くるみ割り人形と秘密の王国
ドイツの民芸品ともいわれる、くるみ割り人形を題材にした有名なバレエの劇を、あのディズニーさんが映画にしちゃいました。
「シンデレラ」、「美女と野獣」など最近自作のアニメーションをガンガン実写化しちゃうことで、更なる高みへ上っているディズニーさん。
元はチャイコフスキーのバレエってのは知られていると思うんですけど、実際にそれ見てる人ってどれくらいいるんだろう。
そもそも物語の全容を知ってる人ってどれくらいいるんだろう。
世界的には語り継がれている作品ですけど、とりあえずこの映画を通じて「くるみ割り人形」のお話が浸透したらいいなと、素朴な疑問から思ってみた次第です。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
ロシアの偉大な作曲家として知られるチャイコフスキー。
彼がが作り上げた3大バレエ作品のひとつ「くるみ割り人形」の原作である、E.T.A.ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王様」を、ディズニーが新たな命を吹きかけ、少女クララの冒険ファンタジーとして映像化。
クリスマスイブにくるみ割り人形をもらった少女が、突如人形サイズになりおもちゃの兵隊とともにねずみと戦うという夢物語を、豪華絢爛で煌びやかな装飾や背景をリアルに再現することで、これまで原作やバレエでしか描かれなかった「くるみ割り人形」の世界に、更なる進化と記憶に残る映像として我々の前に現れる。
物語の最後には世界最高峰のテノール歌手マッテオ・ボチェッリと彼の息子がコラボレーションした、親子の普遍的な関係を歌った新曲を起用。
少女と亡き母の愛と絆を描いた今作にふさわしく、見終わった人たちへ深い余韻を残すことでしょう。
クリスマスを控えたこの時期にふさわしい冒険ファンタジー映画です。
あらすじ
愛する母を亡くし、心を閉ざしたクララ(マッケンジー・フォイ)がクリスマス・イヴにもらったもの、それは鍵のかかった卵型の入れ物。
「あなたに必要なものはすべてこの中にある」———母が遺した言葉の意味を知るために、クララは鍵を探し始める。
その晩開かれた名付け親であるドロッセルマイヤー(モーガン・フリーマン)のクリスマス・パーティーで、彼からのプレゼントを受け取る糸をたどるゲームに参加したクララは、いつの間にか不思議な世界へ足を踏み入れていた。
鍵を追ってクララが迷い込んだのは、息を飲むほど美しく幻想的な世界。
それは、色とりどりの花と緑で覆われた“花の国”、キャンディやマシュマロでできた“お菓子の国”、雪と氷がクリスタルのように輝く“雪の国”、そして謎の多い“第4の国”からなる誰も知らない<秘密の王国>。
プリンセスと呼ばれ戸惑うクララだったが、やがて、この世界を創り上げたのが亡き母であることを知る。
だが、マザー・ジンジャー(ヘレン・ミレン)が支配する“第4の国”が反乱を起こし、王国は消滅の危機に瀕していた。
母が愛した王国を救えるのは私しかいない———心優しい“くるみ割り人形”フィリップ(ジェイデン・F・ナイト)とともに、“第4の国”へと旅立つクララ。
それは、この美しい世界に隠された<真実(メッセージ)>を探す、驚くべき冒険の始まりだった…。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのは、ラッセ・ハルストレムとジョー・ジョンストン。
元々から共同で製作したわけではないようで、再撮影の際ハルストレム監督のスケジュールが合わないために、ジョンストン監督が代わりに務めたとの事。
大体はハルストレム監督の製作ってことですかね。
さてさてジョンストン監督といえば「キャプテンアメリカ」や「ジュラシックパーク3」、「ジュマンジ」なんかがすぐ出てくるんですが、ハルストレム監督・・・ごめんなさい、名前の時点でピンときません。
調べてみると、ものの見事にスルーしてる作品ばかり手がけてましたw
というわけで監督の代表作をさくっとご紹介。
男女ポップグループ「ABBA」のドキュメンタリー映画を手がけたことから注目され、50年代末スウェーデンの小さな町を舞台にした、家族と離れながらも生きる少年の物語「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」でアカデミー賞監督賞にノミネート。
そこからハリウッドで製作が増えていきます。
