ナイブズ・アウト/グラス・オニオン
ベストセラー作家にして富豪の男が謎の死を遂げ、彼の恩恵にあやかっている癖の強い家族たちに容疑がかかる中、これまた癖の強い名探偵が真相に迫ってくという、コテコテでありながら斬新な設定で話題を呼んだミステリー映画「ナイブズアウト」。
嘘のつけない移民の女性キャラがあまりにも素直であり健気であり、遺産を受け継ぐと発覚してからの困った姿は守ってあげたくなるほど。
それに引き換え、オヤジまたは爺さんの金ありきで人生を逆算して考える家族の面々の
クズっぷりには反吐が出たほどw
そこにやってきた名探偵ブノワ・ブランがズバズバ推理するかと思ったら、ただただ観察ばかり。
頼りがいのなさそうな主人公が、ラストでサクッと解決していくのが非常に楽しかったですね。
この迷、失礼、名探偵を、あのジェームズ・ボンドで世界的スターになったダニエル・クレイグが演じるのだからたまりません。
どちらかというと寡黙で渋みを利かせたのがボンドでしたが、こちらはとにかくニコニコしてて余裕綽々で、どこか抜けてるんだけど、ちゃんと目を光らせた芝居をするんだから素晴らしい。
え、こんな役演じられるの!?と思った人も多かったんじゃないでしょうか。
果たして続編はどんなミステリーになってるんでしょうか。
頼むぞライアン・ジョンソン!!
早速自宅で観賞いたしました!
作品情報
「LOOPER/ルーパー」のライアン・ジョンソン監督が、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」での重圧から解放されたかのように、大好きな推理作家アガサ・クリスティ原作の小説をイメージし、自由且つ現代アメリカへの強烈なメッセージ性を秘めたミステリー映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」の続編。
億万長者の謎めくプレゼントによって「マーダーズ・ミステリー・パーティー」に招待された面々と共に、南部訛りの名探偵ブノワ・ブランが事件に巻き込まれていく姿を、前作同様ユニークな掛け合いはじめ、往年のミステリー映画仕立てで描く。
「007」シリーズを勇退したダニエル・クレイグが、ジョームズ・ボンドを演じた時とは一変、訛りの強くクセのある性格の名探偵を、豊かな表情とユニークな掛け合いで魅力的に演じた前作。
本作では、そんな名探偵の過去に触れる一幕もありながら、推理してるのかしてないのか、それともしてるのかというのらりくらりな姿で魅せる。
ゲストも、「マザーレス・ブルックリン」で自身も探偵を演じた経験のあるエドワード・ノートンや、「ムーンライト」のジャネール・モネイ、ディズニー+ドラマ「ワンダヴィジョン」でヴィランを演じたのも記憶に新しいキャスリン・ハーンや、「あの頃ペニー・レインと」のケイト・ハドソン、そして「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズや「007/スペクター」でダニエル・クレイグとの共演経験もあるデイヴ・バウティスタなど、前作に引き続き豪華なキャストが集結した。
孤島での謎解きゲームが殺人事件へと変わってしまったバケーション。
ブランは真相を解明し、犯人を見つけ出すことができるのか。
あらすじ
億万長者マイルズ・ブロン(エドワード・ノートン)が、ギリシャの島で開かれる毎年恒例の集いに親しい人間たちを招待。
招待客の中には、マイルズの元ビジネスパートナー(ジャネール・モネイ)、コネチカット州の現知事(キャスリン・ハーン)、ファッションデザイナー(ケイト・ハドソン)とそのアシスタント(ジェシカ・ヘンウィック)らがいた。
しかし、やがて殺人事件が発生。
名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が秘密、嘘、動機を隠し持った面々の中から犯人をあぶり出していくことに……。(Movie Walkerより抜粋)
キャラクター紹介
- ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)・・・名探偵。今回も難事件を見事に解決する。
- マイルズ・ブロン(エドワード・ノートン)・・・億万長者。親友達を「マーダー・ミステリー・パーティー」に招待する。
- カサンドラ・ブランド(ジャネール・モネイ)・・・会社重役。テクノロジー起業家でありマイルズの元ビジネスパートナー。
- クレア・デベラ(キャスリン・ハーン)・・・政治家。上院議員に立候補しているコネチカット州知事。
- ライオネル・トゥーサン(ヘスリー・オドム・Jr)・・・マイルズの部下の科学者。
- ペグ(ジェシカ・ヘンウィック)・・・バーディーの忠実なアシスタント。
- ウィスキー(マデリン・クライン)・・・デュークの年下のガールフレンドでチャンネルのアシスタント。
- バーディー・ジェイ(ケイト・ハドソン)・・・ワイルドカード。ファッションデザイナーに転向した元スーパーモデル。
- デューク・コーディー(デイヴ・バウティスタ)・・・無鉄砲なマッチョ。Twitchで100万人のフォロワーがいる、インフルエンサー。
- TBA(イーサン・ホーク)・・・マイルズのアシスタント。
- デヴォン・デベラ(ダラス・ロバーツ)・・・クレアの夫。
- マー(ジャッキー・ホフマン)・・・デュークの母。
(以上Wikipediaより抜粋)
全員怪しい今回の容疑者たち。
彼らの隠された背景とは、そして今回の殺人事件にどんな動機があったのでしょうか。
イースターエッグのように細かい伏線が用意されてるらしいので、その辺もくまなくチェックしたいですね。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#ナイブズアウトグラスオニオン 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年12月23日
前作ほどの満足感は得られなかったもののサブタイトルの意図はじめ、小道具の使い方やお話の構成、全キャラのスムーズな説明、そして謎解きの爽快感!
