これって生きてる?」と訳した邦題は見事だと思う。

 

マイクが生きてないのでは?という意味と、人生をちゃんと生きてるか?という二つの意味を抱くことができるから。

 

物語はごく単純。

離婚ではなく別居生活を選んだアレックスとテス。テスがアパートを借り、順番ずつで子供の面倒を見る。

別居とはいえ子供の集いや共通の友人など顔を合わせることが多く、会えば何かと衝突することもしばしば。

 

たまたま入ったコメディセラーで入場料の15ドルを払えなかったアレックスは、オープンマイクなら入場無料だという謳い文句に誘われ、何も考えずスタンダップコメディをすることに。

どうやら俺は離婚するらしい、と自虐ネタをぶち込んだらなぜか心地が良いことに気付く。

それ以降家族や友人に黙ってコメディセラーに通いつめ、トークスキルを磨いていくアレックス。

 

テスもまた別居生活を経て、結婚を機に退いたバレーボールの道に復帰することを夢見る。

自分を推してくれた旧友の男性に誘われ訪れたコメディセラーで、テスはアレックスの自虐ネタを見る羽目に。

 

最初こそ他人にプライベートを知られた怒りがこみ上げたモノの、家庭での無口でつまらなそうな夫ではなく、出会った時のイキイキとしたアレックスに徐々に見とれていく。

アレックス自身も出番の中で浮気をしたことを白状したが、浮気をしたことで妻に対する思いが膨れ上がったことを告白。

テスがいたことを知ったアレックスは急いで追いかける。

何故か二人は顔を合わせるや否や、激しく燃え上がるのであった・・・。

 

2人はこの状態をキープするため、表向きは別居生活を継続し、裏では密会を繰り返すという新しい夫婦のカタチを試みていく。

活気を得た二人だったが、ことはそううまくいかず…というのが途中までのあらすじ。

 

冒頭でも書いたように、離婚危機の物語って結構豊富に作られやすい話で、大体行きつく結末は復縁か離別かのどちらなんだけど、これはそうした離婚危機の映画とはまた違った面白さがあった作品だったと思う。

 

そもそも映画のきっかけとなったジョン・ビショップのエピソードは、この映画とはちょっと違う。

3人の子育てをしていく中で夫婦関係が疎遠になっていったことに悩んでいたビショップは、気分転換で入ったコメディセラーで入場料をケチるためにオープンマイクに参加したそう。

何をどうやるかもよくわからないままステージに立った彼は、7人という少ないギャラリーを前にうまく立ち回ったそう。

 

それからというもの、まるでセラピーやカウンセリングを受けるかのように足しげくクラブに通ったビシショップは、いつものように元妻の切断された頭を冷蔵庫に冷やしているという鉄板ジョークを、観客の中にいた妻に聞かれてしまったそう。

離婚手続きの最終段階に入っていた2人でしたが、妻は結婚する前の面白かった頃の夫を思い出したことで、離婚を踏みとどまったんだそう。

 

それからというモノビショップは、サッカーチーム「リバプール」を応援しながら、イギリスでトップコメディアンとして知られるほどの人気となり、コメディが自分を救ってくれたと語っているんだとか。

 

このエピソードを聞けば、一体どこを基にして本作の構想を膨らましたのかお分かりかと思う。

 

実際結婚したこともないし、恋愛偏差値も低いので女心なんて全く分からないし理解したくないんだけど、本作はそんな俺でも「わかるわぁ」と思えるエピソードが多々あったように思う。

 

他人の結婚生活のマジな所なんて世間話でも教えてくれない。

だから誰が参考になるかって言ったらぶっちゃけ両親だったりする。

 

子供の知らないところでどんな話をしてるかはわからないが、どっちに主導権があって父ちゃんが母ちゃんのどんなところが嫌いか、逆に母ちゃんが父ちゃんのどんなところが嫌いなのかを散々聞かされてきたわけで、そうした中でも夫婦はなぜうまくやっていけるのかってのを特等席で見てきてるわけですよ、我々は。

 

だからこそこの映画は、というかこうしたタイプの映画では子どもたちに見せる顔と夫婦で見せる顔が違うことをちゃんと見せなくてはいけない。

部屋にうっかり置いたままネタ帳を子供が見てしまったことについ「ファック」と口走ってしまうアレックスは、自分が謝る前に「勝手に人のモノを観てはいけないよ」と父親らしいことを言うが、これには子供も納得せず「おかしい」の一点張り。

終いに子供は泣きだしたことで、ようやくアレックスは事の事態に気付き、抱擁して謝罪をしていく。

 

こうしたシーンをちゃんと見せる一方で、冷めたピザの如く味気ない夫婦の姿を、子供たちが見てないところで、しかも小声で見せていく。

突然10分の枠をもらったアレックスは、子供たちを預かってもらおうとテスの元へやってくるが、子供たちのいる前で相談して断ってでもしたら子供たちが自分の事をどう思うかわかって頼んでる?と口論に。

 

子供のお誕生日会でも、友人たちと別荘で遊ぶ話になり険悪なムードになったりと、アレックスとテスは、親であることを言い訳にしっかり話し合いを持とうとしてない姿が映る。

これがしっかりフックとなって、アレックスのネタで消化されたり、終盤のもう一悶着でスパークしていくのが巧いと思った。

 