アメリカ中西部の田舎町でくすぶった生活を送るも、やがて自分の人生を見つめなおしていく青年の物語「ギルバート・グレイプ」、孤児院生まれの青年がさまざまな「経験を通して成長してゆく、ジョン・アーヴィング原作の感動ドラマ「サイダー・ハウスルール」、さらには、伝統が根付く村にチョコレートショップが開店されたことで巻き起こる愛のファンタジー「ショコラ」でアカデミー賞作品賞にノミネートされます。
近年は、長年日本で愛されてきた「ハチ公物語」をアメリカでリメイクした「HACHI約束の犬」や、ニコラス・スパークス原作のベストセラー小説を映画化した純愛青春ストーリー「親愛なるきみへ」、そして去年は、飼い主との別れの後、ある目的を胸に何度も生まれ変わる健気な犬の一途な思いを描いた「僕のワンダフルライフ」も手がけています。
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キャラクター紹介
左上より。
- クララ・シュタールバウム(マッケンジー・フォイ)
<秘密の王国>を救うための戦いに巻き込まれていく
聡明で、豊かな想像力を持つ少女。“女性は女性らしく”というこの時代特有の風潮に戸惑いを感じている。他の女の子たちとはちょっと違う自分の一番の理解者だった母を亡くした寂しさから心を閉ざすが、母が遺したメッセージを探すうちに、<秘密の王国>へと迷い込む。(HPより)
- シュガー・プラム(キーラ・ナイトレイ)
色とりどりのスイーツで作られた“お菓子の国”の統治者
ジンジャーブレッドの建物やキャンディの装飾があり、人々から愛されている“お菓子の国”を統治する妖精。シュガー・プラムも、砂糖の結晶のようにきらめくドレスを身にまとい、髪は綿菓子、磁器人形のように美しい。クララの母マリーと生前仲が良く、秘密の王国に迷い込んだクララを歓迎し、常に寄り添い世話を焼く。(HPより)
- ドロッセルマイヤー(モーガン・フリーマン)
クララの名付け親で良き理解者
寛大で思慮深いが、どこか謎めいた男。クララの母マリーを子供のときから可愛がっていたこともあって、マリーによく似たクララのことをいつも気にかけている。不思議な発明品に溢れた自身の屋敷で毎年開催するクリスマス・パーティでは、子供たちのために趣向を凝らした“贈り物の宝探し”を催している。<秘密の王国>について、何か知っている様子。(HPより)
- マザー・ジンジャー(ヘレン・ミレン)
<秘密の王国>の脅威として立ちはだかる“第4の国”の統治者
<秘密の王国>の全住人から恐れられる存在。かつては遊園地とサーカスで人々を楽しませる“遊びの国”を統治していたが、4つの国の統治者たちの間で起こった争いの結果、国は崩壊し、“遊びの国”は荒れ果てた“第4の国”となってしまった。火のように赤い髪とひび割れのある顔という姿が、人々をより怖がらせている。(HPより)
- キャプテン・フィリップ(ジェイデン・F・ナイト)
クララが出会う心優しい兵士
高潔で慎ましく忠誠心溢れる兵士であり、<秘密の王国>でただ1人の“くるみ割り人形”。愛馬ジングルス以外は誰も伴わず、1人で王国を守っている。王国に迷い込んだクララを“プリンセス”と呼び、案内役を買って出る。どんなときでもクララを励まし、精神的な支えになる。(HPより)
どうやらセルゲイ・ボルーニンも出演するようなのでバレエシーンも見所のひとつかと。
不朽の物語にを完全実写映画化した今作。
少女クララはどんな冒険を繰り広げるのか。
母の死を乗り越えることができるのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
少女が母の思いを知るまでのファンタジーストーリー。
シンプルでオーソドックスな構成だから非常に見やすくてわかりやすい。
でも、う~ん、可もなく不可もなく。
以下、核心に触れずネタバレします。
必要なものはすべてこの中に。
母親を亡くして初めてのクリスマスに気乗りしない少女クララが、母親から受け取ったクリスマスプレゼントの卵のオモチャのカギを求めて異世界の王国で彷徨い、仲間たちとともに王国の存亡をかけた戦いに繰り出していく姿を、ファンタジー色溢れるキャラや王国の舞台、美しくエレガントな衣装などで世界観をコーティングし、母を亡くしたことで邪険になるクララが王国で母が遺したものを知ることで、逞しく成長を遂げていくプリンセスの王道ファンタジー映画でございました。
上映時間100分弱の比較的短い物語構成ではありましたが、現実世界からファンタジーの世界へとスライドしていくのに全く違和感がなく入り込めるのはさすがディズニー。
そこから雪、花、お菓子、そして秘密の王国へと足を踏み入れ、この世界が何であるのか、いったい今何が起きているのかをクララを通じて我々も把握していくことで、クララと一緒にこの国の謎を追いかけていくような運びも非常に巧く感じます。
