モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ラストレター」感想ネタバレあり解説 初恋からの卒業、してみませんか?

ラストレター

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誰とでもすぐつながることができるSNS全盛期。

相手との距離が縮んだことで気軽に接することができたり、時間を短縮できる利便性がある反面、なかなか来ないレスポンスで生じる「待つことの楽しさ」や、不便だからこそ感じることができる「募る思い」が失われているような気がします。

 またこの便利な機能に依存するあまり、「繋がっていないといけない」という概念にとらわれてしまいがちなのも事実。

 

技術の進歩によって縮んだ人と人との距離は、これまで存在した心と心の「行間」を消し去ってしまったようにも思えます。

 

 

今回鑑賞する映画は、そんな今の時代とは逆行したかのような「手紙」にまつわる話。

先日この映画に精神的にリンクするであろう監督の過去作Love Letter」を観賞したんですが、たまりませんでした。

郵送の誤配がきっかけで繋がる二人の現在と過去を照らし、このやり取りがなければ交わることがなかったであろう世界を掘り下げながら、思いがタイムスリップして届く、という作品。

 

Love Letter

Love Letter

  • 発売日: 2014/08/27
  • メディア: Prime Video
 

 監督の儚くも美しい映像美に虜になり、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」でも輝きを放ったREMEDIOSの音楽が心に沁み、とても素敵な作品に巡り合えた感覚に陥りました。

 

今回の映画も「手紙」を基に紡いでいくラブストーリーであることは確かなので、「Love Letter」とセットで見てほしいなと思います。

 

と、一丁前に言っても、僕は数作しか監督作品を見てない素人なので、どこまで読み取れるか…

とりあえず、今月一番楽しみだった邦画、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

「Love Letter」や「スワロウテイル」、「リップヴァンウィンクルの花嫁」など、独自の作家性と被写体からあふれる瑞々しい表情と風景で、多くのファンを魅了してきた監督の最新作。

 

監督の出身地である宮城を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まった二つの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の成長と再生を描く。

 

「Love Letter」と同じ主体を思わせる今作。

四半世紀の時を経て、「手紙の行き違い」がどんな物語を生むのか。

 

ラストレター (文春文庫)

ラストレター (文春文庫)

  • 作者:岩井 俊二
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/09/03
  • メディア: 文庫
 

 

 

映画「ラストレター」オリジナル・サウンドトラック

映画「ラストレター」オリジナル・サウンドトラック

 

 

 

 

 

あらすじ

 

 裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。

 

裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。

未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。

そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。

 

勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。

裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。

その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎(回想・神木隆之介)と未咲(回想・広瀬すず)、そして裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。

 

ひょんなことから彼らを繋いだ手紙は、未咲の死の真相、そして過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いを、時を超えて動かしていく―――(HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

監督

今作を手掛けるのは、岩井俊二

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僕が彼の作品に初めて触れたのは、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」。

誰にでもきっとあるであろう初心な恋心の、一瞬のきらめきと選択によって歩んでしまう後ろめたさ、男の子ならではの不器用さも手伝って、少年全員に見てほしい青春映画です。

 当時劇場版になる前に「ifもしも…」というオムニバスドラマの中の一つとして放送されたのをリアルタイムで見ていたんですが、あの時の何とも言えない感覚はいまだに心に根付いています。

 

これ以外に数作しか鑑賞してないんですが、いつだって監督は誰にでもある青春の日々を、時に優しく時に辛辣に描いてるなぁと、勝手なイメージですが思っています。

今回も僕らの青春の日々を蘇らせるような甘く酸っぱい物語にさせてくれることでしょう。

 

そんな監督の代表作をサクッとご紹介。

先に触れた「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」で、TV作品であるにもかかわらず、日本映画協会新人賞を受賞し知名度を上げていきます。

婚約者を亡くした女性が、彼が昔住んでいた場所に手紙を出すと、来るはずのない返事がやってくることから始まる「失われた時を求めて」辿る物語で、初の長編映画「Love Letter」が大ヒットします。

