きみの瞳(め)が問いかけている
ここ数年、純粋なラブストーリーという名目の新作映画の割合が、昔に比べて減っているように思えます。
理由としては多様性を重んじる社会に変化している流れから、いわゆる男と女の物語ってのは大きく必要とされてないから。
もしくはウケが悪いから。
かつては「タイタニック」や「きみに読む物語」なんてのが流行りましたよね。
韓国映画では今でもわりかしあるんですけど、いわゆる大人の「純愛映画」って最近なかなかないよねと。
日本でいえば、「キミスイ」とか「君の名は。」といった恋愛要素よりも青春要素が強い映画は製作されてるんですけど、これらを抜かすといわゆる「キラキラ映画」ばかり。
とにかく正統派のラブストーリーってホント減っちゃったなぁと。
今回鑑賞する映画は、正統派のラブストーリーとは言い難い設定なんですけど、純粋に「純愛モノ」の映画なのかなと。
久々に切ない恋愛模様を味わえそうな匂いがします。
早速鑑賞してまいりました!
作品情報
不慮の事故で視力を失った女性と、罪を犯したことでキックボクサーの夢を絶たれてしまった男。
互いに惹かれあうように出会った二人の恋愛模様と、立ちはだかる宿命に翻弄されてしまう姿を描いた純愛映画。
2011年に製作された韓国映画「ただ君だけ」を原案に、恋愛青春映画の名手が、旬の俳優と演技派女優の二人を起用し、「痛いほどの純愛」を真っ直ぐに描いた。
また主題歌には、世界を席巻している韓国のグループ「BTS」が主題歌を担当。
完全書下ろしの歌詞と美しく切ないメロディで、作品に華を添えていく。
視力を失くした女と夢を失った男。
欠けてしまった部分を互いが補うように紡いでいく愛は、どのような結末を迎えるのか。
暗闇に差す光が、二人をやさしく包んでいく。
あらすじ
"視力を失くした女と、罪を犯し夢を失った男。
暗闇で生きてきた2人が初めて見つけた、ささやかな幸せ。
だが、あまりに過酷な運命が彼らをのみこんでいく──。
目は不自由だが明るく愛くるしい明香里(吉高由里子)と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた塁(横浜流星)。
小さな勘違いから出会った2人は惹かれあい、ささやかながらも掛け替えのない幸せを手にした──かに見えた。
ある日、明香里は、誰にも言わずにいた秘密を塁に明かす。
彼女は自らが運転していた車の事故で両親を亡くし、自身も視力を失っていたのだ。
以来、ずっと自分を責めてきたという明香里。
だが、彼女の告白を聞いた塁は、彼だけが知るあまりに残酷な運命の因果に気付いてしまっていた──。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、三木孝浩。
2020年は「思い、思われ、ふり、ふられ」で、4人全員が片思いをしながらも、誰も傷つけない恋愛を目指した、非常にさわやかな青春恋愛映画でした。
当ブログで、ここ4,5年の作品を追いかけてきているので、今更監督に言及する内容はないんですが、やっぱり本作も「光の加減」と「丁寧なまでの心の機微」をどこまでやっているかが気になります。
逆に丁寧すぎるのが毎回勿体ないなぁなんて不満を漏らしてしまうので、そろそろ本作辺りで肩の力が抜けたようなユーモアバランスが欲しいところです。
監督作品はこちらもどうぞ。
登場人物紹介
- 柏木明香里(吉高由里子)・・・大学で彫刻を専攻していたが、自らが運転していた車の事故で両親を亡くし、自身もほとんどの視力を失ってしまっている。今は電話対応のカスタマーセンターで働き、明るく元気に振る舞っているが…。ビル管理人のお爺さんと一緒に連続TVドラマ「LAST LOVE」を観るのが毎週の楽しみ。
- 篠崎塁(横浜流星)・・・幼い頃に母を亡くし、修道院の児童養護施設で育つ。一度はキックボクサーとして将来を有望視されるが、ある事件を起こし、懲役3年5ヶ月の刑に。出所後は、配達や管理人のアルバイトでその日暮らしをしている。
- 原田陣(やべきょうすけ)・・・塁のキックボクシングコーチ。今も昔も温かく塁を受け入れる兄貴分。
