クレイヴン・ザ・ハンター
SSU(ソニーズ・スパイダー・ユニバース)の第4作目となる本作。
先日公開され惜しまれつつも最終章を迎えた「ヴェノム」と同等の強さを誇るキャラだそうですが、ヴェノムのように映画「スパイダーマン」に登場してこなかったキャラクターとあって、正直浸透度も薄ければ興味も弱い。
とはいえ、本作で監督を務めるのがあのJ・C・チャンダーだから目が離せない。
成功のためなら何をしてもいいのかと疑問を投げた「アメリカン・ドリーマー理想の代償」は、非常に硬派な作りになっていて好感を持てたし、デビュー作となった「マージン・コール」ではリーマンショック前夜に起きた一連の騒動を静かに映し出してたんですよね。
その後の「トリプル・フロンティア」でも一獲千金を狙うあまり欲に溺れていく姿を悲哀を込めて描いてました。
正直娯楽大作をやってきた職人監督ではない人なので、今回クレイヴンというキャラをどのように描くかピンとこないんですが、とにかく人間描写と重たい空気に関しては僕は非常に好みなので、楽しみにしております。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
ソニーピクチャーズ(コロンビアピクチャーズ)とマーベルが製作する「スパイダーマン」シリーズの新たなヴィランの姿を、「マージン・コール」で注目を集め、当時のNetflixの最高製作費を投じたとして話題だった「トリプル・フロンティア」などを手掛けた監督の手によって、「マーベル史上最もバイオレンスなヴィラン」を誕生させた。
素手で猛獣を倒すほどの身体能力と五感を武器に戦うクレイヴン・ザ・ハンターが、いかにしてその力を手に入れ悪名高い最強のハンターとなったのかという誕生の物語を、最新鋭のCG技術と、強靭な肉体を作り上げた俳優が見せる壮絶なアクション描写、そして父と子の重厚なドラマを交えながら紡いでいく。
今回SSUで初のR指定となる本作。
ヴィランを主演にしたSSUでは、ヴェノム以外期待された評価や興行収入に達していないことから、監督のJ・C・チャンダーは相当なプレッシャーを受けたそう。
しかし、これまで「権力」や「保身」、「欲」といったテーマを得意とする監督は、裏社会に属する父と子の因縁や確執といったドラマを軸にすることで、それまでのコミックをなぞったかのような作品ではなく、普段アメコミ映画を見ない層にも見てもらえる、重厚な犯罪ドラマへとシフト出来たと語っています。
そんな裏社会を制する父を持ちながら、怒りに任せて獲物を狩り続ける主人公クレイヴンの役を、アーロン・テイラー=ジョンソンが熱演。
「キック・アス」、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」と2度アメコミキャラを演じるほどのアクション俳優でもある彼は、昨今「フォール・ガイ」や「ブレット・トレイン」などでも活躍。
次回作の「007」でジェームズ・ボンド役とも噂される彼が、本作のために強靭な肉体改造を施し、激しい動きとこれまで見たことのない新たな側面を突き付ける。
他、クレイヴンの父であり裏社会の王であるニコライ役に、「アオラレ」、「ヴァチカンのエクソシスト」のラッセル・クロウ、クレイヴンと行動を共にする女性カリプソ役に、「ウエスト・サイド・ストーリー」、「アーガイル」のアリアナ・デボーズ、クレイヴンを慕う弟で、貧弱ゆえに父親から見放されているディミトリ役に、「グラディエータ―2」のフレッド・ヘッキンジャー、硬質な肌と巨大な角を持つ人物ライノ役を、「フェイス/オフ」、「アムステルダム」のアレッサンドロ・ニヴォラなどが出演する。
狩られたら狩り返す、怒りをむき出しにして復讐を限りを尽くすハンターは、なぜ獣のような力を手に入れ行使するのか。
その謎が明かされる。
あらすじ
幼い時に母親を亡くし、裏社会を支配する冷酷な父親から「強き者が生き残る。力こそが全てだ。」という精神を叩きこまれて育った少年セルゲイ(クレイヴン)。
ある日、父親と共に狩猟に出た際、突如現れた巨大なライオンに襲われ生死を彷徨う大怪我を負うが、ライオンの血がセルゲイの体内に入ったことで、<百獣の王>の力を持つ容赦なき“クレイヴン・ザ・ハンター”へと覚醒する。
〈狩り〉の対象は、金もうけのために罪無き動物を〈狩る〉人間たち。
一度狙った“獲物”は確実に仕留めるまで、あらゆる手を使ってどこまででも執拗に追い続ける。
次々と〈狩り〉を実行し、彼らを動かす大きな組織へと近づいていくが…立ちはだかるのは、全身が硬い皮膚に覆われた巨大な怪物〈ライノ〉。
さらに、病弱な身体を持つ最愛の弟ディミトリが危険にさらされたことでクレイヴンは激昂。
やがて“裏の世界の殺戮者”と呼ばれる自らの父親と対峙することになる。
怒りのままに<狩り>を繰り返し、次第に暴走していくクレイヴンだったが、弟からは「兄さんはただ、殺しを楽しんでるだけ。」と心無い言葉を受けてしまう。
大義のための殺しか?
