モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「女子高生に殺されたい」感想ネタバレあり解説 狂気をチラつかせる田中圭にゾクゾク。

女子高生に殺されたい

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女子高生であれ、人妻であれ、全ての女性から「〇〇されたい」M気質なモンキーですが、さすがに「殺されたい」と思うことはありません。

 

どういう思考になったら超ド級のMになれるのか。

そもそもエロスとかフェチズムとかの類じゃなく、ガチのやつなのか?

 

百歩譲って「死にたい」のなら誰かに頼らずとも実行できるかもしれないが、「殺されたい」となると誰かの手を借りなくてはならないわけで、決して一人では不可能な願望なんですよ。

 

このように既に真正面からしか物語を想像できない僕を、本作はどんな世界へ連れてってくれるのだろうか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ライチ☆光クラブ」や「帝一の國」などで知られる古屋兎丸の画業20周年を記念して作られた原作を、ピンク映画やVシネマなどを軸に多くの作品を手掛ける職人監督の手によって実写映画化。

 

9年間に及ぶ「自分殺害計画」を実行するため、高校教師となって女子高生にアプローチしていく主人公の姿を、不気味に怪しく描く。

 

性の劇薬」、「私の奴隷になりなさい」、「悦楽交差点」などの攻めた作品から、「アルプススタンドのはしの方」、「欲しがり奈々ちゃん」、「愛なのに」などの若い世代の恋愛と青春を描き続ける城定秀夫監督が、主人公が放つ妖艶な色気とその裏に隠された狂気の両方を見事に表現。

 

また緻密な心理描写や予測不能な展開など、原作に大胆なアレンジを加えたことで上質なアンモラルスリラーとして完成させた。

 

果たして主人公は完全犯罪を見事に成功し、目的を果たすことができるのだろうか。

 

 

 

 

あらすじ

 

女子高生に殺されたいがために高校教師になった男・東山春人(田中圭)。

人気教師として日常を送りながらも“理想的な殺され方”の実現のため、9年間も密かに綿密に、“これしかない完璧な計画”を練ってきた。

 

彼の理想の条件は二つ「完全犯罪であること」「全力で殺されること」。

 

条件を満たす唯一無二の女子高生を標的に、練り上げたシナリオに沿って、
真帆(南沙良)、あおい(河合優実)、京子(莉子)、愛佳(茅島みずき
というタイプの異なる4人にアプローチしていく……。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、城定秀夫。

 

2020年の夏に映画ファンをざわつかせた「アルプススタンドのはしの方」。

僕も話題を聞きつけ映画館へ駆け込みましたが、楽しい作品でした。

 

その話題性はもちろん、業界内の評価も上々で、TAMA映画祭やヨコハマ映画祭、はては「キネマ旬報ベストテン」にランクインするほどに。

 

今後大きな作品も作ることになるんだろう、売れっ子になるんだろうなと思ったら、とうとう東映配給作品ですよw

すごいですね。

 

監督作品といえば、2022年には今泉力哉監督と共同で製作した「愛なのに」という作品もありましたね。

こちらはアルプススタンドのような爽やかな作品とは違い、一方通行な片思いの行方をコミカルかつエロティックに描いた映画でした。

 

今後も人気コミックの映画化「ビリーバーズ」が控えています。

 

キャスト

本作の主人公、東山春人を演じるのは、田中圭。

 

ナイスキャスティングだと思うんですよw

一見真面目そうでルックスもよく女子受けがいい顔立ち。

だけどよく見るとマジで何考えてるかわからない、腹の底が読めない。

田中圭しかいないじゃないかw

 

実際「哀愁しんでれら」って映画でも、医者で金持ちでめっちゃ優しいシングルパパだったのに、ふたを開けてみたら自画像ばっか書いてる毒親で。

なんだろ、この手のギャップ演技に関しては、中堅俳優の中じゃパブリックイメージ含めて群を抜いてる気がするんですw

 

とりあえず「おっさんずラブ」だけじゃないってところをそろそろ見せてほしい所ですねw

 

彼に関してはこちらもどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

女子高生・佐々木真帆役に、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」、「太陽は動かない」の南沙良。

女子高生・小杉あおい役に、「サマーフィルムにのって」、「愛なのに」の河合優実。

女子高生・君島京子役に、「牛首村」、「君が落とした青空」の莉子。

女子高生・沢木愛佳役に、「青くて痛くて脆い」、「藍に響け」の茅島みずき。

男子高生・川原雪生役に、「子供はわかってあげない」、「花束みたいな恋をした」の細田佳央太

深川五月役に、「生きちゃった」、「ボクたちはみんな大人になれなかった」の大島優子などが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

城定監督のディープな作品を見てない僕ですが、果たしてついていけるのでしょうかw

そして今のうちに言っておこう。

きっと共感できないww

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

ただの変態サイコパス映画と思ったら大間違い。

障害を抱える者の哀愁もありながら、しっかりサスペンスとしてのミスリードもあって娯楽映画としても優れてます!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

殺されたい願望ってなんだよ!!