- 尾崎隆文(野間口徹)・・・明香里の働くカスタマーセンターの上司。明香里に気がある。
- 久慈充(奥野瑛太)・・・半グレ集団「ウロボロス」メンバー。
- 金井(般若)・・・極龍連合のヘッド。塁が出場するキックボクシングの賭博試合に賭ける。
- 津ノ森恵子(坂ノ上茜)・・・明香里が店長を務めるインテリアショップの店員。
- 大内会長(田山涼成)・・・塁が所属していたキックボクシングジムの会長。事件前は塁の才能に惚れ込んでいたが…。
- 坂本晋(岡田義徳)・・・半グレ集団「ウロボロス」に借金があり、詐欺行為を強要されている。ある日逃げ出そうとするが…。
- 麻衣子(森矢カンナ)・・・明香里が毎週楽しみにしている連続TVドラマ「LAST LOVE」のヒロイン。
- 佐久間恭介(町田啓太)・・・半グレ集団「ウロボロス」のリーダー。塁とは児童養護施設時代からの幼馴染。
- 大浦美恵子(風吹ジュン)・・・塁や恭介が育った児童養護施設のある修道院のシスター。(以上HPより)
「きみのめ」なんて呼んでほしいそうです。
「どうせ難病モノの泣かせるパターンの映画だろ」なんて偏見せずに、互いに失ったものを持つ男女がたどり着く愛の極みとやらを、心に身を任せて堪能しようではありませんか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
互いが互いを救おうとすることで生まれる愛。
口下手な流星くんと、かわいさMAXの吉高さんが非常にマッチしてた純愛映画でした!
以下、ネタバレします。
詳細なあらすじ
左手の甲にはタトゥーを消した痕。
口数も少なく笑顔も見せない表情と、暗いオーラを纏う背中を見せる塁。
どこか喪失感を醸し出しながら酒の配達をする塁は、ビルの駐車場および巡回という住み込みの仕事を手に入れる。
前の担当だったおじいちゃんが失踪したことでありついた仕事は、TVを見ながら業務ができる気楽さと同時に、常に睡魔が訪れる退屈な仕事だ。
そこへ突然現れる一人の女性。
お饅頭とミカン、不細工なおいなりさんと晩酌のワンカップを差し入れにやってきた女性は、塁を前の担当のおじいちゃんと勘違いしていた。
突然やってきた訪問者に驚く塁は、彼女が視力を失っていることに気付く。
いつもここでおじいちゃんとTVドラマ「LAST LOVE」をかかさず観ていた。
人違いだったことから目の見えない女性は足早に去ろうとするが、塁はせっかくだからと彼女を引き留め、ドラマを見ることに。
目が見えないのにドラマなんて楽しめるのだろうか。
素朴な疑問をぶつけることができないまま、二人の初めての時間は淡々と過ぎていく。
外の水道で体を洗い、お礼に手渡されたおいなりさんを頬張る塁。
女性から外に置いてあるキンモクセイに水をやるよう言われた塁は、翌週もやってきた彼女と、再び駐車場の管理室でドラマを見ることに。
「運動でもされてたんですか?」という女性の問い。
ボロボロの靴、ろくに風呂も入ってない体の塁から、その臭いは放たれていた。
すかさず窓を開け喚起し、潰して履いていた靴をちゃんと履く塁。
彼女の名前は柏木明香里。
コールセンターで働く女性であることが判明する。
彼女は放たれる汗の臭いから、塁が叔父さんだろうと推測する。
明らかに青年の年齢である塁は否定したいところだが、言葉足らずな上にタイミングを逃し、その場を「おじさん」で通すことに。
目の見えない明香里に、ドラマの人物がどんな服を着ているか、どんなイヤリングをしているかを質問するが、塁は適当に返す。
それでも塁の言葉を信じ想像を膨らませる彼女の笑顔を見て、塁の中に微かな何かが芽生え始めていく。
おいなりさんを頂いたお礼に桃をお土産に渡す塁。
「ちゃんと洗った?」
足を洗ったのかどうか聞かれたと思った塁は、すかさず「洗った」と答えるが、明香里が質問したのは桃を洗ったのかどうかだった。
彼女の問いには、なぜか勘違いしてしまう塁だった。
日は変わって、ボクシングジム。
キックボクサーとして活躍していた塁は、黙ってジムから消え去ったことへの謝罪に来ていた。