快楽を求める殺戮か?
激しくエスカレートしていく〈狩り〉が、行きつく先は─?(公式より抜粋)
感想
#クレイヴン・ザ・ハンター 観賞。捕食者の頂点に立つために狩りに勤しむ父と子、そして少しずつ目覚める弟。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) December 13, 2024
親子のドラマを描きつつ、文字通り獣の如く暴れ回るアーロンの荒ぶる姿に興奮。ラッセルクロウもドスが効いてたなぁ。
そしてほんとにこれで終わるの勿体無いよ、SSU。 pic.twitter.com/ywdk3cbOP0
鬼マッチョなアーロンが素足で駆けずり回って暴れまわって思いっきり打ちのめす!!
これだけで一見の価値ありですよ俺からしたら!
話はまぁ~こんなもんかでしたけどw
以下、ネタバレします。
SSUが終わるそうです。
後にスパイダーマンのヴィランとなるであろうキャラクターたちを主人公に描いた「ソニーズ・スパイダー・ユニバース」。
彼らが集結した「シニスター・シックス」の実写映画化を待ち望んでいた僕としては、本作を持ってユニバース終了の文字を目の当たりにしたときは、それはそれは悲しかったですよ、ええ。
ヴィランの代表格である「ヴェノム」も最終章を持っていったんの幕を閉じ、トム・ハーディ以外の俳優をキャスティングしてリブートを計る目論見だったんだと思います。
確かにヴェノム以外の「モービウス」や「マダム・ウェブ」らは興行収入も批評家のスコアも散々な結果でありましたし、何なら本作もアーリーレビューは散々。
そりゃ企業のビジネスで考えたらプロジェクトは終了せざるを得ないのかなと冷静な見方をできますが、いくらなんでも早すぎやしないかと思うわけです。
一応今後は「スパイダーマン」の新たな物語が製作されるそうですが、もしできることなら、彼らをヴィランとして登場させて役れないだろうか、と。
俺はね、モービウスもマダムウェブもまだ救える段階にあるというか、今後のキャラクターの使い方によっては生存できると思うんですよ。
一応ダークヒーロー的な扱いになってましたけど、紆余曲折を経て、スパイダーマンと戦わなくてはならないっていう物語にすれば、彼らの単体作品は無理だとしても、延命できるぞと。
そんな淡い期待を抱きながら、今回の哀しいニュースを受け止め前に進もうと思います(どんだけダメージ受けてんだよw)。
確かに本作に対する僕の率直な感想は「やや低め」の評価なんですけど、そもそも本作の脚本には「アイアンマン」、「パニッシャー・ウォー・ゾーン」のマット・ホロウェイ、「イコライザー」シリーズのリチャード・ウェンクらが担当してるってことから、確実に大味の物語だってことは読み取れるんですよ。
恐らくですよ、監督と脚本家らのビジョンが余りあってなかったんじゃないかなってのが、映画を見ていくとなんとなくなんですけど、わかるなぁって気がしたんですよね。
というのも、親子のドラマをもっと描きたい監督と、それ以外の娯楽要素も入れたい製作及び脚本家らのすれ違いがあったんじゃないかなと。
でなければ、前半あんなに尺使って親子を描かないですし、結局黒幕だった親父を、幾ら能力がないからってラストであれだけで片づけるって、考えられないというか。
なぜか中ボス感満載のライノとの戦いをメインアクションに置き、その後親父と対峙って、どうも「アメコミアクション」としての型がバランスが悪いというか。
その辺も好みでしょうし、もっとやり様があったんだろうけど、何とか収まった感はあったので、とりあえず飲み込んだ次第です。
・・・と、色々愚痴がこぼれてしまいましたが、いいところもあるので語っていきたいと思います。
アーロン無双だよな。
冒頭でも書きましたが、最初こそひよっ子なキックアスを演じたかと思えば、どんどん肉体改造をして気づけばアクション俳優と化していたアーロンくんが、本作では一体どんだけプロテイン飲んだんだよ!ってくらいの鬼マッチョな姿に変貌を遂げているわけですよ。