その後も、近未来の架空都市❝円都❞を舞台に、若者たちの姿を描いた「スワロウテイル」、上京したばかりの女子学生の日常を切り取った中編「四月物語」、14歳の少年少女たちが心に抱く闇、焦燥、痛みなどを痛烈に描いた問題作「リリィ・シュシュのすべて」、親友同士の女子が、記憶喪失になった青年を巻き込んでの三角関係に発展していく青春ラブコメディ「花とアリス」など、その時代を代表する作品を世に送り出していきます。

 

リリイ・シュシュのすべて [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
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近年は、普通の人生から踏み外してしまったヒロインが、出会いと経験を経て、生きにくい社会の中で強く生きていく姿を描いていく「リップヴァンウィンクルの花嫁」などがあります。

 

リップヴァンウィンクルの花嫁 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2016/09/02
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登場人物紹介

 

  • 岸辺野裕里(松たか子)・・・遠野未咲の妹で、夫・宗二郎と、娘・颯香、息子・瑛斗と四人暮らしをしている主婦。

 

  • 遠野鮎美(広瀬すず)・・・母親である未咲が亡くなり、祖父母の過ごす未咲と裕里の実家に身を寄せている。
  • 遠野未咲(回想)(広瀬すず)・・・裕里の姉。学校のヒロイン的存在。

 

  • 岸辺野宗二郎(庵野秀明)・・・裕里の夫。漫画家。同窓会以降、裕里と鏡史郎の浮気を疑っている。

 

  • 岸辺野颯香(森七菜)・・・裕里の娘。夏休みの間、鮎美と共に祖父母の家で過ごすことに決める。
  • 遠野裕里(回想)(森七菜)・・・未咲の妹。乙坂鏡史郎に秘かに思いを寄せる。

 

  • 阿藤陽市(豊川悦司)・・・未咲の元恋人。

 

  • サカエ(中山美穂)・・・阿藤陽市の同居人。

 

  • 乙坂鏡史郎(回想)(神木隆之介)・・・裕里・未咲の高校に転入してきた転校生。未咲に一目ぼれする。
  • 乙坂鏡史郎(福山雅治)・・・小説家として活動するも、デビュー作以降、全く書けていない。

 

  • 波止場正三(小室等)・・・昭子の高校時代の恩師。
  • 岸辺野昭子(水越けいこ)・・・宗二郎の母。
  • 遠野幸吉(鈴木慶一)・・・裕里の父、鮎美・颯香の祖父。
  • 遠野順子(木内みどり)・・・裕里の母、鮎美・颯香の祖母。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ俺もこれ見て初恋とか思い出しちゃうクチなのかなぁ…

そういうの弱いんだよなぁ…

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

初恋からの卒業、とでも言うべきか。

心の瘡蓋が剥がれ、新たな皮膚を作り上げていくまでの再生を瑞々しく描いた物語でした。

そして川村元気が余計なことを・・・

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初恋ってどうしてこうも・・・

かつての学園のアイドルであった未咲の死をきっかけに、初恋の相手に向けられたそれぞれの秘めた思いが20数年の時を超え、違った形で成就していくまでの道筋を、仙台の自然と街の風景を背景に、美男美女たちの美しすぎるまでの表情に見惚れ、赤面してしまうほどロマンチックなボタンの掛け違いとそれによって生まれる奇跡を丹念に積み上げていく語り口が、涙と自身の過去を誘う、これぞ岩井俊二な映画でございました。

 

初恋然り思春期の片思いってのは、どれだけ恋愛を重ねても心に残ってるもので、時に夢として出たり、急に思い出したりしてそのビジョンを消し去りたくなるほど、ダサくてもどかしくて、いつになったら消えてくれるんだろう、って思うんですね僕の場合。

それだけ自分の中では黒歴史になってるんですけどw

その大きな理由として実らなかったからだと思うんですよ。

気持ちを伝えることができなかったとか、伝えたけど木っ端みじんに砕け散ったとか、そのゴールに至るまでのあれこれが今考えると気持ちの悪い事ばかりしてたっとか、男らしくない女々しい部分が満開で満載でw