自らの欲望を叶えるために高校教師として赴任した主人公が完全犯罪を目論むまでの物語を、鮮やかな配色と時折見せるグロテスクな描写、田中圭の目の奥に輝く狂おしいまでの欲望にドキドキハラハラさせながらも、心の奥底で「どうか殺されますように」と不謹慎な感情に襲われる感覚、さらにはこれが障害であることに知識を深めつつも、障がい者を利用した卑劣な手口であることの是非など、主人公の深層心理を覗きたくなる構造にやられっぱなしの作品でございました!

 

やっぱりさ、女子高生に殺されたいってどう考えても変態としか思えないわけですよ。

だから田中圭には思う存分「変態」を演じてほしいと。

そんなゲスな心意気で臨んだわけですがとんでもない。

 

主人公・東山の独白によって数年前から年密に計画された犯行であることや、ターゲットにされた女子高生4人を研修医時代に習得した心理学で恋に溺れやすい女子高生をいとも簡単に手中に収める手口、女子高生たちの東山への思いや、ひとりの生徒の意外な秘密、過去に起きた事件、そしてスクールカウンセラーとして現れる東山の元カノの登場など、それぞれの立場から東山へ向けられた視線や思惑が絡むことで、終始ドキがむねむねな上等なサスペンス映画だったんですよ、はい。

 

もうね、こんなブログやってますけど、こんなの読まずに見に行ってほしいですw

・・・といってもネタバレありの感想ブログなので大いに語ろうと思いますw

 

いきなり始まる若かりし頃の東山の独白映像。

如何に彼が「殺されたくてたまらない」欲望を持っているかが理解できるオープニング。

いかにもナヨナヨしてる感じの東山ですが、どこか心の中でひっかっかっている姿が手に取れます。

 

そして時は流れ高校の始業式。

女子生徒の「え?誰あれ?かっこよくない?今度赴任した先生?」なんて黄色い声が飛び交いながら、ぷにぷにな頬でにこやかに笑う田中圭の目!ニヤ!ギラ!

 

そして片頭痛を発症する女子生徒に、彼女の身を案じる女子生徒、緋ぐ足ヤマを見るや否や目がキラキラしてしまう恋に恋してそうな女の子に、ひときわ背の高い姿の子は無表情で彼女に冷ややかな視線を送る。

そうか、東山はこの子たちの中から誰を選ぶかって話なんだな、そんな今後の展開を予想しながら話は進行していきます。

 

やっぱり命短し恋せよ乙女ってことで、カッコイイ先生が来たらそりゃ教室内はおろか校内全体の女生徒が活気づくわけで、2年C組の担任が告知されるや否や再び黄色い声が沸くわけです。

イケメン教師の効果は絶大で、彼の授業には皆真剣に聞くし、多少のお喋りを注意されても黙って言うことを聞く、職員室に押しかけ根掘り葉掘りプライベートを質問する、そしてまんざらでもない東山!!

 

僕が東山なら人生3度あるというモテ期の到来!シーズン…3!!と心の中で叫ぶことでしょう。

しかし物語の東山は、この子たちに殺されたい願望で今にも「お願いです!首を絞めてください!」と取り乱しそうなギリギリのラインで平静を保っているのでしょう、変態だ!

