告白 コンフェッション
友達と他愛もない話をしているのに、つい「地雷」を踏んでしまうことってないでしょうか。
それこそ酒の席、つい思ってもないことをポロっと言ってしまうことで、相手の怒りを買う、みたいな。
因みに僕は過去に、イケメンなのになんでこんな微妙な子と付き合ってるのか疑問に思えて仕方のない友達の彼女を「Perfumeの4人目」と裏で連中といじって盛り上がってたのですが、それを本人の前でポロッと言ってしまい、途轍もなく気まずい空気になったのをよく覚えてます。
全くもってサイテーな奴でしたね、俺・・・。
今回鑑賞する映画は、そんな「気まずい」出来事に遭遇した二人が織りなす狂気の密室サスペンス。
俺みたいな地雷案件ではなく、死を意識してうっかり「殺害を告白」しちゃった男と、それを聞いちゃった男の話ってことで、とんでもなく「気まずい」ばかりか、「口封じ」されるんじゃないかと疑心暗鬼に駆られていく内容になっていくのではないかと思います。
なんかコントのような設定にも思えますが、映画的な楽しさもあったら最高ですね。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「賭博黙示録カイジ」や「アカギ」など、ギャンブル漫画の第一人者として知られる漫画家・福本伸行による原作、「沈黙の艦隊」や「空母いぶき」など自衛官らによる壮大なドラマを手掛ける漫画家・かわぐちかいじによる作画によって誕生した漫画を、「リンダリンダリンダ」や「カラオケ行こ!」など、オフビートで描く青春映画を生業とする山下敦弘監督の手によって実写映画化。
大学山岳部OBである2人が、ある「告白」により山小屋で気まずい一夜を過ごすことになり、親友でありながら一線を越える瞬間を、圧倒的スリルとスピード感で描く絶対的密室サスペンス。
これまでサスペンスを手掛けてこなかった山下監督は、本来好きなジャンルである心理戦を、綿密に時間をかけて製作。
原作が持つ笑いとアクションを織り交ぜながら狂気を爆発させていく展開により、あっという間の映画体験で楽しませていく。
主演には、「土竜の唄」でのコメディセンスが印象的でありながら、「渇水」のようなシリアスで繊細な役柄もこなす生田斗真と、バイオレンスと優しさを兼ね備えた「息もできない」や、純朴ながらも闘志をあからさまにしていくボクサーを好演した「あゝ荒野」での印象が強いヤン・イクチュン。
2人の掛け合いによる化学反応が、物語にどんな凶暴性と狂気、それを超越したユーモアへと昇華するのか見物だ。
他にも、物語の鍵を握るヒロイン役に「スイートマイホーム」、「#マンホール」の奈緒が出演。狂気に満ちていく本作に一服の清涼剤としてアクセントを残す。
想像の先の先を行く極限のワンナイトサバイバルが、ついに幕を開ける。
あらすじ
大学山岳部OBで親友の浅井(生田斗真)とジヨン(ヤン・イクチュン)は、16年前に事故死した同級生・西田さゆり(奈緒)の慰霊登山中、猛吹雪により遭難してしまう。
死を覚悟したジヨンは、実は16年前にさゆりは自分が殺害したのだと浅井に‘告白’する。
長きに渡り背負ってきた十字架を降ろしたことで安堵し、死を受け入れたジヨンだったが、その直後、眼前に山小屋が出現し、二人は一命を取り留める。
薄暗い山小屋の中、明け方まで救助隊が来るのを待つ二人だったが、浅井はジヨンの態度がどこかおかしいことに気づく。
この上なく異様で“気まずい”空気が流れる山小屋内。
そして、ジヨンの行動は常軌を逸し始め、狂気をはらんでいく。(Fassion Pressより抜粋)
登場人物紹介
- 浅井啓介(生田斗真)・・・大企業に勤務して社交性もあり信頼される人物だが、本音を吐き出せる相手はあまりいない。大学時代は山岳部に所属しており、そこでジヨンとさゆりと親しくなる。さゆりとはかつて恋人関係にあった。順風満帆な人生を送っているように見えるが、さゆりの死後、空虚感を抱えながら生きている。