恥ずかしさを越えた何かがあったんですよね。

いや、あるのか、未だにw

 

だから一体いつになったら成仏するんだろう、この怨念じみた思いはと。

 

今回見ていて思ったのは、知りたくなかった初恋の相手の気持ちや思いをほじくり出しながらも、次のステップを踏むことができたという意味では、僕としては非常に羨ましいなと感じた作品でした。

 

 

姉の未咲の代わりに出席した同窓会によって再会した裕里と、彼女の初恋の相手・鏡史郎。

鏡史郎は彼女を姉の未咲だと勘違いし、裕里は姉と偽って鏡史郎と連絡先を交換。

夫は浮気と勘違いし、浴槽にスマホを投げ込むことで禁止令を出し、挙句の果てには犬を飼い世話をさせ、夫の母親の面倒までさせる罰のような仕打ちをするんですね。

庵野やりすぎだよそれw

 

とはいうモノの、連絡が途絶えてしまった後ろめたさから、裕里は鏡史郎に一方的に手紙を送り続ける。

スマホに25年間、ずっと恋してました、と投げかけたまま途絶えてしまったやりとりに、少しばかりの後悔をしていた鏡史郎に、裕里からの手紙が届く。

謝罪と近況が混じった文章、そして自分が渡したはずの小説の事を覚えていない彼女に、何かリアクションをしたい鏡史郎は、卒業アルバムの名簿から実家の住所あてに手紙を書くのでした。

 

それを受け取ったのは、実家で夏休みを過ごす裕里の娘・颯香と、未咲の娘・鮎美。

自分たちの母親との淡い恋模様を送った相手に、イタズラ心と興味半々な気持ちで返事を書くことに。

この3者の手紙のやり取りから、物語は回想と現在を行き来していくんですね。

 

僕はやっぱり男なので、誰に感情移入するかといえば鏡史郎です。

未咲に想いを寄せるあまり、小説まで書き上げ、その後離れ離れになってしまった辛さ、すごくわかる。

ぶっちゃけ異性からしたらこんな女々しい奴、引いてしまうかもしれないけど、俺世の中の男って全員これ共感できると思うんですよ。

男はどんな彼女を求めるって、母親みたいな人か初恋の人だと思うんですよw

この亡霊に人生ずっと憑りつかれて、替えっていいたら相手に失礼だけど、面影を探してるんですよ。

向かいのホーム、路地裏の窓、踏切辺り、桜木町で、こんなとこにいるはずもないのにw

 

だからこういう手紙のやり取りだけでも僕なら救われる気がしたし、それに導かれるように歩いた旅路の途中での棘、きっと怒りに任せて拳を突き付けたかったろうし、その棘から「お前は彼女に何の影響も与えてない」って刺されるあたりで、木っ端みじんになったと思うし、それを乗り越えた先に咲いた二輪の華に会えた奇跡に、彼は人生捨てたもんじゃない、なんてほほ笑んだことでしょう。

何というか、人生というドラマは、淡い過去を忘れさせないことで、衝動的に郷愁させ、面食らわせながらも救済措置を取ってくれる。

こんなにも毒と薬を与えることで噛みしめさせてくれるのか、という感慨深い気持ちにさせてくれました。

 

これを作り上げた岩井俊二は、一体どんな人生を送れたらこんな物語が作れるのかとつくづく興味深くさせてくれた作品でもありましたね。

 

 

川村元気臭はツンと感じてしまう。

今回の作品にあたって、川村元気がプロデューサーとして製作に携わってるんですが、今作の要素の一つに、監督のベスト盤のような作品にしたい、という希望があったそうな。

確かに「Love Letter」への精神的な繋がりは、作品を見て居れば一目瞭然で、手紙によるボタンの掛け違いやら、現在と過去の登場人物を同じ俳優が演じることで生まれるメルヘン感なんかは正にそう。

鮎美と颯香の関係性はまるで「花とアリス」だし、鏡史郎が鮎美と颯香と別れる際の道は、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の、あの分岐点となる道にも見えるし、未咲の大人での生い立ちでの残酷さはさしづめ「リリィ・シュシュのすべて」ってところか。

