リトル・マーメイド
ディズニーアニメの実写化が報道されるたびに映画ファンは反応しますが、今回の「リトル・マーメイド」に関しては、恐らく一般の方も強く反応した作品だったのではないでしょうか。
それもそのはず、白人で赤髪の人魚アリエルが、黒人の女性でキャスティングされたからです。
「リトルマーメイド」で検索するとすぐさま「実写 残念」と出てくるほど評判は良くない様子。
何をもって残念なのかは、「黒人だから」というよりも「原作アニメと違う」ということからでしょう。
幼少のころ夢中だったアリエルを汚された気持ちにでもなったのでしょうか。
過去の思い出に浸りながら本作を見たい気持ちも理解はできますが、多様性の時代であることや、何よりも今回アリエル役に抜擢されたハリー・ベイリーを見た子供たちが今のアリエルとして受け止めてくれたらいいな、と個人的には思います。
あとはもう見てから文句言ってくれ。
話はそれからだ。
俺は見ます!!
そもそもリトルマーメイドをよく知らん!!
早速観賞してまいりました!!
作品情報
90年代のディズニーアニメ映画を支えた「リトル・マーメイド」を、「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「メリー・ポピンズ・リターンズ」のロブ・マーシャル、アニメ映画「美女と野獣」や「アラジン」などディズニー黄金期作品の音楽を提供し続けたアラン・メンケン、そして「モアナと伝説の海」や「ミラベルと魔法の家」で音楽を務めたリン・マニュエル=ミランダという、現時点でのディズニー映画最高の布陣で新たな金字塔を打ち立てる。
美しい歌声を持つ人魚が、その声を失ってでも行ってみたい人間の世界へと飛び出していく姿を、ディズニー屈指の名曲と共にミュージカルとして描く。
本作の主人公アリエル役を、2歳年上の姉と「クロイ×ハリー」として歌手活動しているハリー・ベイリーが演じる。
アニメ版と全く違う人種から世界中で批判されたキャスティングだが、次世代のビヨンセとも囁かれている彼女の歌声は、広い海の如く包み込んでしまうほどの影響を持つアリエルの役に相応しく、またこうした反対の声にも負けない強いメンタリティを誇っており、女性のブラックアイコンとして本作で輝くに違いない。
他にも「007 スカイフォール」や「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のハビエル・バルデムや、「ブライズメイズ」、「ゴーストバスターズ」などコメディエンヌ女優として地位を確立しているメリッサ・マッカーシー、「シャン・チー」のオークワフィナや、本作で注目を浴びること間違いなしの若手俳優ジョナ・バウアー=キングがアリエルが憧れる王子を熱演する。
陸と海、隔たる境界線を越えようと飛び出す彼女の姿は、きっと明日のあなたを後押ししてくれることでしょう。
あらすじ
美しい歌声をもち、人間の世界に憧れている人魚アリエル(ハリー・ベイリー)。
掟によって禁じられているにも関わらず、ある日彼女は人間の世界に近づき、嵐に遭った王子エリック(ジョナ・ハウアー=キング)を救う。
この運命の出会いによって、人間の世界に飛び出したいというアリエルの思いは、もはや抑えきれなくなる。
そんな彼女に海の魔女アースラ(メリッサ・マッカーシー)が近づき、恐ろしい取引を申し出る。
それは、3日間だけ人間の姿になれる代わりに、世界で最も美しい声をアースラに差し出すことだった…。(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- アリエル(ハリー・ベイリー/豊原江理佳)…海の王トリトンの末娘で、海底の王宮に暮らす人魚姫。明るく活発で、好奇心旺盛。世界の誰よりも美しい歌声と、夢を追い求める強い意志の持ち主。
- エリック王子(ジョナ・バウアー=キング/海宝直人)…アリエルが思いを寄せる人間の王子。勇敢で優しく、家臣からも慕われている。嵐で難破した船から放り出され、溺れかけたところをアリエルに助けられた。
- アースラ(メリッサ・マッカーシー/浦嶋りんご)…ずる賢く執念深い海の魔女。かつては王宮で暮らしていたが、トリトン王に追放されたことを恨み、復讐の機会と王座を狙っている。