- リュウ・ジヨン(ヤン・イクチュン)・・・韓国の大学を卒業後、日本の大学に留学する。初めは日本に馴染めなかったが、山岳部で浅井とさゆりに出会い、次第に打ち解けていき、次第にさゆりに恋心を抱くようになる。さゆりに拒絶された末、彼女を殺害した後に心を蝕まれ、韓国に戻って死んだように生きていた。
- 西田さゆり(奈緒)・・・浅井やジヨンと同じ大学の山岳部のメンバーで、2人の共通の知人であった女性。2人を含めた山岳部のメンバーと共に登山中遭難し行方不明となった。以降死体は見つかっていない。
(以上HPより抜粋)
これ以上ない「ざわざわ感」がめちゃめちゃ楽しそうな本作。
一体どんな結末を迎えるのでしょうか。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#告白コンフェッション 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) May 31, 2024
この手のプロットならちょうどいい尺、ちょうどいい展開、ちょうどいいオチ。
恐るべしヤンイクチュン。マジで怖えしそれを超越して笑える🤣🤣🤣
是非かまいたちにネタでやってほしい映画。もちろん山内がヤンイクチュンで。 pic.twitter.com/V61cFzbJtn
これ以上ないくらい「ちょうどいい」怖さと驚きと展開とオチ。
聞いてしまった男と言ってしまった男の気まずさが、どんどん増幅して「なんでそうなるのww」な、なぜか笑えてしまうワンシチュエーションスリラー!!
以下、ネタバレします。
80分弱で見せる巧さ。
浅井のかつての恋人で、ジヨンが思いを寄せていた相手、さゆり。
彼女が遭難して亡くなってしまったことがきっかけで続けている慰霊登山。
互いにとって忘れがたい相手を悼むために始めた恒例行事が、ジヨンの告白によって壮絶な一夜となってしまうなんて、二人は想像できたのでしょうか。
物語は、吹雪による遭難のため、そして大怪我をしてしまったがために「もうこの先はないだろうから伝えておく」というジヨンが、「さゆりを殺してしまった」と告白してしまったことから展開していく。
この時いきなり一つの疑問が生じる。
なぜ浅井は助けたのだろうかと。
ジヨンがずっと誰にも言えずしょい込んでいた罪を、親友である自分に告げてくれたこと、そして「誰にも言えなかったこと」という苦しみを抱え込んでいたことへの情から、彼を許し共に救助を待つ、そんな思いがあったように思える。
だが、もし俺が浅井の立場だったら、かつての恋人であれ人を殺したは人間として許すまじ行為であり、そのまま凍えて野垂れ死ねと置き去りにするだろう。
そうしたことで俺も罪に問われるんだろうが自業自得だと。
あとで罪に問われても雪山遭難なんだからどうでも言えるよなと。
一体俺とジヨンのどっちが人でなしかわかったもんじゃないが、俺ならそうするのに、なぜ浅井は助けたのだろうと。
この薄っぺらい優しさが後に大きな災いを起こしていくのは、少し後の話。
物語は徐々に不穏な空気を漂わせていく。
足を怪我し動きようのないジヨンを介抱しようと、浅井は薪で火をおこしたり、ゆきを雪を溶かしてお湯をためたり、玉ねぎを使ってスープを作っていく。
ジヨンのために色々尽くす一方で、なぜかジヨンは浅井のために動こうとしない。
携帯電話を貸してほしいと頼んでも「持ってない」(実際は持っていた)、玉ねぎを切るための包丁が見当たらない(ジヨンがサバイバルナイフを貸してくれたが、実際は包丁を隠し持っていた)など、浅井にとって何か都合の悪い行動をしていくジヨン。
こうなるとひとつの疑念が生じていく。
知らなくてよかったことを言ってしまった彼は、知らなくてよかったことを知ってしまった自分を殺害するつもりなのではと。
疑心暗鬼に駆られていく浅井は、事あるごとに立ち上がり不穏な動きをするジヨンに脅えていく一方で、ジヨンはというと「罪の告白」を聞いた浅井の優しすぎる対応に疑問を抱き始める。
なぜお前は「かつての恋人」が親友に殺されたことを知って、「聞かなかったことにする」と言えるのか、と。