ぶっちゃけこじつけにもほどがありますが、何にせよそう言い放った川村元気のおかげとでもいうのか、やっぱり過去作の面影ってどこかしらあったよなぁと思わせる作品だったと思うんですよね。

 

で、これもこじつけかもしれないんですけど、鮎美に充てられた未咲からの手紙。

あれは結果的に未咲と鏡史郎共作の卒業式での答辞だったわけですけども、現実の世界に残された鮎美への希望への道とも取れる意味合いの文だったと同時に、監督が残してきた作品に対する供養というか成仏というか、過去作からの卒業とも取れる結末だったのかなぁと。

原作があるそうなので、そのままの映画の結末かどうかはよく分からんし、プロデューサーがそこまで口を出すようなことしてるのかどうかもわからないけど、何というか彼の名前を見てしまったことに対する先入観で、あれこれ思ってしまったんですよね。

 

で、こっからは不満というかなぜそうした?って愚痴なんですけど、ドローンで風景撮影したり、顔を魚眼レンズじみた丸みを帯びた感じの撮影方法で寄って撮ったり、一番肝心な未咲の死の真相を全部セリフで役者任せにしてシーン作っちゃうのとか、何かこれまでの監督作品ぽくない気がしてならないんですよ。

まぁ全作観てるわけではないので、撮影やら演出やらカット割りやらどう変化してきてるのか全く分からないんですけど、つい2,3日前にみた「Love Letter」のようなあの感動がこの映画まるで消えちゃってて、話だけが浮いちゃってて、あれ俺の知ってる岩井俊二ってこんなにお粗末なことやる?って。

それもこれも全部、俺が抱いている川村元気の悪さのせいなんじゃねえの?って思ってしまうというか。

もっとね、奥深さがあったと思うんですよ、岩井俊二って。

今回ものすごく浅いんですよ。上っ面だけなんですよ。

ロマンティックだけどドラマティックじゃないんですよ。

だから、こうなったら全部あの人のせいにしたい、っていう俺の我儘ってことで、この愚痴勘弁してください。

 

 

最後に

裕里も鮎美も鏡史郎とのやり取りによって、未咲への想いが晴れる形になってよかったなぁって。

鏡史郎というヒーローが、これからも未咲を書き続けることで思い続けることで生きているようにしてくれるなら、彼女は初恋を断ち切ることができるだろうし、鮎美に至っては暗さを帯びていた過去の呪縛から解放されたことでしょう。

 

しかしトヨエツよ、お前は何という存在感だ。

たった1シーンでこの映画にそれまでなかった闇を一気に放ち、一気にブラックホールのように飲み込んでしまった。

それだけのインパクトのおかげで、マシャの怒気じみて見開いた目つきも霞んでしまったよ。

中山美穂も久々に見たけど、貫禄あっても美しいですな。

 

とはいえ、手紙って良いですね、こうやって見ると。

冒頭でも書きましたけど、返事が届くまでのあの待ちわびた感じ、今の時代では味わえないと思うんですよ。

あと書き手の筆圧だったり文章のセンスだったりそれこそ字の下手さとかきれいさとかで現れる性格だったり温度だったり。

たった一言だけでも色々思いを巡らせることができる、手紙がこの映画をきっかけに流行ったら面白いよなぁって、勝手に想像してます。

 

あとさ、親の初恋とか知りたくなる気持ちってのが、俺には全然生まれないんだけど、女性はそういうの知りたいもんなんですかね。

だってその人とは結ばれなかったし、仮にそうなってたら自分生まれてないんですよ?

あくまで物語を知りたいって欲なんですかね。

だから鮎美と颯香よ、何やってんだwって、ちょっと思っちゃいましたw

 

正直美しさもあったし物語も面白かったけど、かつての監督の輝きは失われたかなぁってどうしても思えて仕方がない映画でした。

愚痴、ごめん!

というわけで以上!あざっしたっ!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10