サプライズゲスト込みで笑えるネタもたくさんあって非常に楽しかった!
pic.twitter.com/75ifKV0AeH pic.twitter.com/095ZY9d9ap
裸の王様ならぬ裸の投資家、それに群がる小金持ちやインフルエンサーといった現代社会の構造を皮肉りながらも、脱アガサ的ともとれるミステリーで面白おかしく魅了する非常に愉快で楽しいお話でした!
以下、ネタバレします。
サクッとあらすじ。
2020年5月。
パンデミックにより皆がソーシャルディスタンスを取りながら生活を余儀なくされていたある日、仲良しである州知事、インフルエンサー、科学者、元モデル、そして元ビジネスパートナーに謎の小箱が届けられる。
あるヒントから徐々に難題をクリアし開かれた箱の中には、企業家にして投資家である億万長者・マイルズ・ブロンからの「パーティーへの招待状」だった。
そして、難事件に飢え、風呂の中でずっと引きこもりながらZoomで仲間とパズルゲーームをしていた世界の名探偵ブノワ・ブランにも招待状が。
ギリシャの孤島へ向かった一行は、マイルズから盛大なおもてなしをされるが、元ビジネスパートナーであるカサンドラだけは他の面々と違い浮かない表情であり、他の面々もどこか彼女に対し、仲良しであるはずがぎこちない対応をしていた。
広大な敷地を持つこの別荘には、マイルズが主宰する「マーダー・ミステリー・パーティー」のためスタッフは皆出払っており、招待された者しかいない。
そして夕食の時間まで各々がプールでくつろいだり体を動かしたり談笑するなどしてくつろいでいた。
マイルズはブノワ・ブランを屋上にある「グラスオニオン」と名付けられたガラス張りの球状の部屋に呼び出し、「僕はあなたを招待していない」と告げる。
ブランは「いや、ちゃんと木箱の謎を解き、招待状を受け取った」と話す。
どうやらこの木箱は謎を解いた後リセットできる機能をもっている可能性が高く、ブランは誰かから謎解き済みの木箱を受け取ったと推察。
晴れて正式にマイルズから招待を受けたブランは、彼らとマイルズの関係を伺うことに。
彼らは今は無き「グラスオニオン」という店で知り合い、仲良くなっていた。
皆が「破壊者」と呼ばれるように、既成概念にとらわれない発想で自らの道を切り拓き、それをマイルズが手助けしたことで今の地位を手に入れたとマイルズは語る。
クレアは既成政治を破壊し、バーディーは自らの失言を逆手に取ったブランド戦略を、デュークはTwitchからYouTubeへと移行し、ライオネルは彼のアイディアの元科学者の地位を得ており、皆マイルズの恩恵にあやかりながら親交を深めていたのだった。
しかし途中から端を発したように口を開いたカサンドラの言い分は違う。
皆、マイルズから資金を得ているため、ただの言いなりでしかないと言う。
本心は違っていても、彼からの信用や信頼、資金融資がなければ何もできないために彼の言うことを聞くしかないという。
その場は丸く収まったものの、夕食の時間まで各々が何かを企んでいる姿をブランは監視しており、これがただの「パーティー」でないことを予感させていたのだった。
ガラス製のオブジェや高価な絵画が並ぶ広いリビングでは、本物の「モナリザ像」が展示されている。
パンデミックにより資金難となったルーブル美術館に出資したマイルズが、モナリザをしばらく「預かる」という名目で借りており、皆に自慢しているのだ。
見るたびに様々な表情を浮かべるモナリザに感銘を受けたマイルズは、いつか世界的な何かを生み出そうと若い頃に皆に話しており、そうした意味も込めて今回ここに飾ったのだという。
もちろんちょっとした物音で防弾ガラスが作動する仕掛けになっており、デュークのスマホ音が鳴る度に作動するほど精密に警備されていた。
そしてマイルズは今回皆を集めたもう一つの理由に、ある事を世界に発表することを先に知ってもらうために集めたのだった。
それは「新固形水素燃料を開発」したことの発表だった。
二酸化炭素を全く排出しない新しいエネルギーがあれば、誰もが低価格で環境にも配慮した未来を提供できると語る。