 

物語は少しづつ東山が練りに練った計画を少しづつ明かしながら、完全犯罪に欠かせない人物たちの心を掌握していく過程が映し出されます。

  • 放任主義である母親にカマってほしくておもちゃをねだったこと
  • そんな母親から聞かされたのは「胎内でへその緒が絡まって窒息しそうだったこと」
  • バスの車内で好みの女子高生を目の前にすると「首を絞められたくなる」衝動に駆られ汗が噴き出ること
  • 心理学を専攻し研修医になったはいいものの、やはり女子高生を見ると興奮してしまうこと

など、どうも自分は女子高生に殺されたい願望がある性癖を持ってることに気付くことを独白しています。

 

そして、ある女の子との出会いによって彼の人生が大きく変化していくのであります。

その女の子が高校生になるタイミングを計算して研修医から高校教師に転職、さらには彼女が入学する高校の教師になるために、女生徒と付き合ってると高校教師のうわさを聞きつけ教育委員会に密告、空きが出たところで自分が赴任するという9年に及ぶ計画を次々と実行してくのであります。

 

そして

東山劇場に欠かせない女生徒を次々と落としていくのであります。

  • 2人きりの時にはひざを突き合わせて下の名前で呼ぶ。
  • とある事件の犯人に仕立て上げられた生徒のアリバイを作って庇うことで信用を得ることに成功し、公演で一人部活の個人練習をしている彼女を励まし、怪我を心配する優しい先生を演じる。
  • 課外学習で訪れた暗がりな場所で転ばないように手を引っ張って引率する。

このように、年上のイケメン男性という容姿に弱い女子高生に、男らしさとリード、そしてひたすら褒める作戦でイチコロにしてしまうのであります!

もう頭ポンポンするのはガキだけなんだよ!素敵な大人男子はそんなことしねえんだよ!と世間のクソセクハラ男たちに見せつけてるのであります!

 

たださ、何が凄いって常軌を逸してて引きますw

ここまでして目標を達成したいのかとw

何が凄いってただ女子高生に殺されるだけじゃダメって所。

ただ首を絞めてもダメ、ただ腹を刺されてもダメ、鈍器で殴られてもダメ、あくまで加害者となってしまう相手の事も考慮して「完全犯罪」にしないといけない非常に難易度の高いミッションなのであります。

 

でもさ、女子高生が首を絞めるってなかなか腕力のいる行為でしょ、そう簡単に出来ないし、そもそもいくら好意があったからと言って頼んでも殺すような犯罪をするわけがない。

どうやるのよひがし~!と思ったらピッタリの子が出てくるんですね~!

 

 

またですね、女子高生たちにもしっかりした設定が用意されてるのが本作の面白い所。

佐々木真帆という女子生徒は、いつも小杉あおいとべったり。

自然と手をつなぐし、あおいの具合が悪ければ保健室に付き合うし、もらったチョコは必ず半分こ、帰る時も部活動に入部する時もいつだってあおいと一緒なのです。

 

小4の時にこの街へ引っ越した時からの付き合いだという真帆とあおいの関係や、最初こそレズビアンなのかなと連想させておきながらしっかり東山の事を好きになっていく過程、中々先生にアプローチできない性格なのも、その後のエピソードの意外性を発揮してくるので要注目です。

 

 

そんな真帆のソウルメイトであるあおいは、スピリチュアルな力を持つ女の子。

普段はもじもじしていて引っ込み思案案ですが、地震を予知したり(大きさまで!)、熱帯魚の寿命を感じ取ったり、植物や動物の意志を感じ取ることができる異質な女の子。

 

真帆同様あおいも真帆を大事にしており、彼女が移籍に興味があれば東山が設立した分に一緒に入部するし、真帆が居残りで部活の片づけを手伝わされた時には、暗くなっても彼女が終わるのを待っているほど。

さらには真帆の秘密も知ってるというキーパーソンなのであります。

 

 

そして東山に猛烈なアプローチをする女生徒・君島京子。

東山が赴任するや否やハートを撃ち抜かれ、廊下でも職員室でもなりふりかまわず「ひがし~」とあだ名で近づき、可愛いアピール。

 

そんな彼女は戯曲が好きだという見た目からは想像できない趣味が。

ひとり図書室で学園祭の演劇の脚本を書いていることに気付いた東山から激褒めされ、彼の進めた作品を鑑賞して、学園祭の演劇に採用するのであります。

2人きりで演劇の打ち合わせをする際も、どこか心ここに在らずな状態で、とにかく先生に褒められたい一心で、とにかく下の名前で呼ばれた一心で演劇に力を入れるのであります。

 

 

そして最後、沢木愛佳。

柔道部に所属する背の高い運動神経の優れた女の子ですが、基本的には生徒たちとつるまずひたすら部活に打ち込む恋愛からはほど遠そうな存在。

東山はそんな一見カタブツそうな彼女を見事に落としてしまうのであります。

 

