ロング・ショット/僕と彼女のありえない恋
ジョセフ・ゴードン・レヴィット演じる主人公がガンを宣告されるも、親身になって接する女性と触れることで心の成長を遂げていく「50/50フィフティ・フィフティ」。
僕も2010年代映画ベストにいれたほど大好きな作品。
それを手掛けたジョナサン・レヴィン監督の最新作です。
主演はその「50/50」でジョセフ演じた主人公のバカ親友でありながら、影で本気で心配しているナイスフレンドを演じたセス・ローゲンと、「タリーと私の秘密の時間」で、美しい容姿を捨て、子育てに疲労困憊のぼってりママを、増量して演じたのが記憶に新しいシャーリーズ・セロン。
セスに関してはこれまで劇場公開こそ国内では比較的少ないものの、ユダヤ人という出生を自虐ネタとして使ったり、とにかく下ネタで笑わせる生粋のコメディ俳優として知られてます。
で、彼が主演てことはそういうネタがバンバン飛び交ってくるんだろうということを、事前にわかったうえで鑑賞しないと、なんだこのお下品なラブコメは!ってなっちゃいますからご注意を。
セロン姐さん(僕のブログではそういう愛称で呼んでますw)に関しては、実はコメディもちゃんとできるお方で、それこそ「ヤング≒アダルト」で痛いお姉さんを演じたり、「荒野はつらいよ」でもセス・マクファーレンと共に、西部劇ネタで笑いを生んでました。
そんな2人が揃ってラブコメをやるということで、一体どんな映画になるんだろう、と興味を持ち、早速鑑賞してまいりました。
概要は言うと、ひょんなことからジャーナリストをフリーランスで活動することになった主人公フレッド(セス)が、現在国務長官を務め次期大統領の座を狙っているシャーロットのスピーチ原稿を担当するライターとして採用されたことから、格差を乗り越えて恋愛を成就させようというもの。
僕は当初、逆シンデレラストーリーのようなものだと想像して鑑賞しに行ったわけですが、中身は僕が思ったようなものではありませんでした。
一応かつてシャーロットがフレッドのベビーシッターとして関わっていた過去があり、その頃から彼女の理想や美貌に惚れていたフレッドが、彼女と再会したことにより再び思いを募らせていくという流れではあります。
しかし彼女は高根の花で、身分も釣り合わない間柄。
僕のような男が近づいてはいけない、と思った矢先に、シャーロットはフレッドのユーモアあふれる書き方や読者を引き付ける文章力を買い、久々の再会を機に採用しようとなっていくんですね。
ここから二人の距離が急接近し、互いの趣味や信条や理念などが深い思いと共に盛り上がっていき、結ばれていくという運びに。
まぁここまではよくあるラブコメの話として理解しやすいですし、男女逆転のキャリアでも恋愛は成就するのか?みたいなテーマになっていたと思うんですが、それだけでは終わらないのが今作のテーマ。
これまで男性優位の社会だった時代は、男の方がキャリアが上で女はその手助けをする、または男性よりも立場が上になってはいけない風潮があったわけですが、今となっては女性にも男性と平等の権利があり、キャリアに関しても女性が優位になったりトップに立って仕切ることも普通になりつつあります。
とはいえ、まだまだ男性優位の現場はどこにでもあり、それが恋愛と仕事の面でも逆でいいよね?ってことを強く訴えてるような作品だったと思います。
また、シャーロットは国見長官であり、フレッドはフリーのジャーナリストということで、男としては仕事の面においては弱い立場に見えがち。
信念を曲げることができないフレッドは、シャーロットが理想のために信念を曲げることに反発し、衝突してしまうこともしばしば劇中で流れますが、その後改心し、彼女の下した判断を尊重し謝罪するんですよね。
またシャーロットも仕事の立場上フレッドにあれこれ指示を出したりしますが、決して彼を下に見てない姿が見受けられます。
このことから、二人は仕事の立場を意識せずに互いの意見を尊重する間柄として、シャーロットの大統領出馬を目指す形になっていくんですね。
よって、男女逆転になったからといって、女が優位に立つとか、身分の低い男性が高嶺の花の女性と結ばれるシンデレラストーリーのような展開ではなく、恋人同士が対等になって、これまで誰もなれることができなかった女性初のアメリカ大統領になるべく、二人が手を取り、どこぞの圧力などに屈することなく、理想を掲げながら目指すサクセスストーリーになっていたと思うんです。
こうやって思い返してみると、一見真面目に見えそうなお話ですが、あくまでこれはラブコメです。