既にこの屋敷はこの「クリア・アメリカ」と呼ばれる新エネルギーで電気を担っており、ライオネルやクレアがまだテスト段階でしかない状態の燃料を発表するには危険だと促してもマイルズは聞く耳を持たず、二人は動揺を隠せないでいた。
そしていよいよ始まる「マーダーミステリーパーティー」。
マイルズは「今夜僕は殺される、君たちにはその犯人と動機、犯行に使われる凶器を推理して当ててほしい」と告げるのだった。
カウントダウンが始まるかと思いきや、ブランが何とマイルズが懸命に用意したこの謎解きの全貌を全て当ててしまうのだった。
当然ご立腹のマイルズはブランを部屋に呼び出し、八つ当たりする。
しかしブランは、今回ここに集まった者たちは皆あなたを殺す動機のある者ばかりで、しかも「マーダーミステリーパーティー」という名目で集まった、だから今夜もしかしたらあなたの身に何か起きるかもしれないから用心するようにと忠告するのだった。
パーティーも佳境。
皆と距離を取るカサンドラだったが、彼女がいることで居心地のよくない連中から「腹を割って話そう」と言われる。
カサンドラはなぜ皆が自分を裏切ってマイルズの側につき、自分を買社から追放させたのか「真実が知りたい」と声を荒げる。
しかしデュークはマイルズなしでは俺たちは成立しない、くいっぱぐれるだけ、それだけが真実だと告げる。
空気を換えようとマイルズが曲をかけ、バーディーとダンスを始めると、デュークが急に喉を抑えて倒れ込んでしまう。
ついに死者が出てしまったのだ。
しかも、なぜか彼が飲んでいたのはマイルズの飲んでいたグラスだった。
マイルズはブランの忠告していたことが実行されたと知るや否や「この中に自分を殺そうとした奴がいるかもしれない」と疑心暗鬼になり、ブランを盾に脅えるのだった。
果たしてデュークを殺したのは誰か。
マイルズは誰に狙われていいるのか。
そしてカサンドラの言う「真実」とは一体何なのか。
・・・というのが半分くらいのあらすじです。
見事なミステリー
前作では大富豪のおじいちゃん、その爺ちゃんが持つ資産に群がる家族というピラミッドの中に「移民の女性看護師」が突如頂点に立ったことで諍いが生じることを、トランプ政権に見立てた社会風刺を裏に、古典的でありながら斬新な謎解き設定で楽しませてくれたナイブズアウト。
今回もまた似たような構造を設定に入れながらも、頂点に立ってる奴は「実はただのバカ」だった、そんな馬鹿な奴にいつまでぶら下がってるの?という中々の皮肉をぶち込んだ社会風刺でした。
一体どこのどいつを見立てた構造なのかはわかりませんが(あれ、もしかしてイーロン・マスク?)、案外企業のトップだったり金を持ってる奴って、実はたいしたアイディアとか想像力とか判断力とかクリエイティビティなんて持ってなくて、全部下の奴らからそのまま頂いて、さも自分が作りました!って泥棒みたいなやつかもしれないと。
要はハッタリだけで世の中だったり先を見てるみたいなペテン師かもしれませんよ、本当に実力のある人はそんな人の下で言いなりになっていていいんですか?と言ってるような、そんな人物設定でしたね。
またキャラクターは、男尊女卑な筋肉バカもいれば、何も考えずに思ったことが「真実」だと思い込んでるバカモデルなどもおり、SNSで色々やらかしてしまう連中もいれば、「金の乳房」にぶら下がってないと何もできない連中ばかりが集ってるんですよね。
そんな中で唯一カサンドラだけが本当の「企業家」であり、可能性を持っていながらも兼ねに目がくらんで「真実」を捻じ曲げてしまう連中の弱さを嘆いてたわけです。
劇中でも映画「ソーシャル・ネットワーク」を引用してましたが、カサンドラは正にザッカーバーグがした仕打ちを受けていたとあって、さぞ腹が立っていたことでしょうw
さて、物語の構成は前作と似たようで違う構成でした。
前作ではことの顛末を先に提示し、真犯人を炙り出していくという構造でしたが、本作はもう少し単純でいわゆる「A面とB面」という構造。
島に着いてから殺人が起き、何故ブランがやってきたのかというところでB面=前日譚と島で起きていた裏の出来事を見せるというやり方。
僕の感想の中ではカサンドラと書いてますが、劇中では皆カサンドラの事をアンディと呼んでるんですよね。
だからブランが「カサンドラ殺しを知る一人を探す!」って言った時に、俺「え?誰?」ってなりましたw