- トリトン王(ハビエル・バルデム/大塚明夫)…アリエルの父親で海の王。強大なパワーを持つ矛を携え、海底王国を統治している。人間を敵対視しており、王国の民が海に出ることを禁止した。
- セバスチャン(CV:ダヴィード・ディグス/木村昴)…カリブ海からやってきたカニで、海の王トリトンに仕える執事長。まじめで責任感が強く、トリトン王からアリエルのお目付け役を任される。
- スカットル(CV:オークワフィナ/高乃麗)…陽気で騒がしい目立ちたがり屋のカツオドリ。海と陸を往き来できることから情報通を気取り、アリエルに人間の世界を教えるが、その知識はかなり怪しい。
- フランダー(CV:ジェイコブ・トレンブレイ/野地祐翔)…アリエルの幼馴染で親友。アリエルが人間界への憧れを話したり、悩みを打ち明けたりすることができる唯一の相手であり、強い信頼関係で結ばれている。
(HPより)
僕は「アラジン」や「美女と野獣」の実写化に関しては、アニメーションで良くね?と思ってる人なんですが、今回何といってもアリエルの人種そのものが違いますから、色々と脚色した物語になっているだろうと踏んでますが、果たして。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#リトルマーメイド 観賞。エリックのパートを厚くすることで旧世代による次世代への「価値観の押し付け」がより強調。アリエル役が彼女でなくてはならない意味が刻まれる。「これから」の人に向けた実写映画。アンダーザシーのミュージカルパートは圧巻でした! pic.twitter.com/NxGN0rXOkB
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 9, 2023
本作でリトルマーメイドを知った子供たちは、これが「スタンダード」になるんだろう。
その点においてこのリメイクは正しい。
セバスチャンもフランダーも不思議と愛おしく感じていくんだなぁw
以下、ネタバレします。
素晴らしいアンダー・ザ・シー
人間が住む世界に、そしてひとめぼれしたエリックに想いを馳せる人魚アリエルが、世界のルールに縛られずに大冒険へと繰り出す物語は、滑らかに美しく映し出された海の世界とハリー・ベイリーの歌声によって別世界を彩りつつ、オリジナルのアニメーションを損なわずにリメイクされたプロットで新旧世代を楽しませ、さらには先代が作り上げた価値観の押し付けや、モノの見方や決めつけが、これからの世代を縛り付けていることへのメッセージ性をより強く表現した、正に「これから」の映画でございました。
海には海のルールがあり、人間には人間のルールがある。
全く違う世界が交わることは互いの世界にとって最も危険であり、世代から世代に渡って受け継がれてきた。
しかし、新たに生まれた世代はふと疑問に思う。
果たして交わることは危険なのかと。
アニメーションの「リトルマーメイド」を先だって観賞して臨んだ本作。
どちらかというとアニメ版は「親の言いなりにならない娘」と「自分の教えを守らせたい父親」という親子間のズレを基盤に、子供たちが自由に生きることが親の務めという答えに着地していった作品だったように思いました。
だからなんだろう、どちらかというとアリエルカワイイ!というよりも親が見て気付かなくてはいけない作品だったように思ったんですよね。
で、今回の実写リメイクはどうだったのか、率直な感想を言いますとよかったのではないかと感じました。
実際物語の全体的な流れはアニメ版と変わらないんですよ。
でも大きく改変されたのは、エリックのパートを厚くしていた部分なんですよね。
トリトン王は、自分の妻が人間に殺されたという辛い経験から、人間皆全てを憎んでおり、娘たちに「海の上に出てはいけない」「人間と関わってはいけない」ときつく言いつけを守らせる立場にありました。
実際にいくつもの沈没船によって育つのに数千年かかると言われているサンゴが死滅してしまい、自分たちの住処が汚されている状態にあり、そうした理由からより人間たちを憎む考えに固執してたのであります。
それに対しアリエルは、人間全てがそんな野蛮な生き物ではなく、優しさを持っていたり思いやりに溢れた人間もいると主張するわけです。
何故船が沈んでしまうのかも、実際嵐に巻き込まれて座礁してしまったエリックの船を見ていたこともあり、故意に船を沈没させているわけではないと。