セリフやエピソードの中には沢山の下ネタやぶっ飛びジョークなどが飛び交っていました。
例えば、シャーロットが有権者からどんなイメージを抱いているのかを調査した結果を伝えるシーンでは、政治家のマニフェストとかよりも見た目や会話の内容だけで評価されてしまうような、今の政治が如何に中身で勝負されていないかを風刺したシーンだったり、そのイメージを損なわないようにボーイズⅡメンが登場するパーティーで、串に刺さったチキンを直で食べているのを見られないように、補佐官の影に隠れて食べる、なんてシーンもありました。
さらには中佐がどこぞの国を監視していたことがばれ、人質に捕らわれてしまった際の交渉でも、パーティーでドラッグをキメてしまった直後の出来事にもかかわらず、グラサンに紙吹雪がかかった姿の状態で一服しながら、大統領の悪口を言ったり、表向きにはテロリストとは交渉しないって言ってるけど、お友達としてなら考証オッケーよ!なんて機転をきかせたやり方で成立させてしまうなんて件もユニークな描写として非常に笑えます。
他にもフレッドはバリバリのリベラルで、とにかく今の大統領や、そこにおんぶにだっこなメディアを嫌う男。
シャーロットが串に刺さったチキンを食べていたパーティー会場で、メディア王(アンディ・サーキスだったんですねこれが!)に喰ってかかったり、職場を辞めるのも首を宣告されれば退職金が出るのに、自ら退職志願するなど、曲げられない男として映っていました。
そんなフレッドが、白人主義団体に潜入したものの、身元がバレて3階の窓からジャンプして車に激突してしまうけがを負ってしまいますが、何とか脱出に成功する姿や、パーティー会場でも長い階段から思いっきり滑り落ちてしまう、体を張った演技を見せたり、終盤ではPCをハッキングされたことで、シャーロットの演説を見ながら自慰行為をしている映像を見られてしまい、しかも自分の髭に白いアレがかかってしまう失態までも見られてしまうという、下ネタにもほどがあるだろう!wというような演技で笑わせてくれます。
あとは、シャーロットと寝た後、こっそり部屋に戻ろうとすると、補佐官同士もヤっていた場面に遭遇してしまう件も爆笑ものでしたし、ドラマから映画スターになった俳優は大統領曰く10人らしいんですが、ウディ・ハレルソンとジョージ・クルーニー2人だけとか言うセリフに対し、フレッドも同じような話をしだすんですけど、補佐官が割って入ってジェニファー・アニストンもって言いだして、いやそれは違うって反対するセリフも面白かったですね。
これらの要素を含みながら、シャーロットが成し遂げたい環境に関する条約が、裏でビジネスをしている大企業の反発によって難航になったりだとか、でっち上げばかりの記事を書いて、国民を扇動しているメディアをいじったり、大統領本人がドラマ出演をきっかけに本気で映画スターになろうとしているなどのコキ降ろしっぷりといった風刺も効かせた内容になっていたと思います。
と、ここまで褒め線で書いてきましたが、僕としてはそこまでの面白さを見いだせなかった部分が大きいです。
完全に宣伝によって生まれたイメージが先行したことによる、鑑賞前の期待と鑑賞後のギャップによるもので、もっとセス・ローゲンが暴れ倒して恋愛を成就させるベタなラブコメを期待していたのに、中盤の時点で成就しちゃって、あとは一気に話がそれメインではなくなってしまっていることや、実はフレッドよりもシャーロットの方が彼に夢中な話に思えてしまってる事、ラストのシャーロットの決断は正直無理があると思えてしまったこと、など、色々引っかかる部分があったなぁと。
題材やラブコメに色んな風刺を盛り込んで展開する明るいお話ってことには文句はないんですが、まぁ深みは無いですよね・・・。
とはいえ、相手の立場になって物事を考えることが大事、という親友の言葉の通り、何事にも主観でなく客観視することで、色々ないざこざって解決するんじゃね?ってことが、親友関係も仕事の立場も恋愛関係もうまくいく秘訣ってことを教えてくれるお話だったのかなと。
ロングショットって意味も、なんでしょ、長い目で見る、とか遠い位置から見る、とか、長いスパンで考える、とかそんな意味にも取れますし、物事を捉える時こそ、そういう視点が大事ってことを言いたいタイトルだったのではないでしょうか。
今回準備不足でイントロダクションは省略しましたが、たまにはこういう形式で書いても面白いですね、ブログは。
というわけで以上!あざっしたっ!!
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