そう、普通ならおかしい。
せめて自首を薦めるとか、もっと詳しい事情を聞くとか、ジヨンを責めるかのような対応をしてもおかしくない。
何なら、浅井がジヨンを始末しても良い。
でも、彼は自分を助けた。
ジヨンもまた疑心暗鬼、いや自暴自棄とも言えるような表情をし始めていく。
逆にジヨンは浅井に「お前も告白しろ」と問い詰めていく。
この閉じ込められた空間で、互いが安全を確保するためなら、その手段も悪くない。
どっちも悪いのだから手を出すことはないだろう、そんな感覚か。
それに対し浅井は「何も告白することはない」の一点張りで拒絶。
徐々に狂気を帯びていくジヨンは、とうとう浅井を殺そうと行動に移していくのであります。
ここからは、狭い空間で追って追われて攻撃して防御してのアクションシークエンス。
避難部屋にはトイレ、物置、キッチン、そして2階の荷物置き場の4つの部屋が用意されており、1階の物置と2階のの持つ置き場に梯子が設置されているという空間。
この空間を使ってどんな攻防戦を繰り広げていくかが、本作の見せどころとなっております。
実際ジヨンは足を怪我してるので動きが遅いが包丁を持っている、対して浅井はけがもなく身軽に動けるんですが、高山病を発生することで視界が霞んでしまうというウィークポイントを設定することで、この狭い空間でも互いがアドバンテージを持ちながら必死の攻防戦を繰り広げるのであります。
従って、部屋に隠れても視界が霞んで見えるので、ジヨンがすぐ近くで潜んでるのに見えていないんですね。
なのでジヨンが物音さえ立てなければいつでも浅井を仕留めることができる。
かといってずっと視界が霞んでるわけではないので、浅井の方がやや優勢といったところ。
にも拘らず、少しずつダメージを追っていくし、向こうは武器を持っているのでやはり浅井も気を抜けばやられてしまうという構図になっております。
恐るべしヤン・イクチュン。
そんな狭い空間での攻防戦でひときわ目を見張るのがヤン・イクチュンの狂気に満ちた表情。
途中で挟まれる回想シーンでは、韓国からの留学生という慣れない環境の中、どこか弱々しく悲し気な表情を見せていますが、その弱さが憎しみへと変わりさゆりの首を絞めてしまうシーンが映し出されます。
それとは全く別人と化していくジヨンの狂気は、さすが「息もできない」のヤン・イクチュン。
怖さを通り越して笑わずにはいられませんでした。
長い髪を結ってただ座っている際は普通に見えますが、暗がりの中で灯るランタンから見える彼の表情がどこか怖い。
そこから足を引きずって動くもんだから、束ねた髪もほどけていく。
ついにはランタンから覗く垂れた前髪がホラーじみて、より恐怖感が増していきます。
ちょいちょい変な演出も入ってるせいで、余計恐いんですよね。
例えば、汚した足を庇って歩いて動くんですけど、ついつい怒りが先走って足を庇わないで力を入れたりしてしまう。
その結果、思いっきり足をひねってしまうんですね。
その音が骨折したかのような「ぐきっ!」って音で、それでも立ち上がってゆっくり歩き始めるもんだからまぁ怖い。
さらには頭から階段を落ちてしまい、頭部を思いきり強打してしまうんですけど、手の力で歪んだ骨を戻すんですよ。
もうそれって、「ゾンビ」そのものじゃねえかとw
そんなゾンビ化したジヨンが、どれだけダメージを受けても追いかけてくるからまぁ怖いw
終いには暗がりから急に匍匐前進で近寄ってくるシーンとかもありましたし、「シャイニング」のジャック・ニコルソンオマージュ寸前みたいな、斧でドアをぶち破ってくるシーンもあったりして、狂気全開な展開になっていくわけです。
行動ももちろん怖いんですが、喋り具合もボソボソ言いながら、いきなり韓国語交えて喚き叫んでくるからまぁ怖い。
一応字幕が出るので我々には何を言ってるかわかるんですが、恐らく浅井は聞き取れていない様子。
それによりひたすら脅えるだけになっている浅井の表情によって、怖さが助長されてるように思えます。
1つだけ疑問。