スタミナドリンクを手土産に、会長とコーチの原田に頭を下げる塁。
手塩にかけて育てたのに、恩をあだで返したことへの怒りが未だ治まらない会長に対し、久々の再会に喜びを感じている原田。
ジムの後輩に塁を紹介しようとする原田に、塁は「今日は謝りに来ただけだから」と制止する。
そこへグローブを持ってきた会長。
「まだボクサーとして間に合うかどうか見てやる」と救いの手を差し伸べるも、塁はそれを拒否。
もうボクシングするつもりないのでと言い残し、ジムを出ていく。
明香里は目が見えない分、嗅覚や手の感覚で周囲を把握していた。
一体どういう気持ちなのか塁も目を瞑って感覚を研ぎ澄ませると、遠くから白杖をついて歩いてくる明香里の姿が近づいてくるのを感じる。
明香里は、塁が新しい靴に変えたことを瞬時に気付き、再び塁を驚かせる。
彼女が帰ろうとした瞬間、ものすごい勢いで駐車場へ入ってきた車をよけようとして転倒してしまう。
塁の職場に来る前に、洗濯機の排水溝から水漏れが発生してしまい、足を滑らせて転倒していた明香里は足を痛めてしまっていたのだった。
病院へ連れて行った帰りのバス。
明香里に名前を聞かれた塁は、聞かれた場所がバスという狭い空間だったことや、名前を告げたことが周囲の人間から勘付かれるのではないかなど、様々な思いが脳内を巡らせ、名前を告げることができずにいた。
歩くことがままならない明香里をおんぶして送ろうとする塁。
「きっと後悔するよ・・・」
その理由は彼女のマンションの手前にある長い階段からだった。
キックボクサーとしての意地を見せる塁。
マンションに着いたついでに、もう一つお願いをする明香里。
洗濯機の排水溝に詰まっていたのは、彼女のパンツだった。
お礼にコンサートのチケットを渡す明香里。
音楽聞かないし、行く相手がいないからと断る塁だったが、じゃあ一緒に行く?という明香里の誘いを受け、二人でコンサートに行くことに。
コンサートのチケットをくれたのは明香里の職場の上司の尾崎だった。
尾崎は明香里に好意を抱いている。
職場で故意に肩を触ったり、上司のいる個室に呼びだし誕生日プレゼントと称してネックレスを渡すなど、立場を利用して抵抗できずにいる明香里を追い詰めていた。
一方、ジムの会長に呼び出された塁。
誰も話そうとしない空気に押しつぶされそうになった原田は、これは我慢大会か?wと場を和ませる。
今まで何をやっていたのか話そうとしない塁にしびれを切らせた会長は席を立とうとしたが、塁はようやく重い口を開き始める。
キックボクサーとして活躍する一方で、孤児院で仲良くなった佐久間との関わりから、地下格闘技に出場していた塁は、やがて半グレ組織の用心棒としても働くことになっていた。
借金の肩代わりに詐欺の手伝いをしていた坂本が、金を持って逃げたために、半グレ組織「ウロボロス」の掟である「裏切り者には制裁を」の言葉通り、坂本をボコボコにする塁。
そこへ警察がやってきたことがきっかけで、彼は懲役3年を言い渡されていた。
刑期を終え出所するも、未だ罪を償えきれていないことから、リングの上に再び立つことは考えていなかったのだ。
久々のデートからか、それとも素性の知れないおじさんに惹かれつつあるのか、普段行く美容室で気分を変えていつもと違うヘアスタイルにしたり、普段着ないような派手目の服を身に纏ってみたり、普段より気合を入れたメイクを始める明香里。
結局普段着で落ち着いた彼女は、塁と共にムーディーなバーで四重奏の音楽を堪能する。
お腹の空いた二人は、明香里がかつて両親と親しく通った焼肉屋へ向かう。
大学で彫刻を専攻していた明香里は、ロダンの「考える人」の足の爪が深爪だったことを話し出すことを皮切りに、どうでもいいことは鮮明に覚えているのに、両親の笑顔といった大事なことは思い出せないことを語る。
目が見えないから焼き加減が分からずじまいだった明香里は、ビール片手に肉を頬張ろうとするが、箸でうまく掴めず白いセーターに落としてしまう。
塁に過去のことを根掘り葉掘り聞く明香里だったが、塁は頑なに口を閉ざしてしまう。