スタンダップコメディに慣れてきた時に語ったのは、「車内で無言の際に思ったこと」。

これは経験の少ない俺でもわかる。

要は男女が密室で無言状態になった時に、気にかけなきゃいけないのは男の方だという話。

どうしてか、男は女が黙っていると「機嫌が悪いのでは?」と悟ってしまうみたいで、正にアレックスはそれをネタにしていた。

いざ切り出しても、別に期限は悪くないし、友人と話すみたいに話したって良いのにと言われてしまう。

そう、マジで女の無言は怖い。

 

こうしたネタをジョークを交えて語るアレックスとテスは、アレックス渾身のスタンダップコメディでの本音が入り混じったネタによって密会を始めていく。

 

これもなかなか良かった。

正直一時的な処方かも知れないけど、子どもたちや親、友人たちには「別居状態」を見せておきながら、彼らの知らないところで密会し燃え上がる行為は、別居状態でも子供たちをしっかり養えている上に、お互いやりたいことができる、さらに昔のように恋愛関係も継続できると一石二鳥、いや三鳥くらいの効果があったのではないかと。

 

でも事はそううまくいかないのが本作がさらに面白い所。

友人たちと訪れた地での口論は、ようやく夫婦が言いたいことを言い合えるシーンとなっていく。

俺は、この時に飛び出たセリフ「この人と幸せになりたいのではなく、この人となら不幸になっても一緒に居たいと思いたい」というセリフにグッと来た。

 

男は理想を求め女は現実を求める、なんてよく聞くが、アレックスもまた密会を重ねることで「あの頃のテス」を思い出していた。

それをいいことに現役バレーボール選手だった頃のテスの写真を引っ張り出し、引き伸ばしてポスターとして部屋に飾るという中々気味の悪いことをして彼女を喜ばせようとしたが、彼女からあしらわれてしまう理由はそういうことろだったりもする。

 

アレックスにとってあの頃のテスが理想だということ。

それに対しテスは今の私を見てほしいと反論。スパイクを決めようとするテスが後ろ姿で映ってるのが見事なんですが、そんなことしたって彼女は振り向かないよってのを暗示してるわけですよ。

 

そんなことしてるから私たちはうまくいかない、寧ろその姿を捨ててあなたと一緒になったことを忘れてやしませんか旦那さんと言われてるかのよう。

それでもアレックスは彼女が陰気だと言い返す。

陰気になるのも無理はない。大体妻として母として家庭を支え、子供たちにとって一番の存在でありたい思想であると自負してきた、なのに満たされない思い。

だからこそバレーのコーチを引き受けたにもかかわらず、あなたは若い時の全盛期の自分の写真を飾ってる、バカか。

結論、アレックスと結婚しなければ、こんなつらい思いはしなかったかもしれない、違う役目が合ったかもしれないのだから。

 

果たしてうちの両親は、既に家庭を持っている俺の友人たちはこうした話し合いや口論をしたりするんだろうか。

友人たちはまだ若いだろうからこういう話にはならないと思うが、両親はどうだったんだろう。ぶっちゃけ考えたくないw

 

 

最後に

こうした中年夫婦のリアルなやり取りや、それを自虐して人生を再び見つめ直すアレックスの姿など、色々見ごたえある本作。

彼らがいろいろぶつかっていく中で、のほほんと生きながら目の前の事から逃げているブラッドリー・クーパー演じる友人のキャラが映画の小休憩所として機能をしているのがまたいい。

 

アレックス家の犬(そこそこ大きい)をずっと抱えている姿が、伸ばした髭の具合も加わって絶妙な癒しを与える可愛さだったり、ハッパ吸い過ぎて買ってきた牛乳をこぼしたりと常にヘラヘラしてるクーパーが、ここぞというところで実はちゃんと妻と問題に向き合ってました、俺たちはこういうやり方で離婚せずにいけそうですとアレックスに助言するのがまたいい。

どこの家庭もアレックスやテスの様な問題解決をすればいいというわけではなく、向き合い方が違うんだということを言ってるかのようなキャラ設定だった。

 

 

デビュー作「アリー/スター誕生」のようなドキュメンタリータッチで作ってる一方で、まだ編集だったり演者の切り返しにばかり頼っているのが見ていて辛かったのも事実。

意外と接写がメインの撮影になっており、特にコメディセラーでのアレックスは顔全体ではなく、目鼻口だけ捉えて撮影するほど近い。

それが続くので映像的にはきつく、さらにこれが会話になるともっときつい。

きっとあのような切り返しばかりの撮影でなく、もう少し引いて2者を映せば、会話も入ってこれたように思えてならない。

 

尺的にもこれで120分は少し長い気がするけど、見せ方ひとつでそこは気にならなかっただろうなとは思う。

 

とはいうものの、友人クリスティーンが2人の会話を盗み聞きしてたことに気付いたアレックスが部屋を出て行った途端コメディセラーへと道が続くつなぎ方や、テスと和解した後流れる歪な演奏のBGMが子供たちの演奏会へと繋がっていく構成、アルトマンを意識したらしく、ちゃんとオーバーラッピングダイアローグ(他の人とセリフが重なる手法)で見せていたり、それこそ周囲の話し声が飛び交うコメディセラーでの空気感は見事だったと思う。

 

何より本作は、映像よりも脚本が凄く良かったように思う。

ネタこそスラングがかなりあったろうし、あそこにいた客は仕込みじゃなく実際に店にいた人たちらしく、彼らの反応がリアルだということを知っておけば、よりアレックスのネタが良かったと思えるだろう。

そうした部分もありながら、キャラのセリフも良いフレーズがたくさんあったので、そういう意味で個人的には推したい作品にしたい。

なので、今回は高めで!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10