僕が感じた印象では、「アリスインワンダーランド」のようなちょっと怪しさもありながら、子供の頃夢見た空想の世界のように見えました。
クララが王国に迷い込むきっかけも似たような感じでしたね。
物語は至ってシンプルで、母が作った王国で起きている事態を収拾するためにクララが奮闘する、というもの。その道中で母親はクララに何を託したのか、そして母を亡くしたことで悲しみに暮れる彼女は、そのプレゼントの意味を知ることで自分を生んでくれた母への思いを決して忘れずに生きることを決意し、逞しく成長していく、というものでした。
これまで塞ぎがちだったクララ。母がいないから私はもう何もしたくない、一体この悲しみはいつになったら無くなるのか、そう落ち込む毎日でしたが、「必要なものはすべてこの中に」と書かれたプレゼントは、一見何の変哲もないモノでしたが、彼女だからこそその意味が理解できたわけで、自分の能力を見事に発揮することでその後混乱を止めていくんですね。
物語では寂しさが故に間違った行動をしてくキャラが出てくることで、クララと対照的に描かれていました。
私だけ一人残していったい私はどうすればいいのか、という一種の裏切りと捉え暴走してしまう人物。
確かに愛しい人がいなくなった時、自分でなく相手を責めてしまうようなことあると思います。特に今回はクララを生みこの王国を作った母ということもあり、その人物もクララも同じくらい哀しかったことでしょう。
しかし、母はクララにこの国の人物たちに命を与えたわけです。
あなたたちは私が作った最高傑作なのだから、それを誇りに思って生きてほしいと。
それに気づいたクララとその人物がどうぶつかっていくのかは作品を見ていただいて感じてほしいですが、母からの思いを知ったクララの逞しい表情は、少女から少しだけ大人へと変化していきます。
今年のクリスマス、お母さんは是非お子さんとこの映画を見てほしいなと思う映画でございました。
映画の世界は華やかでした。
とりあえず全容を後半途中までザックリ紹介。
冒頭もクララが如何にクレバーなのか、というのを意識した場面。
いきなりピタゴラスイッチで弟とともにネズミを捕まえることで、クララが科学と技術を駆使した発明や母親や叔父譲りの賢さを持った少女だというのが一気に理解できます。
しかしクララは心が不安定。それもそのはず自分を一番理解してくれた母親は亡くなり、お父さんは世間体ばかり気にしてクララにいつまで塞ぎ込んでいるんだとたしなめてばかり。
叔父のパーティーへ出向きクリスマスプレゼントを受け取る際に、雪化粧で覆われた世界へ向かうことで、彼女の冒険が始まっていきます。
母からもらったプレゼントは卵型の箱。中を開けるには鍵が必要なんですが、それが見当たらない。がっかりしていたクララは叔父のプレゼントがそのカギであることを、この世界で知るんですがネズミに奪われてしまい、秘密の国へ迷い込んでしまいます。
そこで出会ったくるみ割り人形の兵隊フィリップを家来に進んでいきますが、ネズミの大軍によってあえなく退散。
フィリップはクララがこの国を作った母の娘であることを知り、彼女を王国へ連れていくことに。
劇中ではこの世界がどんな国で成り立っているか、そして最初に踏み入れた不気味な場所は何なのか、というのをバレエの舞台で表現しています。
実際にクララもシュガープラムらとともに観劇する仕組みになっていて、クララと同様にその美しさと華麗さにうっとりしながらわかりやすく説明してくれます。
この映画と舞台の融合という演出はバレエを見たことないよくわからない人には、どんなものかを知れるいい機会だったのではないでしょうか。
3つの国と秘密の国は対立状態にあり、戦争がいつ始まってもおかしくない状況でした。
そこにプリンセスの娘であるクララが来たことで、シュガープラムは、母が作ったオモチャに魂を与える機械を動かすために必要なカギを取り戻してほしいとクララに託します。
それは母からもらったクリスマスプレゼントのカギ穴と同じ形のものでした。
目的が一致したことでクララはカギを奪いに精鋭部隊を引き連れ向かうことに。
そこは霧で包まれた不気味な森。
ネズミの大群が兵隊たちを地面から襲い穴へ落したり、メリーゴーランドを破壊したりとかなりの手ごわさ。
マトリョーシカをイメージした奇怪な手下が登場したり、ピエロのような形をしたブリキ型のサーカスのテントがそびえ立っていたりと、いかにも怪しい国。
クララはネズミたちによって捕らえられ、いよいよ秘密の国の王女マザージンジャーと対面。