それはとある事件がきっかけ。

なんと教壇に犬の死骸が放置されていた事件が勃発。

生徒たちはその日たまたま腕に包帯を巻いていた愛佳が怪しいと睨み、全員で寄ってたかって犯人扱いしてしまうのです。

しかしこの問題に東山が終止符を打つのです。

彼女はいつも夜中に近所にある公園で個人練習をしており、その日も練習していたことを目撃している、だから彼女は犯人ではないと。

 

そして夜な夜な練習する彼女を励まし、怪我をした手を手に取って「痛むか?」と心配する東山。

こうして彼女は見事に東山に恋心を抱くのであります。

 

果たして東山はどの女生徒から殺されたいと願っているのか。

後半からは東山の元カノ登場!?さらに過去に起きた事件が明かされることで、徐々に東山とある生徒の内面が完全犯罪計画と大きく結びついていくミステリーの答え合わせな展開と、簡単にサイコパスで片づけられないメンタルな部分への追求をしていくのであります!

 

オートアサシノフィリアとは

さてさて、これ以上のネタバラシは核心に触れるので、劇中に登場した専門用語を説明しながら、東山がただの変態ではなくメンタルに病を抱えた存在であることを語っていこうと思います。

 

思春期の頃から他とは違う感覚を持っている東山は、色々調べていった結果「オートアサシノフィリア」であることを自覚します。

「自分が殺されることに異常なまでの性的興奮を覚え、自殺行為や自傷癖とは違い、あくまで対象は「自らが殺されることに対する欲求」であること」を指す言葉だそうです。

 

基本的には衝動を抑えることも可能だし、何なら普通に異性と交際したり性行為するのも可能。

現に東山は五月という女性と付き合っていた過去があるため、日常を送る分に関しては何ら問題はなかったんです。

ただ、研修医期間中にある女の子と出会ってしまったことで、この性的欲求を満たす唯一の方法を発見し、五月と別れてまで完全犯罪を実行しようと計画するんですね。

 

僕自身まぁSかMかと言われればなかなかのMなんですけど、このオートアサシノフィリアって究極のMだなぁと。

ただ東山の場合、殺されそうになる状況で快楽を生むのではなく、殺されないと快楽を得られないひどさにまで陥ってることから、かなりの精神疾患だなぁと思ってしまいます。

五月に痛めつけてもらうってだけじゃダメだったってことですよね。

そして妄想だけでは済まされないという危険性。

 

そのために9年を費やしてる事や、幾ら他者を利用しての完全犯罪とはいえ、加害者の存在が無ければ成立しないわけで、ただの変態では片づけられない危険人物だと思うんですよ。

 

また、本作には解離性性同一障害を持つ存在も登場することで、どこか心に不安を抱えた者たちが巡りああっての物語でもあるんですよ。

その人には支えになる存在がいて、何とか本来の人格を取り戻す流れになってるんだけど、東山にはそういった支えになる存在がいないんですよ。

 

だから実は本作って、そういった心に病を抱える者に、如何に手を差し伸べられるかってのが裏テーマになってるんじゃないかなぁと。

もちろん性癖って色々あるんだけど相手に強要させることは犯罪なんでね、法を越えずにやってほしいのはありますけど、異常な性癖って治るんですかね?w

 

 

最後に

女子高生の4人が非常に良いキャラだったし(南沙良いいよね)、主演の田中圭のヤバさも見事でした。

実は体感時間は少々長く感じたんですが、東山の計画が少しづつ明かされていくのと、後半明かされる「キャサリン」の存在によってちょっとずつ回収されていく真相、そしてついに実行される完全犯罪が気持ちよくて、見ごたえは十分でした。

 

光の使い方も東山に当たる赤いライトを要所で使うことでサイコパス感出してましたし、時折出てくる幻想的な風景も良い演出だったと思います。

 

強いて言うならここまでシリアスにしなくとも少ない時間で笑いを作って緩急を生み出すような演出なら体感時間も短かったろうし、ここまで丁寧に描かずとも好かったかなぁと。

 

あとは田中圭でも十分良かったんですけど、これ松潤がやったらもっとヤバイ映画になった気がするんですよね。

あの人こういう役ハマると思うんですよ。ストイックな人ってどこかM気質じゃないですか。

で俺様気質でしょ。イケると思うんだよなぁw

 

まぁ忘れてくださいw

 

いや~心って何なんでしょうね・・・。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10