過去を話したくない塁に対し、目が見えない分過去を知ることで相手を把握したい明香里は、ちょっとした口論になってしまうが、彼女を送る際、初めて自分の素性を明かす。
「俺の名前はアントニオ篠崎塁。24歳。キックボクサーやってた」
おじさんだと思ってた塁の年齢に戸惑う明香里だったが、ようやく教えてくれた名前に喜びを現していく。
このことをきっかけに、塁は再びキックボクサーの道を歩み始めていく。
ある日、明香里の家に上司の尾崎が押しかけてくる。
仕事の相談でという口実で強引に家に上がる尾崎。
以前手渡したプレゼントのネックレスを開けていないことに腹を立てた尾崎は、力づくで明香里にネックレスを付けようとするが、彼女は抵抗し尾崎の顔に引っかき傷をつけてしまう。
キレた尾崎は「お前が抵抗するからだ」とマウントポジションで明香里の頬を平手打ちしまくる。
警報ブザーを鳴らした明香里だったが、尾崎への恐怖からブザーを止めひたすら謝る。
そこへ孤児院で受け取ったプレゼントを渡しにやってきた塁が現れ、明香里から尾崎を離し、半グレ組織で培った手加減なしの暴行を加える。
明香里の必死の制止に耳を傾けない塁は、尾崎の指を折り警告する。
職場をやめて別のところで働こう、おれが責任取るからと、明香里を励まそうとするが、障がい者が仕事を探すのがどれだけ大変かあなたにはわからないでしょ、と返され困惑してしまう。
プレゼントを置いてビルに帰った塁。
翌日明香里が現れ、職場に退職届を出したこと、それでも心が晴れないから責任取って私をどこか連れてって、と誘う。
塁は明香里を一番古い記憶のある場所へ連れていく。
そこは風車がたくさんある海だった。
場所は覚えているけど、母親の顔は覚えていなかった。
母親は自分を抱え海の中に入ろうとし、無理心中を図ったことを明香里に話し出す。
過去を打ち明けてくれたことに喜びを感じた明香里は、塁の手を握りしめる。
こうして付き合うことになった二人。
襲われないように犬を飼いはじめたり、彼女のために家の段差を無くし、塞いでいた窓を壊し、ベッドに日差しが入るようにリノベーションしていく。
まるで暗い影を背負っていた二人の毎日に希望が射す様に。
塁の試合も順調に勝ち進んでいき、明香里は手に職を付けることと塁をサポートするためにマッサージの勉強を始めていく。
しかし順風満帆に愛を育んでいた二人の間に、再び現れたウロボロスの面々、明香里が視力を失った経緯、それが塁が起こした事件に関わっていたこと、さらに明香里の視力の低下など、更なる試練が押し寄せていた・・・。
果たして二人は乗り越えることができるのか。
塁が愛故にどう決断するのか。
・・・ここまでがお話の3分の2程度のあらすじです。
失ったものを覆う愛の形。
目の見えない女性と罪を背負い生きる元キックボクサーが、ふとしたことから出会い、運命に翻弄されていく物語は、美しく照らされた光や演者の表情から手の運びといった細かな視線に気を配る三木監督らしさをしっかり演出したことで、韓国映画のリメイクを感じさせない作品に仕上がったと共に、劇中のセリフのような「ロミジュリ」感を彷彿とさせるすれ違いによって物語を劇的にさせ、観る者の心を鷲掴みにさせた、2020年代最初の純愛映画でございました。
運命の出会いから徐々に距離を縮めていく関係性、健常者と障がい者の考えや環境の違い、それらを乗り越えて初めて二人が目を見て向き合うベッドの上、そして訪れてしまう悲しい過去と二人の接点。
罪を償うことでしか生きていけなかった塁が、彼女のために生きようと献身していくんですが、本作は彼が彼女を救うのではなく、彼女が彼を救う物語のように感じます。
もちろん失明するかもしれない明香里のために再び裏社会に足を踏みいれて費用を稼ぐというのが物語の流れ。
最後にはボロボロになった塁を明香里が見つけ出す点から、これまで帰る場所の無かった塁が初めて「帰る場所」を見つけるまでの物語として結末を迎える。
だから、塁は明香里によって救われる物語であった以上に、聖母マリアのような立ち位置にいる明香里が、これまで自分を赦すことができなかった塁に赦しと安らぎを与える物語だったように思えます。