しかしおかしいのは、高山病って視界が悪くなるだけでなく、耳も聞こえなくなってくるもんなんでしょうか。
ジヨンはピッケルを杖代わりに、汚した足を庇いながら歩行するんですよ。
だから動くスピードはそこそこ遅いはず。
なのに、浅井の視界がぼやけてる間、結構な移動をしてるんですよね。
ドアの向こうに行ったのに、気が付くと浅井の背後にいたり、1階の物置と2階の荷物置き場を挟んでの拮抗した状態でも、なぜかジヨンの方が先回りできるような感じ。
足を庇っているうえにピッケルが地面を突くわけだから、1歩動くたびにそこそこ大きな音はするはず。
なのに浅井よりも先回りして動けるの、ものすごく変な感じがするんですよね。
耳までやられてるのなら理解できるんですが、どうもその辺が「おかしくないか?」と思えて仕方ありませんでした。
終盤に意外な真実が。
結局のところ、なぜ浅井はジヨンを助けたのか、そして彼に優しさを見せたのかが判明していきます。
なんとさゆりは浅井の子を身ごもっており、それが浅井にとって疎ましかった。
そして登山でペアを組む際、さゆりを無理矢理ジヨンに押し付けたのであります。
それがきっかけでジヨンは、思いを寄せていながら自分ではなく浅井を選んださゆりに対して憎悪を抱き、首を絞めてしまうわけです。
ジヨン曰く、浅井が俺に彼女を押し付けたからこうなったんだ!とわけわからんことを言い始めますが、それよりももっとひどいのは、ジヨンが首を絞めた姿を、浅井は木の陰から見ていたのであります。
そう、ジヨンが罪を告白する以前に、既にその場で見てたので知っていたことになります。
さらに、実はジヨンはさゆりをちゃんと殺せていなかったのであります。
息を戻したさゆりをみた浅井は、何と自らとどめを刺すのであります。
こうなると、何故ジヨンを助けたのかが理解できる気がします。
さらには、罪を告白したことで「実は俺が…」と真相を話さなかった浅井の方が最低だということ。
ジヨンが「お前も告白しろ」といった真意は、ジヨンもまたそれを知っていたのかもしれません。
とはいえ、一連の攻防戦は全て「浅井の夢」だったことが明かされ、物語は閉ざされた空間での追いかけっこの前の段階に戻るんですね~。
もちろんここで終わるわけではなく、ここからどんな展開が待っているかは是非ご自身でお確かめください。
最後に
・・・結局ほとんど言ってしまいましたが、70数分というかなり短い尺の中で、幾度か同じ回想を挟んで描かれるものの、しっかりと狂気が帯びてくる構成、狭い空間をしっかり活かした話運び、そこに互いにハンディをつけることでなかなか終わらない攻防戦へと発展していく様子や、それだけでは終わらないオチも機能して、かなりボリュームのある物語だったように思えます。
ヤン・イクチュンありきな感じにも思えてしまったので、極限状態となった生田斗真がどんな行動をしでかすのかみたいな展開があっても良かったかもしれません。
それこそこれは「知ってしまった者」と「言ってしまった者」の心理戦だったりもするので、行動に移る前にもう少し疑心を抱く段階を積み重ねても良かったかもしれませんが、余計なことはしない方が本作は吉ということだったんでしょう。
また、山下監督と言えばオフビートな笑いが印象的な反面、間を置きすぎるクセが目立ってそれが良しあしになってしまうんですが、今回は意外と妙な間を作らずテンポよく見せてましたね。
いい意味で「らしくない」映画とも思えました。
しかしあれですね、雪山で遭難さえしなければ、彼らの友情は続いていたのでしょうか。
結局どちらも「腹を割って話せない」関係とも取れる間柄だったってことですかね。
まぁ犯罪なんで言えなかったんでしょうけど、まぁどっちも罪深い奴らだったということでw
とにかく映画代金で考えちゃうと、もっと尺が欲しかったのでコスパ面ではお得とは言い難いですが、普通に面白い映画ってことで満足度高めで。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10