その鍛え抜かれた肉体を惜しげなく披露するサービスショットを挟みながら、百獣の王の如く素足でアスファルトの上をペタペタペタペタ走り回るわけです。
高層階から降りる際も、まるで虎やチーターのように、両手両足で滑るかのようにスライドで減速しておりていき、四足歩行の動物のように着地。
コーナーも曲がる際も、二足歩行のそれじゃなく、四足歩行ならではのコーナリングで軽やかに曲がったり、その脚力と腕力でライフルの弾も見事に避ける。
さらには、並外れた脚力で崖の間も高~くジャンプしたり、車から車へ飛び移る際も、人間は慣れした能力で息も切らさず駆けずり回るではありませんか。
もちろんそこはCGで描いてるわけですけど、知らんうちに「アーロンならやれそう」みたいなバカみたいな考えに思考が移り変わっていくほど、スクリーンの中で説得力帯びたアクションでしたよ、ええ。
また容赦ない殺しっぷりも見事。
冒頭では刑務所に侵入し、ギャング王を仕留めるシーンが挿入されます。
ギャング王ってこともあり、金を掴ませて用意してもらったであろう広めの独房で、まずは手下を隠したナイフでサクッと仕留める瞬発力、そしてデスクに座った王をそのまま隅まで追いつめて、一言耳打ちした後、首元に3発ナイフでサクサク刺していく。
あぁ、なんて美しい所作なんだ、ハンターってこんなにも殺し屋としての能力って高いのか、そんなことを思いながら、スクリーンをマジマジと見つめておりました。
パパであるニコライ演じるラッセル・クロウとの対峙も見事。
だってさ、今回のラッセル・クロウ、グラディエーターとかアメリカンギャングスターとか、L.A.コンフィデンシャルとかのあの見境のない睨みつけた目が備わってたわけですよ。
そこにあのドスの効いた渋い声で、「強くなれ」とか「弱い奴は男じゃねえ」みたいなことを平然というわけですよ。
そこで、力を手に入れたってこともあるんでしょうけど、一切物怖じしない、でも心はオヤジの「力こそすべて」な部分に支配されてる葛藤を、絶妙なバランスで見せていたと思うんです。
ただアクションだけじゃない、ロシア語もしっかり話しながら、ちゃんとお芝居もできるんだぞってことを証明した作品だったのではないでしょうか。
お話に関してはもっと出来たろうと。
さっきから言い訳の如く本作をほめようと努めております。
というのも私、ソニーピクチャーズを応援してるからなのであります。別に何もらってませんw
何でって、SSU以外でも昨今のソニピクは「一昔前のハリウッド映画」を猛進してるからなんです。
だって今回っていわゆるいま煙たがられている「有害な男らしさ」を全面に押し出した物語じゃないですか。時代錯誤もいいとこなんですよ、テーマ的に。
他の作品も、「フライミートゥザムーン」然り、「恋するプリテンダー」然り、今やるべき内容の物語ではない気がするんですよね。
それをいとも簡単に製作して公開してしまうある意味図太い戦略で、尚且つ話をどんどん進行させようという潔い編集というかカットが常にあるんですよね。
今回もセルゲイが敵の兵士を殺した後、電話を撮ってすぐさまカリプソに連絡を取るんだろうなって思ったら、セルゲイは既に現地から離れ空港にいるという。
こういう端折り方、俺は大好きなんですよね。
作品の都合上、そうした方が話がさっさと進むという構成にしてるのが、いかにも一昔前のハリウッドだなぁって勝手ながら思っております。
ま、別の映画でも普通にやってることなんですけど、ソニピクがやってることが俺の中では大事。
そんな「クレイヴン・ザ・ハンター」ですが、お話に関しては、どうも作りが歪な気がしました。
最初はロシアの刑務所からスタート、獲物を狩った後、突如回想が描かれていきます。
母親が死んだ後狩りに連れていかれたセルゲイとディミトリでしたが、大物のライオンを前にしたセルゲイがライオンに噛まれ連れていかれるんですね。
それと平易こうしてカリプソの物語も挿入、祖母の言い伝えに従い秘薬を手に入れた彼女が、胸騒ぎに引っ張られセルゲイを救助。