吉高由里子史上超絶カワイイ
演者についても非常に良かったです。
ここまで心の美しい人に出会ったら全てを賭けて守りたいとか視力を取り戻してあげたいって気持ちにさせる吉高由里子の表現力にやられっぱなしでしたし、むっちゃ口下手で言葉足らずで不器用で足臭いけど暗いオーラを纏っていながらも肩甲骨モリモリの肉体美を持つ横浜流星くんの感性の良さに脱帽です。
特に吉高由里子は、僕の中で吉高由里子史上一番かわいいと思えた映画「横道世之介」に匹敵するほど、愛おしい人物を演じていたのが印象的です。
目の見えない女性という難役を見事にこなしていることはもちろんのこと、些細な仕草やガツガツ人の心に入り込んでくる性格、現状の辛さを感じさせない明るい表情もステキだし、何よりデートする前の女の子らしさにキュンキュンする男性も多いのではないでしょうか。
フードを被ってシャドーボクシングのマネをする吉高由里子、
「すく」と名付けた愛犬とじゃれ合う吉高由里子、
ホントは一緒にコンサート行きたいくせに相手の顔色を窺う吉高由里子、
上司に暴行されかけても平然と仕事に行こうとしてしまう吉高由里子、
部屋に入る日差しを見つめる吉高由里子、
塁の顔に触れながら「こっち見て」と囁く吉高由里子、
ゆるふわでオーバーサイズの服を着こなす吉高由里子、
洗濯しながら桃を頬張る吉高由里子、
おんぶしてもらった時に塁の髪の毛が意外と長いことを知る吉高由里子、
探し始めたらきりがないほど、男心をくすぐる吉高由里子にやられっぱなしの2時間でした。
もちろん流星くんもキックボクサーとしての立ち振る舞いといいますかポージング、アクション、練習風景など、説得力のある姿。
見事なシックスパックと、鋭いキック、素早いパンチと身のこなし、引き締まった背中に汗ばんだ体で懸垂する姿に、ホースで水を浴び、上半身を見せつけるおまけつき。
感情を表に出せない口下手な役柄というのも、演技経験の乏しさをカバーするという意味かもしれない深読みもありながら、目で訴える芝居をしっかり演じていたように思えます。
最後に
今回の三木監督。
もしかしたら好きなように作らせてもらえたのかな?とも思えた作品でした。
その最たる理由が、過度な説明台詞がないこと。
映画を製作する際、スポンサーの意向でどんどん自分が作りたいものからかけ離れてしまうことをよく聞かされますが、今回「ふりふら」で強く感じた過度な説明描写というのが無く、映像を挟むやり方で二人の過去を説明する演出になっておりまして、これが非常に良かった。
臭う足、汗をかいた体を乾かす姿、手の甲を隠す仕草。
寡黙な役柄からということもあり、あえて心の声を言葉にしないことで、演者の表情からたくさんの事を読み取れるような演出が、二人の純愛の過程を掻き立てていたように思えます。
また、桃だったり犬だったりオルゴールだったりキンモクセイといったアイテムを後に活用させる伏線の張り方や、二人の過去の真相を後半に持ってくることで課せられる試練という流れも効果的だったように感じます。
未見ではありますが、元が韓国映画ということから、もしかしたら忠実に再現しただけかもしれませんが、逆に三木監督の良さが発揮された、これが三木監督らしい映画とも言える映画だったのではないでしょうか。
前半のツカミの良さと裏腹に、終盤の締まりの悪さが少々目につきましたが、差し引いても優れた純愛映画だと思います。
誰かのために全てを投げ出せる男らしさ、そんな無茶をする塁を優しく包容する明香里の美しさ。
互いの欠けたハートが合わさるような出会うべくして出会った二人。
目が見えるのに見えない部分や、目が見えないからこそ気づくこと。
そんな違いを見せながら、人を見るということの意義を軸に、物語は切なさと痛々しさという闇と、優しさと温もりで作られたまばゆい光がしっかり描かれてしました。
長々と書いてしまいましたが、この辺で。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10