きっとそうに決まっているという考えは、様々な視野を狭めやがてプラスになる可能性をも見失う危険があると。
そうしたモノの見方を変えることが大事なのではないかとアリエルは語るわけです。
誰かの言ったことを理解せず自分の考えばかりを優先し耳を傾けない人、結構いると思います。
トリトン王が正にその典型的な人物だったんですよね。
で、この辺に関してはアニメ版とほぼ内容は一緒のために、実写リメイクとしての目新しさは脚本的には特に見当たらないわけなんですけど、エリックにも実はこんな悩みに晒されていたというエピソードを付け足したことで、よりアリエルとエリックが出会うべくして出会った、2人の思いが叶ってほしいという観る者の願いが強まる仕組みを作り出していたと思うんです。
エリックは、ある島の王子である立場ですが、とにかくこの島を発展させたい、sのためには海の外に出ていろんな国から吸収したり交流をすることが最優先だと思っている人物。
だから何度も船に乗り危険を顧みず航海をするわけです。
父親が部屋から一歩も出ずに孤独に過ごしていた姿をみており、それを反面教師として見ていたことも明かされています。
しかも彼の両親は実の両親ではありません。
エリックは白人ですが、両親は有色人種でした。
手塩にかけて育ててきた思いもあってか、そんな外に出たがるエリックを母親はきつく言いつけを守らせます。
外に出ても結局船を沈ませ、人を死なせるだけ。
他国で手に入れた品々も結局は海の底。
そんなことをして何の役に立つのか、とエリックをたしなめ、さらには自分を助けたという幻の女性探しにも苦言を呈します。
いつまで夢見てんだ、さっさと目を覚まして島を守ることだけを考えろと。
そうした押しつけに苦しみ悩むエリックの心情に尺を使うことで、アリエルとエリックという次の世代たちの苦しみが浮き彫りになる構成に仕上げてたんですよね。
そんな同じ悩みに苦しむからこそ二人は惹かれあい共鳴し心を寄せ合っていくロマンスになっていたと思います。
ハリー・ベイリーは見事にアリエルを演じきった。
また、海と陸、そして親と子という世代間のギャップや境界線を舞台に描いた本作は、アニメ版で白人女性という設定を改変し、ビヨンセの再来と言われた黒人の歌姫ハリー・ベイリーを起用。
あくまで歌声を高く評価したことで起用した彼女だったにもかかわらず、アリエル役は白人しかありえないと非難する往年のファンたちの声がどんどん大きくなってしまう問題が勃発しました。
でも本作を見ればそんな違和感や拒絶はただの「思いで補正」やまやかしに過ぎないと思えるほどの存在感を放っていいたと思います。
ぶっちゃけ吹替え版で観賞したので、彼女の歌声自体を体感したわけではないんですが、女優経験の乏しい彼女がアリエルになり切った、アリエルをこなしていたと思えるほど素晴らしい表情をしていました。
僕がアニメ版を見て感じたアリエル像は、好奇心旺盛でおてんばで自分の価値観を大事にするキャラだったのかと。
トリトン王の前では父親の考えに反発しながらも、自分の行き過ぎた行為が父親や海の世界に大きく迷惑をかけたことを素直に反省する姿は、正にアリエルそのものだったんじゃないかなと。
また、声が出せない状態でエリックと共に過ごすシーンでは、アニメ版と同じく初めて経験する人間の世界全てに興味を示し、瞳を光らせていく表情は目に留まりました。
馬車の手綱に興味を持って、がむしゃらに馬を走らせ周囲を困らせるほど夢中になっている姿や、村の市場で様々な民芸品や料理、そしてダンスに心を躍らせていく無邪気な姿は、徐々に惹かれていくエリックと同じような気持ちを抱くことでしょう。
言葉で芝居できない状態の中、そういったアリエルたらしめる表情でお芝居を成し遂げたハリーの姿を見て、きっと子供たちは彼女に憧れるに違いない、そう確信できる演技だったのではないでしょうか。
実際問題、もはや白人よりも有色人種の方が世界的人口が上回っていく統計が出てるそうで、そうした現実的な視点からもアリエルが白人でなくてはならない理由ってなんだろうと。
こうした「一見意識高そうに見える人種差別を考える人たち」の考えをアメリカでは「WOKE」なんて言うそうですが、先ほども語ったように、従来の価値観の押し付けで非難する前に、本作を見て何を語っているのか、何を描いているのかを、この映画の本質は決して白人で赤髪のアリエルではないことなど、モノの見方を変えて、モノの見方をアップデートして観ることが大切なんじゃないかなぁと思うのであります。