そもそも彼は木箱を直接マイルズから送られてないわけで、やはり理由あっての「潜入」だったわけで、その依頼主がカサンドラ=アンディの双子の妹ヘレンだったことが中盤で明かされるわけです。
後半の種明かしはカサンドラに変装したヘレンとブランの視点で物語が描かれることで、前半で描かれていた内容のその裏側をという答え合わせを見せていく流れでした。
これの何が面白いって、この後半の種明かし的な描写を見ても「もう一度最初から見たくなる」と思わせてくれるほど細かい部分を描いてるんですよねw
え?ヘレンそんなとこで立ち聞きしてたの!?とか、とにかくヘレンが情報収集のために動き回ってたことや、それを裏で操ってるブランが何も知らないことを装ってうまくみんなから話を聞いている姿勢になっているんですよね。
普通ミステリーって一回観たら犯人わかっちゃうし動機も犯行の様子も知ってしまうから、あまりもう一度見たい!って気にならないんですけど、今回に関してはもう一度見直して細かい部分をチェックしたくなる欲求が生まれましたね。
そしてグラスオニオンというサブタイトルの妙ですね。
真ん中が空洞になった玉ねぎ上のガラス容器のことを言うようですが、本作のエンディングでも流れたビートルズの「グラス・オニオン」の歌詞を読んでいくと、ストロベリーフィールズはじめ、彼らの過去の曲のタイトルが散りばめられており、当時ファンはこの歌詞を色々解釈したり考察したりしたそうです。
でも実は単なる言葉遊びであり、深読みし過ぎて真っすぐ見えなくなっているリスナーをからかっただけの歌なんだとか。
そんな曲からインスパイアされたのか、本作もブランは何層にも連なる玉ねぎ状のガラス容器の外側を何枚もめくっていくうちに真相がわからなくなってくるんですが、真ん中は空洞=空っぽだったということに気付き、犯人を何度も「バカ」扱いするわけです。
ただこっちで色々こねくり回してただけで、真実は実は至ってシンプルなモノだった、そして犯人も裸の王様じゃないけどいろんなもので外を囲ってるだけで、頭の中は空っぽだったというダブルミーニングとも取れるサブタイトルだったわけです。
後は何でしょうね、ラストの展開ですけど、前作でもラストはものすごく爽快な終わり方をするんですけど、今回も実に爽快でした。
もう打つ手なし!となった段階で形勢逆転していく姿が、全て金持ちの手で動かされてる社会に一石を投じてくれるかのような描写になっており、どこかで今の生活に不満を抱えてる僕らを代弁してくれるようにもみえるんですよw
前作の爽快感も正にカーストをぶっ壊す意味とも取れる爽快感で、ライアン・ジョンソンてちゃんと庶民の気持ちを理解してる人なんだなぁと感心しましたw
最後に
後はもう小道具の使い方が巧いです。
ホットチリソースからライター、モナリザ、ハードコンブチャ、マイルズの愛車からデュークのアレルギーなどなど、セリフで出てきた部分も含めて、余すところなく最後までに使い切るという上手な伏線回収でした。
また小ネタで言えば、ブランの助手がまさかのヒュー・グラントだったり、ジャレット・レトが作ったカクテルとか、ジェレミー・レナー印のチリソースとか、あとフィットネスのコーチをしてるのテニスプレイヤーのセレーナ・ウィリアムズでしたよね?
中々豪華なサプライズゲストで、まさかの登場に笑ってしまいましたねw
楽曲に関してもビートルズの「Blackbird」やナット・キング・コール、デヴィッド・ボウイなどの楽曲を使って盛り上げてました。
また細かいことを言えばエドワード・ノートンが演じた大富豪ってキャスティング、あれ絶対「ファイト・クラブ」意識だと思うんですよ、全く真逆の役をさせるっていうw
あとはやはりネットフリックスが出資してるだけあって、豪勢な美術と派手な演出で、前作の地味な室内劇ってのもいいんですけど、続編だからこその派手さが際立った作品だったと思います。
ところで、ジョセフ・ゴードン=レヴィットとイーサン・ホークがいたらしいけど、どこにいた?ww
とにかく早く続編製作をしてください!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10