ここはかつて遊園地やサーカスなどで人々に娯楽を与えた遊びの国でしたが、他の国と対立してしまい、今では廃れた場所へとなってしまった。
マザージンジャーは真実を知っている口ぶりだったが、クララは鍵を奪い返すことに専念しおり、隙を狙って見事に奪うと一目散に逃げることに。
カギをシュガープラムに渡し、これであの国からこの場所を守れる、そして母のプレゼントの中身も開けた、目標は全て達成されたかに思えたが、事態は急変していきます。
物足りなさは多い。
メッセージ性もあるし、監督や製作陣のやりたいことや演出や装飾面はすごく伝わった。
しかし物語においては非常にライトに仕上がっているため、主人公の心理描写や他のキャラへの深掘り、話運びのあまりのテンポの良さに没入感は少なく、またもっと描かなければいけない部分を省いて進行しているように見えてしまい、全体的に物足りなさを感じました。
起承転結はあれど、それの高低差が無いから見てるこっちもハラハラしないしドキドキもしない。非常にのっぺり。
そのくせテンポよく進むのはどうしたもんか。
原作やバレエの流れは知らないので、どれだけ脚色したのか改変したのかはわからないんだけど、恐らくかなりカットして作ったような気がします。
例えばクララが母親からのメッセージの意味を理解したシーンではあまりのあっけなさに、謎めいたものが感じられず観てるこちらも少々あっけに取られてしまう。
せっかく壮大な場所での壮大なストーリーなのだから、個々にも大掛かりな仕掛けがあっても良かったように思う。なんせカラクリ大好きな叔父が出て来たリ、ゼンマイ仕掛けのものや冒頭ではピタゴラスイッチなんかも披露してるのだから、物語においても彼女がメッセージを読み取るからくりがもっと何度高めでもよかったのになと。
あとあれですよ、冒頭で科学と技術は素晴らしいということ、それによってい亜kに彼女が頭のいい子なのかってのを現してるわけだから、最後くらいもっと頭のキレるアイディアで敵を成敗してほしかったですね。なるほど!その手か!みたいな意外性は特になく、ごめんなさいその展開読めてしまいました、と。
本当の敵もまぁすぐわかっちゃうしさ。
他にもお菓子の国と遊びの国は大々的に描かれてるのに、雪と花の国は全くフィーチャーされていなかったり、遊びの国もよく見るとえらく小規模でお菓子の国とは雲泥の差。
あとクララはなぜ水門を止めたのかよくわからん。あれをしたことで、他の機械の動力を止めたわけでもないし。クララの作戦がイマイチわからず。
俺どっか見落としてる?
あとはオモチャの兵隊たちの強さも微妙。元いた兵隊が閉じ込められた牢屋を解放して戦わせた方がクライマックスは盛り上がった気がするんですが。
最後に
この物足りなさってのは、大人だから色々見えてしまった、ということに尽きるかもしれません。
実際は子供たちにクリスマスに見てほしい映画として作ったと思うし、色々と子供がワクワクしたりドキドキしたり不気味な描写にビクビクしたりしてもらって楽しんでほしい、そして君はこれからどうあるべきかってのを感じてほしい、っていう作り手のあえての意図なのかなと。
実際にマトリョーシカやおもちゃの兵隊は子供から見たらかなり怖いキャラだった気がします。
太ったピエロが急に真っ二つになったら小っちゃいピエロが出て来たリ柔軟な動きをしてピョンピョン飛び跳ねるんだから、中々怖いよなぁこれ。
オモチャの兵隊も表情一つ変えねえし、それがいっぱい量産されてぎこちない動き方するんだから、あれもトラウマになりそうなキャラだったなぁと。
クララ演じたマッケンジーフォイちゃん、まぁキレイでしたね。プリンセスそのものでしたよ。今後が楽しみです。
そして今回の一番の収穫はシュガープラム演じたキーラナイトレイのキャラの作りっぷりね。いったいどこから声出してるのか、身振り手振りもまぁすごい。摂政という身分や性格もちゃんと理解してあれやってるのかと思うと、役への入りっぷりは見事でした。
それ以前にあれキーラナイトレイなの!?って思う変わりぶりでしたよね。何の予備知識も入れずに観たら気づかない人多いと思う。
それくらい劇的な変わりっぷりでした。
とにかくですね、物足りなさや没入感の低さはあるにしても、子供たちに見てほしい映画であることにかわりはないです。
小さい娘さんを持つ親御さんは是非連れて見に行ってほしいですね。
というわけで以上!あざっした!!
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満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10