とはいえ、無理して観てほしいとは言いません。
アニメ版が好きならアニメ版を何度も見ればいいし、本作を見てやっぱりアニメ版の方が素晴らしいって感想も全然いいと思います。
あくまで僕はアニメ版に大して思い入れもない人なので、本作を大いに受け入れたいと思っております。
ミュージカルパートもよかったよ。
しかし、アニメ版とほぼ内容を変えず、しっかり現代的な改変をした本作は、さすがディズニーだったなと。
ちゃんとフランダーとサメに追われるし、沈没した船からエリックを助け出して目の前で歌を歌うし、アースラの目的もトリトン王を苦しませるための計らいだったし、何よりアースラ巨大化まで一緒。
とどめを射すのがエリックではなく、アリエルになってるのはすごく今っぽい改変だったなぁと。
そんなほぼ変わらないリメイクでも目を見張ったのは、ミュージカルパートでしょうか。
それこそセバスチャンがアリエルを海に留まらせるために歌い上げる「アンダー・ザ・シー」は圧巻のミュージカルシーンでしたね。
海の生物が列をなし、踊りながらアリエルも一緒に楽しんでいくんですが、くずれたCGも一切見当たらないクオリティの高さ。
そもそも泳ぎながらどうやって撮影したんだろうと思えるほどすごかったですね。
イルカの群れがアリエルを囲んで輪になって踊り出したり、ピンク色のふかふかのクラゲに座って戯れるアリエルに向かってマンタの群れが突っ込んでくることで、クラゲたちが縦横に放たれスクリーン一面ピンク色に染まる。
4列縦隊で右手左手と手を挙げながら踊るウミガメの背中に乗るアリエルや、その横で大きく体を揺らして手を振るヒトデ達。
気が付けば色とりどりの魚たちがアリエルを囲み出し、円陣を上から見下ろす構図は昔のミュージカル映画を見たかのような気持ちにさせる高揚感でした。
人間になりたいけど一線を越えてはいけないと自制するアリエルの背中を無理矢理襲うとするアースラの歌唱パートも圧巻でしたね。
様々な薬品が怪しく光り出しながら、その中心で悪魔のささやきをアリエルに向けて歌いだすアースラの姿は正に魔女。
他にもアリエルとエリックが日が暮れた時間にボートに乗って見つめ合うシーンでも、セバスチャンやフランダー、スカットルらが自然を操ってムードを演出するシーンは、うっとりします。
竹を揺らしてパーカッションのリズムを刻み、葉を揺らして群がる虫たちを光らせ、フラミンゴを達をはばたかせ風の音を生み出し、フランダー指揮の元カラダを光らせて川の中をブルーインパルスの如くフォーメーションを作って泳ぐことで、一見ただの夜の河が幻想的な空間へと様変わりしていくんですね。
こんなムード満点の自然の中なら、自然とキスしたくなるっしょ~!!と妙な下心が芽生えた瞬間でもありましたw
ま、劇中では邪魔が入ってしまいましたけど、セバスチャンたちの作戦はよかったですねw
最後に
色々語ってまいりましたが、単純に良いリメイクだったというのが僕の感想でして、それ以上の満足度ってのは正直なかったのが本音。
それはもうこのリトルマーメイドで育った境遇でもないわけだし、ディズニー自体をあまり押せない個人的な思いってのもあるわけでw
ただ、ルールや価値観に縛られて苦しんでる人たちに向けた作品や、その苦しみを与えている人たちが本作を通じて救われたり気付かされたりするのであれば、正しいリメイクだったのかなぁと。
そういう本作の意義というか姿勢は大いに買いたいなと。
そしてこれを見た子供たちが、大人になった時に時代が良い方に変わってくれたらいいよなぁと、未来への願いや気持ちにさせてくれた作品だったなぁと。
だから俺みたいなおっさんとか大人たちが、このリメイクでわーきゃーいうのを無視していただいて、子供たちは面白そうなら率先して観てほしいなぁと。
また、結局世代間や男女、別人種という隔たり以外でも、人と人との間にある境目がなくなって、もっとモノの見方や考えが柔軟になっていけばいいよねとも謳った映画だったかなとも思います。
そうした願いを汲み取って、感想を終わりにしたいと思います。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10