傷口にライオンの血液が混入したセルゲイは、その秘薬によって特殊能力を手に入れるという、「なぜセルゲイはロシアの刑務所であんなアクションができるのか」という答えとして描かれていきます。
ここまでは別にいいんですが、前半はオヤジとの確執から弟も巻き込んだ、マフィアのプライド合戦へと発展、少年期に一緒に狩りに同行したライノが、黒幕でした、家と思いきや、彼もまたニコライの術中にハマっていた、全ては親父ニコライの仕業だったっていう話だったわけです。
だいぶ端折って書いたわけですが、中盤かなり会話で構成されていて、僕としてはかなり退屈でしたw
あれだけアクションをやっておきながら、そこは一切テンポよく会話を描いてくれないのかと。
まぁJCチャンダーだし、あの辺はアメリカンドリーマーっぽいじっくり見せていくようにも見えたので、こういう部分が彼にとっては大事だよなぁと思いつつ、気づけばウトウト・・・。
まぁ肝心なのは、結局親父が黒幕なら、ライノのような中ボスなんて出さずに、もっと親父と対決するような物語にすればよかったんじゃないの?と。
「男はメンツが命」を体現してるような親父が、兄弟を巻き込んでまで実権を握りたいという狡猾なやり口で保身に走ったわけで、そんなお前と俺は違うってのを、最後にもっと見せてほしかったんですよね。
とはいえ、力の限りを尽くして弟を救助しようと目論むセルゲイとどう違うんだっていう矛盾をもっと突き付けてほしかった。
だからこそ最後はあんな風に終らせるのではなく、もっとセルゲイがグサッと来るような展開を用意して、それでもなお「あの親父」の血を引いた、でも俺は違うっていうアイデンティティみたいなところにたどり着いて終わってほしかったなと。
ただまぁ、そこは先ほども書いたように「ソニピク」なんで、今起きてる細かいセクシャリティ問題とかどうでもいいのだとw
そんなんだからロッテントマトで腐るんだぞw
最後に
アーロンももちろん素晴らしかったですけど、彼とは対照的に弱々しいながらも力に憧れるディミトリ役を演じたフレッド・ヘッキンジャーも素晴らしかったですね。
「グラディエーター2」での暴君カラカラとは真逆の存在感を放っておりましたけど、ここまでか弱くも底知れない欲を持ったキャラを、いとも簡単に演じられえるとは。
他にもカリプソ役のアリアナ・デボーズは、セルゲイに巻き込まれながらも彼をサポートする情報収集役、そしてボーガンの腕前を見せる見せ場もあって、良いヒロインだったのではないでしょうか。
なんというか、あのパッツンパッツンのスーツ姿がまた何ともセクシー。
一応アメコミに登場するキャラも登場してまして、ヒットマンと明記されたキャラは「ザ・フォーリナー」という変装の達人で武術マスターのキャラ。
劇中では「1・・2・・・3・・・」とカウントしながら瞬殺する能力を持っていましたが、あれ別にめちゃくちゃ素早いんじゃなくて、相手に一種の催眠トランス状態をかけることができる能力を持ってるからできる芸当なんだとか。
他にも「アメイジング・スパイダーマン2」でラストちょろっと登場したことで記憶してる人も多いと思いますが、ライノが登場しましたね。
あっちは機械に乗り込んで戦おうとしてましたけど、こっちの方がナチュラル。
難病に苦しんでたどり着いた特効薬で普通の人間の姿でしたけど、投薬を辞めた途端一気に鋼の肉体に変身してしまうという、本作にうってつけのキャラとして活躍しておりました。
ラストでは、モノまねの上手いディミトリが「カメレオン」になってしまうというオチも。
他デイリービューグルが登場したり、ライノの病気を治療した大学教授の名も出てましたので、ちゃんとスパイダーマンの世界線で物語が行われていることは、ファンなら楽しめた要素だったのではないでしょうか。
とにもかくにも、これでSSUが終わりという悲しい現実を受け止めて、次の新たな企画だったりスパイダーマンの新作を待とうではありませんか。
もっと面白くできたのになぁ…。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10